アウグスティヌスのことがよくわかる！クイズ10問

正解：3

解説：

アウグスティヌスの『告白』は、単なる自伝や回想録ではなく、神に向かって自己の罪や迷い、回心の経緯を語りながら、同時に読者にも語りかけるという二重の性格を持つ著作です。彼は人生の過ちや罪を赤裸々に記すことで、神の恩寵の偉大さを証し、人々に悔い改めと信仰の重要性を伝えようとしました。したがって、『告白』は「神に向かっての祈り」としての側面と、「読者への証し」としての側面を併せ持った作品であり、「神の前で、人々に向かって告白したもの」であると言えます。

正解：3

解説：

アウグスティヌスの『告白』は、自らの過去の罪や迷いを赤裸々に語ることによって、神の恩寵と憐れみの偉大さを讃えることを目的とした作品です。彼は若き日に犯した多くの罪を回顧し、それを赦し、導いた神の愛を深く感謝しています。『告白』は神への感謝と賛美の書であり、自分のように罪を犯した人間でも神の導きによって救われることができるという信仰の証でもあります。このようにしてアウグスティヌスは、読者に神の憐れみの深さを伝え、悔い改めと回心への道を示そうとしたのです。

正解：3

解説：

アウグスティヌスはキリスト教に改宗する前、約9年間にわたってマニ教に傾倒していました。マニ教は3世紀にペルシアでマニという人物によって創始された宗教で、善と悪、光と闇という二元論的な世界観を持っていました。アウグスティヌスはこの教義に惹かれ、青年時代にその信者となりましたが、次第にその教義に疑問を抱くようになり、やがて離れることになります。彼はマニ教の教理が哲学的・神学的に浅いと感じ、真理を求めて新プラトン主義に接近し、最終的にキリスト教に回心しました。彼の『告白』には、マニ教との決別に至るまでの葛藤とその理由が詳しく述べられています。

正解：3

解説：

アンブロシウスは4世紀のミラノ司教であり、当時の西方教会における最も著名な神学者の一人です。アウグスティヌスがマニ教を離れ、真理を求めてミラノに滞在していた際に、その雄弁で理知的な説教に深く感銘を受け、アンブロシウスの影響のもとでキリスト教に傾倒していきました。アンブロシウスは、単に教義を説くだけでなく、旧約聖書を象徴的・霊的に解釈する手法によって、聖書を知的に読み解く道をアウグスティヌスに示しました。そして最終的に、387年にアンブロシウス自身の手でアウグスティヌスに洗礼を授けました。この出会いはアウグスティヌスの回心において決定的な役割を果たしたのです。

正解：3

解説：

アウグスティヌスが回心に至る直接のきっかけとなったのは、ある日ミラノの庭で涙ながらに苦悩していたとき、どこからともなく聞こえた「取って読め、取って読め（トレ・レゲ）」という子どもの声でした。彼はこれを神の声として受け取り、近くにあった聖書を開いたところ、ローマの信徒への手紙13章13–14節の「好色と淫乱を捨てよ、肉欲を満たすことに心を向けるな」という一節が目に入りました。この言葉は、彼の長年の肉欲への執着や世俗的な生き方を断ち切る決意を固める決定的なものとなり、彼の深い回心を導きました。アウグスティヌスはこの体験を『告白』の中で詳細に記しており、キリスト教思想史における最も劇的な回心の場面として知られています。

正解：3

解説：

アウグスティヌスが司祭に任じられたのは、北アフリカに位置する都市ヒッポ・レギウス（現在のアルジェリアのアンナバ）でした。彼は西暦391年、当地の教会で説教を聞いていた際に、聴衆の強い要望により突如として司祭職に就くことになります。これはアウグスティヌス自身にとっても予期せぬことでありましたが、彼は神の導きと受け止め、その後の生涯を教会の奉仕に捧げました。

この地での活動を通じて、彼は信徒への説教、異端との論争、神学書の執筆など多くの功績を残し、5年後の396年には同地の司教に昇格します。ヒッポ・レギウスはアウグスティヌスの司牧活動と著述の中心地となり、彼の思想が後のキリスト教神学に大きな影響を与える拠点となったのです。

正解：3

解説：

このエピソードは伝説として広く知られており、アウグスティヌスが三位一体の神秘について思索を巡らせていた際のことです。ある日、彼が海岸を歩きながらこの難解な教義について考えていたところ、ひとりの少年が小さな貝殻で海の水を一生懸命に穴に移そうとしている姿を見かけました。アウグスティヌスが「何をしているのか」と尋ねると、少年は「この海の水をすべてこの穴に入れようとしているのです」と答えました。

それを聞いたアウグスティヌスは、「人間の理性で神の三位一体の神秘をすべて理解しようとすることも、このように不可能なことなのだ」と悟りました。このエピソードは、神の奥義に対する謙虚さの重要性と、人間の限界を示す象徴的な物語として語り継がれています。実際にアウグスティヌス自身の著作にこの話が登場するわけではありませんが、彼の神学的姿勢を象徴する逸話として広く親しまれています。

正解：3

解説：

アウグスティヌスは著書『神の国（De civitate Dei）』の中で、歴史を「神の国」と「地の国」という二つの対立する国（都市）の闘争として捉えました。「神の国」は神への愛を中心とし、永遠の善と正義を求める共同体です。一方、「地の国」は自己愛とこの世的欲望を基盤とし、一時的な支配や栄光を追い求める共同体です。

この二つの国は歴史の中で交錯しつつも本質的に異なる目的を持っており、最終的には「神の国」が永遠に勝利するとされます。この思想は、単なる宗教的比喩ではなく、歴史哲学としての深い含意を持ち、中世から近代にかけての政治思想やキリスト教神学に大きな影響を与えました。アウグスティヌスはこの二国の対比を通じて、地上の国々や国家権力の限界と、神の摂理に基づく秩序の優位性を説いたのです。

正解：3

解説：

アウグスティヌスが晩年に激しく論争したペラギウスは、イギリス出身の修道士で、人間は生まれながらにして善を行う能力を持ち、神の恩恵（グラティア）なしでも救いに至ることができると主張しました。これに対してアウグスティヌスは、原罪によって人間の意志はすでに堕落しており、善を行うためには神の恩恵が不可欠であると論じました。

アウグスティヌスによれば、自由意志は人間に備わっているものの、堕落した状態では善を選ぶ力が弱く、神の恩恵によって初めて真に善き行為をなすことができるのです。したがって、恩恵は人間の自由意志を否定するものではなく、それを完成させるものであるとされました。この論争は後に西方教会における「原罪」や「恩恵」についての教義形成に決定的な影響を与えました。

正解：3

解説：

ハンナ・アーレントは20世紀を代表する政治哲学者であり、ナチズムや全体主義の分析で知られていますが、彼女の思想の出発点は古代哲学とキリスト教思想の探求にありました。彼女が1929年に提出した博士論文のテーマは「アウグスティヌスの愛の概念（Der Liebesbegriff bei Augustin）」です。

この論文においてアーレントは、アウグスティヌスの愛（ラティン語で「caritas」や「amor」）を中心に、人間存在における「愛」と「始まり（natality）」の関係を深く考察しました。彼女にとってアウグスティヌスの思想は、個人の内面的な経験と公共世界における行為との関係を考える上での原点となりました。この研究は、後のアーレントの代表作『人間の条件』や『全体主義の起源』にも通じる重要な思想的基盤をなしています。

参考文献：

アウグスティヌス著『告白』山田晶訳・責任編集 1968年 中央公論新社
松崎一平著『アウグスティヌス　告白　わたしを語ること』2009年 岩波書店
松田禎二著『アウグスティヌス : その生涯と思想 』 1993年 行路 社
宮谷宣史著『アウグスティヌス』2004年 講談社学術文庫
出村和彦著『アウグスティヌス：「心」の哲学者』 2017年 岩波新書