奥州藤原氏の興亡がよくわかる！クイズ20問

正解：2
解説
古代のヤマト政権は、現在の東北地方一帯を自らの直接支配の外縁に位置づけ、そこに住む人びとを総称して「蝦夷（えみし）」と呼びました。したがって「蝦夷」は地域名というより本来は住民の総称ですが、ヤマト側の文書では「蝦夷の地」「蝦夷の国」などの表現が見られ、実質的に東北一帯を指す呼称として用いられました。読みは古くは「えみし」で、後世には北海道方面の「えぞ（蝦夷）」とも表記が重なりますが、古代史文脈の「蝦夷」は主に東北の人びとを指します。
東北での蝦夷は、稲作や狩猟・漁撈、交易など多様な生業を営み、ヤマト政権の拡大に対して独自の社会と文化を保持しました。奈良・平安期になると、律令国家は陸奥・出羽などの国制を整え、多賀城や秋田城を拠点に軍事・行政を進め、征夷大将軍の任命や城柵の設置を通じて支配を拡大します。この過程で服属・移住した蝦夷は「俘囚（ふしゅう）」として各地に編戸され、東北社会の構成に影響を与えました。
誤答の比較として、①の「隼人」は主に南九州（大隅・薩摩）に居住した人びとで、東北ではありません。③の「熊襲」も古代南九州の人びとの呼称です。④の「出羽」は律令国家が8世紀初頭に整備した地方行政単位（国名）で、蝦夷という呼称より後に制度上確立した名称です。以上の点から、古代以前の東北地方を指す呼称として最も適切なのは「蝦夷（えみし）」です。

正解：3
解説：
前九年の役は、1051年から1062年にかけて東北の陸奥国を舞台に起こった戦いで、中央の支配が及びにくい地域で勢力を拡大していた安倍氏に対し、朝廷が派遣した源頼義（鎮守府将軍・陸奥守）が、出羽国の清原氏と同盟して討伐した一連の軍事行動を指します。安倍頼時・貞任らは奥六郡を事実上支配して関税徴収や軍事・警察権を握り、国司の統治に抵抗していました。これに対し頼義は子の源義家（八幡太郎）とともに出陣し、補給線の確保や在地豪族との連携を進めて戦局を立て直しました。最終段階では清原氏の支援を取り付けて攻勢を強め、1062年に厨川柵が陥落して安倍氏は滅亡します。
この勝利により、源氏の東国での威信は大きく高まり、武士団が実戦で功名を競いながら主従関係を固めていく流れが進みました。なお、選択肢1の「清原氏内紛への介入」は1083～1087年の後三年の役の出来事で、前九年の役とは別の戦いです。選択肢2の平将門の乱は10世紀の関東、選択肢4の奥州合戦は1189年に源頼朝が奥州藤原氏を滅ぼした事件で、年代も登場勢力も異なります。前九年の役は、東北における在地勢力と中央権力の緊張が表面化し、武家政権成立へと至る東国武士の台頭過程を示す重要な戦争であったといえます。

藤原清衡 (Wikipedia)

正解：2
解説：
後三年合戦（1083〜1087年）は、出羽の清原氏内部の対立（真衡・家衡と清衡の対立）に、源義家が介入して収束させた戦いです。戦後、義家は清原清衡（のちの藤原清衡）を支援し、清衡は父方本来の氏である「藤原」に復しつつ、陸奥・出羽一帯の在地勢力＝俘囚（えみし系在地民の後裔）を統合する立場に立ちました。これが「陸奥・出羽の俘囚の長」と呼ばれる地位であり、清衡が奥六郡の支配を固める基盤となります。清衡はのちに平泉に本拠を置き、中尊寺の造営など宗教・文化政策を進め、子の基衡、孫の秀衡へと続く奥州藤原氏の繁栄の出発点を築きました。
なお、選択肢1の源義家は合戦の主導者で功績は大きいですが、俘囚の長となったわけではありません。選択肢3の清原家衡は内紛側の一人で討たれました。選択肢4の藤原秀衡は清衡の孫で奥州藤原氏の最盛期を築く人物ですが、俘囚の長となったのは合戦直後の清衡です。以上の経緯から、正答は藤原清衡になります。

正解：2
解説：
藤原清衡は、後三年合戦（1083〜1087年）後に奥州の支配体制を固め、12世紀初頭には本拠を岩手県南部の平泉に移しました。平泉は北上川と衣川の合流点近くに位置し、北上川水運と陸路（奥大道など）の要衝で、出羽方面や蝦夷地との交易・物流を押さえやすい地理的利点がありました。この立地は、砂金・馬産・海産物などの流通統制にも有利で、奥州藤原氏の財政基盤を強化するうえで決定的でした。
清衡は平泉において、中尊寺を大規模に整備し、金色堂の建立（12世紀前半）によって戦没者の鎮魂と仏国土の顕現を示しました。これにより、政治・軍事の拠点であると同時に、浄土思想に支えられた宗教・文化の都として平泉が発展します。のちに子の基衡、孫の秀衡の代には毛越寺や無量光院などが整備され、「東北の京都」とも称される華麗な仏教文化が花開きました。
なお、選択肢1の多賀城は奈良〜平安期の陸奥国府・鎮守府が置かれた古代律令国家の中心ですが、清衡の本拠ではありません。選択肢3の弘前は近世以降の城下町（津軽藩）で、時代も地域勢力も異なります。選択肢4の会津若松も中世〜近世に栄えた城下町で、奥州藤原氏の本拠とは関係がありません。従って、正解は平泉です。

中尊寺の本堂

正解：4
解説：
藤原清衡が平泉に本拠を移したのち、政治・軍事の安定と戦没者供養を目的として大規模に整備したのが中尊寺です。建立の動機には、前九年・後三年の二度にわたる戦乱で失われた多くの命を慰め、仏教的秩序（浄土）によって新たな支配の正当性を示すねらいがありました。12世紀前半に諸堂の造営が進み、とくに金色堂は堂内外に金箔や螺鈿・漆工を惜しみなく用いた荘厳で、奥州藤原氏の財力と信仰を象徴します。金色堂には奥州藤原氏三代（清衡・基衡・秀衡）の遺体・遺骨が安置され、平泉仏教文化の中心として機能しました。中尊寺の造営は、平泉を「東北の都」へと押し上げ、のちの毛越寺や無量光院の整備へと連なる文化的基盤を築いた点で非常に重要です。
なお、選択肢1の毛越寺は主に清衡の子・基衡、孫の秀衡によって壮大に再興・整備されました。選択肢2の無量光院は秀衡が平等院鳳凰堂を模して建立した伽藍です。選択肢3の観自在王院は基衡の妻による建立と伝えられます。したがって、清衡が建立の中心となった寺院は中尊寺です。

【正解】2
【解説】
金色堂は、平面が正方形で一辺を三間とする「方三間（ほうさんげん）」の阿弥陀堂です。この正方形・三間三方＝三×三＝九の格子状構成は、浄土教が説く九品往生（上・中・下の各三段）を想起させる秩序や、完全な対称性と静謐さを強調し、阿弥陀如来の極楽浄土＝仏国土を現世に可視化するための象徴的な枠組みとして理解されます。堂内外を覆う金箔や螺鈿・蒔絵の宝相華文様、光を反射する装飾は「無量光・無量寿」を体感させ、宝楼閣に満ちる浄土の輝きを表現しています。中央間には阿弥陀を中尊とする安置（阿弥陀三尊）が置かれ、四天柱や天蓋・須弥壇の構成は仏国土の中心（浄土の王宮・宝座）を示す舞台装置として機能します。すなわち、方三間という形式そのものが、建築空間を小宇宙化し、阿弥陀の浄土世界をここに現成させるための象徴的デザインである、というのが趣旨です。

【正解】3
【解説】
清衡の死後（1128年〈大治3年〉）、奥州藤原氏の棟梁を継いだのは子の藤原基衡です。基衡は父清衡が築いた平泉政権の基盤—奥六郡の支配、砂金・馬産・北方交易による富、寺社勢力との連携—を受け継ぎ、さらに整備・拡充しました。宗教文化面では、中尊寺を引き続き保護するとともに、のちに再興が伝わる毛越寺の大規模伽藍と浄土庭園の形成に関わるなど、平泉の「仏国土」的景観を一層推し進めました。政治面でも、院政期の中央権力と巧みに関係を持ち、奥羽の安定支配を維持します。なお、基衡の後を継いだのがその子の藤原秀衡で、秀衡期に奥州藤原氏は最盛期を迎え、さらに秀衡の子の泰衡へと継承されます。したがって、清衡→基衡→秀衡→泰衡という継承順を押さえることが重要です。

毛越寺跡

【正解】4

【解説】

正解は毛越寺です。毛越寺は、奥州藤原氏二代・藤原基衡が平泉に大規模伽藍の造営を進めた寺院で、のちに三代・秀衡が整備を引き継いで壮麗な寺観を完成させました。境内の中心には広大な浄土庭園が広がり、「大泉が池」と呼ばれる大きな池と巧みに設けられた遣水（やりみず）、洲浜（すはま）などが配置されます。これらは『作庭記』の理念に通じる高度な造園技法で、阿弥陀の浄土（仏国土）の光景をこの世に再現することを目指したものです。現在は庭園跡がよく残り、国の特別史跡・特別名勝に指定され、2011年には「平泉―仏国土（浄土）を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として世界遺産に登録されています。

なお、誤答肢について補足します。中尊寺は初代・清衡の事業で、金色堂が著名です。無量光院は三代・秀衡が建立し、宇治の平等院鳳凰堂を模した阿弥陀堂です。観自在王院は基衡の妻が建立した阿弥陀堂で、毛越寺の東方に位置します。基衡＝毛越寺という対応を押さえると、平泉三代の文化政策の流れが理解しやすくなります。

観自在王院跡

【正解】3
【解説】
観自在王院（かんじざいおういん）は、奥州藤原氏二代・藤原基衡の正室（＝基衡の妻）が建立した寺院跡です。毛越寺の東方に位置し、阿弥陀堂を中心とする伽藍と広大な浄土庭園を備えていたと考えられます。寺名の「観自在」は『般若心経』に見える観音菩薩（観自在菩薩）の別称で、衆生を自在に救済する力を意味しますが、浄土教信仰が隆盛した平泉では、阿弥陀如来の極楽浄土をこの世に表現する庭園や堂塔の造営と深く結びついていました。観自在王院でも池泉や洲浜、遣水などの洗練された作庭によって、静謐で対称性の高い「仏国土」を体感できる空間が構想されたと考えられます。
建立主体を「基衡本人」や「秀衡」と混同しやすいですが、毛越寺は基衡の主導（のち秀衡が整備継承）、無量光院は秀衡の事業、中尊寺は清衡の事業であり、観自在王院は「基衡の妻」という点が重要です。現在は庭園跡が良好に残り、特別史跡・特別名勝に指定され、2011年には「平泉―仏国土（浄土）を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」の一構成資産として世界遺産に登録されています。平泉三代の造営主体と寺院の対応関係を押さえることで、平泉文化の系譜が整理しやすくなります。

【正解】3

【解説】

藤原秀衡は、奥州藤原氏の第三代棟梁として平泉政権を最盛期へ導いた人物で、院政期の朝廷から正式に「鎮守府将軍」に任じられました。任命主体は院政を主導した後白河院です。鎮守府将軍は、本来は陸奥・出羽方面の軍事・治安を統括するために置かれた令制的な軍職であり、朝廷が軍事的権限を委ねる重職でした。この官職を秀衡に与えることは、北奥の在地勢力である平泉政権を朝廷の統治秩序に位置づけ、正統な権威づけを行う政治的意味を持ちます。秀衡はこの権威を背景に、北方交易や砂金を基盤とする経済力、寺社造営（無量光院など）を通じて文化的威信を高め、奥羽の安定支配を実現しました。

なお誤答肢について補足します。二条天皇と後鳥羽院はいずれも時期や関与が異なり、任命主体ではありません。平清盛は院政期の有力武家で中央政界を主導しましたが、秀衡任官の直接の任命者ではありません。院政下での公式任命者は後白河院である点を押さえておくと、平泉政権と朝廷の関係が理解しやすくなります。

【正解】1
【解説】
正解は無量光院です。無量光院は、奥州藤原氏第三代の藤原秀衡が、宇治の平等院鳳凰堂を範として平泉に建立した阿弥陀堂です。名称の「無量光」は阿弥陀如来の異名で、堂宇と庭園構成によって極楽浄土（仏国土）をこの世に再現することを目指しました。中央の阿弥陀堂を軸に左右の翼廊を張り出させ、前面に大きな池泉を配する基本構成は鳳凰堂と同型で、池越しに堂を拝する視線計画や、回遊しながら浄土景を体感する設計思想も共通しています。秀衡はこの壮麗な浄土空間の造営によって、平泉政権の権威と信仰的正統性を示し、文化的威信を高めました。
現在は伽藍は失われていますが、礎石列や池泉の遺構が残り、発掘成果から平等院を忠実に参照したスケールと配置であったことが確認されています。無量光院跡は2011年に「平泉―仏国土（浄土）を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」の一部として世界遺産に登録され、平泉文化の到達点を示す重要な遺跡として評価されています。誤答肢の毛越寺は基衡、観自在王院は基衡の妻、中尊寺は清衡の事業である点もあわせて整理しておくと理解が深まります。

金鶏山

【正解】3
【解説】
正解は金鶏山です。金鶏山は平泉中心部にある小高い独立丘で、奥州藤原氏の都市空間を構成する際の視覚的・象徴的基点になったと考えられます。中尊寺や毛越寺、観自在王院、無量光院など主要寺院・庭園の配置や眺望軸は、しばしば金鶏山を借景・焦点として取り込み、堂塔や池泉から山を正面に望む構成が意識されています。こうした「見える軸」を通じて、都市全体が一つの宗教的景観として統合され、阿弥陀の仏国土を地上に顕現させるという平泉文化の理念が空間的に表現されたと理解できます。
また、金鶏山には「黄金の鶏を埋めた」という伝承があり、聖性を帯びた地として古くから崇敬されてきました。誤答肢の束稲山は北上川対岸の遠景を形づくる名峰で、景観上の背後要素として重要ですが、平泉の都市計画における中心的基点とみなされるのは金鶏山です。経塚山は経塚遺構で知られる周辺の丘陵の名であり、早池峰山は信仰の山として名高いものの、平泉都城の直接の基準点ではありません。金鶏山＝平泉空間の核という対応を押さえることが、寺院群と庭園の配置意図を理解する鍵になります。

中尊寺所蔵の義経像 (Wikipedia)

【正解】2
【解説】
正解は源義経です。壇ノ浦（1185年）で平氏を滅ぼしたのち、義経は論功行賞や外交方針をめぐって兄・頼朝と対立し、追討を受ける立場になりました。京都から逃れた義経は、奥州平泉の藤原秀衡を頼って庇護を求めます。秀衡はもともと義経の若年期からの縁もあり、頼朝の圧力を受けつつも義経を保護しました。ところが、1187年に秀衡が没し、遺言で「義経を守れ」と命じられていたにもかかわらず、後継の藤原泰衡は頼朝の圧力に屈し、1189年に衣川館（衣河館）で義経を急襲します。このとき義経は自刃し、弁慶が「立往生」を遂げた逸話が伝わります。
誤答肢について補足します。源頼朝は追う側の鎌倉殿であり、庇護を求めた人物ではありません。源義仲は平氏追討の途中で頼朝と対立し、粟津で討たれましたが、平泉に逃れてはいません。平宗盛は平氏の総大将の一人で、壇ノ浦で捕縛され処刑されました。以上から、頼朝に追われて秀衡を頼ったのは源義経であると分かります。

【正解】1
【解説】
正解は藤原泰衡です。1187年に父・秀衡が没すると、奥州藤原氏第四代として泰衡が家督を継ぎます。秀衡は遺言で「義経を守護せよ」と命じたと伝えられますが、鎌倉の源頼朝は度重なる圧力と追討宣旨の獲得を通じて、泰衡に義経排除を迫りました。泰衡はついに方針を転じ、1189年、衣川館（衣河館）に滞在していた義経を急襲します。このとき義経は追い詰められて自害し、弁慶が矢面に立って「立往生」した逸話が知られます。泰衡は義経の首級を検分のうえ鎌倉に送って恭順を示しましたが、頼朝はこれを口実に同年奥州合戦を敢行し、平泉は陥落、奥州藤原氏は滅亡します。
誤答肢について補足します。清衡は初代で既に没しており、秀衡は義経を保護した人物で急襲した当人ではありません。頼朝は追討の首謀者ですが、直接衣川館を急襲したのは泰衡の軍勢です。したがって、義経を自害に追い込んだ実行主体は藤原泰衡となります。

【正解】2
【解説】
正解は「頼朝が平泉を攻撃して、泰衡を打ち滅ぼしたこと」です。1187年に三代・秀衡が没すると、四代・藤原泰衡が家督を継ぎます。泰衡は当初、兄・頼朝と対立して追われた源義経を急襲して自害に追い込み、その首級を鎌倉へ送って恭順の意を示しました。しかし頼朝はこれを口実に、後白河院から泰衡追討の宣旨（1189年）を得て大軍を動員し、いわゆる「奥州合戦」を開始します。鎌倉軍は北上して平泉を攻撃し、寺社や館が炎上する中で泰衡は北へ逃走しましたが、逃亡の途上で家人に討たれ、その首級が頼朝に送られて奥州藤原氏は滅亡しました。
この軍事行動により、鎌倉幕府の支配は東北奥深くまで及ぶことになり、東国武家政権の版図が大きく拡大します。誤答肢のように平清盛の再侵攻や疫病が主因ではなく、また院の一存による所領没収でもありません。名分を整えた頼朝の軍事行動と、それに伴う泰衡の滅亡こそが直接の決定要因でした。

【正解】3

【解説】

正解は「夏草や兵どもが夢の跡」です。『おくのほそ道』の旅の途中、元禄2年（1689年）に芭蕉は平泉を訪れ、高館（たかだち）義経堂付近から北上川・衣川を望み、かつて奥州藤原氏が栄え、のち頼朝の遠征で滅亡した都の跡を前に詠みました。「夏草」は夏の季語で、繁りゆく草の生命力と、そこに埋もれるかつての栄華の跡を対照させます。「兵（つわもの）」は源義経やその郎党、さらには奥州藤原氏に関わる武士たちを暗示し、「夢の跡」は戦勝や栄華が無常に消えたことを示します。切れ字「や」によって視線が草むらに固定され、読者は一瞬にして壮麗な歴史の記憶と現在の荒寥とを重ね合わせることができます。

芭蕉句碑「奥の細道　平泉」 （Flickr）

この俳句は、夏の風景を描きながらも、かつて平泉で戦った兵士たちや彼らの夢という比喩的な表現を用いています。夏の草が成長し、枯れていく様子は、兵士たちの存在が一時的であることを象徴しています。

松尾芭蕉の俳句は、その独特な表現や感性から多くの人々に愛されています。彼の訪れた平泉の風景や歴史を感じさせる俳句は、日本の文化の一部として広く認知されています。

【正解】4
【解説】
正解は「約60ヶ所」です。奥州藤原氏の繁栄を下支えした最大の資源は黄金で、北上山地から出羽山地にかけて多数の砂金・脈金の産地が点在していました。中世の文献記録や遺跡調査から、平泉政権の勢力圏内に金の採取・製錬に関わる遺構・地名が広く確認され、総数はおよそ60ヶ所に達すると推定されます。採取された黄金は、①寺社造営（中尊寺金色堂の金箔や仏具の荘厳）を可能にし、②京都への貢進・贈答を通じて朝廷や院政との関係を強化し、③北方交易や内外の流通に資金を供給することで政治・軍事基盤を支えました。特に砂金は管理・運搬が容易で、在地の有力者や寺社ネットワークを介して平泉に集積され、財政の中枢を担いました。
誤答肢について補足します。10ヶ所は過少で、平泉の巨大な宗教・都市プロジェクトを支えるには規模が足りません。30ヶ所は一部地域に限った数としてはあり得ますが、勢力圏全体を見れば不足します。100ヶ所は逆に過大で、現時点の推定値を超えます。およそ60ヶ所という幅をもった見積りを押さえると、奥州藤原氏の富の実態が理解しやすくなります。

【正解】3. 今東光
【解説】
今東光（いま とうこう）は作家であり僧侶でもあり、1965年に天台宗・中尊寺の貫主に就任しました。就任後は、知名度と筆力、講演活動を活かして中尊寺と平泉文化の魅力を全国に発信し、文化財保護と景観保全の機運を高めました。具体的には、寺宝や堂宇の修繕・整備に向けた募財の呼びかけ、境内環境の改善、学習旅行や一般参拝者に向けたわかりやすい普及啓発などを積極的に行いました。さらに、岩手県・平泉町など地域行政との連携を強め、保存と観光振興を両立させる取り組みを推進しました。これらの活動は、奥州藤原氏が育んだ「平泉文化」への社会的関心を再び喚起し、研究や修復の進展を後押しする土壌をつくりました。こうした長年の啓蒙と復興の努力は、後年の平泉評価の高まり（世界遺産登録への機運醸成）にもつながる重要なステップであったといえます。以上の理由から、正解は今東光です。

【正解】2
【解説】
浄土思想とは、阿弥陀如来の本願力を信じ、念仏（「南無阿弥陀仏」と称えること）などを行じて西方極楽浄土に往生し、そこで成仏を目指す救済観のことです。インドの阿弥陀信仰と浄土観に淵源を持ち、中国で曇鸞・道綽・善導らによって体系化され、日本では平安末期に源信『往生要集』（985年）が地獄と浄土の対比を鮮烈に示して大きな影響を与えました。社会不安が高まった「末法」意識の中で、阿弥陀の他力による救いが広く受容され、空也や源信の流れを経て、鎌倉期には法然（浄土宗）、親鸞（浄土真宗）、一遍（時宗）らが称名念仏を中心とする実践を説き、庶民層にも浸透しました。
なお、「浄土思想」は信仰・救済観全体を指す広い用語であるのに対し、「浄土教」はその思想を教団として展開した宗派（浄土宗・浄土真宗など）を指す場合に用いられます。設問は思想名を問うているため、正解は「浄土思想」となります。浄土思想は、難行ではなく易行による普遍的救済を掲げた点で、日本仏教史において画期的な役割を果たしたと評価されます。
この思想は平泉の文化や信仰にも影響を与えました。平泉には多くの仏教寺院があり、浄土思想を中心にして信仰活動が行われました。毛越寺や中尊寺などは、阿弥陀如来の教えを重視した寺院であり、その美しい建築や庭園は多くの人々に感動を与えています。
平泉の浄土思想は、仏教文化の一環として今でも受け継がれ、多くの人々に敬愛されています。

【正解】2. 2011年
【解説】
平泉は2011年（平成23年）にユネスコの世界遺産（文化遺産）に登録されました。正式名称は「平泉―仏国土（浄土）を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」で、奥州藤原氏が栄えた平安時代後期の宗教・政治・文化の中心地としての価値が評価されています。構成資産には、中尊寺（金色堂を含む）や毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、柳之御所遺跡などがあり、これらは阿弥陀浄土の思想を現世に表現しようとした当時の宗教観・宇宙観を、寺院伽藍の配置や浄土庭園の造形によって具体化している点が重要です。とくに毛越寺の浄土庭園は池泉や島・洲浜の構成が明快で、理想世界を景観的に再現した実例として高く評価されます。中尊寺の堂宇群と金色堂は、藤原氏の権勢と浄土信仰の融合を示し、東北地方における独自の仏教文化の到達点を物語ります。これらの資産群は、戦乱や自然災害を経てもその歴史的景観と思想的意義を伝えており、普遍的価値を有すると認められて登録に至ったのです。

参考文献：

斉藤利男著 (2014) 『平泉　北方王国の夢』講談社選書メチエ
今東光著 (1993) 『奥州藤原氏の栄光と挫折』講談社