院政の成立と平氏政権がよくわかる！クイズ10問

**正解：2**

**解説（できるだけ詳しく）**

後三条天皇（在位1068〜1073年）は、摂関家の権力が強大であった時代に、中央財政の立て直しと公的領域の再編を図った天皇です。1069年（延久元年）に出された「延久の荘園整理令」は、その代表的な改革で、私的に開発・寄進されて乱立していた荘園の正当性を厳格に点検することを目的としていました。具体的には、荘園成立を裏づける「券契」（領有・寄進の証文）の提出を求め、成立の根拠が薄い・年紀が新しい・領域が不明確などの“違法・不当”な荘園を整理・停止しました。

この点検・審査の実務を担うため、後三条天皇は太政官の下に「記録荘園券契所」を設置します。ここで提出文書や境界・年貢状況が精査され、要件を満たさない荘園は**公領（国衙領）へと復帰させられました。結果として、寺社・貴族・有力武士に偏っていた私的収益の一部が国庫に戻り、朝廷の財政基盤が相対的に強化されます。これにより、国内の土地が私的領域（荘園）と公的領域（公領）に二分される構造**がより明確化し、「荘園公領制」が制度として定着・進展しました。

さらに後三条天皇は、枡の基準を統一する「延久宣旨枡」の採用など、徴税の標準化にも取り組みました。これら一連の改革は、摂関家（とくに藤原頼通・師実ら）の経済的基盤に一定のメスを入れるもので、以後の院政成立（白河上皇期）へとつながる、**王権の自立化に向けた重要な転換点**となったのです。

正解：3

解説（できるだけ詳しく）

1087年に、白河天皇は堀河天皇へ譲位して上皇（白河院）となり、以後は天皇の外側から政治を主導しました。ここでいう「院政」とは、譲位後の上皇・法皇が院宣（いんぜん）や院庁下文（いんのちょうくだしぶみ）を発して、官人の任免・訴訟の裁断・荘園や国衙領の支配などを直接指揮する統治形態を指します。

白河院の狙いは、摂関家（藤原北家）による外戚政治からの自立でした。先帝の後三条天皇が延久の荘園整理令で朝廷財政の立て直しに着手しており、白河はその路線を継ぎつつ、院庁を中枢機関として整備し、院近臣（上皇に近侍する公家）を基盤に意思決定を進めました。さらに、院の警護・実力装置として知られる北面の武士を配し、権力の実行力を高めたことも重要です。

白河院の長期支配は、鳥羽・後白河へと受け継がれ、12世紀の政治秩序を特徴づける「院政期」を形成しました。他方で、王家・院・摂関家・寺社勢力・武士の利害が複雑に交錯し、やがて保元・平治の乱へと至る土壌も生みます。総じて、1086年の白河による院政開始は、摂関政治から院政への転換点であり、王権のあり方と武家台頭の前史を理解するうえで決定的な出来事であったと言えます。

【正解】2

解説

院政期（11～12世紀）には、白河・鳥羽・後白河といった上皇がたびたび熊野三山（本宮・新宮・那智）へ参詣し、これを**熊野詣（熊野御幸）**と呼びました。熊野は神仏習合の霊場として「熊野権現」を本地垂迹の理で仏と結びつけ、那智の滝や青岸渡寺などの聖地とともに厚い信仰を集めました。末法思想の広がりと浄土信仰の隆盛の中で、上皇や貴族は病気平癒・国家安泰・来世安穏などを祈り、しばしば大規模な行列で参詣しています。こうした頻繁な御幸は熊野古道の整備や宿所・流通の発達を促し、やがて庶民にも参詣が広がって「蟻の熊野詣」と形容されるほどの賑わいを見せました。伊勢や春日、高野への参詣も行われましたが、とりわけ院政期の宮廷文化を象徴する動向として有名なのが熊野詣であると言えます。

【正解】3

解説

平安後期から院政期にかけて、延暦寺（比叡山）や興福寺（奈良）などの大寺院は、広大な荘園を獲得・維持するために僧兵を組織しました。僧兵は、武装した僧侶や寺院に属する雑人からなる実力部隊で、寺領の警備だけでなく、年貢の取り立てや境界紛争の解決、さらには朝廷や国司に対する圧力行使まで担いました。とりわけ訴えが通らないときには、比叡山の延暦寺は日吉社（山王）や、興福寺は春日社の神輿を担いで上洛して強訴するなど、宗教的権威を背景にした示威行動が頻発しました。これは「南都北嶺」と称される両大寺院の軍事的・政治的影響力を象徴する出来事です。

一方、荘園経営の実務を担うのは荘官でしたが、彼らは行政・財務の担当であり、武力衝突の主役は僧兵でした。また、検非違使は朝廷の治安官で寺社側の組織ではありません。悪党は鎌倉後期に各地で台頭した武装集団で、時期と性格が異なります。以上の点から、荘園拡大をめぐる大寺院の対抗手段の中核は僧兵であったと言えます。

【正解】4

解説

平安末期の院政期には、摂関家（藤原氏）と結びつく源氏の武士勢力に対抗するかたちで、平氏が院（上皇）側の軍事力として台頭します。その中心人物が平清盛です。清盛は父の平忠盛から受け継いだ軍事・経済基盤を拡大し、瀬戸内海の海賊・水軍勢力を抑え込むことで海上交通と流通を掌握しました。これにより、院庁の命令を迅速に実行できる実力部隊として評価され、鳥羽上皇の信任をさらに確かなものとしました。

厳密には、瀬戸内海の海賊平定で最初に大きな功を立てて上皇の信頼を得たのは父の忠盛でしたが、清盛はその基盤を引き継ぎ、より広域にわたる制海権を築きます。こうした軍事的優位は、保元の乱（1156）・平治の乱（1159）での勝利にもつながり、清盛は**武士として初の太政大臣（1167）**に就任するまでに出世しました。さらに、日宋貿易を奨励して経済力を高め、院政下の政治構造において平氏政権を確立します。

正解】2. 保元の乱

【解説】

保元の乱は、1156年（保元元年）に起こった朝廷内部の武力衝突で、院政期の権力構造と武士勢力の台頭を象徴する出来事です。背景には、鳥羽法皇の死を契機とする皇位継承・院政主導権争いがあり、前代からの政治的対立が一気に噴出しました。崇徳上皇は自身の系統への政権回復を望み、これに対して在位中の後白河天皇側は現体制の維持を図りました。

勢力図としては、後白河方に藤原忠通、平清盛、源義朝らが付き、崇徳方には藤原頼長、源為義、平忠正らが与しました。戦闘は京都周辺で行われ、兵力運用と指揮の面で優位に立った後白河方が勝利します。結果として、崇徳上皇は讃岐国に配流され、藤原頼長は戦死、源為義や平忠正も処刑・戦死するなど、崇徳方は壊滅的打撃を受けました。

この乱の意義は大きく、第一に、中央政界の紛争解決に武士の軍事力が不可欠であることが明確になり、武士の政治的発言力が飛躍的に高まった点が挙げられます。第二に、勝者側の平清盛と源義朝が頭角を現し、その後の平治の乱（1159年）へと直結していく権力再編の端緒となりました。さらに長期的には、平氏政権の成立、そして治承・寿永の乱（源平合戦）につながる流れを生み出したという点でも、日本中世政治史の重大な転換点であったと評価されます。以上の理由から、本問の正解は「保元の乱」です。

【正解】3. 平治の乱

【解説】

平治の乱は1159年（平治元年）から1160年にかけて京都で起きた政変・内乱で、保元の乱（1156年）の後に続く権力抗争として位置づけられます。後白河上皇の近臣である藤原通憲（信西）と、武家の棟梁として台頭していた平清盛が結びついた一方で、藤原信頼と源義朝がこれに対抗しました。

1159年冬、清盛が京を離れている隙を突いて、信頼・義朝方は三条殿を襲撃して後白河上皇と二条天皇を掌握し、政権奪取を図りました。その過程で通憲（信西）は捕縛・殺害されます。しかし清盛は急遽帰洛して二条天皇の身柄を確保し、朝廷の正式な綸旨を得て反撃体制を整えました。結果として、源義朝方は京都市中戦で敗北し、義朝は東国へ落ち延びる途中の尾張国で討たれ、藤原信頼も処刑されました。

この勝利により平清盛は政治的主導権を握り、平家一門の栄達が本格化します。一方で源氏は打撃を受け、義朝の子である源頼朝は助命のうえ伊豆へ流されました。のちに頼朝はこの屈辱を糧として挙兵し、治承・寿永の乱（源平合戦, 1180–1185年）へとつながっていきます。平治の乱は、武家政権成立への長いプロセスの中で、平家政権の確立と源氏再興の伏線を同時に生んだ転換点であったといえます。

【正解】4. 太政大臣

【解説】

平治の乱（1159〜1160年）で源義朝らを打ち破って主導権を握った平清盛は、公家社会の頂点に近い官職へ急速に上りつめました。頂点として清盛が到達したのが、1167年（仁安2年）に任じられた太政大臣です。太政大臣は太政官制の最高位であり、従来は公家名門が占める座でしたが、清盛は武家出身者として初めてこの地位に達しました。まさに「前例のない昇進」であり、武士が国家権力の中心に進出したことを象徴する出来事です。

清盛は平治の乱後に経済基盤を整え、瀬戸内海の制海権や日宋貿易の利益を掌握することで財政力を高めました。こうした軍事・経済の実力に加え、朝廷内では人事掌握と縁戚関係の構築（のちに娘・徳子を高倉天皇に入内させ、外戚として権勢を固めます）に長けていました。太政大臣就任後まもなく出家して「入道相国」と称しつつも、実権は手放さず、平家政権の基盤を固めていきます。

選択肢の「関白」は本来、天皇の補佐として摂関家が担う職で、清盛は就いていません。「左大臣」「内大臣」も有力公卿の官職ですが、清盛の到達点であり象徴的な「前例のない昇進」は太政大臣である点が重要です。以上の理由から正解は「太政大臣」です。

【正解】2. 鳥羽殿

【解説】

1179年（治承3年）の「治承三年の政変」において、平清盛は大軍を率いて上洛し、公卿の大量解任・配流などの人事を断行して政権掌握を強めました。その中心的措置が、後白河法皇の幽閉です。清盛は法皇の院宣（院からの公式命令）による政治介入を断つため、法皇を京都南郊の鳥羽離宮、通称「鳥羽殿（とばどの）」に幽閉しました。鳥羽殿はもともと鳥羽天皇ゆかりの大規模な離宮群で、賀茂川・桂川の水運にも近い一帯に広がる離宮コンプレックスでしたが、この時期には事実上の軟禁施設として機能しました。

この幽閉により後白河院政は停止状態となり、清盛は院宣・綸旨の流通を実力で遮断して権力を独占します。結果として、翌1180年には高倉天皇の譲位と安徳天皇（清盛の外孫）の即位、さらに福原遷都など、一連の強硬策が可能となりました。この政変は、「清盛のクーデター」と呼ばれています。もっとも、こうした専制的措置は反平氏勢力の結集を促し、以後の源平合戦（治承・寿永の乱、1180–1185年）へと情勢を一気に緊迫化させる要因となりました。以上の経緯から、幽閉先は「鳥羽殿」となるのが正答です。

正解: 2. 厳島神社

解説:

厳島神社は、広島県廿日市市の厳島（宮島）にある神社で、海上に浮かぶ朱塗りの大鳥居と回廊で知られています。創建は推古天皇の時代と伝えられますが、平安時代末期に平清盛がこの神社を篤く崇敬し、大規模な造営・修復を行ったことで大きく発展しました。清盛は日宋貿易の拠点として瀬戸内海航路の整備を進め、その安全祈願と平氏一門の繁栄を願って厳島神社を平氏の氏神としました。社殿は寝殿造を取り入れた優美な様式で、潮の満ち引きによって変化する景観は現在でも多くの人々を魅了しています。こうして厳島神社は平氏の権勢とともに繁栄し、後世に至るまで日本を代表する神社の一つとなりました。

参考文献：

下向井龍彦著 (2001) 『武士の成長と院政』講談社