平安末期の武士団の成長がよくわかる！クイズ5問

【正解】4

【解説】

平安時代末期になると、中央から任じられた受領（国司）の一部が任期後も現地に定着し、その子孫や在地の開発領主・郡司の後裔・在庁官人などが、私的な武装集団を組織するようになります。これが「武士団」です。武士団は、領地・荘園や公領の年貢輸送の警固、境界争い・押領への自衛、海賊・山賊対策など、治安の不安定化に対応する実利的な必要から成長しました。中央の検非違使や国衙軍制が十分に機能しなくなるなか、地域の安全維持を自前で行う力が求められたためです。

構成は、惣領（棟梁）を中心に、家子・郎党・従者といった被官層が主従関係で結びつくのが特徴です。弓馬の技量を重んじ、名田などの在地支配を基盤に武力と経済力を蓄積しました。やがて清和源氏や桓武平氏といった有力武家のもとに各地の武士団が糾合され、前九年・後三年の合戦などを通じて軍事的実績を重ね、院政期には朝廷の軍事警察力を補完・代替する存在となります。こうした武士団の発展が、のちの武家政権（鎌倉幕府）成立の社会的・軍事的な母体となった点が重要です。

※誤答の比較：

• 「惣村」は中世後期の自治的な村落組織で、武装団体そのものではありません。
• 「守護・地頭」は鎌倉幕府が設置した職で、武士団という在地武装組織とは概念が異なります。
• 「国人一揆」は南北朝～室町期の国人層による連合で、時代も性格も別物です。

【正解】2

【解説】

平安時代末期の在地武士は、家子・郎党などの主従関係で結ばれた武士団を形成し、やがて名望ある貴族系の血統を「棟梁」と仰いで広域的な連合へと発展しました。代表が「桓武平氏」と「清和源氏」です。桓武平氏は桓武天皇の子孫で、平良文流・平将門、のちに平清盛らを輩出し、瀬戸内海の海上交通掌握や院政下の軍事・警察権の担い手として台頭しました。清和源氏は清和天皇の子孫で、源頼信・頼義・義家（前九年・後三年合戦）らの東国進出を経て在地武士の支持を集め、最終的に源頼朝が鎌倉幕府を樹立します。いずれも皇族由来の家格と武功を背景に、各地の武士団を糾合して「源平」二大勢力として並び立ち、治承・寿永の内乱（源平合戦）で日本の政治構造を大きく転換させた点が重要です。

※誤答の比較：

• 「藤原北家と橘氏」は貴族氏族ですが、武士団連合の棟梁として全国的に武家を糾合したわけではありません。
• 「大江氏と中原氏」は受領・文人官僚として著名で、武士団の広域連合の中心とは性格が異なります。
• 「在庁官人と受領」は官職・身分の区分であり、氏族名でも武士団連合の名称でもありません。

築土神社所蔵の平将門像 (Wikipediaより）

【正解】3

【解説】

答えは平将門です。将門は桓武天皇の子孫である桓武平氏（平高望の孫）に属する武将で、10世紀前半に関東（常陸・下総・上野・下野・武蔵など）で対立する在地勢力を制圧し、939年には自らを「新皇」と称して独自の政権樹立を企てました。これは承平・天慶の乱の一環として朝廷から反乱とみなされ、討伐の対象となります。翌940年、将門は同じ桓武平氏の一族である平貞盛と、同盟した藤原秀郷（藤原鎮守府将軍系の有力者）の追討軍に敗れ、戦死しました。将門の首級は京にさらされ、在地武士の自立的な動きに対する朝廷の強い警告となりました。将門の台頭と滅亡は、東国の武士団が急速に力をつけていく過程と、それを統制しようとする中央権力との緊張関係を端的に示すできごとであると言えます。

※誤答の比較：

• 1「平清盛」は12世紀の武家政権化を主導した平氏棟梁で、将門より2世紀ほど後の人物です。
• 2「源義家」は清和源氏の武将で、前九年・後三年合戦で名を上げましたが、将門を討った人物ではありません。
• 4「平忠常」は11世紀前半の関東反乱の首謀者で、将門とは時代も事件も異なります。

【正解】2

【解説】

答えは「桓武天皇の曾孫・高望王（のちの平高望）の孫」です。平将門は桓武天皇の血統から臣籍降下して平姓を賜った高望王の系統、いわゆる桓武平氏に属します。高望王は9世紀末に東国へ下向して在地に土着し、その子孫が上総・下総・常陸など関東各地で勢力を広げました。将門はこの桓武平氏の名望と在地基盤を背景に、10世紀前半の関東で頭角を現します。桓武平氏という「皇別（天皇の後裔）」の家格は、在地武士団を糾合する際の威信資源として大きく機能し、将門が周辺豪族・国衙勢力と対抗しうる政治的・軍事的正当性を与えました。やがて将門は関東一帯で勢力を拡大し、939年には自立的な政権を志向するまでに至りますが、その根底には桓武平氏の血統と、東国に根づいた在地武士団の支持があった点が重要です。

※誤答の比較：

• 1「清和天皇の孫」は清和源氏の系譜で、源経基・源頼義らの一族に該当します。将門は平氏であり源氏ではありません。
• 3「宇多源氏の一族」は宇多天皇後裔の源氏で、将門の家系とは異なります。
• 4「源融の孫」は嵯峨源氏の系譜で、これも将門の系統とは無関係です。

【正解】1

【解説】

答えは「藤原純友の乱」です。藤原純友は「前伊予国司」として瀬戸内海の海賊（海人集団）を糾合し、939年頃から西国一帯で公領・港湾の押領や官物輸送の妨害を行い、941年には九州の政治・軍事拠点である太宰府を襲撃するまでに勢力を拡大しました。朝廷は事態の深刻化を受け、追捕使として小野好古と清和源氏の源経基を起用し、海上封鎖と水軍戦を主体とする作戦で各地の根拠地を切り崩していきます。その結果、純友方は壊滅し、純友も逃走ののちに捕縛されて乱は平定されました。

この反乱は同時期の「平将門の乱」（関東）と並んで「承平・天慶の乱」と総称されます。東国・西国の両端で在地武士の自立的な武力行使が顕在化したことは、従来の国衙軍制や検非違使による治安維持の限界を露呈させました。そのため、朝廷は有力な武士団や貴族武人（源氏・平氏）を動員して鎮圧せざるをえず、結果として武士の軍事的実力と朝廷政治への関与が強まりました。源経基の活躍は清和源氏の武門としての地位を高め、のちの源氏躍進への一里塚となった点でも重要です。

※誤答の比較：

• 「平忠常の乱」は11世紀前半の関東での反乱で、人物・時期が異なります。
• 「前九年合戦」は11世紀中葉の奥羽での戦乱で、舞台も性格も別です。
• 「保元の乱」は12世紀の内乱で、公家・武家の対立が表面化した事件です。