開国とその影響のことがよくわかる！クイズ10問

正解：4
解説
アヘン戦争（1839〜1842年）で清がイギリスに敗れた報は、日本の海防意識に大きな衝撃を与えました。これまでの「異国船打払令（1825年）」は、沿岸に現れた外国船を原則砲撃・退去させる強硬策でしたが、清の敗北は、同様の強硬策だけでは列強と衝突して不利になるおそれがあることを示しました。そこで天保13年（1842年）、幕府は天保の改革を進めていた老中・水野忠邦のもとで「薪水給与令」を出し、遭難や給水・燃料補給を求める外国船に対しては、薪（燃料）・水・食料を与えたうえで穏便に退去させる方針へと転換しました。
この政令はあくまで通商や自由な上陸を許可するものではなく、鎖国体制を基本的に維持しながら、無用の武力衝突を避けるための「実務的な緩和策」でした。その後、海防論の高まりや列強船の来航が続き、最終的にはペリー来航（1853年）を経て、日米和親条約（1854年）へとつながっていきます。

正解：2
解説
嘉永6年（1853年）6月、アメリカ合衆国の東インド艦隊司令長官マシュー・ペリーが、蒸気外輪船を含む軍艦４隻（いわゆる「黒船」）を率いて浦賀沖に来航し、開国と通商交渉の開始を強く求めました。ペリーは大統領フィルモアの国書を将軍に直接手渡すことを要求し、従来の対外窓口であった長崎への回航を拒否しました。この強硬な姿勢は、日本側に軍事的・外交的な圧力として受け止められ、以後の対応方針に大きな影響を与えます。翌嘉永7年（1854年）には、ペリーがさらに多くの艦隊を率いて再来航し、最終的に日米和親条約（神奈川条約）の締結へとつながりました。
なお、選択肢のプチャーチンはロシアの使節で、主に下田・長崎で交渉し日露和親条約（1855年）に至った人物です。スターリングは1854年に長崎で日英和親条約を結んだイギリス側の司令官で、1853年浦賀来航者ではありません。クルチウスはオランダ出島商館長であり軍艦来航の当事者ではありません。こうした同時期の各国要人との混同が起こりやすいですが、浦賀沖に黒船４隻で現れたのはペリーであることを押さえておくと理解が深まります。

正解：3
解説
安政元年（1854年）正月（旧暦。西暦では2〜3月頃）、ペリーは蒸気艦を含む７隻の「黒船」を率いて再来航し、江戸湾で大規模な示威を行いました。幕府は武力衝突を避けるため交渉に応じ、同年3月31日（神奈川・横浜近傍）で「日米和親条約」（神奈川条約）を締結しました。これは通商条約ではなく「和親条約」で、鎖国体制を段階的に緩める最初の公式条約となります。主な内容は次の通りです。
下田・箱館（函館）の開港：アメリカ船に対する薪水・食糧・石炭などの供給を認めます。
難破船員の保護・引き渡し：漂流・遭難者の人道的取り扱いを定めます。
領事駐在の承認：のちに**下田に米国領事（タウンゼント・ハリス）**の駐在が実現します。
この条約は、1825年の異国船打払令から1842年の薪水給与令への「緩和」の流れをさらに一歩進め、港湾を限定的に開くことで列強と衝突を回避しようとしたものです。なお、本格的な通商・関税・治外法権などを含むのは、後の1858年「日米修好通商条約」（ハリス条約）である点を区別しておくと理解が深まります。また、同時期にイギリスやロシアとも和親条約（日英和親条約・日露和親条約）を結び、幕末日本の対外関係は一挙に転換していきます。

正解：1
解説
プチャーチンはロシア帝国の使節として来航し、安政元年（1855年）2月7日に下田で日露和親条約（通称：下田条約）を締結しました。これは通商条約ではなく、まず平和と友好関係の樹立を確認する「和親条約」であり、主な内容は、①下田・箱館（函館）・長崎の三港をロシア船に開くこと、②漂流民の保護と送還、③国境の画定（千島列島は択捉島＝日本領／得撫島＝ロシア領とし、樺太（樺太島）は画定せずの共同利用的状態に据え置く）などでした。これにより、日本はアメリカに続いてロシアとも正式な国交の端緒を開き、のちの安政五カ国通商条約期へと道筋がつくられます。
なお、選択肢②の日米和親条約は1854年にペリーと締結したもので、③の日英和親条約は1854年に長崎で締結されています。④の樺太・千島交換条約はずっと後の1875年に締結された別の条約ですので、本問の時期・相手とは一致しません。

正解：4
解説
1856年に始まったアロー戦争で清国が英仏に敗れ、1858年に天津条約を結んだという報は、日本の対外情勢に強い危機感を与えました。こうした国際環境の変化を背景に、アメリカ総領事タウンゼント・ハリスは、和親関係から一歩進んだ本格的な通商条約の締結を強く要求しました。大老井伊直弼は、朝廷の勅許を得ないまま（違勅調印）交渉をまとめ、**1858年（安政5年）に「日米修好通商条約（ハリス条約）」**を締結しました。
この条約の骨子は次の通りです。
開港・開市：神奈川（実務は横浜）・長崎・箱館（函館）・新潟・兵庫の開港、ならびに江戸・大坂の開市を規定しました（実際の開港時期には猶予・延期が生じます）。
居留・貿易の自由：指定港での米国人居留と自由貿易を認めました。
治外法権（領事裁判権）：在日米国人の犯罪・民事について米国領事が裁くことを認めました。
関税自主権の喪失（協定関税）：低率・条約定率の関税を採用し、日本側が独自に関税率を決められない体制になりました。
最恵国待遇：他国に与えた有利な条件は自動的に米国にも適用されます。
これらは日本の主権制限につながる不平等な内容であり、国内では強い反発を招きました。

正解：2
解説
1858年（安政5年）に締結された日米修好通商条約に続き、幕府は同年中にオランダ・ロシア・イギリス・フランスともほぼ同内容の修好通商条約を結びます。これらは総称して**「安政五カ国修好通商条約」と呼ばれ、列強との条約網が一挙に成立したことを意味します。主な内容は、①神奈川（実務は横浜）・長崎・箱館（函館）・新潟・兵庫などの開港・開市**、②在留と自由貿易の承認、③治外法権（領事裁判権）、④協定関税による関税自主権の制限、⑤最恵国待遇の付与でした。
これらは日本の主権を制限する不平等条約として国内の反発を招き、尊王攘夷運動の高まりや政局の動揺（安政の大獄など）につながります。一方で、港の開放と交易開始は、日本経済や都市社会に大きな変化をもたらし、のちの近代国家形成への出発点にもなりました。選択肢のうち、ポルトガル・スペイン・プロイセン・デンマーク・オーストリア・ベルギーとはこの時点で同種の通商条約は結ばれていませんので誤りです。

正解：3
解説
生麦事件は、1862年8月21日（旧暦／西暦では9月14日）、武蔵国橘樹郡生麦村（現在の横浜市鶴見区生麦）で発生しました。江戸からの帰途にあった島津久光の大名行列の前を、横浜方面へ騎乗で向かっていた英国人4名（チャールズ・レノックス・リチャードソン、ウッドソープ・クラーク、ウィリアム・マーシャル、エレン・ボロデイル夫人）が横切ったことを無礼とみなした薩摩藩士が抜刀し、リチャードソンが死亡、他の2名も重傷を負いました。
当時の日本側には大名行列への最敬礼を求める慣行があり、行列前横切りは「無礼討ち」の対象たりうるという武家社会の規範がありました。他方、外国人は治外法権のもとで自国法の適用を主張しており、礼法や通行権をめぐる認識の齟齬が悲劇を生みました。事件後、イギリスは幕府に10万ポンド、薩摩藩に2万5千ポンドの賠償と犯人引き渡しを要求し、幕府は支払いに応じましたが薩摩は拒否しました。その結果、翌1863年の薩英戦争（鹿児島湾砲撃）へ発展します。
生麦事件は、尊王攘夷気運が高まる中での外交・法制度の衝突を象徴する出来事であり、以後の日本の対外政策転換と近代化にも大きな影響を与えたと評価されています。

正解：4
解説
将軍家定には実子がなく、後継をめぐって一橋派（推し：一橋慶喜）と、南紀派（推し：紀伊藩主・徳川慶福〔よしとみ〕）が対立しました。1858年（安政5年）6月に大老となった井伊直弼は、幕政の主導権を握ると、譜代大名を基盤とする南紀派の立場から、慶福（のちの14代将軍・徳川家茂）を継嗣に決定しました。
井伊は、列強との通商交渉が差し迫る中で、政局の早期収拾と権力の一元化を重視しました。結果として一橋派（徳川斉昭・松平慶永・島津斉彬ら）の主張を退け、継嗣問題を南紀派の方針で決着させます。同年には日米修好通商条約の違勅調印を断行し、反対勢力に対して安政の大獄（1858〜59年）で弾圧を加えました。
なお、選択肢の堀田正睦は条約勅許を求め京都へ奏請するなど調整役でしたが決定権者ではありません。松平慶永と徳川斉昭は一橋派の中心で、慶喜擁立を進めた側です。継嗣を慶福に最終決定したのは大老・井伊直弼である点が本問の要点です。

正解：1
解説
「安政の大獄」は1858年（安政5）から1859年（安政6）にかけて、大老井伊直弼が主導した大規模な政治弾圧を指します。背景には、①日米修好通商条約の違勅調印（朝廷の勅許を得ないままの調印）への反発、②将軍継嗣問題で井伊が徳川慶福（のちの家茂）を推して決着させたことへの不満、がありました。井伊は政局の動揺を抑えるため、一橋派・尊王攘夷派を中心に、公家・大名・藩士・幕臣らを広く逮捕・投獄・謹慎させます。
処罰は江戸と京都で行われ、たとえば吉田松陰・橋本左内らが死刑となり、梅田雲浜らが獄死するなど、厳罰が相次ぎました。また徳川斉昭・一橋慶喜・松平慶永ら有力者にも謹慎・登城停止などの処分が及び、朝廷関係者にも影響しました。この強権的対応は一時的に政局を沈静化させましたが、反発はむしろ増大し、1860年の桜田門外の変で井伊直弼が暗殺される要因ともなりました。
なお、選択肢の**「蛮社の獄」は1839年に洋学者らが処罰された事件、「生麦事件」は1862年に薩摩藩士が英国人を殺傷した事件、「天保の改革」**は老中水野忠邦による1830年代の政治改革であり、本問の時期・内容とは異なります。

正解：2
解説
この事件は桜田門外の変と呼ばれます。万延元年3月3日（西暦1860年3月24日）、雪の降る朝、江戸城桜田門外で登城中の大老・井伊直弼が一団の襲撃を受け、殺害されました。襲撃の中心は水戸藩の脱藩浪士たちで、背景には井伊が断行した日米修好通商条約の違勅調印や、反対派に対する安政の大獄（1858–59年）の厳しい弾圧がありました。
当日、井伊の行列は彦根藩士の警護を伴っていましたが、降雪で視界が悪く、行列が間延びしていたこともあって防御が破られました。事件は幕府の威信を大きく傷つけ、公武合体・倒幕・攘夷などの政治運動を一層激化させる契機となります。以後、江戸・京都では天誅・テロルが頻発し、幕末政局は一気に不安定化しました。
なお、選択肢の「坂下門外の変」は1862年に老中安藤信正が襲撃された別事件、「生麦事件」は1862年に薩摩藩士が英国人を殺傷した事件、「池田屋事件」は1864年に新選組が長州系志士を襲撃した京都の事件で、本問の時期・場所・対象とは異なります。