空海のことがよくわかる！クイズ八十八問（その８）

正解：2

解説：

「遍路（へんろ）」という言葉の語源は、「辺路修行（へじしゅぎょう）」にあります。「辺路修行」とは、山岳信仰や仏教修行の一環として、辺地（へじ）や辺境を巡って行う修行のことを指します。修行者たちは自らの信仰を深めるために、険しい道を歩き、仏道に専念しました。

特に平安時代以降、四国の八十八箇所を巡る修行が盛んになり、空海（弘法大師）の足跡をたどるこの行為が「遍路」と呼ばれるようになりました。「辺路修行」が訛って「遍路」となったと考えられており、巡礼者を指す言葉として定着しました。

現在でも「遍路」は、四国八十八箇所巡礼をする人や、その旅そのものを指す言葉として使われています。語源を理解することで、遍路がただの観光ではなく、信仰や修行に深く根ざした文化であることがわかります。

正解：3

解説：

四国遍路の霊場が現在のように「八十八か所」として確立されたのは、**江戸時代初期（1630年代）**のことです。それ以前から四国各地には弘法大師・空海ゆかりの寺院や修行の場が存在しており、人々は個々に霊場を巡っていましたが、寺院の数や巡拝の順序は統一されていませんでした。

江戸時代初期に入ると、巡礼文化が庶民の間にも広まり、印刷技術の発展とともに、霊場を巡る地図や案内書などが作成されるようになります。この頃、四国の霊場が体系化され、八十八か所として固定されていきました。特に、巡礼の道筋を整えた先達やガイド的存在の人々の働きが大きかったとされています。

「八十八」という数字には、煩悩の数や仏教的な意味合いも込められており、単なる数ではなく精神的・宗教的な意義が強く反映されています。このようにして、江戸時代初期に四国遍路は現在の形式へと整えられ、信仰と文化の一つとして多くの人々に親しまれてきました。

正解：3

解説：

「同行二人（どうぎょうににん）」とは、四国八十八か所を巡礼する遍路において、巡礼者が常に弘法大師（空海）とともに歩んでいるという信仰を表す言葉です。遍路の旅では、自分一人で歩いているように見えても、精神的には弘法大師が傍らに寄り添い、導いてくれていると考えられています。この考え方は、巡礼者に安心感や支えを与えるとともに、修行の旅に対する深い意義を与えます。「同行二人」という言葉は、菅笠や金剛杖、納経帳などにも記されており、遍路文化の象徴的な表現として広く知られています。

正解：3

解説：

四国遍路における「お接待」は、地元の人々が遍路者に対して食べ物や飲み物、時には宿泊場所を無償で提供する伝統的な行為です。これは単なる親切心や地域の慣習にとどまらず、深い宗教的意味を持っています。遍路では「同行二人」といって、弘法大師が常に巡礼者とともにいると信じられているため、遍路者に対するお接待はすなわち弘法大師への供養・布施であると考えられています。このため、接待をする人々も感謝の気持ちを込めて奉仕し、それによって自身の功徳を積むことができると信じられているのです。お接待は、信仰と人々の思いやりが融合した四国遍路の重要な文化の一つです。

正解：2

解説：

現代の四国遍路において、最も多い年齢層は60歳代です。退職後の時間や自由が増えたことにより、人生の節目としてお遍路に挑戦する人が増えています。また、健康維持や精神的な癒やし、第二の人生の始まりとして巡礼の旅を選ぶ人も多く見られます。遍路道は全長1,200km以上に及ぶため、ある程度の体力や時間が必要ですが、60歳代はまだ体力に余裕があり、信仰や内省への関心も高まる年代であるため、最も多くの遍路者を占めているのです。加えて、近年はウォーキングブームや健康志向の高まりも追い風となり、60歳代を中心とする中高年層の遍路参加が活発になっています。

正解：3

解説：

「歩き遍路」は、四国八十八か所を徒歩で巡る伝統的な巡礼スタイルですが、現代ではこの「歩き遍路」を実践する人の大多数が男性であることが調査から明らかになっています。具体的には、歩き遍路の約82.1%が男性で、女性は2割にも満たない状況です。

このような傾向には複数の要因がありますが、特に大きな理由の一つは「道中の安全性」に関する懸念です。徒歩での長旅には、宿泊や夜間の移動など、不安定な要素が多く含まれます。こうした旅のリスクに対して、現在も社会的・歴史的に女性が置かれている立場が影響を及ぼし、「歩き遍路」を控える傾向があると考えられています。

また、男性遍路者には比較的若い世代が多く、女性遍路者には高齢者が多いという年齢構成の違いも、男女差に影響を与えている要因の一つです。したがって、「歩き遍路」は現代においても男性が主役の遍路形態であると言えるのです。

正解：2

解説：

現在見られる四国遍路のブームは、1990年代に入ってから本格的に始まりました。それまでの遍路は、主に信仰心から行うものとして高齢者層を中心に受け継がれてきましたが、1990年代になると社会全体に癒やしや自己探求、スピリチュアルな旅への関心が高まり、若年層や中高年層の間にも広がりを見せるようになりました。

また、テレビ番組や書籍、映画などのメディアによる紹介や、インターネットでの情報共有が進んだことも、遍路文化の再評価と普及に貢献しました。経済不況やストレス社会といった時代背景の中で、「歩くことによる心の再生」や「弘法大師との精神的なつながり」を求める人々が増え、現代遍路は観光や健康、自己啓発など多様な目的を持つ旅へと変化しています。こうした背景から、1990年代は現代的な四国遍路ブームの出発点と位置づけられています。

さらに、1990年代には本四架橋の開通や四国内の高速道路の整備により交通のアクセスが飛躍的に向上したことも大きな要因になっていました。そのため、バスや自家用車を利用した遍路も急増しました。

正解：2

解説：

2006年、徳島・高知・愛媛・香川の四国四県と関係市町村、関係団体が共同で文化庁に提出した世界遺産候補の正式名称は「四国八十八箇所霊場と遍路道」です。この提案は、単なる巡礼路や寺院の集合ではなく、空海（弘法大師）ゆかりの88の札所とそれをつなぐ遍路道、さらには地域社会や信仰心、接待の文化までを含んだ総合的な文化遺産として位置づけられています。

この四国遍路文化は、千年以上にわたって多くの人々の信仰と実践によって支えられ、特に一般民衆による継承と「お接待」に代表される地域の温かいもてなしが特徴です。遍路は宗派を超え、個人の思いや願いを込めて行う精神的な旅であり、今も生きている文化遺産といえます。

文化庁はこの提案を継続審査としましたが、その後も再提案や評価を重ね、2010年には「『四国八十八箇所霊場と遍路道』世界遺産登録推進協議会」が設立され、登録実現に向けた取り組みが続けられています。

正解：2

解説：

『娘巡礼記』を著したのは、高群逸枝（たかむれ いつえ）です。高群逸枝は、大正から昭和にかけて活躍した日本の女性史研究の草分け的存在であり、女性の地位や歴史に強い関心を持っていました。

彼女は1923年（大正12年）、20代の若さで四国八十八箇所の霊場を巡る「歩き遍路」に挑戦し、その体験をもとに『娘巡礼記』を執筆しました。この作品は、当時の社会において非常に珍しい、若い女性による単独巡礼の記録であり、女性の自立や信仰、そして旅に対する深い洞察を描いた貴重な文学作品となっています。

『娘巡礼記』は、遍路という宗教的行為を通して、女性が自己と向き合い、精神的な成長を遂げていく姿を丁寧に描写しており、女性の生き方や信仰の在り方を考える上でも重要な資料です。また、今日に至るまで女性遍路の先駆けとしても評価されています。

正解：2

解説：

江戸時代に四国遍路の道を整備し、遍路の普及に大きく貢献したのは、僧侶の**真念（しんねん）**です。真念は17世紀後半に活躍した人物で、当時まだ整備されていなかった四国の巡礼路を歩いて実地に調査し、道標を立てるなど交通の便を改善しました。

また、真念は『四国辺路道指南（しこくへんろみちしるべ）』という遍路のためのガイドブックを1687年に刊行しました。これは現存する最古の遍路ガイドブックであり、札所の位置や距離、巡礼の心得などが記されており、多くの巡礼者にとって重要な手引きとなりました。

このように、真念の活動は四国遍路の大衆化・制度化に大きな影響を与えました。信仰の旅を支えるインフラの整備と情報提供の両面から貢献したことで、彼は「遍路中興の祖」とも称されています。真念の尽力によって、遍路は庶民にとっても実践可能な宗教行為へと広がっていったのです。