パリ講和会議のことがよくわかる！クイズ10問

正解：3. アメリカ大統領ウィルソン

解説

ウッドロウ・ウィルソン大統領は、1918年1月8日に米連邦議会で「平和原則十四ヶ条」を提示し、戦後秩序の基本理念を示しました。内容は、秘密外交の廃止（公開外交）、海洋の自由、通商障壁の撤廃、軍備縮小、植民地問題の公正な調整、ロシア・ベルギーの独立回復、アルザス＝ロレーヌの返還、イタリア国境の再調整、オーストリア＝ハンガリーやバルカン諸国の民族自決の尊重、オスマン帝国諸民族の自治、ポーランドの独立回復、そして国際連盟の設立など多岐にわたります。これらはパリ講和会議の議論や国際連盟規約の制定に強い影響を与えました。

もっとも、民族自決の適用はヨーロッパ中心で不徹底にとどまり、植民地世界には十分に広がりませんでした。それでも、この演説は各地の民族運動や大正デモクラシー期の議論を活性化させ、戦後国際秩序の理念的出発点として大きな意義を持ったと評価されます。

正解：1. パリ講和会議

解説

第一次世界大戦は1918年11月11日の休戦で戦闘が終わりました。その直後、戦後処理のために開かれたのがパリ講和会議です（開会は1919年1月18日です）。会議にはアメリカのウィルソン、フランスのクレマンソー、イギリスのロイド＝ジョージ、イタリアのオルランドらが主導的に参加し、敗戦国との講和条件や新しい国際秩序が協議されました。最大の成果は、ドイツとの講和条約であるヴェルサイユ条約（1919年6月調印）と、国際連盟規約の採択です。領土の再編、賠償、軍備制限、委任統治の設定などが取り決められ、東欧・中東の国境線や植民地処理に大きな影響を与えました。日本も全権団を派遣して参画し、旧ドイツ権益の処理などに関与しました。なお、選択肢2のワシントン会議は1921～22年の海軍軍縮・太平洋秩序に関する会議、選択肢3のロカルノ会議は1925年の欧州集団安全保障の枠組み、選択肢4のサンレモ会議は1920年のオスマン帝国領の処理に関する会議であり、時期・目的が異なります。

正解：3. 西園寺公望ら５人の全権からなる代表団

解説

パリ講和会議（1919年）に日本は、西園寺公望を筆頭とする５名の全権代表団を派遣しました。メンバーは西園寺公望・牧野伸顕・珍田捨巳・松井慶四郎・伊集院彦吉で、いずれも当時の外交要路や主要国駐在大使を務めた実力者でした。代表団は、戦後処理における日本の利害（山東半島の旧独権益処理、赤道以北の南洋群島の委任統治獲得など）を交渉し、国際連盟規約の策定にも関与しました。また、日本は人種的平等条項の採択を提案しましたが、最終的には合意に至らず、国際協調の理念と列強政治の現実との齟齬が浮き彫りになりました。

選択肢1・2・4はいずれも事実と異なります。原敬は国内政権の首班であり会議に直接出席していません。牧野伸顕は重要な全権の一人ですが単独派遣ではありません。加藤友三郎・田中義一は軍・政の重鎮ですが、パリ講和会議の日本全権を務めてはいません。パリに送られたのは、西園寺公望を中心とする「５人の全権代表団」でした。

正解：4. ヴェルサイユ条約

解説

ヴェルサイユ条約は、第一次世界大戦後の講和処理として、1919年6月28日にフランスのヴェルサイユ宮殿で連合国とドイツの間に調印された条約です。パリ講和会議の中心的成果であり、ドイツに対して領土の割譲（アルザス＝ロレーヌのフランス返還、ポーランド回廊の設定とダンツィヒ自由市化など）、ラインラントの非武装化、陸海軍の大幅制限、賠償義務、そして「戦争責任条項」（第231条）など厳しい条件を課しました。また、旧ドイツ領植民地は国際連盟の委任統治領として再編され、同時に国際連盟規約が採択されました。これらの措置は戦後秩序の枠組みを定める一方、ドイツ国内の不満や経済不安を高め、後の国際情勢に長期的な影響を与えたと評価されています。なお、選択肢1のサン＝ジェルマン条約はオーストリアとの講和、選択肢2は1921–22年のワシントン会議での軍縮条約、選択肢3は1918年にドイツとソヴィエト政権が結んだ講和であり、いずれも時期・相手・内容が異なります。

正解：2. 戦争責任者に対する厳しい処罰

解説

ヴェルサイユ条約（1919年6月28日調印）は、ドイツに非常に厳しい講和条件を課しました。第一に、領土の割譲と海外植民地の全面喪失です。アルザス＝ロレーヌのフランス返還やポーランド回廊の設定、ダンツィヒの自由市化などにより、ドイツは国土の一部を失い、旧植民地は国際連盟の委任統治領となりました。第二に、巨額の賠償金の支払いが科されました。賠償総額は後に具体化され、ドイツ経済と財政に長期の重荷を与えました。第三に、軍備制限が徹底され、陸軍は10万人に制限され、徴兵制は廃止、戦車・潜水艦の保有は禁止、そして空軍の保有も禁止されました。これらは選択肢1・3・4が正しい理由です。

一方で、「戦争責任者に対する厳しい処罰」という表現は適切ではありません。条約には確かに戦争責任条項（第231条）や戦争犯罪人処罰に関する規定が盛り込まれましたが、実際には元皇帝ヴィルヘルム2世の引き渡しはオランダに拒否され、ドイツ国内で行われたライプツィヒ裁判でも有罪判決や刑罰は限定的・寛大なものにとどまりました。したがって、「厳しい処罰」が体系的かつ広範に実施されたとは言えず、設問の中で「正しくない」選択肢は2となります。

正解：1. 民族自決の原則

解説

民族自決の原則とは、民族や言語・歴史的共同体を単位として、その帰属や国家のあり方を自ら決めるべきだという考え方です。第一次世界大戦後のパリ講和会議では、この原則がヨーロッパの国境再編の大きな指針となりました。具体的には、ポーランドの再独立と「ポーランド回廊」の設定、チェコスロバキアやユーゴスラビアなど多民族国家の成立、シュレーズヴィヒや上シレジアなどでの住民投票の実施などに反映されました。とはいえ、民族分布の複雑さから少数民族問題は各地に残り、原則は植民地世界には十分適用されませんでした。この不完全さは、戦間期の国際政治に長期の緊張を残すことになります。

一方、選択肢2・3・4はドイツに対して課された講和条件（領土・植民地の喪失、賠償、軍備制限〔空軍禁止など〕）であり、国境改定の「原則」そのものではありません。これらは条約の制裁・安全保障措置に属し、国境再編の理念を示す用語としては適切でないため誤りとなります。

正解：1. ヴェルサイユ体制

解説

第一次世界大戦後、1919年のヴェルサイユ条約を中心に、オーストリアとのサン＝ジェルマン条約、ハンガリーとのトリアノン条約、ブルガリアとのヌイイ条約、オスマン帝国とのセーヴル（のちローザンヌ）条約など一連の講和条約が結ばれ、ヨーロッパの国境再編・軍備制限・賠償・委任統治などの枠組みが定まりました。これらと国際連盟の設立によって成り立った戦後ヨーロッパの秩序を総称して「ヴェルサイユ体制」と呼びます。民族自決の原則の部分的適用により新興国家が誕生する一方、複雑な民族分布ゆえに少数民族問題が残り、ドイツには厳しい軍備制限と賠償が課されました。この構造的不満は、のちの改訂主義（リビジョニズム）を生み出し、体制の不安定要因となります。

なお、選択肢2の「ワシントン体制」は1921～22年のワシントン会議で形成されたアジア・太平洋地域の国際秩序を指します。選択肢3の「ウィーン体制」はナポレオン戦争後の1815年ウィーン会議に基づく19世紀前半の欧州秩序の名称です。選択肢4の「ロカルノ体制」は1925年のロカルノ条約群による西欧の安全保障再編を指し、ヴェルサイユ体制を補強しようとした後続の枠組みであって、戦後直後の基本秩序そのものではありません。

正解：3. ドイツの持っていた山東省の権益を引き継ぐことを認めさせた

解説

パリ講和会議（1919年）では、第一次世界大戦中に日本が占領した青島（膠州湾租借地）や山東鉄道・鉱山など、もともとドイツが清から獲得していた山東省の諸権益を、日本が引き継ぐことが認められました。これは、日本が1914年に青島を攻略・占領していた既成事実と、英仏伊などが戦時中に日本の主張を支持する秘密合意を結んでいたことが背景にあります。中国代表団は「山東の権益は中国に返還されるべきだ」と強く主張しましたが受け入れられず、最終的にヴェルサイユ条約への署名を拒否しました。この決定は中国国内で大規模な抗議運動（五四運動）を引き起こし、民族主義の高揚と近代中国の政治運動の加速につながりました。なお、山東問題はその後のワシントン会議の調整を経て、1922年に日本が権益を中国へ還付する形で解決へ向かいます。

選択肢2の南洋群島の委任統治獲得は事実ですが、これは中国ではなく旧ドイツ植民地（ミクロネシア）に関する決定です。選択肢1の満州全域の割譲承認や、選択肢4の台湾領有の「更新・永久化」はいずれも事実ではありません。台湾はすでに下関条約（1895年）で日本の領有となっており、パリ講和会議の主要議題ではありませんでした。

正解：2. 五・四運動

解説

五・四運動は、1919年5月4日に北京の学生が中心となって起こした反帝国主義・反封建を掲げる大衆運動を指します。契機は、パリ講和会議で日本がドイツの山東省権益を引き継ぐことが認められた（いわゆる「山東問題」）ことへの強い反発でした。学生たちは天安門広場で集会を開き、「外争国権・内除国賊」「還我青島」などを掲げて抗議し、同日には政界の親日派要人への糾弾行動も発生しました。

この抗議は北京にとどまらず、上海・天津・広州など各地へ拡大し、学生のストライキ、労働者のゼネスト、商人の同盟休業、日本製品のボイコットが全国的に広がりました。結果として中国政府は対日協調的な官僚の更迭を進め、ヴェルサイユ条約への署名を拒否します。五・四運動は、陳独秀や胡適らが推進した新文化運動とも結びついて知識人・学生・労働者・商人が連帯する新しい国民運動のモデルとなり、その後の中国の民族運動・政党形成（とくに1921年の中国共産党創設）にも大きな影響を与えました。

なお、選択肢3の五・三〇運動は1925年の上海での反帝国主義運動、選択肢1の五・一五事件は1932年の日本国内のクーデター未遂事件、選択肢4の辛亥革命は1911年の清朝打倒の革命であり、いずれも時期・性質が異なります。

正解：2. 三・一独立運動

解説

三・一独立運動は、1919年3月1日に京城（現ソウル）のタプコル公園（旧パゴダ公園）周辺での独立宣言朗読と「独立万歳」デモを皮切りに、朝鮮全土へ瞬く間に広がった大規模な非暴力の民族運動です。背景には、1910年の韓国併合以降の武断統治への不満に加え、第一次世界大戦後に高まった「民族自決」の理念や、中国の五・四運動と同時期の国際的な反帝国主義の潮流がありました。運動には学生・宗教者・商人・農民など幅広い層が参加し、独立宣言の配布、デモ行進、万歳三唱などの平和的手段が用いられましたが、日本当局は警察・憲兵を動員して弾圧し、多くの死傷者と逮捕者を出しました。

この運動は朝鮮社会の結束を強め、翌4月には上海で大韓民国臨時政府が樹立される契機ともなりました。また、日本側でも統治の在り方を見直す圧力となり、1919年以降の「文化統治」への転換を促す要因の一つになりました。なお、選択肢1の五・四運動は同年の中国における反帝国主義運動、選択肢3の光州学生運動は1929年の朝鮮での学生主導の抗日運動、選択肢4の義和団事件は1900年前後の清朝下の出来事であり、いずれも時期・地域・性格が異なります。