源平の争乱（治承・寿永の乱）がよくわかる！クイズ20問

【正解】2
解説
1180年、後白河法皇の皇子である以仁王（もちひとおう）は、平氏政権に対抗するために全国の源氏や寺社勢力へ向けて挙兵を促す「令旨」を発しました。これは、清盛が外孫の安徳天皇を即位させて院政を圧迫し、政権を専横した状況への強い反発に基づくものでした。以仁王は源頼政（よりまさ）と連携し、園城寺（おんじょうじ・三井寺）や興福寺などの武装した僧兵勢力とも呼応して動きます。この令旨が各地に広まった結果、関東では源頼朝が挙兵し、信濃では源義仲が旗を上げるなど、全国的な反平氏蜂起へと連鎖していきました。
最初期の戦闘である宇治川の戦い（1180年）では、源頼政が敗北して自刃し、以仁王も逃走中に討たれてしまいます。しかし、彼の令旨は「平氏打倒」の大義名分を明確化し、その後の源氏各勢力の行動を正当化する効果を持ちました。すなわち、以仁王の呼びかけこそが源平合戦の導火線となり、やがて源氏政権（鎌倉幕府）成立へと歴史を大きく動かしたのです。

木造源頼朝坐像（甲斐善光寺蔵）(Wikipedia)

【正解】3
解説
治承4年（1180年）8月17日、以仁王の令旨に呼応して挙兵したのは源頼朝です。頼朝は流人として伊豆にありましたが、北条時政らの支援を受けて旗揚げし、相模の三浦氏、伊豆・武蔵の在地武士団に広く参集を呼びかけました。この挙兵は、平氏打倒を掲げる「大義名分」を東国武士に示し、彼らの不満と利害を結集させる契機となりました。
初戦の石橋山合戦では兵力差と不利な天候・地形のために敗走しますが、頼朝は安房（房総）へと海路で脱出して体制を立て直します。のちに鎌倉に拠点を据え、関東の有力武士を御家人として組織化し、軍事・行政の基盤を整えていきました。結果として、この1180年の挙兵が源平合戦の東国側の主導権確立につながり、最終的に鎌倉幕府成立への道を開く重要な転機となったのです。

梶原景時 (Wikipedia)

【正解】3
解説
石橋山合戦（1180年）は、以仁王の令旨に応じて挙兵した源頼朝が大庭景親ら平氏方に敗れ、伊豆からの脱出を余儀なくされた戦いです。このとき、敵方の武将であった梶原景時は、山中に潜伏していた頼朝の所在を把握しながら、捕縛の好機であったにもかかわらず「見失った」旨を上申して追撃を控えさせたと伝えられます。結果として頼朝は安房へ舟で逃れ、のちに鎌倉を拠点に勢力を再建することができました。
梶原の行為は、『平家物語』や『吾妻鏡』などにおいて、敵将でありながら将来を見込んで命を助けた「機略」として語られます。後に梶原は頼朝に帰順して重臣となり、軍議での進言や諜報・裁断に長じた人物として活躍します。一方で、源義経との対立（例：屋島合戦における舟戦法をめぐる諍い）など、同時代の武将間の確執も象徴する人物です。いずれにせよ、石橋山での「救命」の逸話は、頼朝再起の決定的条件となり、日本中世史の転換点における梶原の特異な役割をよく示していると言えます。

『源平盛衰記』では詳しく救命の場面が述べられています。敗軍の頼朝は土肥実平、岡崎義実、安達盛長ら6騎としとどの窟（しとどのいわや：現在の湯河原町）へ隠れた。大庭景親が捜索に来てこの窟が怪しいと言うと、景時がこれに応じて洞窟の中に入り、頼朝と顔を合わせた。頼朝は「今はこれまで」と自害しようとするが、景時はこれをおし止め「お助けしましょう。戦に勝ったときは、公（きみ）お忘れ給わぬよう」と言うと、洞窟を出て蝙蝠（コウモリ）ばかりで誰もいない、向こうの山が怪しいと叫んだ。大庭景親はなおも怪しみ自ら洞窟に入ろうとするが、景時は立ちふさがり「わたしを疑うか。男の意地が立たぬ。入ればただではおかぬ」と詰め寄った。大庭景親は諦めて立ち去り、頼朝は九死に一生を得たということです。

【正解】4
解説
富士川の戦い（1180年）は、石橋山で敗れた源頼朝が安房へ脱出後に体勢を立て直し、関東の武士団を糾合して駿河へ進出した局面で起こります。平氏側は都から平維盛を大将として派遣しましたが、実際には本格的な衝突に至らず、平氏軍は夜間に潰走しました。その原因として『平家物語』に有名なのが、水鳥の羽音の逸話です。源氏方の動きに驚いた沼地の水鳥が一斉に飛び立ち、その羽音を平氏方が夜襲と誤認して恐慌に陥ったため、戦わずして退却した、と語られます。
この逸話は文学的誇張の可能性が指摘されますが、象徴的効果が大きいです。すなわち、東国武士団の結束と機動力に対し、長駆した平氏軍の警戒心と疲労、補給線の不安、地の利の欠如などが重なり、わずかな刺激で士気が崩れたことを物語的に凝縮して示しているからです。実際、頼朝は武田信義ら東国勢と呼応しつつ着実に勢力を拡大しており、平氏側は情報不足と指揮統制の混乱に苦しんでいました。富士川での敗走は、平氏の主導権喪失を決定づけ、以後の源平合戦の趨勢に大きな影響を与えた出来事であると評価できます。

源義仲 (Wikipedia)

【正解】3
解説
1183年、木曾冠者として知られる源義仲は北陸道を進撃し、倶利伽羅峠で平氏の大軍を打ち破って勢いに乗り、そのまま入京します。これにより平氏一門は安徳天皇と三種の神器を奉じて西国へ退き、都は源氏勢力の掌中に入りました。入京後、義仲は後白河法皇から正式に平氏追討の宣旨を受け、全国に対して「平氏追討」の大義名分を掲げる立場を得ます。
ただし、義仲の軍勢は東国・北国の在地武士を中心としており、京の公家社会との調整や物資調達に不慣れでした。そのため兵糧・軍律の乱れが目立ち、朝廷や市民の反感を買います。さらに政治主導権をめぐって院方と対立を深め、情勢は不安定化しました。こうした中で、鎌倉の頼朝は義経・範頼を上洛させ、1184年には宇治川・粟津で義仲が敗死します。
それでも、1183年の入京と追討宣旨は、源平合戦の主導権が源氏側へ決定的に移った瞬間を示す出来事であり、義仲はその転換点を切り開いた武将として重要な役割を果たしたと評価できます。

【正解】2
解説
宇治川の戦い（1184年正月）は、入京後に朝廷や京方と対立を深めた源義仲（木曾義仲）軍を、鎌倉方の源範頼・源義経連合軍が討つ決戦として行われました。戦場は宇治川周辺で、義仲は橋を破却し河川を天然の防壁として防御しましたが、義経方は強行渡河でこれを突破します。とくに有名なのが「宇治川先陣争い」で、佐々木高綱と梶原景季が名馬「池月」「磨墨」にまたがり激流へ馬首を並べた逸話です。これは義経軍の機動力と士気の高さを象徴し、義仲軍の戦線を一気に崩す要因となりました。
この敗北により義仲は後退を余儀なくされ、続く粟津の戦いで敗死します。宇治川の戦いは、源氏内部の主導権が鎌倉方（頼朝・義経・範頼）へ確定的に移る転機であり、その後の一ノ谷・屋島・壇ノ浦へと続く平氏追討の大攻勢の端緒となる重要な合戦であったと評価できます。

一ノ谷の戦い、狩野派 (Wikipedia)

【正解】1
解説
一ノ谷の戦いは、1184年（寿永3年）に摂津国福原西方の要害・一ノ谷で行われた合戦です。源義経は兄・範頼の正面攻撃と連携し、自らは六甲山地を迂回して平氏本陣の背後に回る奇襲を実行しました。通称「鵯越（ひよどりごえ）の逆落とし」と呼ばれる急斜面からの強襲は、伝承的誇張を含むと指摘されますが、戦術的には「正面牽制＋別働奇襲」の二正面作戦で平氏の堅陣を崩すことに成功した点が重要です。
この敗北により平氏は福原の拠点を放棄して海上へ撤退し、主導権は源氏側に大きく傾きます。『平家物語』では熊谷直実による「敦盛最期」の場面などが描かれ、合戦の劇的性と無常観が強調されています。一ノ谷の勝利は、のちの屋島・壇ノ浦へと続く平氏追討の連戦の端緒となり、源氏の全国制覇に向けた決定的な弾みを与えた合戦であったと評価できます。
ただし、義経が自ら鵯越の逆落としをしたという通説に対しては、最近の研究により、坂から攻めたのは義経ではなく多田行綱だったという異説が出されており、その真偽は定かではありません。

扇の的『平家物語絵巻』巻十一 (Wikipedia)

【正解】3
解説
屋島の戦いは、平氏が海上拠点として整えた讃岐・屋島の陣営を、源義経が奇襲的に攻略した合戦です。義経は兵船が乏しい中で、荒天を突いて阿波から船５艘、兵50騎というわずかな兵力で渡海し、平氏の意表を突いて阿波に上陸しました。さらに、味方本隊の到着を待たずに素早く屋島の陣所を攻め立て、平氏の本営や館に火をかけて混乱を誘います。この機動と迅速な決断が勝敗を分け、平氏は屋島を放棄して西へ退却しました。
『平家物語』では、那須与一が海上の平氏船に掲げられた扇の的を射落とす場面が有名で、武士の弓術と合戦の緊迫を象徴する逸話として語られます。屋島での勝利により源氏は制海権と主導権を強め、平氏は長門・壇ノ浦方面へ後退を余儀なくされました。これが同年の最終決戦・壇ノ浦の戦いへと直結し、源平合戦の帰趨を決定づける一歩となったのです。ただし、那須与一が扇の的を射落としたという逸話は後世の作り話ではないかと言われています。

壇ノ浦の戦い (Wikipedia)

【正解】4
解説
壇之浦の戦いは、1185年4月に長門国壇之浦（現在の山口県下関市・関門海峡）で行われた海戦で、源平合戦の最終決戦です。源義経が源氏方の水軍を率い、平氏方は実質的な総指揮官である平知盛がこれに当たりました。合戦は当初、潮流が味方した平氏が優勢でしたが、潮の変わり目を境に情勢が逆転し、さらに一部の平氏方水軍の寝返りや指揮系統の混乱が重なって、平氏は劣勢に追い込まれます。
戦いのさなか、安徳天皇と二位尼（平時子）が入水し、平氏は壊滅的打撃を受けました。三種の神器のうち草薙剣（天叢雲剣）が海中に失われたと伝えられる点も、本戦の象徴的出来事です。最終的に平宗盛らが捕縛され、平氏は滅亡します。

戦いに敗れた平氏一門の選んだ道は、海中に身を投じること（入水）でした。その様子について、上杉和彦『源平の争乱』は次のように記しています。

【正解】4
解説
『平家物語』は「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」「盛者必衰の理」「おごれる人も久しからず」という冒頭に象徴されるように、仏教的な無常観を根本テーマに据えた軍記物語です。最盛期の栄華から一転して没落していく平家の運命を軸に据えることで、権勢も生命もつねに移ろい行くという教訓を、読者・聴衆に強く印象づけます。
また、本作は琵琶法師の語り物として広まり、聴衆の心に「哀れ（あわれ）」を呼び起こすことが重視されました。敗者である平家の悲劇を丹念に描くことは、栄華のはかなさや人間の業を際立たせ、物語としての感動と教訓性を高めます。鎌倉初期という時代状況においても、勝者礼賛より、権力の無常を語ることがより普遍的な意味をもったため、タイトルに「平家」を掲げて敗者の興亡を語る構図が選ばれたのです。
なお、『平家物語』の冒頭の一節は次のとおりです。

「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」

まとめ：

源平の争乱（治承・寿永の乱）は、平安時代末期の1180年から1185年にかけて、源氏と平氏の間で繰り広げられた大規模な内乱です。この争いは、平清盛によって権勢を極めた平氏政権に対し、源氏を中心とする反平氏勢力が反旗を翻したことに始まります。背景には、平氏による貴族や武士への圧迫、朝廷内の権力抗争、そして地方武士の不満の高まりがありました。

1180年、後白河法皇の皇子・以仁王が平氏追討の令旨を発し、源頼政とともに挙兵しますが敗死します。しかし、この令旨は各地の源氏や反平氏勢力を刺激し、伊豆に流されていた源頼朝が挙兵しました。頼朝は石橋山の戦いで敗北するも、安房へ逃れ、のちに関東の武士団を結集して勢力を拡大します。一方、木曾義仲も信濃で兵を挙げ、北陸から京へ進撃しました。

1183年、義仲は倶利伽羅峠の戦いで平氏を破り、入京を果たします。しかし朝廷との関係が悪化し、義仲は頼朝の派遣した源義経・範頼軍に宇治川の戦いで敗北、討たれます。その後、義経は一ノ谷の戦い（1184年）で平氏を大敗させ、さらに屋島の戦い（1185年）で追撃しました。

最終決戦は1185年3月の壇ノ浦の戦いで行われ、平氏は滅亡しました。戦いの中で安徳天皇が入水し、『平家物語』に描かれる悲劇的な最期を迎えます。勝利した源氏は、頼朝のもとで鎌倉幕府を開き、日本の政治は武家政権へと移行しました。

この争乱は、貴族中心の公家政治から武士による政治体制への大転換点となり、また源氏内部の対立や義経追討など、後世の武家社会における権力闘争の原型を示す出来事でもありました。

参考文献：
川合康著 (2010) 『源平合戦の虚像を剥ぐ』講談社学術文庫
上杉和彦著 (2007) 『源平の争乱』吉川弘文館
高橋昌明著 (2021) 『都鄙大乱 : 「源平合戦」の真実』岩波書店