太平洋戦争の敗戦のことがよくわかる！クイズ10問

リヴァディア宮殿で会談に臨む（前列左から）イギリスのチャーチル首相、アメリカのルーズベルト大統領、ソ連のスターリン書記長 (Wikipedia)

【正解】2. ソ連がドイツ降伏の２、3ヶ月後に対日参戦する

【解説】

ヤルタ会談（1945年2月4〜11日）では、公開文書の裏で「極東に関する秘密協定」が結ばれ、ソ連がドイツ降伏の２〜３ヶ月後に対日参戦することが合意されました。見返りとして、ソ連には南樺太（樺太南部）の返還と千島列島の引き渡し、旅順（ポート・アーサー）の軍港化と大連の国際化・ソ連優越権、中国東北（満州）の中東鉄道・南満州鉄道の中ソ共同管理、そして外蒙古（モンゴル人民共和国）の現状維持などが取り決められました。

実際の推移もこの合意に沿います。ドイツは1945年5月に降伏し、**同年8月8日（モスクワ時間）**にソ連は対日宣戦を布告、満州・南樺太・千島へ進攻しました。一般には「ドイツ降伏後3カ月」と表記されますが、日本側の同時代文書や説明では「2〜3カ月後」とする言い回しも見られ、本問の表現はその用法に即しています。これにより日本の戦略環境は一挙に悪化し、終戦過程に重大な影響を与えました。

海兵隊戦争記念碑にもなった、摺鉢山に星条旗を掲げる瞬間、従軍カメラマンジョー・ローゼンタール撮影『硫黄島の星条旗』 (Wikipedia)

【正解】2. 栗林忠道陸軍中将

**解説**

硫黄島の戦い（1945年2月19日〜3月26日）は、太平洋戦争末期における最激戦の一つであり、守備隊の最高司令官は栗林忠道陸軍中将でした。栗林中将は小笠原兵団（第109師団）兵団長として全島の防衛を指揮し、従来の「万歳突撃」を禁じて損害交換率を高める持久・消耗戦術を徹底しました。島内には全長十数キロに及ぶ坑道・地下壕網が張り巡らされ、摺鉢山から北部に至る縦深陣地により、米海兵隊の上陸後も各拠点が粘り強く抵抗し続けました。

この結果、米軍は圧倒的な兵力と艦砲射撃・航空支援を有しながらも、上陸から制圧までに約1か月を要し、戦死・行方不明約6,800名、負傷者約19,000名という極めて大きな損害を被りました。一方、日本軍は補給・航空支援を断たれ、約2万人の守備隊がほぼ全滅に至ります。栗林中将は最後まで戦闘継続を指示し、終盤には北部地区での組織的抵抗が崩れゆく中、司令部壕で自決したと伝えられています。

硫黄島は本土空襲に向かうB-29の往還路上に位置し、島の飛行場は米軍にとって緊急着陸や護衛戦闘機運用の要衝でした。その戦略的重要性ゆえに、同島での日本軍の持久戦は米軍の進攻速度を鈍らせ、本土決戦準備の時間を捻出したとも評価されます。

なお、選択肢の他の人物は戦域が異なります。牛島満中将は沖縄戦（第32軍司令官）、山下奉文大将はフィリピン方面軍司令官として指揮しました。中川州男大佐はパラオ・ペリリュー島守備隊長として持久戦を展開し、終盤に自決しています。

硫黄島の戦いは、2006年にクリント・イーストウッド監督によって映画化されています。

「父親たちの星条旗」 (Flags of our Fathers) 2006
「硫黄島からの手紙」 (Letters from Iwo Jima) 2006

「父親たちの星条旗」は、アメリカ側の視点から描いたもの、「硫黄島からの手紙」は日本側の視点から描いたもので、渡辺謙が栗林中将を演じています。

「父親たちの星条旗」

「硫黄島からの手紙」

ひめゆり部隊の女生徒多数が死亡した地下壕（第三外科壕）に建立された慰霊碑「ひめゆりの塔」、奥は犠牲者の名を刻んだ慰霊碑(納骨堂) (Wikipedia)

**正解：2. ひめゆり隊・白梅隊など**

**解説**

沖縄戦（1945年4月1日上陸〜6月下旬の組織的戦闘終結）は、住民を巻き込んだ苛烈な地上戦で、多数の学生も動員されました。女子学生は主として陸軍野戦病院や壕（ガマ）に配置され、負傷兵の看護、衛生材料の補給、手術補助、遺体処置など、生死の境に直面する危険な任務に就きました。その代表が、沖縄師範学校女子部・県立第一高等女学校の生徒を中心とする「ひめゆり学徒隊」と、県立第二高等女学校を中心とする「白梅学徒隊」です。これらを含む複数の女学校の学徒看護隊が編成され、総数で約600人規模が動員され、撤収命令の遅れや戦場離脱の困難、砲爆撃・壕内被害などにより、およそ半数が戦死したとされています。

一方、選択肢の「鉄血勤皇隊」は主に男子中等学校生らで編成された戦闘支援・防衛要員であり、「護郷隊」は沖縄の一般男子住民による郷土防衛組織です。「女子挺身隊」は本土を中心に工場動員などの勤労動員を担った組織で、沖縄戦の女子学徒による組織的な看護動員を指す名称ではありません。以上の点から、女子学生による看護学徒隊を指す正答は「ひめゆり隊・白梅隊など」です。

(Wikipedia)ポツダム会談の様子。1945年7月

*正解：1. 対日戦後処理と日本軍の無条件降伏の呼びかけ**

**解説**

ポツダム宣言は、1945年7月26日にアメリカ（トルーマン）、イギリス（チャーチル）、中国（蒋介石）の名で発表された、対日降伏勧告の最終通告であり、日本軍の**無条件降伏**を求めるとともに、戦後の日本の取り扱い（軍国主義の排除、武装解除、戦争犯罪人の処罰、民主的諸自由の尊重、平和産業の再建、占領とその後の撤退、主権の範囲など）を示しました。降伏を拒否する場合は「迅速かつ壊滅的な破壊」に直面すると警告しており、宣言受諾は日本側の戦争終結の前提条件となりました。

なお、会談自体（ポツダム会談）は米英ソの首脳（トルーマン・チャーチル〔のちアトリーに交代〕・スターリン）で行われましたが、**宣言の署名国は米・英・中で、ソ連は署名していません**。ソ連の対日参戦は8月8日であり、その後、原子爆弾の投下（広島8月6日・長崎8月9日）や戦局の悪化を受け、日本は8月14日に宣言受諾を決定し、8月15日に終戦の詔書が放送されました。

長崎に投下された原子爆弾のキノコ雲 1945年8月9日 (Wikipedia)

**正解：4. 原子爆弾の投下**

**解説**

1945年8月6日、アメリカ軍は広島に対して世界で初めて戦時使用となる原子爆弾を投下しました。爆弾はウラン235を用いた砲身内爆型で通称「リトルボーイ」、投下機はB-29爆撃機「エノラ・ゲイ」でした。つづく8月9日には、プルトニウム239を用いた爆縮型「ファットマン」が長崎に投下され、投下機はB-29「ボックスカー」でした。いずれも上空で空中爆発し、爆風・熱線・初期放射線が一瞬にして市街地を壊滅させ、多数の市民が即死または重傷を負いました。

被害はその場の爆発だけでなく、放射線障害に起因する急性症状や後年の健康被害にも及びました。死亡者数は推計に幅がありますが、広島では1945年末までにおよそ十数万人、長崎でも同年末までに数万人が死亡したとされています。原爆投下は、同年7月のポツダム宣言による無条件降伏勧告、8月8日のソ連対日参戦と相まって、日本政府が戦争終結を決断する重要な要因となりました。結果として日本は8月14日に宣言受諾を決定し、8月15日に終戦の詔書が放送されました。

なお、他の選択肢のうち、焼夷弾による大規模空襲は東京大空襲など本土各地で行われましたが、広島・長崎の8月6日・9日の攻撃は原子爆弾投下であり、毒ガス兵器の散布や艦砲射撃・海上封鎖強化を指すものではありません。

正解：3. ソ連

解説

1945年8月8日（モスクワ時間）、ソ連は日本に対して宣戦を布告し、直後の9日未明（日本時間）より「八月の嵐（オーガスト・ストーム）作戦」と呼ばれる大規模攻勢を開始しました。主戦場は満州（中国東北部）で、ソ連はシベリア方面から多数の戦車・自動車化歩兵・航空戦力を集中投入し、日本の関東軍に壊滅的打撃を与えました。そののち、8月11日以降には南樺太（サハリン南部）への侵攻、8月中旬以降には千島列島への上陸作戦も進め、停戦後も各地で戦闘が継続しました。

ソ連の対日参戦は、2月のヤルタ会談における対日参戦合意（ドイツ降伏後2〜3か月以内）と、同年4月のソ日中立条約の不延長通告を背景に実現したものです。8月6日・9日の原子爆弾投下と相まって、ソ連参戦は日本政府が戦争終結を決断する重要な要因となりました。以上から、宣戦布告と満州・南樺太・千島への侵攻を行ったのはソ連が正答です。

1944年（昭和19年）の御前会議 (Wikipedia)

**正解：2. ポツダム宣言の受諾**

**解説**

1945年8月10日の御前会議では、広島への原爆投下（6日）・ソ連対日参戦（8日）・長崎への原爆投下（9日）を受け、政府・軍首脳の意見が割れる中で昭和天皇が「国体護持」を条件とする**ポツダム宣言受諾**の方針を裁可しました。連合国からの回答（12日着信）では、天皇の地位は連合国最高司令官の下に置かれ、最終的な国体の形は日本国民の自由意思に委ねられる旨が示されました。これをめぐって再び意見が対立しましたが、8月14日の**再度の御前会議**で昭和天皇が再び裁断し、この回答を受け入れて**宣言受諾を最終決定**しました。

この決定により、8月14日深夜に受諾通告が発せられ、8月15日に「終戦の詔書」が玉音放送で国民に伝えられました。したがって、御前会議での最終決定事項は「ポツダム宣言の受諾」であり、本土決戦の継続や中立国仲介の模索、三国同盟の堅持ではありませんでした。

玉音放送を聞く人々 (Wikipedia)

**正解：1. 国体を護持するために、放送局を占拠して天皇の玉音放送を阻止しようとした**

**解説**

8月14日深夜から15日未明にかけて起きた反乱は、一般に「宮城事件（きゅうじょうじけん）」と呼ばれます。終戦決定（ポツダム宣言受諾）に反対する青年将校らが、**国体護持**を掲げて皇居（当時「宮城」）と通信・放送施設の掌握を試み、**天皇の玉音放送（終戦の詔書のラジオ放送）を阻止**しようとしました。彼らは近衛師団司令部の説得・取り込みを図る過程で、近衛第一師団長・森赳中将を殺害するなど、既成事実化によってクーデターを成功させる意図があったとされます。

しかし、宮内省側は玉音盤（録音盤）を秘匿・保全し、放送に必要な手配を進めました。反乱は夜明けまでに鎮圧へと傾き、組織的な支持拡大にも失敗しました。その結果、**同日正午（8月15日12時）に玉音放送は予定どおり放送**され、国民に終戦の詔書が伝えられました。したがって、反乱の核心は「放送局や通信の掌握による玉音放送の妨害」であり、他の選択肢にあるような「国会占拠による非常政府樹立」や「連合国代表の拘束」「北海道での臨時政権樹立」などではありませんでした。

玉音盤（副盤） （玉音放送で流すべく、天皇の肉声（玉音）を録音したレコード盤） NHK放送博物館所蔵 (Wikipedia)

www2.nhk.or.jp

https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005310152_00000

https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005310152_00000

1945年9月2日、戦艦「ミズーリ」艦上でリチャード・サザランド中将が見守る中、降伏文書に署名する重光葵外務大臣。右は随行の加瀬俊一 (Wikipedia)**正解：4. 東京湾に停泊中のアメリカ戦艦ミズーリ号上**

**解説**

降伏文書（Instrument of Surrender）の調印は、1945年9月2日に東京湾へ停泊したアメリカ海軍戦艦**ミズーリ（USS Missouri, BB-63）の甲板上で行われました。式典は連合国軍最高司令官のダグラス・マッカーサー元帥**が主宰し、日本側は**重光葵外相**と**梅津美治郎参謀総長**が署名しました。連合国側はアメリカ合衆国（**チェスター・ニミッツ元帥**）のほか、英国、ソ連、中国、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ニュージーランドの代表が順に署名しています。

この文書により、日本は武力行使の停止、連合国軍の占領受け入れ、日本政府と大本営の権限が連合国最高司令官の下に置かれることなどを確認しました。調印は事実上の対日戦争終結を国際的に確定させる行為であり、同日は対日勝利記念日（V-J Day）として位置づけられます。

**正解：3. 約2200万人**

**解説**

服部卓四郎は戦後、旧陸海軍資料の整理と戦史編纂に携わり、その過程で第二次世界大戦における**「戦死者」**（主として軍人・軍属の戦闘行為による死亡）を**約2200万人**と推定しました。この数字は、戦場での戦闘やそれに直接付随する行為によって死亡した人員に焦点を当てたものであり、より広い範囲を含む「戦没者」や「戦争犠牲者」の総数とは区別されます。
一般に、民間人の空襲・原爆・ホロコースト・餓死や疫病などを含めた「戦争による総死亡者数」は、研究によって幅がありますが**約7000〜8000万人**規模とする推計がよく示されます。つまり、服部の「約2200万人」は、戦闘に起因する軍人等の死亡に限定した範囲の概数であり、定義や集計方法、資料の網羅性の差によって数値は変動しうることにご留意ください。
以上の理由から、服部の調査による「戦死者数」の推定としては**約2200万人**が正答となります。