江戸幕府の成立のことがよくわかる！クイズ10問

石田三成 (Wikippedia)

【正解】4. 石田三成
【解説】
豊臣秀吉の死（慶長3年・1598年）後、政権は五大老・五奉行の合議体制に移りましたが、徳川家康が諸大名の無断婚姻や外交・裁定への関与を通じて主導権を強めました。これに対し、五奉行の石田三成は家康の専横を抑えるべく、西国の諸大名に働きかけて連携を固め、慶長5年（1600年）家康が上杉景勝討伐（会津征伐）で東国へ出陣した好機に大坂で挙兵します。
三成は名目上の総大将として毛利輝元を担ぎ、自身は実務面で軍略・兵站・連絡を統括しました。主力には宇喜多秀家・大谷吉継・小西行長・長宗我部盛親・島津義弘ら西国勢が加わり、まず伏見城を攻略して東軍の連絡線に圧力をかけます。しかし東軍は迅速に西上し、慶長5年9月15日の関ヶ原合戦で小早川秀秋の離反なども重なって西軍は敗北しました。
選択肢の毛利輝元は“名目上の総大将”、宇喜多秀家は西軍主力の一人、徳川家康は東軍の盟主であり、「西国諸大名を糾合して実際に挙兵を主導した人物」は石田三成です。

狩野貞信『関ヶ原合戦屏風』(Wikipedia)

【正解】2
【解説】
関ヶ原の戦いは慶長5年（1600年）9月に美濃国関ヶ原（現在の岐阜県不破郡関ケ原町一帯）で行われた大規模決戦で、「天下分け目の戦い」と呼ばれます。背景には、1598年に豊臣秀吉が没したのちの権力空白があります。家康は会津の上杉景勝を討つ名目で東国に出陣しましたが、その留守中に石田三成らが挙兵し、諸大名を糾合して「西軍」を形成しました。家康は諸将をまとめて急遽引き返し、「東軍」を組織して決戦に臨みます。
戦場は東西の交通の要衝である関ヶ原の盆地で、9月の濃霧が晴れた朝から戦いが始まったとされます。序盤は西軍が有利に進めましたが、松尾山に布陣していた小早川秀秋が東軍に寝返り、さらに脇坂安治・朽木元綱・小川祐忠らも同調したことで西軍の戦線は崩壊しました。大谷吉継は奮戦の末に討死し、宇喜多秀家は敗走、総大将格の毛利輝元は動かずに終始しました。こうして正午過ぎには勝敗が定まり、石田三成は逃走ののちに捕縛されて処刑されます。
この勝利により徳川家康は大規模な改易・転封（論功行賞）を断行し、西国を中心に豊臣方大名の領地を再配分して自らの与党を強化しました。結果として家康の天下掌握は決定的となります。関ヶ原は単なる一合戦にとどまらず、戦国期を終わらせて近世徳川体制を成立させる転換点であったという点で、日本史上きわめて重要な出来事であると評価されます。

【正解】
3（1603年、徳川家康に対する征夷大将軍の宣下を根拠に開かれた）
【解説】
江戸幕府の成立は、慶長8年（1603年）に後陽成天皇から徳川家康へ「征夷大将軍」の宣下（正式任命）が行われたことを直接の根拠とします。征夷大将軍は本来、朝廷の軍事的最高職であり、武家政権の長として政治を統轄する正当性を天皇の権威から与えられる地位です。家康はこの宣下を受けて江戸に政庁を置き、中央集権的な支配体制の整備を本格化させました。
しばしば関ヶ原合戦（1600年）の勝利が転機として語られますが、これはあくまで軍事的・政治的実力の確立であって、法的・制度的な根拠ではありません。幕府は朝廷からの将軍任命という「公的権威の付与」によってはじめて正統な政権として位置づけられます。

【正解】3
解説
家康が1605年に将軍職を秀忠へ早期に譲った最大の狙いは、将軍位が徳川家で世襲されることを天下の大名に明確に示すためでした。1603年に征夷大将軍となった家康は、わずか二年で譲位することで「徳川家の代替わり＝政権の継続」を既成事実化し、諸大名に対して権力の正統性と持続性を印象づけました。とくに、依然として豊臣秀頼の存在が政治的影響力を持ちえた状況では、将軍職の家職化（世襲化）を早期に示すことが、政権の動揺や後継争いを未然に防ぐ効果を持ちました。
また、家康は大御所として駿府に移り、重要政策の決定権を保持し続けました。表向きは秀忠による将軍政務、実質は家康の主導という二重構えにより、権力移行の混乱を避けつつ、幕府機構を整備・強化できたのです。朝廷からの正式な将軍宣下を秀忠に受けさせたことも、武家政権の正統性を儀礼的・法的に補強する狙いがありました。これらの措置により、徳川政権は「家」と職位の結びつきを固め、江戸幕府の長期安定へ道筋をつけたと評価できます。

『天保国絵図越後国高田長岡』天保9年（1838年）(Wikipedia)

正解：3. 国絵図と郷帳
解説
徳川家康は、戦国的な領主支配を終わらせて、中央集権的な統治を全国に及ぼすために、諸大名に対して「国絵図（こくえず）」と「郷帳（ごうちょう）」の提出を命じました。国絵図は一国（令制国）ごとの地図で、海岸線・河川・街道・関所・宿駅・城下町・寺社領などを描き込み、国境や領有関係を可視化しました。郷帳はその同伴資料で、国・郡・村の階層ごとに村々の名・石高（生産力＝年貢負担の基準）・名請人などを一覧化した台帳です。両者は対になっており、地理（面）と石高（量）を結びつけて国家的な資源把握を可能にしました。
これにより幕府は、どの大名がどれだけの土地と石高を保有し、どの境界で隣国と接しているかを把握できます。結果として、年貢・軍役賦課、領地替（転封）の設計、国境紛争の裁断、寺社領・蔵入地の管理、治水・街道整備（天下普請）などの政策を、全国スケールで統一的に運用できる基盤が整いました。とくに慶長期に整備された国絵図と郷帳は、その後の正保・元禄の改訂事業へと継承され、江戸時代を通じて幕府の「全国統治の可視化」と「課税の標準化」を支える中核資料となりました。つまり、国絵図と郷帳の作成・提出は、家康が「天下の政」を掌握したことを制度的に示す、象徴かつ実務上の要となったのです。

淀殿 (Wikipedia)

【正解】3
【解説】
家康が1603年に征夷大将軍となり江戸幕府を開いた後も、豊臣家は大坂城に拠点を置き、秀頼（当時まだ若年）は母の淀殿（茶々）を中心に「太閤秀吉の正統な後継者」という立場を崩しませんでした。これは単なる家名の存続ではなく、政権の正統性をめぐる象徴的競合を意味します。豊臣方は朝廷との結びつきを保ち、諸大名や浪人を惹きつける求心力を維持しました。その結果、徳川政権の下位に入るという明確な「従属」姿勢を示さず、江戸方から見ると“大坂に別の権威中心が残る”状態が続いたのです。

「国家安康」の梵鐘とその銘文(Wikipedia)

【正解】2

【解説】
1614年（慶長19年）、京都・方広寺の大仏再建に際して鋳造された梵鐘の銘文に「国家安康」「君臣豊楽」という語が含まれていました。徳川家康は、自己の名「家康」を二字に割って不吉を祈るものだとして問題視し（「家」から「康」を切り離す＝家名を断つ意図と解釈）、さらに「豊」字を含む「君臣豊楽」が豊臣家の繁栄を称える表現だと難詰しました。これがいわゆる「方広寺鐘銘事件」であり、家康はこれを口実として豊臣方への圧力を強め、大坂城の包囲に踏み切ります。
このときの戦いが「大坂冬の陣」です。徳川方は大軍を動員して大坂城を囲みましたが、真田信繁（幸村）が築いた出城・真田丸の奮戦などにより攻めあぐねました。結果として和睦が成立し、豊臣家の存続自体は一旦認められたものの、条件として大坂城の外堀を埋め、二の丸・三の丸などを破却して防御力を大きく削ぐことが定められます。これにより大坂城は実質的に丸裸となり、翌1615年（慶長20年）の「大坂夏の陣」で徳川方が総攻勢に出て豊臣家は滅亡します。
「大坂冬の陣」と「大坂夏の陣」を総称して「大坂の役」と呼びます。方広寺鐘銘事件は、その幕開けとなる政治的・宗教的争点を利用した口火であり、江戸幕府による最終的な天下統一への決定的段階を画した出来事であったといえます。

「国家安康」の梵鐘とその銘文(Wikipedia)

【正解】3
【解説】
大坂冬の陣（1614年）の和睦により外堀が埋め立てられ、大坂城の防御は大きく弱体化していました。1615年4月に始まった夏の陣では、徳川方が各地で豊臣方を圧迫し、クライマックスとなる天王寺・岡山の戦いで豊臣軍中枢が崩れます。その結果、大坂城は六月初旬に陥落し、城中は火災に包まれました。最終的に淀殿（茶々）と豊臣秀頼は自害し、幼い国松丸も処刑され、ここに豊臣家は滅亡します。
この結末によって、関ヶ原以来の政治的緊張は完全に解消され、徳川政権の全国支配は名実ともに確立しました。以後、幕府は大名統制の法令整備（武家諸法度の再整備など）を進め、江戸時代の長期的な秩序が形成されていきます。なお、「大坂の役」は冬の陣と夏の陣の総称であり、夏の陣は4月に始まり、戦局は5〜6月にかけて決着したと理解すると全体の流れが把握しやすいです。

【正解】4
【解説】
「元和偃武」とは、1615年の大坂夏の陣で豊臣家が滅亡したのち、日本全国で大規模な戦乱が収束したことを指す言葉です。「元和」は1615〜1624年の年号で、「偃武」は「武を偃（ふ）す」、すなわち武力を収めるという意味です。冬・夏の二度にわたる大坂の役を経て、徳川政権に対抗しうる大名連合が消滅し、以後は天下規模の合戦が起こらなくなりました。
この状況のもとで幕府は統治秩序の整備を一層進め、1615年には武家諸法度（元和令）が制定され、大名統制や城郭・婚姻などの規範が明確化します。参勤交代の制度化や諸法度の運用によって諸大名は抑制され、約260年に及ぶ江戸の平和が確立していきました。したがって、戦国期の終焉と江戸幕府の安定的支配体制の開始を象徴する語としては「元和偃武」が最も適切です。

【正解】1
【解説】
1615年（元和元年）、大坂の陣で豊臣家が滅亡し、徳川幕府は全国支配を安定させるための統治整備を一気に進めました。その中核の一つが「一国一城令」です。これは原則として各大名に本拠の城を一つだけ認め、その他の支城・要害は破却させるという指令でした。城は軍事・政治・経済の中枢であり、複数保有は有事の際に反幕府連合の拠点となりやすいため、支城網を解体することで大名の軍事力を削ぎ、内乱を未然に防ぐ狙いがありました。
また、一国一城令は城の新築や大規模修繕にも厳しい制限を設け、幕府の許可なしには改修できない体制を確立しました。これにより、諸大名の勝手な築城・増強を抑え、江戸を中心とする秩序が維持されます。併せて同年に制定された武家諸法度（元和令）などと相まって、大名統制は制度的に強化され、以後の長期的な平和と幕藩体制の安定に大きく寄与しました。

まとめ：
徳川家康が開いた江戸幕府は、日本の近世の幕開けを告げる大きな転換点でした。1598年に豊臣秀吉が死去すると、豊臣政権は後継者の秀頼を中心に存続しましたが、実権を握る家康との間で権力争いが生じました。その帰結が1600年の関ヶ原の戦いであり、家康は石田三成ら西軍を破り、天下の実権を掌握しました。この戦いを契機に、家康は全国の大名を従える基盤を固めていきました。
1603年、家康は朝廷から征夷大将軍に任じられました。これを根拠に開かれたのが江戸幕府です。征夷大将軍の任命は、幕府の統治を正統化するうえで極めて重要でした。家康は京都ではなく江戸に幕府を置きました。江戸は地理的に東国支配の中心であり、広大な関東平野と豊かな水運を背景に新たな政治・経済の中心として発展する素地を持っていました。
幕府成立後、家康は1605年に将軍職を子の秀忠に譲りました。これは徳川家の将軍職が世襲であることを天下に示す意図がありました。また、豊臣家を警戒しつつ、諸大名の統制を強める政策を推進しました。諸国に「国絵図」や「郷帳」を作成させ、土地と人口を正確に把握することで支配の基盤を固めました。さらに1615年の大坂夏の陣で豊臣氏を滅ぼし、天下の統一を最終的に達成しました。同年には大名に対して「一国一城令」を出し、領国の軍事力を制限して幕府の支配を安定化させました。
こうして江戸幕府は約260年にわたる徳川政権の基礎を築き、日本は「戦国の世」から平和な近世社会へと移行しました。幕府は武家諸法度や参勤交代などの制度を整備し、大名を統制しつつ、朝廷や寺社を含む広範な支配体制を確立しました。江戸幕府の成立は、単に一政権の誕生ではなく、日本社会を長期的に安定へ導く新しい政治秩序の始まりであったのです。
こちらでおおよそ800字程度に収めましたが、必要であればさらに詳細を補足することもできます。もっと制度面（武家諸法度・参勤交代など）を強調してまとめ直しましょうか？

参考文献：
笠谷和比古著 (2007) 『関ヶ原合戦と大坂の陣』吉川弘文館
藤井譲治著 (2015) 『戦国乱世から太平の世へ』岩波新書
本多隆成著 (2013) 『徳川家康と関ヶ原の戦い』吉川弘文館
本郷和人著 (2022) 『徳川家康という人』河出新書