鎌倉幕府成立のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】2. 1180年

【解説】

源頼朝は以仁王の令旨を受けて挙兵し、治承4年（1180年）に相模国の鎌倉へ入り、大倉（大蔵）を拠点として政庁を構えます。ここを後世「大倉幕府」と呼び、同年に御家人統制の中核となる侍所を設置するなど、武家政権としての中枢機構づくりを始めました。したがって、「鎌倉に入り、実質的に幕府を開いた時期」は1180年と考えるのが一般的です。

一方で、選択肢の他年号は関連する重要転機を示します。1185年は壇ノ浦の戦い後、頼朝が守護・地頭の設置を認められて全国支配を実質化した年です。1192年は後鳥羽天皇から頼朝が征夷大将軍に任じられた年で、かつては「いい国（1192）つくろう鎌倉幕府」と暗記されましたが、現在は政権形成の過程を重視し、1180年の「鎌倉入りと政庁設置」を幕府成立の起点とする説明が広く用いられます。なお1179年は平清盛が後白河法皇を幽閉した政変の年で、頼朝の幕府成立とは直接関係がありません。以上の理由から、正解は1180年です。

【正解】3. 守護・地頭

【解説】

鎌倉幕府は、中央（鎌倉）に政所・侍所・問注所などの機関を整える一方、地方統治の要として「守護・地頭」を全国に配置しました。文治元年（1185年）に後白河法皇の許可を得て設置が本格化し、以後、武家政権が全国支配を進める基盤となりました。守護は原則「一国に一人」で、軍事・警察権を担い、当初は大犯三カ条（謀反人・殺害人の逮捕、大番催促）などの職務を通じて治安維持に当たりました。のちには守護の権限が拡大し、室町期には守護領国制へとつながっていきます。

地頭は荘園や公領ごとに置かれ、年貢の徴収・土地管理・在地の軍事動員を担当しました。平氏没官地などに新たに補任された「新補地頭」と、従来から任じられていた「本補地頭」が区別され、在地支配の実務を通じて御家人層の経済的基盤を支えます。

誤答の選択肢について補足します。国司・受領は公家政権（朝廷）側の官職で、武家の地方機関ではありません。六波羅探題は承久の乱後（1221年）に京都の監視と西国統治の中枢として置かれた出先機関で、全国一律の地方機関とは位置づけが異なります。政所・問注所は鎌倉幕府の中央機関で、地方機関ではありません。以上から、地方に置かれた幕府の政務機関は「守護・地頭」となります。

【正解】4. 源頼家

【解説】

源頼朝が正治元年（1199年）に没すると、嫡男の源頼家が家督を継いで鎌倉政権の長（鎌倉殿）となります。頼家は建仁2年（1202年）に征夷大将軍にも任じられ、形式上は父に続く第二代将軍に当たります。しかし、若年であったことや御家人間の利害対立から専制を強めることが難しく、頼朝の死直後に設けられた「十三人の合議制」によって重要政務は合議で進められました。外戚の比企氏を後ろ盾とする頼家と、北条氏（時政・政子・義時）との対立が深まり、建仁3年（1203年）に頼家は将軍職を奪われ、伊豆修禅寺に幽閉されます。翌元久元年（1204年）に頼家は殺害され、弟の源実朝が第三代将軍となりました。

誤答について補足します。源実朝（選択肢2）は頼家の弟で第三代将軍です。北条時政（選択肢1）と北条義時（選択肢3）は将軍ではなく、将軍を補佐し政務を主導した「執権」側の人物で、とくに時政は初代執権として実権を握りました。従って、頼朝の直後に将軍の座を継いだのは源頼家です。

【正解】1. 政子

【解説】

源頼朝が正治元年（1199年）に没すると、嫡男の源頼家が若年で家督を継ぎます。政務は御家人の合議（いわゆる「十三人の合議制」）のもとに運営されましたが、その枢要で頼家の権威を支え、御家人たちを糾合して政権の連続性を担保したのが、頼朝正室の北条政子です。政子は出家して以後も強い影響力を保持し、母后的立場から政治に関与しました。頼家が専制化を志向して御家人層との摩擦を深めるなかでも、政子は父の北条時政・弟の義時ら北条一門や有力御家人を調整し、鎌倉殿（将軍家）の権威を背後から支え続けます。のちに承久の乱（1221年）での大仏殿での檄文に象徴されるように、政子は「尼将軍」と称されるほどの統率力を発揮し、鎌倉政権の求心力の中心人物として記憶されます。

誤答の補足です。北条時政（選択肢2）は初代執権として実務を主導しましたが、将軍家の「後見」という点では、御家人を束ね将軍権威を体現した政子の役割が中核的でした。比企能員（選択肢3）は頼家の外戚として台頭しましたが、1203年に比企一族は滅ぼされ、後見役とは言えません。北条義時（選択肢4）はのちに執権として権力を確立しますが、頼家期の後見の顔としては政子が適切です。

【正解】3. 北条時政

【解説】

源頼朝の死後、政権運営は御家人の合議体制へ移行しましたが、二代将軍の頼家は若年で専制化を志向し、外戚の比企氏と北条氏・有力御家人の対立が深まりました。建仁3年（1203年）、北条時政は比企能員の変で比企氏を滅ぼし、病を理由に頼家を出家・伊豆修禅寺へ幽閉します。そのうえで、頼朝の次男である源実朝を鎌倉殿として擁立し、同年に征夷大将軍に就かせました。これにより将軍家の継承は確保され、実権は北条家に集中します。

ここで時政が就いたのが「執権」です。執権は将軍を補佐し幕府政務を統括する職で、北条時政が初代執権として体制を固めました。のちに北条泰時の時代には評定衆・連署の整備などを通じて制度化が進み、「将軍は権威、執権は実権」という鎌倉幕府の政治構造が定着していきます。なお、時政自身は牧氏事件（元久2年／1205年）で失脚し、子の北条義時が二代執権として権力を継承します。

誤答の補足です。北条政子は将軍家の権威を体現した「尼将軍」ですが、執権ではありません。大江広元は文治行政を支えた政務官僚で、執権ではありません。北条義時は二代執権であり、時政の後を継いだ人物です。以上より、頼家を退け実朝を将軍に据え、最初の執権となったのは北条時政です。

【正解】2. 公暁

解説

実朝（源実朝）は鎌倉幕府第三代将軍で、建保7年正月27日（1219年2月12日）に鶴岡八幡宮で右大臣拝賀の儀を行った帰途、大石段付近で甥にあたる公暁（こうぎょう）に襲撃され、暗殺されます。公暁は二代将軍頼家の子で、比企氏滅亡後に出家して八幡宮で育ちました。伝承では、公暁は大銀杏の陰から飛び出し、実朝を一刀のもとに倒したとされます。

この暗殺は、将軍家内部の血縁対立と、御家人間の勢力関係が複雑に絡み合う中で起きました。公暁の動機としては、父頼家を失脚・殺害に追い込んだ北条氏への怨恨や、将軍職奪還の野望が指摘されますが、誰が背後で支援したのかについては史料により見解が分かれ、確定的ではありません。『吾妻鏡』では、公暁は犯行後に逃走し、最終的に三浦義村方の郎従らに討たれたと伝えています。

実朝の死によって源氏将軍の直系は断絶し、幕府は京都から摂家将軍（九条頼経）を迎える体制へと転換します。これにより、将軍は象徴化し、北条氏が執権として実権を握る政治構造がいっそう強化されました。公暁の暗殺は、鎌倉幕府の権力配置を大きく変える転機となった事件であると言えます。

【正解】2. 源氏将軍の血統が途絶えたこと

【解説】

承久元年（1219年）、第三代将軍・源実朝は右大臣拝賀のため鶴岡八幡宮に参詣中、甥の公暁（頼家の子）により暗殺されます。実朝には嗣子がいなかったうえ、頼家の男子（公暁・一幡）も相次いで失われていたため、この事件によって源氏将軍の直系血統は事実上断絶しました。したがって、この暗殺は「源氏将軍の血統が途絶えたこと」を意味します。

源氏将軍の断絶は、政権構造を大きく転換させます。将軍家の権威を維持するために、北条政子・義時らは外部から将軍を迎える方針に転じ、まず摂関家から九条頼経（藤原頼経）を擁立して「摂家将軍」の時代を開き、のちには皇族から将軍を迎える「親王将軍」の時代へと進みます。一方、実権は執権・北条氏に集中し、以後の幕政は合議を基調とする執権主導体制が明確になります。

誤答の補足です。①「鎌倉幕府の滅亡」は南北朝期まで起こりません。③「北条氏の政権崩壊」どころか、むしろ北条氏の主導権は強化されます。④「承久の乱の勝利」は1219年の暗殺から2年後の1221年の出来事で、実朝暗殺の直接の意味とは異なります。以上から、正解は「源氏将軍の血統が途絶えたこと」です。

【正解】4. 兼子（丹後局）

【解説】

承久元年（1219年）に源実朝が暗殺されると、将軍家の直系が断絶し、幕府は新たな「権威の柱」を必要としました。北条政子は、鎌倉政権の正統性を補強するために、まずは親王将軍の迎え入れを視野に入れて朝廷と折衝します。この際、実際の交渉窓口・影響力の媒介となったのが、後鳥羽院の信任厚い女房である丹後局・藤原兼子でした。兼子は院近臣の中でも発言力が高く、院政下の人事や儀礼を取り仕切る中核的存在で、政子は彼女を通じて朝廷の意向を探り、妥協点を模索したと伝えられます。結果として、直ちに親王将軍の派遣は実現しませんでしたが、摂関家・九条家から幼少の三寅（のちの九条頼経）を将軍に迎える道筋が整い、1226年に頼経が四代将軍として入る「摂家将軍」体制が確立します。これは将軍の権威を保ちつつ、実権は北条執権が掌握するという鎌倉幕府の政治構造を安定させるものでした。

誤答の補足です。阿波内侍・坊門局・按察局はいずれも宮廷女房として知られますが、実朝後継将軍擁立の具体的交渉で中核となった人物は丹後局（兼子）です。

【正解】3. 北条義時

解説

鎌倉幕府の執権は、将軍を補佐・代行して幕政を主導する役職で、北条氏が世襲的に担っていきます。初代執権は北条時政ですが、元久2年（1205年）のいわゆる「牧氏事件」を契機に、時政は将軍源実朝排除を企てたとして、娘の政子（尼将軍）と子の義時の反発にあい、出家して伊豆へ退き失脚しました。こののち、二代目執権に就いたのが北条義時です。

義時は就任後、姉の北条政子と連携して幕府中枢の統制を強めます。建暦3年（1213年）には和田義盛の挙兵（和田合戦）を鎮圧して有力御家人を抑え、承久3年（1221年）には後鳥羽上皇方との対立が決定的になると、政子の演説で御家人を糾合して上皇方を破り（承久の乱）、六波羅探題の設置や守護・地頭の拡充を進めました。これにより、幕府の全国支配は一層制度化され、北条氏の執権政治が本格化します。義時の後は子の北条泰時が三代目執権となり、御成敗式目の制定など法制面の整備を行いました。

【正解】4. 承久の乱

解説

承久の乱は承久3年（1221年）に起きた朝廷と鎌倉幕府の決戦で、後鳥羽上皇が執権北条義時の追討を命じて挙兵したことに端を発します。上皇は院宣を全国に下し、特に西国の武士を動員して幕府に対抗しようとしましたが、鎌倉では「尼将軍」（実質的な鎌倉殿）北条政子が御家人に向けて頼朝以来の恩顧を説いて結束を訴え、東国武士の大動員に成功します。このとき、政子は、御家人を簾下に集め、足立景盛に命じて次のように檄を飛ばしたといわれています。

集まった御家人らは、鎌倉殿である政子の檄に、感涙を禁じ得なかったということです。

勢いを得た幕府軍は、東海道・東山道・北陸道の三方面から西上し、要衝の宇治・瀬田の戦いなどで上皇方を撃破して京都に入ります。戦後処理として、後鳥羽上皇は隠岐、順徳上皇は佐渡に配流され、京では上皇方の公家・武士の所領が大規模に没収されて東国御家人に恩賞として与えられました（新補地頭の任命が進みます）。さらに、京都統治の常設機関として六波羅探題が置かれ、西国支配の体制が強化されます。

この一連の措置により、鎌倉幕府の全国的支配は決定的なものとなり、朝廷の軍事・警察権は大きく後退しました。のちに三代執権北条泰時は御成敗式目（1232年）を制定し、武家政権の法的基盤を整備します。承久の乱は、院政期以来の皇権中心の秩序から、武家政権が制度的に主導する中世日本の政治秩序への転換点であったと評価できます。