南蛮貿易とキリスト教のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3（1543年）
【解説】
1543年（天文12年）、ポルトガル人商人を乗せた中国船が薩南諸島の種子島に漂着し、携行していた火縄銃が日本にもたらされました。島主の種子島時堯（ときたか）は鉄砲に強い関心を示し、実物を買い求めて鍛冶に模作を命じます。最大の難関は銃身と火皿を固定するネジ（雌雄ネジ）や発火機構でしたが、八板金兵衛清定らの工夫により短期間で技術的課題が克服され、国産化の道がひらけました。以後、堺や国友などの鍛冶産地で量産が進み、「種子島」は火縄銃の通称として広く用いられるようになります。鉄砲の普及は戦国期の合戦様式を大きく変え、兵站・隊形・築城・装備にまで影響を及ぼしました。なお、1549年はザビエル来日、1575年は長篠合戦、1600年は関ヶ原の戦いの年であり、いずれも鉄砲伝来そのものの年ではありません。以上から、正解は1543年です。

正解：3
解説
鉄砲（火縄銃）の伝来は、軍事力の主役を少数精鋭の騎馬武者から、多数動員可能な歩兵＝足軽へとシフトさせました。射撃は騎馬の個人技に依存せず、一定の訓練を受けた足軽が隊列を組んで一斉射撃・交代射撃を行うことで大きな効果を発揮します。そのため各大名は、鉄砲足軽や長槍足軽などの専門部隊を「小隊（組）」単位で編成し、指揮系統と役割分担を明確化しました。
戦術面では、鉄砲足軽を前面の柵・盾で防護しつつ、背後に槍・弓の足軽を配置するなど、歩兵中心の層状陣形が普及します。とくに鉄砲は降雨・装填時間などの制約があるため、交代射撃や弾薬・火薬の補給を前提としたロジスティクスと規律が不可欠になりました。結果として、兵站担当や弾丸鋳造、火薬管理などの裏方機能も整備され、軍隊はより「組織化」された集団へと変質します。
このような足軽隊の編成と大量運用は、合戦の主戦力を歩兵に移し、攻城戦・野戦のいずれでも鉄砲を核とする戦法を一般化させました。騎馬武者は依然として重要でしたが、全体の構成は歩兵中心へと再編され、戦国軍制の近代化が進んだのです。

正解：1
解説
南蛮貿易とは、16世紀半ばの鉄砲伝来（1543年）以後、主にポルトガル人・のちにスペイン人を相手に日本で展開された国際貿易を指します。交易の中心港は堺・博多・平戸・大友氏の豊後府内、そしてのちに長崎などで、キリスト教宣教師の活動と密接に結びついて発展しました。日本からは銀・銅・硫黄・刀剣・漆器などが輸出され、相手方からは火縄銃・火薬・鉛・ガラス器・時計・織物・砂糖・香料、さらに中国産の生糸や絹織物（ポルトガル船がマカオ経由で持ち込む）などがもたらされました。
この貿易は、鉄砲と関連物資の流入によって戦術・軍制の変化を促し、同時に都市経済や手工業の発展、文化の交流（南蛮文化）を活性化させました。一方、選択肢の「勘合貿易」は室町時代の日明間の朝貢形式の公的貿易で、鉄砲伝来以前の制度です。「朱印船貿易」は17世紀初頭、徳川政権が公認した東南アジア方面との許可制貿易であり、南蛮貿易とは時期・制度・相手が異なります。「松前交易」は蝦夷地（北海道）での和人とアイヌの交易で、欧州勢力との海上貿易ではありません。以上の点から、正解は「南蛮貿易」です。

【正解】2（フランシスコ＝ザビエル）
【解説】
フランシスコ＝ザビエルはイエズス会の創設メンバーで、1549年（天文18年）に鹿児島へ到着し、日本で本格的なキリスト教布教を開始しました。鹿児島では島津貴久（しまづたかひさ）の許可を得て宣教を進め、のちに平戸・山口・豊後（府内）などにも活動を広げます。来日に先立ち、彼は日本人改宗者「ヤジロウ（アンジロー）」から日本社会や言語について情報を得ており、同行した修道士コスメ＝デ＝トーレスと通訳のフアン＝フェルナンデスとともに布教の体制を整えました。ザビエルは京都にも赴きましたが、戦乱のため朝廷や幕府に接触できず、山口で再び布教の拠点を築き直しています。彼の活動は、のちの南蛮文化の受容やキリシタン大名の出現、印刷・絵画・医学など西洋知識の伝来にも間接的な影響を与えました。なお、ルイス＝フロイスは後続の宣教師で『日本史』の著者、マテオ＝リッチは中国宣教で知られ、日本には来ていません。コスメ＝デ＝トーレスはザビエルの協力者ですが、主導的な来日宣教師としての名はザビエルです。以上より、正解はフランシスコ＝ザビエルです。

【正解】1（南蛮寺）
【解説】
宣教師たちが日本各地に建立したキリスト教の教会堂は、当時「南蛮寺（なんばんじ）」と呼ばれました。これはポルトガル人やスペイン人を「南蛮人」と総称したことに由来する俗称で、教会そのものを日本風に「寺」と言い表したものです。京の都では織田信長の保護を受けて教会が許可され、堺・博多・平戸・豊後府内・長崎などの南蛮貿易港にも建てられました。礼拝の場であるだけでなく、学校（セミナリオ／コレジオ）や病院を併設する例もあり、印刷術や西洋音楽・絵画といった南蛮文化を伝える拠点として機能しました。なお、文書では「天主堂（てんしゅどう）」と記されることもありますが、一般に広まった呼び名が「南蛮寺」です。豊臣秀吉のバテレン追放令（1587年）以降は多くが破却・閉鎖され、のちの禁教政策で教会活動は厳しく制限されていきます。以上から、正解は「南蛮寺」です。

正解：3
解説
宣教師の布教に協力し、自ら洗礼を受けた戦国大名は一般に「キリシタン大名」と呼ばれます。典型例が大友義鎮（のちの大友宗麟）です。彼は豊後（現在の大分県）を領し、ポルトガル船の来航を受け入れて港市・府内（大分）を国際交易の拠点として整備しました。宣教師の布教を保護し、教会堂の建立や宣教活動の自由を認めたうえで、1578年には洗礼を受けて「フランシスコ」の洗礼名を名乗ります。キリシタン大名は、南蛮貿易による火器・生糸・砂糖などの輸入や銀・銅の輸出を通じて経済的利益を得ただけでなく、最新の軍事技術（火縄銃・砲術）や西洋文化の導入にも積極的でした。
同時代には大村純忠（洗礼名ドン・バルトロメウ）、有馬晴信（ドン・プロタジオ）、高山右近（ドン・ジュスト）らも著名なキリシタン大名として知られます。彼らは領内で教会やセミナリオ（神学校）を支援しつつ、外交・交易の窓口として宣教師や通詞を活用しました。なお、選択肢の「伴天連（バテレン）大名」や「南蛮大名」「朱印船大名」といった呼称は一般的な歴史用語ではなく、織田信長・徳川家康・伊達政宗はいずれも洗礼を受けていません。したがって、問いの趣旨に合致するのは「キリシタン大名、大友義鎮」です。

正解：3
解説
天正遣欧使節は、1582年（天正10年）に長崎から出帆した日本最初の本格的なヨーロッパ公式使節団です。計画立案はイエズス会巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノで、九州のキリシタン大名である大友義鎮（宗麟）・大村純忠・有馬晴信の連署書簡を携えて、ローマ教皇とイエズス会総長への表敬・報告・支援要請を目的として派遣されました。使節は伊東マンショ（正使）・千々石ミゲル・中浦ジュリアン・原マルチノの４名で、いずれも洗礼を受けた少年（セミナリオの学生）でした。
航路はマカオ、マラッカ、ポルトガル領インド（ゴア）などを経て、喜望峰を回りリスボンに至る当時のポルトガル東方貿易ルートに沿っています。1585年にはローマで教皇グレゴリウス13世に拝謁し、その後継のシクストゥス5世からも歓待を受けました。彼らはヨーロッパ各地で音楽演奏や礼節の高さが称賛され、日本がキリスト教世界と文化・外交面で接続し得ることを印象づけました。1590年に帰国すると、彼らが持ち帰った西洋楽器や書物、印刷技術の知見は「キリシタン版（天草版）」などの出版文化や南蛮美術の受容にも間接的に寄与します。

正解：2
解説
灰吹法（はいふきほう）は、16世紀前半から中頃にかけて朝鮮から日本にもたらされた銀の精錬技術です。灰（骨灰）で作られた皿（灰吹皿＝カップル）を用い、銀を含む鉱石に鉛を加えて高温で溶融し、酸化した鉛を灰吹皿に吸着させて不純物を除き、銀を高純度で取り出す方法です。従来法に比べて回収効率が高く、短時間で大量の精錬が可能になりました。
この技術は石見銀山で本格的に導入され、1530年代以降に銀の産出が飛躍的に伸びます。石見での成功は各地に波及し、佐渡や生野などの銀山でも採用されました。結果として、日本は16世紀後半には世界有数の銀産地となり、明（中国）との貿易やアジア海域の商業ネットワークにおいて重要な役割を果たします。灰吹法の導入は、技術の移転が地域経済と国際流通を大きく変える好例であると言えます。

正解：3
解説
16世紀、日本は石見銀山などの開発と灰吹法の普及によって銀の産出が増え、その銀が中国（明）へと大量に流入しました。その最大の交換品が「生糸」です。明では絹織物生産が盛んで、生糸は日本の上層都市市場（京・堺・博多など）で強い需要がありました。正式な勘合貿易の衰退後も、ポルトガル人が介在するマカオ—長崎ルートなどを通じて「銀—生糸交換」は拡大し、日本の銀は中国の生糸と結びついて一大交易を形成します。
この取引は、日本の織物業（西陣をはじめ各地の絹業）を支える原料供給となり、国内経済の高度化に寄与しました。さらに明側でも税制改革によって銀の需要が高まっていたため、日本銀は歓迎されました。なお、火縄銃はポルトガル由来、硝石や香辛料は主に東南アジア・インド方面からの流入であり、中国対日本の主要交換品ではありません。生糸こそが16世紀の日明交易（および南蛮貿易の枠内を含む）における最重要の輸入品であったといえます。

正解：4
解説
細川ガラシャは、明智光秀の娘として生まれ、若くして細川忠興（幽斎の子）に嫁いだ武家女性です。洗礼名「ガラシャ（Gracia）」を受けて熱心なキリスト教徒となり、宣教師や同信の女性たちとも交わりながら信仰生活を続けました。ガラシャの生涯は、戦国末期の動乱と切り離せません。父・光秀の変事（本能寺の変とその後の敗亡）により立場が危うくなる中でも、彼女は貞節と信仰を守り抜いたことで知られます。
1600年、関ヶ原合戦の前哨で石田三成方が諸大名の妻子を人質に取ろうとした際、徳川方に与した忠興の妻であったガラシャも標的となりました。彼女はキリスト教の教えから自害を避け、捕縛を拒み、家臣により介錯されて命を落としたと伝えられます。その後、屋敷は焼かれ、敵方に身柄が渡ることはありませんでした。ガラシャの最期は、武家の名誉観とキリスト教倫理がせめぎ合う中で「信仰と矜持を貫いた象徴的な出来事」として語り継がれます。文学・演劇でもしばしば題材となり、戦国期の女性史・宗教史を考える上で重要な人物であると言えます。