日本の中国進出のことがよくわかる！クイズ5問

正解：2

解説：

第一次世界大戦の勃発（1914年）は、列強が欧州戦線に注力する中で日本の対中進出を加速させる好機となりました。大隈重信内閣（外相は加藤高明）は、1915年1月に中国の袁世凱政府へ「二十一ヶ条の要求」を提示します。これは山東半島におけるドイツ権益の継承（青島・膠州湾や山東の鉄道・鉱山の利権）を確定させることに加え、南満州・東部内蒙古での日本人の居住・土地取得・企業活動の自由や租借期限の大幅延長、さらには漢冶萍公司（中国最大級の製鉄コンツェルン）への日中共同経営の強要などを含むものでした。特に第5号（いわゆる「第五号要求」）は、中国の政治・財政・警察に日本人顧問を置くなど内政干渉色が強く、国内外の反発を招きます。最終的に日本は要求を一部修正し、5月7日に最後通牒、5月9日に中国が受諾しましたが、中国ではこの日が「国恥記念日」とされ、強い反日世論の形成と民族運動の高揚につながりました。これらの緊張は、のちの**五四運動（1919年）**の背景の一つともなります。

なお、選択肢の他項目は次のとおり誤りです。

• 石井・ランシング協定（1917年）：米日間で中国の領土保全・門戸開放を確認しつつ、日本の在華「特殊権益」を米側が事実上黙認した交換公文で、1915年の要求とは別件です。
• 辛丑条約（1901年）：義和団事件後の列強と清朝の講和条約で、年号も内容も異なります。
• 三国干渉（1895年）：下関条約後、露独仏が日本の遼東半島還付を迫った事件で、時期も目的も本問と一致しません。

正解：4

解説：

石井・ランシング協定は、1917年11月2日に日本の外相・石井菊次郎とアメリカの国務長官・ロバート＝ランシングとの間で交わされた交換公文を指します。背景には、第一次世界大戦下で日本が「二十一ヶ条の要求」（1915年）などを通じて中国での権益拡大を進め、連合国側、特にアメリカがその影響力拡大に強い警戒を抱いたことがあります。協定は、中国の領土保全と門戸開放主義の再確認を掲げつつ、同時に日本の中国（とくに満州方面）における「特殊利益（special interests）」の存在をアメリカが一定程度認識した点に特徴があります。

もっとも、この「特殊利益」という表現は曖昧で、日本の優越的地位を追認するものだと中国側には受け取られ、反発と民族意識の高揚を招きました。また、アメリカ国内でも門戸開放原則との整合性が問われ、日米双方の対中不信を完全に解消するには至りませんでした。最終的に、この協定はワシントン会議（1921–22年）での合意、すなわち九カ国条約（1922年）の発効により実質的に失効・棚上げされ、以後はワシントン体制の下で中国の主権尊重と門戸開放があらためて国際的原則となっていきます。

なお、選択肢の他項目は次のとおり誤りです。

• 四カ国条約（1921年）：米英日仏の太平洋における現状維持を定めた条約で、中国問題に特化した二国間協定ではありません。
• 九カ国条約（1922年）：中国の主権尊重・門戸開放を多国間で確認した条約で、1917年ではなく翌々年の枠組みです。
• 日米新通商航海条約（1911年）：関税自主権回復に関連する通商条約であり、中国における権益調整を目的とした協定ではありません。

正解：3

解説：

「西原借款」は、寺内正毅内閣（1916–1918年）が第一次世界大戦下の対中政策として、北京政府の段祺瑞（安徽派）に対して秘密裏に実行した一連の巨額融資を指します。交渉・斡旋の中心人物が首相側近の西原亀三であったため、この名称で呼ばれます。目的は、段祺瑞政権を財政面から支えつつ、日本の満蒙や山東などにおける鉄道敷設・鉱山開発・企業活動に関する利権や優先権を確保することにありました。貸付は1917年頃を中心に段階的に行われ、総額は1億数千万円規模とされます。資金は軍備拡張や内戦対処にも用いられ、段祺瑞の権力基盤強化に資しましたが、同時に日本の内政干渉的な印象を強め、中国の反日世論を一層高める結果ともなりました。

この借款は**二十一ヶ条の要求（1915年）に続く対中影響力拡大策として位置づけられ、のちの五四運動（1919年）など民族運動の高揚にも背景要因として作用します。また、ワシントン会議（1921–22年）以後の国際協調の流れのなかで、門戸開放・中国主権尊重の原則が強調されると、西原借款に基づく日本側の優越的な取り決めは見直しや再調整の対象となっていきます。なお、選択肢の「石井・ランシング協定」**は1917年の日米間の交換公文であり、借款名ではありません。

正解：1

解説：

日本が1918年に実施した「シベリア出兵」は、名目上はロシア革命の混乱下でシベリアに孤立したチェコスロヴァキア軍団（チェコ軍団）の救出と秩序回復に協力するための連合国共同の軍事行動でした。しかし、実際には反ボリシェヴィキ（反ソ）勢力の支援や、極東ロシアにおける日本の安全保障・経済的利権の確保という思惑も強く働いていました。日本は連合国中で最大規模の兵力を派遣し、ウラジオストクをはじめシベリア鉄道沿線に展開しました。

背景として、1917年のロシア革命で東部戦線が崩壊し、戦争捕虜から編成されたチェコ軍団が内戦に巻き込まれて後退・分散したことが挙げられます。連合国はこの軍団の退避と軍需物資・港湾の保全を理由に干渉を開始し、日本もこれに呼応しました。日本の出兵は1918年夏に本格化し、のちに規模が拡大して**最盛期には数万規模（約7万人前後）**に達したとされます。ところが、内戦の長期化と補給・治安維持の負担、そしてボリシェヴィキ政権の安定化により、軍事的な成果は限定的でした。

国内的には、出兵準備と軍需景気を見込んだ米価の高騰が社会不安を刺激し、1918年の米騒動を招いた要因の一つとも指摘されます。これにより寺内正毅内閣は総辞職に追い込まれました。国際的にも、干渉の長期化は対米関係の緊張や対露関係の悪化をもたらし、費用対効果の低さが問題視されました。結果として日本軍は1922年までにシベリア本土から撤兵し、その後も北樺太問題などを残しつつ、出兵は「多大な人的・財政的負担と外交的反発を招いた介入」と総括されることが多いです。

なお、他の選択肢は以下のとおり本問と異なります。

• 西原借款：寺内内閣期に段祺瑞政権へ供与した対中巨額借款で、軍事出動名ではありません。
• 二十一ヶ条の要求：1915年に大隈内閣が中国に提示した対華要求です。
• 石井・ランシング協定：1917年に日米間で交わされた中国に関する交換公文で、出兵そのものではありません。

正解：4

解説：

本問の出来事は尼港事件（にこうじけん）と呼ばれます。1918年に開始されたシベリア出兵の最中、極東ロシアは内戦と権力真空で混乱していました。1920年、黒竜江河口のニコライエフスク（日本側呼称「尼港」）に駐屯していた日本軍・在留民は、ボリシェヴィキ系のパルチザン部隊に包囲され、停戦や降伏ののちに軍民多数が殺害されるという悲惨な結果となりました。日本の領事館員や民間人も犠牲となり、街区は破壊されました。

この事件は国内世論に強い衝撃と対ソ不信を広げ、政府は報復・安全保障上の措置として北樺太占領（1920–1925年）など強硬策を進める口実の一つとしました。しかし出兵長期化は財政負担や国際的孤立を招き、対露・対米関係にも悪影響を及ぼしました。最終的に日本は1922年までにシベリアから撤兵し、北樺太も1925年に引き揚げています。

なお、他の選択肢は時期・場所・性格が異なります。済南事件（1928）、張作霖爆殺事件（1928）、**通州事件（1937）**はいずれも中国本土で起きた別の事件であり、ロシア極東の尼港で生じた本問とは一致しません。