アリストテレスのことがよくわかる！クイズ10問

正解：3. プラトン

解説：

アリストテレスは紀元前384年にマケドニアのスタゲイラで生まれ、17歳のときにアテネに移り、プラトンの設立したアカデメイアに入門しました。そこでおよそ20年間にわたって学び、哲学や自然学の基礎を築きました。プラトンはソクラテスの弟子であり、イデア論を提唱したことで知られていますが、アリストテレスは師であるプラトンの教えに深く影響を受けつつも、やがて独自の現実主義的な哲学体系を築いていきました。アリストテレスの思想は、後の論理学、倫理学、自然学など多くの分野に決定的な影響を与えました。彼の知的出発点には、プラトンの教えが大きく関わっているのです。

アリストテレスの講義を受けるアレクサンロドス王子(Wikipediaより）

正解：3. アレクサンドロス王子

解説：

アリストテレスはアテネのアカデメイアで長年学んだ後、プラトンの死をきっかけに故郷スタゲイラに戻りました。その後、マケドニア王フィリッポス2世の招きに応じて、王子アレクサンドロス（後のアレクサンドロス大王）の家庭教師として招聘されました。アリストテレスが教育を担当したのは、アレクサンドロスが13歳のころとされます。

この教育は短期間ではありましたが、アリストテレスの教えはアレクサンドロスの人格形成や政治的ビジョンに大きな影響を与えたと考えられています。アリストテレスは倫理、政治、文学、科学など幅広い分野を教え、アレクサンドロスが広大な帝国を築く際の知的基盤を築く一助となりました。また、後にアレクサンドロスが遠征先で学問や文化を重視した姿勢にも、アリストテレスの影響が色濃く見られます。

正解：3. リュケイオン

解説：

アリストテレスはマケドニアでアレクサンドロス王子の教育を終えた後、再びアテナイに戻り、紀元前335年頃に「リュケイオン（Lykeion）」という学園を創設しました。リュケイオンは、もともとはアポロン・リュケイオスに捧げられた神域の近くに位置しており、軍事訓練の場としても使われていた公共の施設でした。

アリストテレスはこの場所を学問の中心地に変え、哲学、自然科学、論理学、倫理学、政治学などあらゆる分野の研究と教育を行いました。彼の授業スタイルは歩きながら議論する形式をとることが多く、そのため彼の学派は「逍遥学派（ペリパトス学派）」とも呼ばれました。

リュケイオンは、後に中世イスラム世界やヨーロッパ中世・近代に多大な影響を与えるアリストテレス哲学の発信地となり、アカデメイアと並ぶ古代ギリシアの代表的な学術機関として知られています。

正解：3. 人がいかに善く生きることができるかを示した指南書

解説：

『ニコマコス倫理学』は、アリストテレスが倫理について体系的に論じた代表的な著作であり、一説によれば、彼の息子ニコマコスが編集したとされています。この書物の中心的なテーマは「人間はいかにして善く生きることができるか」、つまり「幸福（エウダイモニア）に到達するにはどうすればよいか」という問いにあります。

アリストテレスは、人間の目的は幸福であり、それは単なる快楽や富ではなく、「徳に基づく活動」であると説いています。ここでいう「徳（アレテー）」は、知性的徳と習慣的徳（勇気・節制・正義など）に分けられ、特に中庸（過不足のない適度な行為）を重んじる姿勢が強調されています。

また、実践的知恵（フロネーシス）によって、状況に応じた正しい行動が導かれるとし、倫理は単なる理論ではなく、実際の生活の中で実践されるべきものであると説いています。『ニコマコス倫理学』は、倫理学や人間学の原点ともいえる書物であり、現代の哲学や倫理思想にも大きな影響を与え続けています。

正解：3. アリストテレスの一連の書物に便宜的に付けられた呼称

解説：

「形而上学」という言葉は、もともとアリストテレスの哲学書に由来する言葉ですが、アリストテレス自身がそう名付けたわけではありません。彼の著作群を編纂したロドスのアンドロニコスという後代の学者が、自然学（フィシカ）の次に配置した一連の哲学的考察を、「自然学の後にあるもの（メタ・フィシカ）」と呼んだことに由来します。

この「メタ・フィシカ」は、「フィシカ（自然学）」の**「後に置かれた」**という意味の単なる整理上の呼称でしたが、後世になると「メタ」が「超越」や「彼方」という意味を持つようになり、「自然を超えた学問」「存在そのものを問う学問」として哲学的意義が付与されました。

さらに、中国古典『易経』の「形而上者謂之道」に基づいて、「形を超えたもの＝見えない本質」を意味する語として、「形而上」という漢語訳が当てられ、日本では「形而上学」という言葉が定着したのです。

このように、「形而上学」は実際には編集順に由来する実務的な命名であり、そこに後代の哲学的意味が重ねられていったものなのです。

正解：2. 西周

解説：

西周（にし あまね）は、明治時代の啓蒙思想家・官僚であり、日本における近代西洋哲学の導入において中心的な役割を果たしました。特に彼はアリストテレスの思想を日本に紹介した人物として知られています。

西は蘭学を学んだ後、幕府によって派遣された遣欧使節団の一員としてヨーロッパに渡り、ドイツで哲学や法学、倫理学などを学びました。帰国後、彼はこれらの知識を日本に持ち帰り、翻訳や著述活動を通じて紹介しました。とくにアリストテレスの論理学や倫理学に関する概念は、西の手によって漢語訳され、多くの哲学用語（例：「主観」「客観」「理性」「論理」など）を定着させる契機となりました。

このように西周は、アリストテレスをはじめとする古代ギリシャ哲学の日本への受容において、先駆的な役割を果たしたのです。

正解：2. カテゴリー

解説：

「カテゴリー（範疇）」という概念は、アリストテレスに由来する非常に重要な哲学用語です。アリストテレスは『カテゴリー論』という著作の中で、存在するものごとを分類し、それぞれの存在がどのような性質を持っているかを整理するための枠組みとして、「カテゴリー（カテゴリア）」という概念を提示しました。

彼はすべての存在を説明する基本的な10のカテゴリー（実体、量、質、関係、場所、時間、位置、状態、能動、受動）に分類し、それらによって物事の本質や変化を理解しようとしました。この考え方は、のちのスコラ哲学やカントの認識論にも大きな影響を与え、哲学における「分類」の基礎となっています。

ちなみに、「イデア」はプラトンに由来し、「弁証法」は主にヘーゲルなどに発展され、「アプリオリ」はカントの認識論で用いられる概念です。したがって、「カテゴリー」はアリストテレスに特有の重要な哲学的枠組みなのです。

正解：3. 義務論的倫理学

解説：

アリストテレスは『ニコマコス倫理学』において、人間の最高善としての「幸福（エウダイモニア）」を追求する立場から、行為の目的が「幸福」であるべきとする「幸福論的倫理学」を展開しました。これは「徳」を通じてよく生きることを目指す、目的論的な考え方に基づいています。

これに対して、カントは「義務論的倫理学（ド・オン論）」を唱えました。彼にとって道徳的に正しい行為とは、結果ではなく、その行為が「義務に基づいてなされているかどうか」が重要です。つまり、「よい結果をもたらすから正しい」のではなく、「理性により定立された道徳法則に従っているから正しい」という立場です。

カントはこの立場を『実践理性批判』や『道徳形而上学原論』で展開し、「定言命法（categorical imperative）」という概念を用いて、すべての理性的存在が従うべき普遍的な道徳法則を論じました。

このように、アリストテレスの「幸福」を重視する倫理学とは異なり、カントの倫理学は行為の動機と普遍的な法則への従属を基盤とする、厳格な「義務論的倫理学」であるといえます。

正解：1. 万学の祖

解説：

アリストテレスは古代ギリシャの哲学者であり、彼の研究は哲学にとどまらず、自然科学、倫理学、政治学、生物学、心理学、詩学など非常に多くの分野に及びました。彼はそれぞれの学問分野について、独自の方法論に基づいた観察と分類を行い、学問を論理的・体系的に構築しました。

特に注目すべきは、彼が学問のあらゆる領域において「原因」や「本質」を探求しようとした点であり、これは後の学問の成立や発展に大きな影響を与えました。彼の著作は中世ヨーロッパでも重視され、イスラム世界やキリスト教神学にも取り入れられました。

このように、アリストテレスは単なる哲学者にとどまらず、あらゆる学問の基礎を築いた存在として、後世において「万学の祖（the father of all knowledge）」と呼ばれるようになったのです。

正解：3. 魂

解説：

「プシュケー（ψυχή）」は、古代ギリシャ語でアリストテレスが用いた重要な概念であり、日本語では「魂」と訳されます。アリストテレスは『魂について（ペリ・プシュケース）』という著作の中で、この語を体系的に論じました。

彼にとって「魂」とは、単なる霊的存在ではなく、生命あるものに内在する原理であり、**身体に形や活動を与える「第一の現実態（エネルゲイア）」**とされました。たとえば、植物には「栄養の魂」、動物には「感覚の魂」、人間には「理性の魂」があると分類し、それぞれの存在の機能に応じて魂の働きが異なると考えました。

このようにアリストテレスの「魂」は、生命活動の根源的原理として、身体と切り離せない実体であり、後の心理学（psychology＝プシュケー+ロゴス）という語にも影響を与える重要な概念です。したがって、「プシュケー」は「魂」として理解されるのが正解です。

参考文献：

山口義久著『アリストテレス入門』2001年 ちくま新書
中畑正志著『アリストテレスの哲学』 1966 (岩波新書 ; 新赤版 )
J.O. アームソン著『アリストテレス倫理学入門』雨宮健訳 1998年 岩波書店
アリストテレス著『ニコマコス倫理学』上下 渡辺邦夫・立花幸司訳 2015年 光文社古典新訳文庫
山本芳久著『ニコマコス倫理学 : アリストテレス : 「よく生きる」ための哲学』 (NHK「100分de名著」ブックス
今道友信著『アリストテレス』 2004年 講談社学術文庫