**正解:2. 剰余価値説**
**解説:**
**剰余価値説(Mehrwerttheorie)は、カール・マルクスが『資本論』で提唱した、資本主義社会における搾取のメカニズム**を説明する理論です。この理論によると、資本家(ブルジョワ)は労働者(プロレタリア)の労働によって生み出された価値の一部を「剰余価値」として搾取し、利益を得ているとされます。
### **剰余価値説の基本構造**
マルクスは、資本主義社会の根本にあるのは**「労働者が生産する価値」と「労働者が受け取る賃金」の差**であると考えました。
### **① 労働価値説との関係**
- マルクスは、商品の価値は**それを生産するために必要な労働量(労働時間)**によって決まると考えました(労働価値説)。
- 例えば、労働者が1日8時間働いて10,000円の価値を生み出したとします。
### **② 労働者の賃金と剰余価値の発生**
- 労働者が生活に必要な最低限の賃金(例:5,000円)しか支払われない場合、労働者は本来生み出した価値より少ない対価しか得られません。
- **差額の5,000円が資本家の手元に残り、これが「剰余価値」となります。**
- 資本家は、この剰余価値を**利益**として蓄積し、さらに労働者を搾取して資本を増やしていきます。
### **剰余価値の種類**
マルクスは剰余価値を2つの形態に分類しました。
### **① 絶対的剰余価値**
- **労働時間を延ばすことで資本家の利益を増やす方法**。
- 例:1日8時間労働を10時間に延ばせば、その分剰余価値も増える。
### **② 相対的剰余価値**
- **生産性を向上させることで剰余価値を増やす方法**。
- 例:技術革新により、同じ8時間労働でより多くの商品を生産できるようになれば、労働者の賃金は変えずに資本家の利益が増える。
### **剰余価値説の意義と影響**
- マルクスは、剰余価値の搾取こそが資本主義の本質であり、労働者が不利な立場に置かれる原因であると主張しました。
- この理論は、**社会主義・共産主義運動の理論的基盤**となり、労働運動や社会改革に影響を与えました。
### **選択肢の説明:**
- *「労働価値説」(1)**は、商品の価値は労働によって決まるという理論であり、剰余価値説の基礎となるが、搾取のメカニズムそのものを指す言葉ではない。
- *「限界効用説」(3)**は、新古典派経済学(メンガー、ジェヴォンズ、ワルラスなど)が提唱した理論で、価値は労働時間ではなく、個々の消費者の主観的な満足(効用)によって決まるとするものであり、マルクスの理論とは対立する。
- *「資本蓄積論」(4)**は、資本がどのように蓄積されていくかを説明する理論であり、剰余価値の概念を含むが、それ自体が搾取のメカニズムを説明するものではない。
**結論として、労働者が生み出す価値と受け取る賃金の差を搾取のメカニズムとして説明するのが「剰余価値説」である。**