空海のことがよくわかる！クイズ八十八問（その９）

正解：3. 十善戒

解説：

遍路においては、単に四国八十八か所の霊場を巡るだけでなく、心身の修養や信仰の深化を目的とする「修行の旅」としての側面が重視されます。その際、遍路が心がけるべき行動規範として大切にされているのが「十善戒（じゅうぜんかい）」です。

十善戒とは、仏教における十の善い行いを勧める戒律のことで、「不殺生（殺さない）」「不偸盗（盗まない）」「不邪婬（不貞を働かない）」「不妄語（嘘をつかない）」など、身体・言葉・心に関する十の項目から成り立っています。遍路はこの戒を守ることで、内面の浄化と功徳の積み重ねを目指します。十善戒を実践することは、遍路としての正しい在り方を守るための基本とされています。

正解：3. 88番札所の大窪寺から1番札所の霊山寺までを反時計回りにまわること

解説：

四国遍路には、通常1番札所の霊山寺から88番札所の大窪寺までを時計回りに巡る「順打ち」と、その逆方向である「逆打ち」があります。「逆打ち」は、88番札所から1番札所へと反時計回りに札所を巡拝する方法です。この逆打ちは、一般的な「順打ち」に比べて歩きにくく、厳しい道のりであることから功徳が大きいといわれています。、昔から「逆打ち三回で順打ち一回と同じ功徳がある」とも言われてきました。

天長年間、伊予の国（愛媛県）の長者・河野衛門三郎は自分の悪行の許しを請うため、弘法大師の後を追ってお遍路を始めました。しかし、20回めぐっても大師に会うことができず、21回目にして「逆打ち」を思いつきます。そして12番札所の焼山寺で薄れゆく意識のなか、ついに弘法大師が現れ、すべてを許されたといいます。三郎が「逆打ち」を始めたのが閏（うるう）年といわれていることから、閏年に「逆打ち」をすると弘法大師に会えると信じられ、「逆打ち」は4年に一度とされているのです。

正解：3. 約1,400km

解説：

四国遍路は、四国の四県（徳島、香川、愛媛、高知）を巡る全88ヶ所の霊場を参拝する巡礼路で、その総延長距離はおよそ1,400kmに及びます。この距離は、徒歩で巡礼を行う場合に巡る標準的な道のりを指しており、車道や山道を含めた実際の移動距離に基づいています。巡礼者（遍路）は、弘法大師（空海）との「同行二人」の精神のもと、この長い道のりを歩きながら、信仰や自己修行の旅を続けます。近年では一部を公共交通機関で移動する方もいますが、徒歩で全行程を巡る「通し打ち」は、特に伝統的かつ意義深いものとされています。四国遍路は、肉体的にも精神的にも大きな挑戦であると同時に、多くの人に深い感動と気づきを与える巡礼の道です。

正解：2. お遍路さんが転ぶほどの山岳の難所

解説：

「遍路ころがし」とは、四国遍路の巡礼路の中でも特に険しく、登り下りが厳しい山岳地帯の難所を指す言葉です。この名称は、「お遍路さんが転がり落ちるほど大変な道」という意味から来ています。

代表的な「遍路ころがし」には、徳島県の12番札所焼山寺へ向かう山道や、高知県の27番札所神峯寺への登りなどがあり、急な坂道や長距離の山道が続くため、体力と気力が試されます。これらの区間は、特に徒歩で巡る遍路にとって大きな挑戦であり、達成したときの達成感もひとしおです。

このような険しい道を通ることにより、遍路は単なる旅行ではなく「修行」としての意味を強く持つようになります。苦難を乗り越えることで、自身の内面とも向き合うことができる貴重な体験となります。

正解：3. 札所全てを回ることで願いが成就したこと

解説：

「結願（けちがん）」とは、四国八十八か所の霊場をすべて巡拝し終えたことを指す言葉です。「結」は「終わる」、「願」は「願い」を意味し、遍路に出る前に心にかけていた祈願が、巡礼の完遂によって成就したことを意味します。

通常、最後の札所である88番・大窪寺を参拝して「結願」となり、その達成を弘法大師に報告します。遍路にとってこの結願は単なる旅の終わりではなく、信仰心を持って続けてきた修行の成果であり、心身の清めと再生の象徴でもあります。

なお、結願の後には、1番札所・霊山寺へ「お礼参り（礼参）」を行う習慣もあります。これは初心を忘れず、弘法大師に感謝の念を捧げるための重要な儀礼です。

正解：3. 霊山寺

解説：

霊山寺（りょうぜんじ）は、四国八十八か所霊場巡りの出発点となる第1番札所で、徳島県鳴門市に位置しています。宗派は高野山真言宗で、ご本尊は釈迦如来です。遍路を始める人々にとって、心を整え、旅の安全と願いの成就を祈る重要な場所です。

霊山寺の境内には、納経所やお遍路用品を揃える売店が整っており、初めての遍路を行う人にとって非常に親しみやすいお寺です。また、多くの遍路がここで白衣や金剛杖を揃え、巡礼の第一歩を踏み出します。

「発心の道場」とも呼ばれる阿波国（現在の徳島県）にある霊山寺は、まさに遍路の「はじまりの寺」として、信仰と修行の出発点となる特別な存在です。

正解：3. 第75番札所

解説：

善通寺（ぜんつうじ）は、四国八十八か所霊場の第75番札所で、香川県善通寺市に位置します。この寺は、弘法大師・空海の出生地とされ、空海の父・佐伯直田公が建立したと伝えられる由緒ある寺院です。

善通寺は、真言宗善通寺派の総本山でもあり、「誕生院」とも呼ばれる東院には空海の御誕生所が保存されています。また、西院には弘法大師の御影堂や戒壇めぐりといった信仰体験の場も整えられており、巡礼者にとっては特に重要な札所の一つです。

空海の足跡をたどる遍路の旅において、善通寺は信仰の中心であり、訪れる人々にとって精神的な節目となる霊場です。参拝者はここで、弘法大師の教えに改めて触れ、巡礼の意義を深めることができます。

正解：2. 大窪寺

解説：

大窪寺（おおくぼじ）は、四国八十八か所霊場巡礼の最後の札所である第88番札所で、香川県さぬき市多和に位置しています。真言宗大覚寺派に属し、本尊は薬師如来です。大窪寺は「結願の寺」として広く知られ、多くの遍路がここで巡礼の旅を締めくくります。

このお寺は山深い場所にあり、四国霊場巡りの終着点として、長い道のりを経て到達した巡礼者にとっては感慨深い場所です。境内には、結願成就を感謝するための鐘や納経所が整備されており、遍路を終えた達成感とともに心静かに祈ることができます。

また、大窪寺からはお礼参りとして、再び1番札所・霊山寺へ向かう「礼参」を行う習わしもあります。こうして遍路の旅は円環のように繋がり、霊場巡りは一巡して新たな出発へと続いていくのです。

正解：1. 高野山

解説：

お遍路（四国八十八か所霊場巡り）を無事に終えた後、多くの巡礼者が「お礼参り」として訪れるのが、和歌山県にある真言宗の総本山・高野山（こうやさん）です。高野山は、真言宗の開祖である弘法大師空海が開いた聖地であり、信仰と修行の中心地として千年以上にわたり崇敬されてきました。

高野山には弘法大師が今も瞑想を続けているとされる御廟（ごびょう）があり、巡礼を終えた遍路たちは、これまでの旅の無事と満願の報告を弘法大師に捧げるため、奥の院を訪れます。これにより、巡礼の旅が霊的にも完全なものとなるのです。

また、「同行二人」の精神、すなわち「常に弘法大師と共にある」という遍路の教えを象徴する意味でも、高野山へのお礼参りは非常に意義深いものとされています。

正解：1. 東寺

解説：

東寺（とうじ）は、京都市南区にある真言宗の寺院で、正式名称は教王護国寺（きょうおうごこくじ）です。弘法大師・空海が嵯峨天皇から託され、真言密教の根本道場として整備した由緒ある寺院であり、真言宗の重要な拠点の一つです。

お遍路を終えた巡礼者の中には、高野山へのお礼参りとともに、この東寺にも参拝する方が多くいます。これは、空海が唐から帰国したのち、密教の布教と教育を始めた中心地が東寺であり、ここに真言密教の教えの原点があるとされるからです。

また、東寺は国宝の五重塔や金堂、大師堂など歴史的・宗教的価値の高い建築物を擁し、多くの人々の信仰を集めています。遍路の旅を終えた感謝と、これからの平安を祈る場として、東寺は高野山と並ぶ重要な「お礼参り」の目的地となっているのです。