正解:4
解説:
セネカの名言「難しいからやろうとしないのではない。やろうとしないから難しくなるのだ(Non quia difficilia sunt non audemus, sed quia non audemus difficilia sunt.)」は、ローマの哲学者セネカが『倫理書簡(Epistulae Morales ad Lucilium)』の中で述べた、非常に有名で示唆に富んだ言葉です。
【1. 意味の解釈】
この言葉は、私たちが何かに挑戦しない理由を、「それが難しそうだから」と思っていることへの反省を促しています。
しかしセネカは、それは因果の順序が逆であると指摘します:
- 「難しいからやらない」のではなく、
- 「やらないから難しく感じてしまう」のだと。
つまり、本当は物事は挑戦してみれば乗り越えられることも多いのに、最初から尻込みして手をつけないからこそ、ますます困難に思えるようになってしまうということです。
【2. 哲学的背景】
セネカは**ストア派(ストア哲学)**の代表的な思想家です。ストア派では、
- 理性に従うこと、
- 感情に支配されないこと、
- 徳を持って生きること、
が重要とされており、人間の内面の在り方こそが幸福や自由にとって決定的であると考えます。
この名言もまた、外的な「困難さ」や「障害」よりも、それにどう向き合うかという内面の姿勢の重要性を示しています。
【3. 現代への教訓】
この言葉は、現代人にとっても大きな示唆を与えてくれます。
- 「英語を学びたいけど難しそう」
- 「新しいことに挑戦したいけど自信がない」
こうした理由で何かを避けているとき、この名言は自分の内なる姿勢を問い直すきっかけになります。
実際には、最初の一歩を踏み出すことで、思っていたよりも簡単だったと気づくことが多いのです。
【4. 名言の構文美】
ラテン語原文:
Non quia difficilia sunt non audemus, sed quia non audemus difficilia sunt.
この語順の対照構造(quia difficilia sunt ⇄ quia non audemus)は、リズムと説得力をもたらし、耳に残りやすい表現となっています。セネカの言葉が2000年を経ても語り継がれる理由のひとつです。
【まとめ】
セネカのこの言葉は、行動を起こさずに困難を理由にするのではなく、自らが困難を育ててしまっているという厳しい自己認識を促すものです。そして、「やればできる」という楽観ではなく、「やることで、できるようになる」という行動重視の哲学を伝えています。ストア派の生き方を体現する、非常に実践的で力強い名言です。