世界遺産「富士山　信仰の対象と芸術の源泉」がよくわかる！クイズ10問

正解: 3. コノハナサクヤ姫

解説： 富士山本宮浅間大社は、富士山を神体山として祀る神社であり、その祭神はコノハナサクヤ姫です。コノハナサクヤ姫は、『古事記』によれば木の花の笑み栄えるという意味で、富士山の活火山として噴煙をあげ、溶岩が流れ出すなどの自然現象と結びついた女神です。また、富士山の祭神が女神であることは奈良時代から知られており、江戸時代初期の慶長19年（1614年）成立の『集雲和尚遺稿』が最初の記録とされています。

富士山本宮浅間大社は、登山者が参拝し、富士山に登りながら祈りを捧げる「登拝」も行われる場所として知られています。

人穴富士講遺跡

正解: 4. 角行

解説： 富士講は、富士山への信仰を中心とした宗教団体であり、角行（かくぎょう）がその開祖とされています。当初修験道の行者であった角行は、常陸国での修行を終えて陸奥国達谷窟に至り、その岩窟で修行中に役行者よりお告げを受けて富士山麓の人穴（静岡県富士宮市）に辿り着きました。そして、この穴で4寸5分角の角材の上に爪立ちして一千日間の苦行を実践し、永禄3年（1560年）「角行」という行名を与えられたということです。各行の教えは弟子たちに受け継がれ、やがて後の富士講へと発展していきました。角行の教えは、それまでの一部の富士修験者による山岳信仰から、庶民の登山信仰という新しいスタイルを生み出したといわれています。

旧外川家住宅。富士講の御師の家の代表的な建造物。(Wikipedia)

正解: 4. 富士講信者の世話をした屋敷

解説：
御師住宅は、富士講信者の世話をした屋敷のことを指します。富士講は、富士山への信仰を中心とした宗教団体であり、信者たちは富士山への登拝の際に、御師住宅での宿泊や食事を受けることがありました。御師住宅は、信者たちが安心して富士山へ登ることができるように、信仰の拠点として重要な役割を果たしました。

富士講信者は、御師住宅での滞在中に信仰に関する教義や儀式を学び、富士山への登拝の準備を行いました。また、御師住宅では、信者たちが交流し、情報を共有する場としても機能しました。御師住宅は、富士山信仰の中心地であり、多くの信者たちが集まる場所となりました。

御師住宅は、信者たちが富士山への信仰を深める場所として重要な存在であり、富士山信仰の一環として、富士講の活動や信仰の普及に大きく貢献しました。

正解: 2. 三保松原

解説： 富士山の世界遺産登録の過程で、一時構成資産から外されかけたのは、三保松原です。この場所は、富士山の美しい風景とともに、日本の伝統的な風景を表現しています。

三保松原は、富士山の麓に広がる砂浜であり、松の木々が砂浜に連なっています。この風景は、日本の短歌や絵画にも頻繁に描かれており、富士山と松の木々の美しいコントラストが特徴です。

しかし、富士山の世界遺産登録の際には、他の構成資産との関連性や価値の認識について議論がありました。一時的に構成資産から外されかけたものの、後に再評価され、現在は富士山の世界遺産の一部として認められています。

三保松原は、富士山との絶妙な調和が魅力であり、多くの人々に親しまれています。富士山の世界遺産登録においても重要な役割を果たしており、その美しい風景は多くの人々の心を魅了しています。

正解: 1. 忍野八海

解説： 忍野八海は、古くから富士修験の霊場とされた８箇所の湧水群です。これらの湧水は、富士山周辺の伏流水や山麓の地下水が湧き出ているものであり、その水は清らかで美しいとされています。

忍野八海は、富士山信仰の一環として重要な存在であり、古くから修験者たちの巡礼の対象となってきました。これらの湧水は、忍野村に位置しており、観光地としても人気があります。

この湧水群は、その特異な自然現象から「八海」と呼ばれており、それぞれに名前が付けられています。湧水の美しさや神秘性は、多くの人々に魅力を与えています。

忍野八海は、日本の文化や信仰の一部として重要な役割を果たしており、訪れる人々にとって特別な場所となっています。

正解: 1. 山部赤人

解説： 「田子の浦ゆうち出でてみれば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける」という短歌は、山部赤人によって詠まれました。彼は、平安時代の歌人であり、富士山を詠んだ多くの歌を残しています。

この短歌は、富士山の美しさや神性を表現しており、山部赤人の感受性と詩才が光る作品となっています。富士山の白い雪と高い峰が詠われており、その風景の壮大さを感じることができます。

山部赤人の富士山に関する歌は、その後の歌人たちにも多大な影響を与えました。彼の詩は、日本の文学史においても重要な位置を占めており、多くの人々に愛されています。

葛飾北斎『神奈川沖波裏』

正解: 3. ギュスターヴ・クールベ

解説： 1867年のパリ万国博覧会で『神奈川沖波裏』を見て、『波』を描いたといわれるフランスの画家は、ギュスターヴ・クールベです。彼は、日本の浮世絵『神奈川沖波裏』に感銘を受け、その影響を受けて海や波を描くようになりました。

ギュスターヴ・クールベは、19世紀のフランスで活躍した画家であり、写実主義の代表的な作家として知られています。彼の作品は、独自の視点や技法によって現実の風景や人物を描き出し、多くの人々に影響を与えました。

『神奈川沖波裏』は、日本の浮世絵作品であり、富士山と波の美しいコントラストが描かれています。この作品は、当時の西洋人にとってはまったく新しい視点や表現方法であり、特にギュスターヴ・クールベに大きな影響を与えました。

ギュスターヴ・クールベの『神奈川沖波裏』には、日本の風景や文化に対する関心や興味が反映されており、ジャポニズムの一環としても重要な作品となっています。

月見草

正解: 4. 太宰治の『富嶽百景』

解説：
「富士には月見草がよく似合ふ」という一節で有名な小説は、太宰治の『富嶽百景』です。この小説は、太宰治が富士山について綴った作品であり、富士山に対する感じ方が次第に変化していく様子を巧みに描き出しています。

『富嶽百景』の中で「富士には月見草がよく似合ふ」という一節は、富士山の美しさや季節感を表現しており、多くの人々に愛されています。

太宰治は、個性的な文体と独特な視点で富士山を描き、その美しさや神秘性を表現しました。彼の『富嶽百景』は、日本の文学史においても重要な作品であり、多くの読者に富士山への魅力を伝える役割を果たしています。

御坂峠から見る富士山

正解: 2. 冨嶽三十六景

解説:
葛飾北斎の『冨嶽三十六景』は、ジャポニズムの一つとして西洋美術にも大きな影響を与えた日本の絵画です。このシリーズは、富士山を中心に描かれた木版画の作品集であり、富士山の風景を様々な角度や季節で描いています。

『冨嶽三十六景』は、19世紀のヨーロッパで大きな注目を浴び、西洋の画家たちに多大な影響を与えました。特に、フランスの印象派やポスト印象派の画家たちによって高く評価され、彼らの作品にも富士山が頻繁に描かれるようになりました。

この絵画シリーズは、富士山の美しさや神性を表現するだけでなく、日本の自然や風俗、季節感なども描かれており、当時の西洋人にとってはまったく新しい視点や表現方法でした。そのため、西洋の芸術界において大きな反響を呼び、ジャポニズムのブームを巻き起こしました。

葛飾北斎の『冨嶽三十六景』は、日本の絵画史においても重要な作品であり、富士山を題材にした絵画の代表作として知られています。その美しい風景や独特な画風は、今でも多くの人々に愛されています。

正解: 3. タンギー爺さん

解説： タンギー爺さんは、ファン・ゴッホが描いた富士山の絵の一つです。この絵は、歌川広重の浮世絵『冨士三十六景』の模写という形で背景に富士山が描かれています。ゴッホは、日本の浮世絵に強い影響を受けており、その影響を反映させた作品を多く残しました。『タンギー爺さん』は、その中でも特に有名な作品の一つであり、富士山を独自のスタイルで描いています。

ゴッホは、富士山を芸術の源泉として捉え、その美しさや神性を表現するために多くの作品に富士山を描きました。彼の富士山の絵は、その個性的なスタイルや情感溢れる筆致によって、多くの人々に愛されています。

ゴッホの『タンギー爺さん』は、浮世絵との関連性や富士山の表現方法についても興味深い作品です。彼の富士山の絵は、その独自の視点や感性によって、富士山の美しさと神秘性を描き出しています。

参考文献：

H.バイロン・エアハート著『富士山：信仰と表象の文化史』（2019 慶應義塾大学出版会）
秋道智彌著『霊峰の文化史：世界遺産・富士山と世界の山岳信仰』（2023 勉誠社）
上垣外憲一著『富士山：聖と美の山』（2009 中公新書）
野口健著『世界遺産にされて富士山は泣いている』（2014 PHP新書）