デカルトのことがよくわかる！クイズ10問

正解：2. フランスのラ・エー

解説：

ルネ・デカルトは、1596年3月31日にフランスのラ・エー（現在の「デカルト村」）で生まれました。この地名は後に彼にちなんで改名されたほど、デカルトの影響は大きなものです。ラ・エーはフランス西部のトゥーレーヌ地方に位置し、当時は静かな田舎町でした。デカルトはそこで比較的裕福な家庭に生まれ、幼少期を過ごしました。彼の合理主義的な哲学と、「我思う、ゆえに我あり（Cogito, ergo sum）」という有名な命題は、後の西洋哲学に大きな影響を与えました。デカルトの思想の根底には、この故郷で育まれた深い思索の精神があるとも考えられています。

ラ・エーにあるデカルトの生家(Wikipedia)

正解：2. ドナウ河畔の炉部屋

解説：

デカルトは1619年、軍務に就いていた際、現在のドイツにあたるドナウ川沿いのある町で「炉部屋（ストーブ付きの暖房室）」にこもり、深い瞑想と思索にふけっていました。このとき、彼は連続して３つの象徴的な夢を見たと伝えられています。この夢の体験をデカルト自身は「啓示」と受け止め、自らの哲学的探究の道筋、すなわち合理的な思考方法を確立するためのインスピレーションとしました。この炉部屋での体験は、のちに著した『方法序説』に大きな影響を与えたとされています。炉部屋は、寒さを防ぐための小さな密室であり、外界から遮断された環境が、彼の思索をより一層深める役割を果たしたと考えられます。

正解：2. Je pense, donc je suis.

解説：

デカルトの「我思う、故に我あり」という言葉は、フランス語では「Je pense, donc je suis.」と表現されます。この言葉は、デカルトの哲学の中心的な命題であり、疑うことさえもできない確実な真理として導き出されました。彼は、すべてを疑う方法的懐疑を進める中で、疑っている自分自身の存在だけは否定できないという結論に到達しました。この「思考する私」という存在の確実性を、簡潔に言い表したのが「Je pense, donc je suis.」です。ラテン語では「Cogito, ergo sum」（コギト・エルゴ・スム）としても有名ですが、『方法序説』では、母国語であるフランス語による表現が用いられました。この言葉は、近代哲学の出発点ともされ、以後の哲学に多大な影響を与えました。

正解：2. 神の存在証明

解説：

デカルトは、『省察』（正式名称『第一哲学についての省察』）において、神の存在証明を中心的な課題としました。この著作は1641年に刊行され、彼の方法的懐疑をさらに深化させたものであり、まずあらゆるものを疑った後、確実な知識に到達する過程を描いています。その中でデカルトは、「我思う、故に我あり」という自己存在の確実性を出発点に、次に「完全な存在」である神の存在を証明しようと試みました。

彼の証明方法には、「神の観念は不完全な人間に由来し得ないため、必ず完全な存在である神が実在する」という論理が含まれています。デカルトは神の存在を確立することで、さらに外界の存在や真理の確実性を保証しようと考えました。『省察』は、近代哲学における認識論と存在論の基礎を築いた重要な著作と評価されています。

正解：1. 心身二元論

解説：

デカルトは、人間を構成するものとして「精神（心）」と「身体」という異なる二つの実体が存在すると考えました。これがいわゆる**心身二元論（デュアリズム）**です。

デカルトの立場を整理すると、次のようになります。

1. 精神と身体は本質的に異なるもの

• 精神（心）は、「思考する存在（res cogitans）」です。広がり（空間的な広がり）を持たず、考えること、意識することが本質です。
• 身体は、「延長する存在（res extensa）」です。広がりや形、運動など、空間的な性質を持っていますが、自ら考えることはできません。

つまり、精神は物質的なものではなく、身体は思考を持たないという、性質が根本的に異なる二つの存在をデカルトは想定しました。

2. 精神と身体は相互に影響しあう

デカルトにとって、精神と身体は別々の実体でありながら、相互に影響しあうと考えられていました。

たとえば、

• 心が悲しめば、身体も涙を流す。
• 身体が傷つけば、心に痛みが生じる。

というように、心の状態が身体に、身体の状態が心に作用するとされます。

3. 相互作用の中心は「松果腺（しょうかせん）」

デカルトは、精神と身体が相互に影響する「接点（交流の場）」として脳内の松果腺（pineal gland）を特別視しました。

• 松果腺は脳の中心に位置しており、他の器官とは異なり「一つだけ存在する」ことから、ここが精神と身体の間の相互作用を司る場所だと考えたのです。

（※ただし、現代の医学的知見では松果腺が心身交流の役割を担っているわけではありません。）

正解：2. 数学的な永遠真理すらも、神によって創造されたものだとする立場

解説：

デカルトの永遠真理創造説とは、数学的な命題や論理的な法則といった、一般に「絶対に変わらない」と考えられる永遠の真理ですら、神の自由な意志によって創造されたものだとする考え方です。

通常、2+3=5 や「矛盾律」などの論理法則は、どんな存在にも依存しない普遍的なものと考えられますが、デカルトはそれらも神の全能性に従うべきだと考えました。つまり、神が異なる法則を定めようと思えば、別の真理が成立していた可能性すらあるというのです。

この立場は、神の全能性を絶対的に守る一方で、永遠真理の必然性について難しい問題を提起しました。後のライプニッツなどは、これに異議を唱え、永遠真理は神の理性に由来すると考えましたが、デカルト自身は一貫して「神の意志こそがすべてを決める」とする立場を取りました。この考え方は、近世哲学における神と理性の関係をめぐる重要な議論の出発点となりました。

正解：2. 幾何学における直行座標系の発明

解説：

デカルトが数学史において残した最大の業績は、「幾何学における直行座標系（デカルト座標系）」の発明です。彼は1637年に発表した著作『方法序説』の付録『幾何学』の中で、平面上の点の位置を数値（座標）によって表現する方法を初めて体系的に示しました。これにより、図形と代数式を対応させる「解析幾何学」という新しい分野が誕生しました。

デカルト座標系では、通常、互いに直角に交わる二つの数直線（X軸とY軸）を用い、点の位置を数値の組（x, y）で表します。この画期的な方法によって、幾何学の問題を代数的に解くことが可能になり、のちのニュートンやライプニッツによる微積分学の発展にも大きな影響を与えました。今日の数学、物理学、工学に至るまで、直行座標系は欠かすことのできない基本概念となっています。

正解：2. 誠実さ

解説：

デカルトは『省察』などの著作の中で、神の存在とその属性について深く論じています。その中で、無限の存在である神の第一の本質的属性は「誠実さ（véritéまたはveracité）」であると考えました。つまり、神は本質的に誠実であり、欺くことがない存在であるという立場を取ったのです。

この考え方は、デカルトの認識論にとって極めて重要な役割を果たします。もし神が誠実であり、欺かない存在であるならば、人間が明晰かつ判明に把握する観念は真理であると信頼できることになります。デカルトはこの神の誠実さを前提にして、感覚や理性による認識の確実性を保証しようと試みました。これによって、懐疑の果てに確実な知識へと到達する理論的基盤が築かれたのです。

エリザベト王女(Wikipedia)

正解：1. エリザベト王女

解説：

デカルトの晩年期における代表的な弟子は、プファルツ選帝侯家の出身であるエリザベト王女（エリザベート・フォン・プファルツ）です。エリザベト王女は、非常に聡明で哲学に深い関心を持ち、デカルトと長い間書簡を通じて交流しました。特に心身問題（精神と身体の関係）について鋭い質問を投げかけたことで知られています。

デカルトは、エリザベト王女に対して『情念論』の内容を含む丁寧な説明を行い、また哲学だけでなく倫理や実践的な生き方についても助言を与えました。このやり取りは、デカルト哲学を理解する上で非常に重要な一次資料となっており、晩年のデカルトが単なる抽象的な思索にとどまらず、現実の人間の悩みに応じた応答を行っていたことを示しています。

エリザベト王女との対話は、デカルトが自身の思想をさらに深め、洗練させる契機にもなったと考えられています。

正解：2. 疑うことを通して、究極的に疑いえないものを探求すること

解説：

デカルトの「方法的懐疑」とは、あらゆるものを一度疑い、最終的に絶対に疑いえない確実な真理に到達しようとする哲学的方法です。彼は感覚の経験も、数学的な知識さえも疑いうるものとし、徹底的にすべてを疑いました。その結果、「疑っている自分自身の存在」だけは疑いえないことに気づき、「我思う、ゆえに我あり（Cogito, ergo sum）」という確実な出発点を得たのです。

方法的懐疑は、ただ単に何でも否定する態度ではなく、より堅固な知識体系を築くための出発点を探す積極的な探求の方法です。デカルトはこの方法によって、真理に到達するためにはまず疑うことが不可欠であると考えました。この考え方は、近代哲学の基礎を築き、合理主義の発展に大きな影響を与えました。

参考文献：

冨田恭彦著『デカルト入門講義 』ちくま学芸文庫
田中仁彦著『デカルトの旅/デカルトの夢 : 『方法序説』を読む 』岩波書店
野田又夫責任編集『デカルト』世界の名著 中央公論社