義満と室町幕府のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3

解説

「室町幕府」という呼称は、第三代将軍・足利義満が1378年に京都の室町通付近に将軍邸（花の御所）を造営し、ここを政庁として政治を行ったことに由来します。将軍邸は「室町殿」「室町第」とも呼ばれ、ここが事実上の政権中枢であったため、人々は足利将軍家の政権を便宜的に「室町幕府」と呼ぶようになりました。なお、当時の公式名称が「室町幕府」だったわけではなく、史学上の後世的な呼称である点が重要です。初代尊氏や二代義詮の時代には京都の他所（例：二条高倉付近）を拠点としましたが、義満の花の御所の成立と権勢の確立（1392年の南北朝合一など）によって、室町通周辺が政治の象徴となりました。のちに応仁の乱で花の御所が焼失し東山方面に拠点が移る局面もありましたが、「室町幕府」という名称自体は定着し続けました。以上の理由から、由来は「京都の室町に構えた将軍邸で政治が行われたから」であると説明できます。

【正解】4

解説

足利義満は室町幕府の第三代将軍です。初代は幕府を創始した足利尊氏、二代はその子の足利義詮で、義満は義詮の子として家督と将軍職を継ぎました。義満は政治手腕に優れ、守護大名を統制して将軍権威を強化し、将軍邸「花の御所」（京都・室町）を拠点に政務を行いました。また、南朝と北朝の対立を収束させ、1392年に南北朝の合一を実現して全国統合を前進させます。文化面では、のちの金閣（北山殿）に象徴される北山文化を開花させ、日明貿易の開始など外交面でも積極策をとりました。なお、四代目は義満の子・足利義持で、義満は1394年に将軍職を譲ったのちも実権を握り続けました。以上の系譜と業績から、義満は「三代目の将軍」であると理解できます。

【正解】1

【解説】

南北朝動乱を経て守護大名は大きな軍事・財政基盤を得ましたが、足利義満は中央集権を進めるために、その最有力勢力を段階的に討伐しました。第一に「土岐康行の乱（1390年）」では美濃守護・土岐氏を制圧し、畿内近国に影響力を及ぼす東山道方面の有力守護を牽制しました。第二に「明徳の乱（1391年）」で但馬・備後など多数国を領していた山名氏（山名氏清ら）を打倒し、一時は“六分の一殿”と称されるほどの広大な勢力を解体しました。第三に「応永の乱（1399年）」では貿易利権や瀬戸内制海権を背景に台頭した大内義弘を堺で包囲・滅ぼし、西国の有力守護連合の結節点を断ちました。

これら一連の討伐によって、義満は恩賞配分と守護替えを通じて有力守護の力を削ぎ、将軍家直轄の統治（大御所体制）を強化しました。結果として、細川・斯波・畠山の「三管領」や侍所頭人層を軸に公武の秩序が再編され、室町幕府の支配は安定へと向かいました。以上から、討伐対象の組み合わせとして正しいのは「土岐氏、山名氏、大内氏」です。

【正解】3

【解説】

室町幕府の「管領（かんれい）」は、将軍の最側近として政務全般を統括する最高級の補佐職であり、いわば幕府中枢のチーフ・オブ・スタッフに当たる地位でした。将軍名で発給される文書（奉書・御教書など）の取り扱い、幕政運営の調整、守護大名への指示・統制、朝廷・寺社・有力大名との折衝など、広範な実務を担いました。とくに守護統制と恩賞配分に関わる裁断は重要で、将軍権威を実務面から支える要の役職でした。

この管領職は、細川・斯波・畠山の三家が原則として交替で就任し、「三管領」と総称されます。これにより幕政は特定名門の責任で安定的に運営され、将軍は上位から裁可・統率を行う体制が整えられました。なお、選択肢の「執権」は鎌倉幕府の職であり、「関白」は朝廷における天皇補佐の摂関職です。「侍所頭人」は軍事・警察機能を担う侍所の長で、幕府全体の政務を総覧する管領とは役割が異なります。また「関東管領」という似た名称の職もありますが、こちらは鎌倉府（関東公方）の補佐で、本問の京都の幕府中枢における管領とは別物です。以上より、正解は「管領」です。

【正解】3

【解説】

奉公衆（ほうこうしゅう）は、将軍に直結する親衛・直参の武士団で、将軍の身辺警護や京都の警固・宿直、将軍外出時の随兵、合戦における中核戦力などを担いました。守護大名が台頭するなかで、将軍が自らの軍事基盤を直轄化・機動化するために整備した集団であり、将軍権威の実力的支柱として機能します。奉公衆の存在により、幕府は有力守護の軍事力に頼らずに軍事・警察行動を取り得たため、公武両面での統制力を高める効果がありました。

なお、用語上の整理として、奉公衆は室町幕府で整備された将軍直参軍事力の呼称です。一方、鎌倉幕府で将軍を支えた主たる軍事基盤は「御家人」で、侍所は軍事・警察機関（役所）そのもの、御内人は北条得宗家の被官組織を指します。本問は「将軍を直接支える軍事力」という観点から、その代表的名称として「奉公衆」を答えるものです。

【正解】3

【解説】

足利義満は日明関係を主導し、明側の皇帝（とくに永楽帝の時代）との外交において「日本国王」として位置づけられました。その公式な朝貢貿易を制度化したのが「勘合貿易（かんごうぼうえき）」です。勘合とは、明が発行する割符（合札）で、日本側が所持する割り札と現地で照合（“勘合”）して正規の朝貢船かどうかを確認する仕組みを指します。この制度は1404年ごろに本格化し、倭寇の横行による乱貿易を抑えるために導入されました。

勘合貿易では、日本からは硫黄・銅・刀剣・扇などが、明からは絹織物・生糸・薬物・銭貨（明銭）などが輸入され、幕府は遣明船の発給と恩賞配分を通じて交易を独占・統制しました。義満没後、義持期に一時断絶（1411年）するものの、義教期に再開（1432年）し、西国の大内氏や細川氏が実務を担っていきます。

なお、選択肢の「南蛮貿易」は16世紀半ば（ポルトガル人来航以降）のヨーロッパ勢力との交易であり、「冊封貿易」はより広い中華秩序下の朝貢関係を指す一般概念です。「日明貿易」は総称としては間違いではありませんが、本問が求める勘合による照合制度を特徴とする名称は「勘合貿易」です。

【正解】4

【解説】

足利義満は応永元年（1394年）に、将軍職を嫡子の足利義持へ譲りました。これは南北朝合一（1392年）を実現して権力基盤を固めたのち、公武両面の秩序を安定化させるための「早期譲位」であり、名目上は若年の義持を第四代将軍に据えつつ、義満自身は「大御所」として引き続き実権を掌握する体制を築いたものです。これにより、将軍家の継承が円滑であることを内外に示し、同時に義満は朝廷での官位上昇や儀礼主宰、外交（明との関係整備・勘合貿易の準備）など、将軍職の形式に縛られない広範な権威を発揮しやすくなりました。

一方で、1394年より後も実際の政治運営は義満が主導し、北山第の造営（1397年）や文化・儀礼の統合を通じて室町幕府の権威を高めました。選択肢の「1392年」は合一の年であり譲位年ではなく、「1408年」は義満の没年です。また「1423年に義量へ」は、第四代義持が第六代義教に先立ち一時的に第五代義量へ将軍職を譲った年で、義満の譲位とは別件です。以上より、正解は「1394年、義持に譲った」です。

正解】2

【解説】

足利義満は応永元年（1394年）に将軍職を嫡子・義持に譲り、大御所として実権を保持しつつ拠点を北山に移しました。移住後の義満は、応永4年（1397年）から北山第（きたやまだい）の大規模造営を進め、のちに禅寺・鹿苑寺（ろくおんじ）へ転用される空間を整えます。その中心施設が現在「金閣」と呼ばれる舎利殿で、北山は政治・朝儀・文化が融合する場として機能しました。これにより、義満は朝廷・寺社・武家の要人を北山に集め、院政期の上皇を思わせる権威演出を行い、のちに「北山文化」と総称される華やかな文化圏を形成します。

なお、選択肢の「室町（花の御所）」は義満が以前に政務を執った邸宅で、北山移住前の拠点です。「東山」は後世の義政が銀閣を中心に築いた文化圏、「三条坊門」も室町期の別拠点であり、義満の将軍辞任後の移住先ではありません。以上から、正解は「北山」です。

【正解】2

【解説】

足利義満は応永元年（1394年）に将軍職を嫡子・義持へ譲ったのち、朝廷での昇進を重ね、同年に太政大臣に任じられます。太政大臣は太政官の首座で、形式的とはいえ公家社会の頂点に位置づく官職です。義満はこの地位を得ることで、武家政権の長（大御所）としての実権に、公家社会の最高位という権威を重ね合わせ、公武両面への統御力を強化しました。

そのうえで義満は応永4年（1397年）から北山第（のちの鹿苑寺〈金閣〉を含む）を造営し、北山を政治・儀礼・文化の舞台として機能させます。これにより、朝廷・寺社・武家の要人を北山に集め、院政期上皇を想起させるような権威演出を行いました。なお、選択肢の「日本国王」は対明外交で用いられた対外的称号であり、国内の官職ではありません。「関白」は本来藤原氏の摂関家が担う職で、義満は就きません。また「太上天皇」号については史料上の議論があり、確定的な公式称号とはいえません。以上から、北山に邸宅を構えた義満が就いた地位として正しいのは「太政大臣」です。

【正解】3

【解説】

足利義満は応永元年（1394年）に太政大臣となったのち翌年に辞任しますが、その後も将軍家の実権を一手に握り、公家社会と武家社会の双方を統御しました。この義満を当時の人々は「室町殿（むろまちどの）」と呼びました。呼称の由来は、将軍家の公式拠点であった京・室町の「花の御所」にあり、邸宅名がそのまま将軍権力の代名詞として機能したのです。すなわち「室町殿」は単なる敬称ではなく、朝廷人事への影響力、守護統制、寺社への裁断、対明外交（勘合関係）など、国家運営の中心としてふるった圧倒的権勢を示す政治的ラベルでした。

なお、義満はのちに北山第（1397年造営）へ拠点を広げますが、それでも公武を貫く権力の主体を指す呼称としては「室町殿」が広く用いられました。

参考文献：

早島大祐著 (2010) 『室町幕府論』講談社
早島大祐著 (2016) 『足利義満と京都』吉川弘文館
丸山裕之著 (2024) 『図説室町幕府』戎光祥出版
榎原雅治著 (2016) 『室町幕府と地方の社会』岩波新書
宮原武夫・山田邦明・深谷克己著 (2012) 『日本社会の歴史　上』大月書店
五味文彦編 (2016) 『大学の日本史 2 中世』山川出版社