蒙古襲来のことがよくわかる！クイズ10問

フビライ (Wikipeia)

正解：2（チンギスハンの孫で、元の支配者）

解説（ですます調）

フビライ（クビライ＝カアン、1215–1294年）は、モンゴル帝国の第5代大ハーンであり、中国本土において1271年に国号を「大元（元）」と定めた元の皇帝（世祖）です。彼は祖父チンギス・ハンの拡大路線を継承しつつ、都を大都（現在の北京）に置き、中国的な統治制度や科挙の要素を取り入れて広大な帝国の行政を整えました。 日本に対しては1268年以降たびたび通交・服属要求の国書を送り、これが拒否されると、1274年の文永の役と1281年の弘安の役という2度の来襲（元寇）を敢行します。とくに高麗を動員して造船・兵站を担わせ、海上戦力を拡充した点が特徴です。最終的に遠征はいずれも失敗に終わりますが、彼の統治下では南宋の征服（1279年）など東アジア秩序に大きな変化をもたらしました。以上から、フビライは「チンギス・ハンの孫にして元の支配者」であり、日本史では元寇の首謀者として位置づけられます。

満願寺所蔵の伝北条時宗像 (Wikipedia)

正解：4（北条時宗）

解説

蒙古襲来（元寇）は1274年の文永の役と1281年の弘安の役を指し、いずれの時期も鎌倉幕府の執権は北条時宗でした。時宗は第8代執権として1268年に就任し、フビライ・ハンからの通交要求（国書）に強硬姿勢を取りつつ、九州の防衛体制を整えました。

正解：2

解説

1274年（文永11年）の「文永の役」は、元寇の第一次襲来を指す名称です。元のフビライ・ハンは日本に朝貢を求めましたが、鎌倉幕府はこれを拒否し、執権の北条時宗の下で対外強硬策をとりました。その結果、元・高麗の連合軍がまず対馬・壱岐を襲撃し、多数の住民や武士が犠牲となりました。その後、軍は博多湾へ進出し、てつはう（爆裂弾）や集団戦法など、当時の日本側には未知の戦術で圧力をかけました。日本側は御家人や九州の武士団が奮戦し、夜襲やゲリラ的戦いを重ねて持久に努めます。その結果、元軍は一夜で撤退しました。

正解：3

解説

1274年の文永の役では、元・高麗の連合軍が対馬・壱岐を経て博多湾沿岸に上陸し、日本側は御家人や九州武士団の動員でこれを迎え撃ちました。戦闘は日中に激しく行われ、日本側の夜襲などもあって元軍は湾内の艦船へいったん退避しますが、その夜に暴風雨が発生し、多数の艦が座礁・沈没するなど大損害を受けたと伝えられます。この自然災害による被害が決定打となり、元軍は一夜にして撤退したと理解されています。なお、「神風」という語は第二次襲来（1281年・弘安の役）で広く知られますが、第一次でも悪天候が撤退要因として強調されます。

ただし、「暴風雨」が元軍撤退の原因だったという説に対しては、近年、いくつかの反論が提起されています。

例えば、1957年、気象学者の荒地秀俊氏が異を唱えています。荒川氏は、過去50年間の気象統計をもとに、旧暦10月20日（新暦では十一月二十六日）以降に西日本には一度も台風が上陸していないとして、文永の役では神風は吹かず、予定の撤退であったと主張しました。これに歴史学者が反応し、神風論争という論争が展開しました。歴史学者の反応は、おおむね荒川説に対して批判的でした。歴史学者の論は、10月20日に台風ないし大風雨があったという見解と10月20日以降、高麗合浦に帰還するまでの間に神風が吹いたという見解に分かれています。現在では、元軍は撤退途中に大風により被害を受けたという考え方が有力です。高麗側の史料によると、帰還しなかった高麗の兵士は1万3500余名にのぼったということです。 　元軍撤退の理由については、最近、太田弘毅氏によって新しい考え方が出されています。それは「元史」日本伝の文永の役の結末を記した箇所に「官軍不整、又矢尽」という文言があることに注目しています。混成軍でかつ艦船数が多いため、軍議が一致せず、また用意した矢が尽きたため、元軍は撤退したという説です。 　さらに、服部英雄氏（『蒙古襲来と神風』中公新書, 2017）によると、「文永の役では蒙古軍は嵐のために一夜で退却した」と教科書にある記述は、歴史書の中にはまったく見当たらない、としています。史料には24日に合戦があったという記録があることから、「24日（襲来の4日後）に日本側が善戦し、太宰府まで攻め込んできた蒙古・高麗軍を退けた。不守備となった蒙古・高麗軍は撤退を決めた」というのが実態だとしています。

生の松原海岸にある元寇防塁 (Wikipedia)

正解：2

解説

文永の役（1274年）ののち、鎌倉幕府は再襲来に備えて博多湾岸に「石築地（いしついじ）」、通称「元寇防塁」を築きました。石を積み上げ、土を充填した堅牢な海浜防御線で、高さはおおむね約2メートル、基底幅は約2〜3メートルとされ、湾岸の要所を連続的に結ぶ形で構築されます。築造は御家人に地域割をして負担させ、1276年頃から弘安の役（1281年）まで継続的に整備が進められました。防塁は上面を兵が移動できるようにし、所々に出入りや射撃のための切れ目を設けるなど、実戦運用を踏まえた工夫が見られます。

弘安の役では、この防塁が大軍の一斉上陸を妨げ、元・高麗軍を沖合の艦船に釘付けにしました。その結果、日本側は小舟での奇襲・夜襲を繰り返して敵の消耗を促し、最終的には暴風雨の被害と相まって撤退に追い込みます。選択肢の「異国警固番役」は沿岸警備の当番制度で施設名ではありません。「六波羅探題」は京都に置かれた監察・軍政機関、「鎮西探題」は九州統治・軍政の中枢であり、いずれも防壁そのものではありません。以上の理由から、防壁の名称は「石築地（元寇防塁）」が正解です。

正解：3（兵士14万人、船4400隻）

解説

1281年の再来襲は「弘安の役」と呼ばれ、軍勢は東路軍（高麗発）約4万人・約900隻と、江南軍（華南発）約10万人・約3500隻の二方面から編成され、合計で約14万人・約4400隻という空前の規模に達したと伝えられます。目的は博多湾の突破と九州制圧で、1274年の文永の役後に鎌倉幕府が整備した元寇防塁（石築地）や異国警固番役を正面から打ち破る計画でした。

日本側は防塁によって上陸点を限定し、夜襲・火攻め・奇襲上船など機動的な戦法で敵艦隊を攪乱します。長期対陣の末、暴風（いわゆる「神風」）が来襲して停泊中の多数の艦船が座礁・沈没し、連合軍は壊滅的打撃を受けて撤退しました。 この大規模遠征は中世日本への外征として最大級であり、失敗は元の威信に傷をつけただけでなく、日本側にも恩賞不足や軍役負担増などの社会的影響を残しました。なお、軍勢数には史料間で差異があり近年は誇張を指摘する見解もありますが、教科書・通説レベルでは**「14万人・4400隻」規模**として理解されることが一般的です。

正解：4

解説

蒙古襲来（1274年の文永の役・1281年の弘安の役）を受け、鎌倉幕府は九州の防衛と統治を強化するために「鎮西探題（ちんぜい・たんだい）」を博多に設置しました。鎮西探題は、九州一円の守護・地頭や御家人を統轄し、博多湾岸の警備、外敵への備え、港湾・交易の監督、治安・裁判の執行など、軍政と行政の両面を担いました。現地指揮中枢を博多に置くことで、再襲来に即応できる体制を築いた点が特徴です。並行して、沿岸防備の常備化のために御家人を交替で動員する「異国警固番役」の整備が進み、九州の国土防衛は制度的に強化されました。

誤答の解説として、1の六波羅探題は京都に置かれ、朝廷監視や西国情勢の統制を担う機関で、異国警備の現地中枢ではありません。2の異国警固番役は沿岸防備の勤務制度であって、常設の統治・軍政機関そのものではありません。3の大宰府は律令制下の古代官司で、鎌倉幕府が新設した軍政機関とは性格が異なります。以上の理由から、本問の正答は九州博多に置かれた「鎮西探題」です。

蒙古襲来絵詞 (Wikipedia)

正解：1（合戦に参加した御家人竹崎季長が絵師に描かせた絵巻）

解説

『蒙古襲来絵詞』（もうこしゅうらいえことば／蒙古襲来絵巻）は、文永・弘安の役に実際に出陣した肥後国の御家人・竹崎季長が、自らの武功を示して恩賞を申請するために作成させた、絵と詞書（ことば）が一体となった絵巻です。鎌倉時代後期に成立し、現存する前後二巻には、博多湾周辺での戦闘や、季長が戦後に鎌倉へ出向いて武功を主張する場面などが活写されています。

本絵巻は、公的機関の編纂物ではなく当事者作成の一次史料である点に大きな価値があります。合戦の布陣・戦法、武具や旗指物、船や防塁の様子などを視覚的に伝え、とくに元軍が用いたとされる炸裂兵器「てつはう」の表現は、当時の戦闘技術を知る手がかりとして重要視されます。一方で、恩賞請求という目的上、季長の武勇を強調する叙述・構図が採られている可能性があるため、研究では他史料との照合が重視されます。

以上の点から、『蒙古襲来絵詞』は、元寇の実態と鎌倉武士の行動様式を具体的に示す一級の絵画史料であり、授与制度や武功評価の実務を理解するうえでも欠かせない史料であるといえます。

正解：3

解説

文永・弘安の役（1274・1281年）後、恩賞の不足や軍役負担の増大、貨幣経済の浸透による御家人層の困窮などが重なり、既存の荘園・公領支配に挑戦する武士集団が各地で台頭しました。これらは領主側の史料でしばしば「悪党」と呼ばれます。呼称は蔑称であり、必ずしも単なる無法者を意味しない点が重要です。彼らは年貢の取り立て妨害、荘官の追放、文書の焼失、要害化した拠点からの打ち壊しや夜襲など、武力を背景に実力で地域支配を転換しようとしました。寺社勢力や海賊・地下人と連携する例もみられ、既存の領主権力を動揺させます。

鎌倉幕府は検断の強化や異国警固体制の常態化、さらには永仁の徳政令（1297年）による御家人救済などで秩序回復を図りましたが、構造的な困窮と地方武士の自立化は止まらず、悪党的動きは南北朝初期まで持続しました。なお、選択肢1の「国人」や2の「地侍」は中世後期に一般化する在地武士の呼称で、必ずしも反領主・実力行使を含意しません。4の「六波羅探題」は京都の監察・軍政機関であり、集団名ではありません。以上より、本問の正答は「悪党」です。

正解：2

解説

文永・弘安の役は防衛戦であり、新たな土地獲得がありませんでした。そのため、所領の加増という形での恩賞を十分に与えられず、功を立てた御家人の多くが不満を募らせました。さらに、異国警固番役の常態化や石築地の築造などで軍役・夫役の負担が増し、遠征や備えに要する軍装・兵糧の自弁も重荷となりました。貨幣経済の浸透により借財に頼る御家人が増え、所領の質入れ・売却が進むなど、御家人制の基盤である「御恩と奉公」の均衡が崩れていきます。

幕府は永仁の徳政令（1297年）で売却地の無償返還など債務救済を図りましたが、実務上の混乱や信用収縮を招き、根本的解決には至りませんでした。この困窮は在地の自立化や実力行使を伴う紛争の増加につながり、悪党の活動や所領紛争の頻発として現れます。以上のように、蒙古襲来後は恩賞不足と負担増が御家人の離反・不満を強め、従来の御家人制を動揺させたと評価できます。

まとめ：

蒙古襲来（元寇）は、13世紀後半にモンゴル帝国のフビライ・ハンが日本に対して行った二度の大規模な侵攻のことを指します。最初は1274年の文永の役で、約3万人の元・高麗連合軍が対馬・壱岐を襲撃したのち博多湾に上陸しました。日本側は九州の御家人を中心に必死に抵抗し、元軍は火器「てつはう」や集団戦術で日本軍を苦しめましたが、暴風雨による被害も重なって撤退しました。次いで1281年の弘安の役では、14万人・4400隻ともいわれる史上最大規模の艦隊が襲来しました。幕府は事前に博多湾沿岸に元寇防塁を築き、御家人を動員して防備を固めました。戦闘は長期化しましたが、再び暴風雨が来襲し、元軍は大損害を受けて退却しました。この結果、日本は直接的な侵略を免れました。

蒙古襲来の影響は大きく、日本の国防意識を高め、幕府による異国警固番役など海防体制の恒常化をもたらしました。また、御家人たちが命をかけて戦ったにもかかわらず、新たな領土獲得がなかったために恩賞不足が深刻化しました。これにより御家人の不満は高まり、幕府の支配基盤は動揺しました。さらに、九州を中心とする武士の経済的負担も増加し、後の鎌倉幕府衰退の一因となりました。一方で、蒙古襲来を退けたことは「神風」として神仏の加護と結びつけられ、日本人の精神的結束を強める契機にもなりました。このように、蒙古襲来は日本の政治・社会に大きな影響を与え、中世史の重要な転換点となったのです。

参考文献：

善彦著 (1992) 『蒙古襲来』小学館
服部英雄著 (2017) 『蒙古襲来と神風』中公新書
佐伯弘次著 (2003) 『モンゴル襲来の衝撃』中央公論新社
宮脇淳子著 (2019) 『世界史のなかの蒙古襲来』扶桑社
村井章介著 (2001) 『北条時宗と蒙古襲来』NHK出版
永井晋著 (2022) 『鎌倉幕府はなぜ滅びたのか？』吉川弘文館