太平洋戦争の開戦のことがよくわかる！クイズ10問

東条英機 (Wikipedia)

正解：3

解説

1941年10月、近衛文麿内閣は日米首脳会談の実現をめざし、中国からの段階的撤兵など一定の譲歩案で交渉継続を図ろうとしました。しかし陸相の東条英機は、満州国承認・三国同盟の堅持・華北の「治安維持」など陸軍の基本方針を崩す撤兵譲歩に強硬に反対し、短期決戦観に立って「自存自衛」の名の下に対米英戦の準備加速と交渉打ち切りを主張しました。10月12日前後の連絡会議・重臣奏薦の過程でも意見は鋭く対立し、調整不能となります。結局、近衛は方針をまとめられず10月16日に総辞職に追い込まれました。その後、東条が組閣の大命を受け、10月18日に東条内閣が発足します。こうして外交的解決よりも武力対立へ傾く政策転換が決定的となり、真珠湾攻撃へと至る道が現実化していきました。

正解：4

解説

1941年10月16日に近衛文麿内閣が総辞職すると、後継首相の人選は内大臣・木戸幸一が中心となって進められました。情勢は、対米交渉の行方が不透明な一方で、陸海軍の統制を強く求める局面にありました。そのため、当時の陸軍大臣で軍内部への抑えが効く東條英機に大命を降下させるのが最も現実的だと判断されます。結果として東條は1941年10月18日に首相に任命され、軍政の継続性と統制を重視して陸軍大臣を引き続き兼任しました。これにより、外交・内政の最高責任者と陸軍の行政トップを同時に握る体制が整い、開戦へ向けた国家総力戦体制の構築が一段と加速していきます。なお、東條内閣は当初「交渉継続」を掲げつつも、物資動員法制の整備や軍需優先の配分など、戦時体制の実務を迅速に進めた点に特徴があります。

正解：2

解説

1941年10月、近衛内閣総辞職を受けて東条英機が組閣の大命を拝した際、天皇（昭和天皇）は内大臣木戸幸一を通じて「9月6日の御前会議決定（帝国国策遂行要領）を再検討せよ」というご意向を伝えたとされています。9月6日の決定は、対米交渉を続けつつも「10月下旬を目途に外交が不調なら武力発動へ」という厳しい方針でしたが、天皇は戦争回避の余地を模索し、拙速な開戦に傾かないよう方針の練り直しを望まれました。その結果、東条内閣は就任後に改めて連絡会議・御前会議で方針を審議し、11月5日の御前会議では国策要領の改定に至ります。これにより、期限や条件の見直し、交渉継続の余地が整理されましたが、資源制裁や情勢悪化の中で最終的に開戦回避は実現できず、12月に至る道筋が固まっていくことになります。天皇の再検討要請は、ぎりぎりまで外交的解決を追求する意図を示す重要な節目であったと評価されます。

正解：1

解説

1941年11月1日の大本営・政府連絡会議は、東条英機内閣の下で政府と軍部の最高首脳が集まり、対米交渉と開戦準備の最終方針をすり合わせる重要な場でした。この会議では、対米交渉を引き続き続行しつつも、「12月1日までに妥結に至らなければ、対米英開戦に踏み切る」という期限付き方針が確認されます。これは作戦準備を具体的に前倒しすること（開戦予定日の想定＝いわゆるXデーを12月上旬に置くこと）と不可分であり、南方作戦・ハワイ／マレー方面への戦力集中、資源・船舶配分、動員・配給など戦時体制の具体化が一層加速しました。 なお、同会議は最終法的意思決定機関ではありませんが、実質的に政府・軍の認識を統一する場であり、その流れを受けて11月5日の御前会議で改定「帝国国策遂行要領」が裁可され、上記の期限と方針が追認されます。さらに11月26日のハル・ノート提示で外交妥結の見通しは一段と厳しくなり、最終的に12月1日の御前会議で開戦が正式決定され、**12月8日（日本時間）**の対米英開戦へと至ります。以上の経緯から、11月1日の連絡会議決定は、開戦不可避へと戦略のギアを入れる転回点であったと評価できます。

米国立暗号博物館に展示されている日本外務省のPURPLE暗号機の捕獲部品：アメリカ陸軍は日本の機械式暗号に対して主に虹の色に由来するコードネームをつけていた。パープル暗号は、その一つである。（アメリカ海軍では、M-5 と呼ばれていた。） (Wikipedia)

正解：4

解説

ハル国務長官が交渉決裂＝開戦切迫を把握できた最大の理由は、アメリカの暗号解読作戦「MAGIC（マジック）」により、日本外務省の暗号（通称PURPLE）で送られる外交電報の内容が、ほぼリアルタイムで米政府中枢に伝わっていたからです。米側は、東京―ワシントン間の「対米交渉の打ち切り通告」や、「11月29日を最終期限」とする指示電などの重要電報を読み、さらに12月7日（ワシントン時間）午後1時に14部から成る覚書を手交せよという細部のタイミング指示まで把握していました。これらの電報は、日本政府が外交妥結の見込みがない場合に「武力発動」に移る決意を固めていることを強く示すシグナルでした。

なお、米側が完全に日本海軍の作戦暗号（艦隊運動の詳細）まで解読していたわけではありませんが、外交電報の解読だけで「開戦の意思と期限感」を読み取りうる状況にありました。したがって、ハルは交渉の土壇場で日本が戦争に踏み切ると判断し、強硬な「ハル・ノート」提示後の展開を想定して対応に当たったのです。

コーデル・ハル国務長官と最後の会談に臨む野村吉三郎駐米日本大使と来栖三郎特命大使（1941年12月7日） (Wikipedia)

正解：2

解説

1941年11月26日、米国務長官コーデル・ハルは、野村吉三郎・来栖三郎両大使に文書「Outline of Proposed Basis for Agreement Between the United States and Japan（合衆国及び日本国間協定の基礎概略）」を提示しました。一般には「ハル・ノート」と呼ばれます。文書は、中国および仏印（フランス領インドシナ）からの日本軍の全面撤兵、蒋介石政権（中華民国国民政府）の正統性承認、治外法権・門戸開放・機会均等の原則順守、通商関係の無差別待遇の回復、ならびに三国同盟の実質的無力化（枢軸国への軍事協力の停止を含意）などを求める厳しい内容でした。これに対し、日本側は自国の安全保障と既得権益の全面放棄を迫るものとして強い反発を示し、とりわけ強硬派はこの文書を事実上の「最後通牒」と受け止めました。ただし、形式上は回答期限や軍事的威嚇が明記されておらず、厳密な国際法上の最後通牒とは言い切れない点も指摘されます。いずれにせよ、ハル・ノート提示によって外交的妥結の可能性は一段と狭まり、物資制裁下で追い詰められた日本の政策決定は、開戦へと急速に傾斜していくことになりました。

第1回御前会議（1938年（昭和13年）1月11日）の様子。写真左より軍令部作戦部長近藤信竹少将、軍令部次長嶋田繁太郎中将、海軍大臣米内光政大将、軍令部総長伏見宮博恭王元帥海軍大将、昭和天皇、参謀総長閑院宮載仁親王元帥陸軍大将、陸軍大臣杉山元大将、参謀次長多田駿中将、参謀本部作戦部長下村定少将。(Wikipedia)

正解：3

解説

最終的な開戦決定は、1941年12月1日に開かれた御前会議で下されます。ここでは、11月1日の大本営・政府連絡会議で示された「12月1日までに妥結しなければ対米英開戦」という方針、11月5日の御前会議での追認、そして11月26日のハル・ノート提示による外交妥結困難という情勢を踏まえ、ハル・ノートをアメリカ側の最後通牒と見做して、対米英（および蘭）に対する武力発動を正式に裁可しました。御前会議は天皇臨席のもとで政府・軍の最高首脳が方針を最終決定する場であり、この日の決定により外交交渉の打切り、宣戦詔書の準備、作戦発動の手続きが一体として進められます。これを受けて大本営は戦闘開始の具体的命令を下し、日本時間12月8日未明の真珠湾攻撃やマレー半島上陸など、一連の作戦が実行に移されました。以上から、開戦の最終決裁は「12月1日の御前会議」であったと位置づけられます。

マレー半島のジャングルを進撃する日本軍戦車隊 (Wikipedia)

正解：2

解説

日本陸軍の開戦行動は、真珠湾攻撃に先立って行われた英領マレー半島への上陸作戦でした。12月8日（日本時間）未明、陸軍の先鋒部隊はコタバル方面に夜襲上陸し、同時並行でタイ側（シンゴラ・パタニ方面）への進出も開始します。これにより南方作戦が本格始動し、英軍の防衛線を各所で突破してシンガポール陥落へと至る攻勢の口火が切られました。

なお、選択肢1の真珠湾奇襲は海軍の作戦であり、陸軍の開戦行動そのものではありません。選択肢3の香港方面や選択肢4のフィリピンの航空基地攻撃も同日中に始まりますが、陸軍による最初の実戦行動としてはマレー半島への強襲上陸が決定的でした。以上から、設問の答えは「イギリス領マレー半島に上陸した」となります。

日本海軍の奇襲攻撃を受け着底する戦艦カリフォルニア (Wikipedia)

正解：1

解説

日本海軍は日本時間の1941年12月8日未明（ハワイ時間では12月7日朝）、機動部隊（空母6隻：赤城・加賀・蒼龍・飛龍・翔鶴・瑞鶴）から発進した航空隊により、ハワイの真珠湾を奇襲しました。目的は米太平洋艦隊の主力を無力化して南方作戦の安全を確保し、日本の資源確保を円滑に進めることであったとされます。攻撃は二波にわたり、戦艦アリゾナの大破・沈没、オクラホマの転覆など米戦艦部隊に甚大な損害を与え、航空機・飛行場設備にも大きな被害を及ぼしました。一方で、米空母は在泊しておらず、燃料貯蔵施設や修理ドックは破壊しきれなかったため、米海軍の復旧は想定より早まりました。

選択肢2・3は史実に反し、選択肢4のアリューシャン方面の戦闘は翌1942年6月のミッドウェー作戦と連動した局地戦の一環です。以上より、日本海軍の開戦行動は「真珠湾攻撃」であったといえます。

正解：4

解説

日本政府は東京から在米日本大使館に対し、いわゆる「十四箇条の覚書（14部文）」をワシントン時間12月7日午後1時までに手交するよう指示していました。これは対米交渉打ち切り、すなわち外交関係断絶の通告であり、厳密な意味の宣戦布告ではありませんでした。ところが、日曜日で館員が手薄だったこと、長文の暗号電報（PURPLE）を解読・英訳・清書（タイプ打ち）する作業に時間を要したことなどが重なり、手交は午後2時過ぎとなり、真珠湾攻撃（ハワイ時間12月7日朝／ワシントン時間午後1時台）より遅れてしまいました。

この遅延によって、米側は通告前に攻撃を受けたと受け止め、結果として「奇襲」「だまし討ち」の印象が一層強まりました。なお、この通告文自体は宣戦の詔書（宣戦布告）ではなく、交渉断絶を述べる内容にとどまっていました点にも留意が必要です。また米側は暗号解読（MAGIC）により日本の通告予定を事前に把握していましたが、正式な手交は攻撃後となったため、外交儀礼上も大きな問題とされました。