平城京のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】2（710〔和銅３〕年）
【解説】
平城京への遷都は和銅３年（710年）に元明天皇のもとで実施された出来事です。場所は現在の奈良市一帯で、唐の長安をモデルにした条坊制（碁盤目状の都市計画）が敷かれ、中央を朱雀大路が南北に貫き、左京・右京と宮城（平城宮）が区画されました。藤原京（694年に完成）は日本初の本格的な都城でしたが、律令国家の整備と交通・防衛・水利の面からより適地が求められ、政治・宗教・文化の一層の中心化をめざして平城京が選ばれたと理解されています。平城京期に朝廷は遣唐使の派遣や律令・戸籍・税制の運用を進め、仏教文化も大いに発展しました（のちに東大寺大仏の鋳造〈752年〉へと結実します）。710年の遷都を起点に784年の長岡京遷都までを一般に「奈良時代」と呼び、古代国家の制度・文化が成熟する重要な時期となりました。選択肢の「694年」は藤原京の成立年、「701年」は大宝律令の制定年、「708年」は和同開珎鋳造や和銅改元の年であり、平城京遷都の年とは異なります。

【正解】3（和銅開珎）
【解説】
奈良時代を代表する銭貨は「和銅開珎」です。一般には銘文に合わせて「和同開珎」とも表記されますが、改元名の「和銅」にちなむため「和銅開珎」と記す資料もあります。発行は708年（和銅元年）ごろで、武蔵国秩父で銅が献上されたことを契機に鋳造が始まったとされます。和銅開珎は国家が主導して鋳造した本格的な銅銭であり、以後の「皇朝十二銭」と呼ばれる一連の国産銭の嚆矢となりました。朝廷は銭貨経済を育てるため、位階や恩典と引き換えに貯蓄を奨励する施策（蓄銭叙位令など）を打ち出し、市場流通の活性化を図りました。もっとも、古代の租税体系（租・庸・調）は依然として稲や布を基本としており、銭貨の流通は地域差が大きかったことも事実です。選択肢の「富本銭」は飛鳥時代末の試鋳とみられる最古級の銭で全国流通の本格銭ではありません。「万年通宝」（760年）や「乾元大宝」（平安中期）は和銅開珎より後の銭で、いずれも朝廷が追加発行した別系列の国産銭です。和銅開珎は、律令国家が財政・交易を整備し、唐の制度と貨幣文化を積極的に取り入れようとした象徴的存在であったと言えます。

長屋王

【正解】4（長屋王の変）
【解説】
長屋王の変は、天平元年（729年）に起きた政変で、藤原不比等の四子（武智麻呂・房前・宇合・麻呂）が、当時朝廷で大きな発言力をもっていた皇族の長屋王を「謀反（あるいは呪詛）の疑いあり」と糾弾し、王とその一族を自害に追い込んだ事件です。背景には、元明・元正朝以来、律令国家の実務を牛耳ってきた藤原氏が、娘の光明子（後の光明皇后）を聖武天皇の后とし、外戚としての地位を固めようとする思惑がありました。長屋王は天武天皇の孫に当たる直系の皇族で、血統・官位ともに藤原氏を凌駕しうる存在であったため、藤原氏にとって最大の政治的障害でした。事件後まもなく光明子は正式に皇后に立てられ、皇族出身者以外として初の皇后就任が実現し、藤原氏の外戚支配が制度面でも強化されます。もっとも、735～737年の天然痘流行で四兄弟が相次いで没し、いったん藤原政権は後退しますが、長屋王の変は藤原氏が奈良時代政治の主導権を握る端緒となった出来事として重視されます。なお、告発の真偽については後世、冤罪視する見解が有力で、政治的策謀色が濃い事件であったと考えられています。

【正解】1（聖武天皇）
【解説】
東大寺の大仏（盧舎那仏）の造営は、聖武天皇の発願による国家事業として進められました。背景には、天然痘の大流行や政治的不安、地方反乱などで国情が不安定だったことがあり、天皇は仏教の力で国を安泰に導こうと考えました。743年には「大仏造立の詔」を出して事業を公式化し、奈良（平城京）に造営の拠点を定めて全国的な動員が行われます。造像は大規模な鋳造と鍍金を伴う前例の少ない工事で、多数の官人・工人・僧侶・民衆が参加しました。勧進の中心として行基が協力し、寺院整備では良弁らが活躍し、752年の開眼供養会ではインド僧の菩提僊那が導師を務めました。光明皇后は施薬院・悲田院の設置など福祉事業とともに強力に支援しましたが、主催者はあくまで聖武天皇です。鑑真は唐から律を伝えた高僧で、授戒制度の確立に貢献しましたが、大仏造営の主導者ではありません。こうした経緯から、東大寺大仏の造営主体は「聖武天皇」と答えるのが正確です。

【正解】3（藤原仲麻呂）
【解説】
藤原仲麻呂（ふじわらのなかまろ、のちの恵美押勝〈えみのおしかつ〉）は、藤原不比等の孫で、父は藤原武智麻呂です。仲麻呂にとって光明皇太后（不比等の娘）は伯母に当たり、この外戚関係を強固な後ろ盾として、孝謙天皇期（在位749～758年）に急速に台頭しました。757年には橘諸兄らに代わって政権の中枢を握り、官人人事や法令運用を主導し、758年には自ら推す淳仁天皇（大炊王）を即位させて事実上の専権体制を築きます。経済面では銭貨経済の活性化を図り、760年の「万年通宝」発行など財政施策も進めました。また、仏教勢力の政治介入を抑える姿勢を示し、朝廷主導の統治を強めようとしました。760年にはついに大師（太政大臣）隣、権勢を極めますが、同年、後ろ盾であった光明皇太后が亡くなり、孝謙上皇（のち称徳天皇）が僧・道鏡を重用するようになると対立が先鋭化し、764年に仲麻呂は挙兵（藤原仲麻呂の乱）するも、戦いに敗れ、琵琶湖北西岸で兵士に斬殺されました。

道鏡

【正解】4（道鏡）
【解説】
道鏡（どうきょう／弓削道鏡）は、称徳天皇（孝謙天皇が重祚）の強い信任を受けて急速に台頭した奈良時代の僧です。764年の藤原仲麻呂の乱鎮圧後、称徳の側近として登用され、765年には大臣禅師という前例の少ない地位に就き、翌766年には僧官の頂点を超える特設の称号「法王（ほうおう）」に任じられました。法王は政務・仏教儀礼双方に強い影響力を及ぼす立場で、道鏡は人事や詔勅立案にも関与し、国家運営に事実上の主導権を持つに至ります。
やがて769年、宇佐八幡宮の神託を口実に「道鏡を天皇に」との動きが生じましたが、和気清麻呂の奏上によって退けられました。770年に称徳が崩御すると後ろ盾を失い、道鏡は下野国の薬師寺別当に左遷され、772年に没します。以上の経緯から、称徳の寵愛を受けて法王に昇り、権勢を振るった僧として正解は道鏡です。

【正解】3（光仁天皇）
【解説】
称徳天皇が770年に崩御すると、白壁王（しらかべのおう）が即位して光仁天皇となりました。光仁は天智天皇の孫（父は志貴皇子）で、天武系が続いた皇統が天智系へと回帰する転換点となります。即位の背景には、称徳の寵臣・道鏡の失脚（宇佐八幡神託事件後、下野へ左遷）と、藤原永手・藤原百川、和気清麻呂らの推挙がありました。光仁朝（在位770～781年）は、道鏡時代の人事や財政を整理し、質素・倹約や租税の是正などを通じて朝政の立て直しを図った時期です。やがて781年には皇太子・山部親王が桓武天皇として即位し、のちの長岡京・平安京への遷都へとつながっていきます。

【正解】2（三世一身法）
【解説】
三世一身法（さんぜいっしんほう）は、養老7年（723年）に朝廷が定めた開墾奨励の法令です。背景には、口分田の不足や公地公民制の維持に必要な租税基盤（稲の収取）の確保という課題がありました。そこで政府は、新たに開墾した田地について、その開墾者と子・孫の三代（＝三世）にわたって私的な保有・収益を認め、三代が過ぎれば公地に返還させる仕組みを設けました。すなわち「期限つきの私有」を認めて、労力と費用のかかる新田開発を促そうとしたのです。
しかし、三代限りという制限は投下労力の回収を難しくし、大規模な新田開発には十分なインセンティブになりませんでした。このため、より強い奨励策として、後の天平15年（743年）に「墾田永年私財法」が出され、開墾地の永久私有が認められる方向へと転換します。これにより、荘園の形成や拡大が進む端緒となりました。選択肢の「班田収授法」は本来の公地公民制の根幹原則、「条里制」は土地区画の制度であり、いずれも723年の開墾奨励法そのものではありません。

【正解】1（墾田永年私財法）
【解説】
墾田永年私財法（こんでんえいねんしざいほう）は、天平15年（743年）に聖武天皇のもとで出された開墾奨励法令です。内容は、新たに開墾した田地を「永年＝期限なく」開墾者の私有財産として認めるというものでした。これは、従来の公地公民制と班田収授制の原則（口分田を一定年限ごとに配分・返還する）を大きく緩め、国家財政の立て直しと生産力向上を図る政策でした。背景には、口分田の不足や墾田の荒廃、労働力の確保難などがあり、723年の三世一身法（開墾者と子・孫の三代限りで保有を認める）ではインセンティブが弱かったため、より踏み込んだ恒久私有の容認へ転換したのです。
この法により、貴族・寺社・郡司層から農民に至るまで開墾が活発化し、のちの荘園形成の大きな契機となりました。結果として、国衙の直轄領と私的領域が併存する体制が広がり、律令国家の統治構造は次第に変質していきます。なお、選択肢の「三世一身法」は743年より前の時限的私有の制度で、「班田収授法」「公地公民制」は律令体制の根本原則であり、743年の法令名そのものではありません。

百人一首の阿倍仲麻呂

【正解】4（阿倍仲麻呂）
【解説】
阿倍仲麻呂は717年（養老元年）、遣唐使の一行として唐に渡り、同時に留学生・留学僧として派遣された吉備真備や玄昉とともに学問を修めました。仲麻呂は唐名を「朝衡（ちょうこう）」と改め、科挙に及第して官人となり、詩文や政治的能力を高く評価されて玄宗皇帝の信任を得ました。以後、長安の朝廷で高位の官職に就き、唐の官僚として実務に携わるという、同時代の日本人としては特異で卓越した経歴を歩みます。
一度は帰国を試み、753年に日本への帰路につきますが、暴風で船が難破して南方に流され、ついに帰国は果たせませんでした。帰還の折に詠んだと伝わる和歌「天の原 ふりさけ見れば 春日なる　三笠の山に いでし月かも」は、故郷・奈良（春日・三笠山）への望郷の念を象徴する名歌として知られます。仲麻呂はその後も唐で仕え続け、770年頃に客地で亡くなったと伝えられます。
誤答の選択肢について：玄昉は同じ717年に渡唐した僧ですが帰国後は奈良で活動しました。吉備真備も717年に渡唐し、のちに帰国して朝廷で重用されましたが、中国で官人として仕え続けたわけではありません。鑑真は唐の高僧で、日本に戒律をもたらした渡来僧であり、日本人ではありません。従って、玄宗に重用され唐の高官として活躍した日本人は阿倍仲麻呂です。