民本主義と米騒動のことがよくわかる！クイズ5問

正解：4. 吉野作造

解説

吉野作造は、第一次世界大戦期の日本で「民本主義（みんぽんしゅぎ）」を提唱した政治学者です。1916年（大正5年）に『中央公論』へ発表した論文「憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず」で、近代立憲政治の根本は「人民の福利を本とする」ことにあると説きました。ここでいう民本主義は、主権が人民にあるとする「民主主義（人民主権）」とは区別され、明治憲法下での天皇主権を前提にしつつ、政治の目的・運営は徹底して国民の利益と意思を尊重すべきだという立場を示します。要するに「by the people（人民による）」よりも「for the people（人民のため）」を強調した概念であり、当時の国体論争を回避しながらデモクラシーの実質化を図る工夫でした。

この理論は、第一次世界大戦後に世界的に広まった民主化の潮流や、国内の米騒動（1918年）など社会的緊張の高まりと響き合い、政党政治の発展・普通選挙運動の理論的支柱となりました。吉野は黎明会などの啓蒙活動を通じて世論の形成に努め、政党内閣の常態化や1925年の普通選挙法（男性普通選挙）の実現に向けた知的環境を整えるうえで大きな役割を果たしました。なお、選択肢の美濃部達吉は天皇機関説で知られる憲法学者、尾崎行雄は「憲政の神様」と称された政治家、原敬は初の本格的政党内閣を率いた政治家であり、いずれも同時代の重要人物ですが、民本主義の提唱者は吉野作造です。

正解：2. 富山県の漁村の主婦たちが米価の高騰を阻止しようと始めた運動

解説

米騒動は、第一次世界大戦期の戦時インフレによって米価が急騰し、庶民の生活が圧迫されたことを背景に全国へ波及した大規模な民衆運動です。きっかけは富山県の日本海沿岸の漁村で、漁家の主婦たちが米の「積み出し」を止め、安売りを求めて立ち上がったことでした。彼女たちは仲買や米商に対して集団で抗議し、港や駅での出荷を実力で阻止しようとする行動に出ました。この「主婦一揆」は、家計を直接支える立場から米価高騰に最も敏感だった女性たちが先頭に立った点に大きな特徴があります。

富山発の抗議はまたたく間に北陸・近畿・中国・九州など全国各地へ広がり、都市部では労働者や鉱山労働者、農村では小作や漁民など多様な層が参加しました。要求は「安売りせよ」「買い占めをやめよ」といった生活防衛が中心で、米商への打ちこわしや役所への請願・示威行動など、平和的請願から実力行使まで形態はさまざまでした。政府は警察・憲兵・軍隊を動員して鎮圧に乗り出し、同時に物価抑制策や米の供給調整に踏み切ります。結果として寺内正毅内閣は責任を問われて総辞職に追い込まれ、続く原敬の政党内閣成立へと政治状況が転換しました。米騒動は、生活問題が政治を動かしうることを可視化し、大正デモクラシー期の民衆運動の広がりを象徴する出来事であったと評価されます。

正解：3. 8月に入り、新聞が「越中女一揆」としてセンセーショナルに全国規模で報道したこと

解説

米騒動は、富山県の漁村で主婦たちが米価高騰に抗議して積み出し阻止に立ち上がった出来事から始まりましたが、全国的な拡大の直接的きっかけは、8月に入ってからの新聞報道でした。各紙は電報で素早く情報を集め、見出しで「越中女一揆」と大きく取り上げ、号外や一面記事、社説を通じて連日報道しました。女性たちが先頭に立つという異例さ、生活防衛を掲げる切実さ、港や駅での「積み出し阻止」という具体的行動が強い関心を呼び、記事は各地の読者に「同様の行動が可能である」という具体的イメージと共感を与えました。報道は請願・示威・実力行使といった手段の拡散にもつながり、北陸から関西・山陰・九州、さらに都市部へと模倣的に波及していきます。

選択肢2のシベリア出兵（8月発表）は米価高騰への不安を高める背景要因ではありましたが、全国的な「広がり」を一気に作ったのは、各新聞のセンセーショナルな可視化でした。選択肢1の「一斉検挙の誤報」や選択肢4の「震災による輸送停止」は事実関係や時期が適合しません。米騒動の拡大は、戦時インフレ下の生活危機という土壌の上に、マスメディアの見出し・叙述が火種を全国へ運んだ典型例であったといえます。

**正解：3. 原敬**

**解説**

1918年（大正7年）の米騒動は全国的な社会不安を招き、責任を問われた寺内正毅内閣は9月に総辞職しました。後継として組閣したのが立憲政友会総裁の原敬であり、1918年9月29日に首相に就任します。原内閣は、閥族・官僚中心の体制から政党を基軸とする政治への転換を明確にした「本格的政党内閣」と位置づけられます。原は「平民宰相」と呼ばれ、物価対策や地方行政・教育の拡充、鉄道網の整備など、戦後社会の安定化と国政の近代化を図りました。米騒動がもたらした民意の噴出は、原内閣成立を通じて政党政治の常態化へとつながり、大正デモクラシー期の政治的潮流を一段と推し進めたと評価されます。なお、選択肢の山本権兵衛や加藤高明、大隈重信はいずれも近代日本の重要な首相経験者ですが、寺内内閣の直後に首相となったのは原敬です。

正解：2. 東京駅頭で一青年に暗殺された

解説

1921年11月4日、原敬首相は東京駅で若い鉄道職員の青年に短刀で刺され、まもなく亡くなりました。現職首相の暗殺という未曾有の事件は社会に大きな衝撃を与え、当時進行していた政党政治の基盤に深刻な動揺をもたらします。原内閣は本格的政党内閣として行政・財政・地方制度の整備を進めていましたが、首班の急死により政局は一転しました。事件の直後、政局収拾のために高橋是清が後継首相となり（高橋内閣）、短期的な安定を図ることになります。

なお、この暗殺は、同年11月12日に開幕するワシントン会議を目前に控えた時期に発生し、国際協調へ向かう日本の外交・内政双方に不確実性を与えました。選択肢1の「普通選挙法公布」は1925年の加藤高明内閣期の出来事であり、選択肢3の「シベリア出兵中止の発表」は翌1922年の段階的撤兵に関わる流れで時期が合いません。選択肢4の「ワシントン会議の日本全権として臨む」役割は原首相ではなく、会議には海軍大臣加藤友三郎らが全権として出席しました。以上から、1921年11月の原首相に起きた出来事は「東京駅頭で一青年に暗殺された」です。