日中戦争のことがよくわかる！クイズ5問

**正解：4. 盧溝橋事件**

**解説：**

盧溝橋事件は、1937年7月7日夜から8日にかけて、北京（当時は北平）近郊の宛平城と盧溝橋周辺で発生した日中両軍の武力衝突を指します。場所は永定河に架かる盧溝橋の周辺で、『東方見聞録』でも知られる歴史的な石橋として有名です。本件は、義和団事件後の北京議定書（1901年）に基づいて駐屯していた日本の華北駐屯軍が夜間演習を実施中、発砲音が生じ、さらに日本側の一兵士の行方不明が確認されたことをきっかけに緊張が一気に高まったことから始まります。日本側は兵士捜索のため宛平城内への立ち入りを要求し、中国側（宋哲元率いる第29軍）はこれを拒否、双方の照明弾・小銃射撃などが応酬され、局地戦闘に発展しました。誰が先に撃ったかについては当時から主張が食い違い、偶発説・挑発説などが並立しており、明確な結論は得られていません。

当初は現地協定によって一時的な停戦が図られましたが、双方とも増援を送り、北中国一帯で戦闘が拡大します。日本国内では近衛文麿内閣が「不拡大方針」を掲げつつも、やがて大規模な出兵に踏み切り、8月には上海方面でも戦闘が起こって全面戦争化しました。政府はのちに一連の戦闘を「支那事変」と呼称し、戦時体制の強化が進みます。したがって、盧溝橋事件は日中戦争（第二次世界大戦の東アジア戦線の出発点）の直接の発端として位置づけられ、日本近現代史における転換点の一つと評価されます。誤答の「柳条湖事件」は1931年の満州事変の発端、「西安事件」は1936年の国共合作再編につながる蒋介石拉致事件、「第二次上海事変」は本件後に勃発した別個の大規模戦闘です。

正解：2. 日本は中国と全面戦争「日中戦争」に突入した
解説：
1937年7月の盧溝橋事件後、日本政府は当初「不拡大方針」を掲げましたが、現地では停戦が破綻し、陸軍は華北で増援と作戦地帯の拡大を進めました。さらに8月に入ると上海でも衝突が激化して第二次上海事変が勃発し、海軍航空隊は8月中旬から南京への爆撃を実施します。これにより戦闘は局地紛争の段階を越えて、北中国から江南へと戦線が一気に広がりました。
日本は正式な宣戦布告を行わず、法的呼称としては「支那事変」を用いましたが、実態としては全国規模の総力戦に入りました。秋以降は中支方面への大部隊動員、作戦統帥の一元化、宣伝・物資統制・動員体制の整備が進み、12月には南京が陥落します。つまり、華北での行動拡大と南京空襲などの作戦展開は、偶発的衝突から全面戦争へ至る決定的なエスカレーションであり、日本は長期かつ苛烈な日中戦争に突入したのです。誤答の選択肢のように国際連盟の仲介で即時停戦が成ったり、全面撤兵や主権返還による和平が成立した事実はありません。

正解：3. 南京事件
解説：
南京事件は、1937年12月13日に日本軍が南京を占領した前後の時期に、広範な地域で多数の中国人非戦闘員や降伏兵（捕虜）が殺害され、略奪・性暴力などの深刻な人権侵害が行われた出来事を指します。国民政府は首都南京の陥落直前に重慶への遷都を決めましたが、南京市内外には多数の民間人が残留し、国際安全区委員会（ジョン・ラーベらの活動で知られます）が保護を試みました。しかし占領の混乱と統制不全の下で、民間人虐殺・処刑・暴行が継続的に発生しました。犠牲者数については研究や資料により幅があり、数万人規模から数十万人規模まで見解が分かれていますが、大量殺害と広汎な暴力があった事実は、戦後の南京軍事法廷および極東国際軍事裁判（東京裁判）でも認定されています。東京裁判では第10軍司令官松井石根が責任を問われ死刑判決となり、南京法廷でも谷寿夫中将らが処刑されています。
誤答の選択肢について補足します。①「通州事件」は1937年7月に冀東防共自治政府の部隊などが日本人・朝鮮人居留民を襲撃した事件で、発生時期・性格ともに異なります。②「第二次上海事変」は同年8～11月の上海方面での日中双方の大規模戦闘で、南京事件の直接名称ではありません。④「済南事件」は1928年の山東省済南での日中衝突で、年代も場所も異なります。以上より、本問の正答は「南京事件」となります。

**正解：1. 重慶に首都を移し、中国共産党の協力のもとに抗日戦を展開した**

**解説：**

1938年10月、日本軍は広東（広州）と武漢を相次いで占領し、中国の政治・経済・交通の要地を大きく圧迫しました。これに対し国民政府（蒋介石政権）は、長期抗戦を掲げて四川盆地の重慶へ中枢機能を移し、いわゆる「戦時首都」を形成します。内陸の重慶は地勢的に守りやすく、周辺の四川・雲南・貴州などの大後方に工業設備や官庁・学校を疎開させることで、継戦体制を整えることができました。

さらに、1937年の第二次国共合作によって名目的に結成された統一戦線の枠組みを活用し、国民政府の正規軍が正面戦で時間と空間を確保する一方、共産党系の八路軍・新四軍は被占領地の背後でゲリラ戦・游撃戦を展開しました。これにより中国側は戦線の縦深化と持久戦略を遂行し、日本側の短期決戦構想に対抗したのです。なお、誤答のように南京への復都や即時講和、あるいは占領地との協定による武装解除は行われていません。国民政府は重慶を基盤として抗日戦を継続し、長期戦に活路を見いだしたのであります。

**正解：3. 汪兆銘**

**解説：**

汪兆銘（おう ちょうめい、Wang Jingwei）は、中国国民党の重鎮で、かつては孫文の側近として知られ、国民政府でも重要ポストを歴任した人物です。日中戦争が長期化する中で、汪は「持久戦は中国にとって破滅的である」と判断し、対日和平を主張しました。1938年末、重慶（国民政府の戦時首都）から密かに脱出し、のちに日本側との和平交渉へと踏み込んでいきます。日本軍・日本当局の支援のもと、汪は南京に移送され、1940年3月に「中華民国国民政府（南京）」いわゆる汪兆銘政権を樹立してその首班となりました。これは日本の占領統治を補完する協力政権であり、国際的承認は限定的でしたが、宣伝・治安・資源動員などで日本の戦争遂行に協力する体制が整えられました。

誤答について補足します。蒋介石は国民政府の最高指導者として重慶にとどまり、抗日戦を指導し続けました。林森は国民政府の名目上の元首（国民政府主席）を務め、やはり重慶側に残りました。陳公博は汪政権の主要メンバーとして参加し、のちに汪の死後は要職を務めますが、重慶から「脱出させられた」主体ではありません。以上の経緯から、本問の正解は汪兆銘となります。