第一次世界大戦と日本の参戦のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3
【解説】
日英同盟は1902年1月30日にロンドンで締結され、東アジアにおけるロシア帝国の南下（満洲・朝鮮半島への進出）を抑止することを主たる目的としていました。背景には、1898年の旅順・大連の租借、シベリア鉄道と東清鉄道の敷設、義和団事件後も続いたロシア軍の満洲駐留など、ロシアの勢力拡大があります。日本は朝鮮半島における自国の「特殊利益」の承認を得て、単独では対処しにくいロシアへの牽制力を高めることができました。
同盟条項は、締約国の一方が単独の国と戦う場合には他方は中立を保ち、二国以上を相手にする場合には相互援助するという仕組みでした。これにより、日露戦争前後に日本は外交的な孤立を避け、英国は欧州大陸の勢力均衡に深入りせずにアジアでロシアを牽制する狙いを達成しました。英国の門戸開放政策や中国の領土保全の立場とも整合しており、極東における国際秩序の枠組みとして機能しました。その後、同盟は1905年と1911年に改定され、第一次世界大戦期まで存続しますが、ワシントン体制の成立に伴い1923年に終了します。

**【正解】3**

**解説：**

イギリスが1914年8月4日にドイツへ宣戦布告した直接の理由は、ドイツ軍が中立国ベルギーへ侵攻したからです。ベルギーの中立は、1839年のロンドン条約によって列強が共同で保障しており、イギリスはその保証国の一つでした。ドイツはシュリーフェン・プランに従い、フランスを迅速に撃破するためにベルギー領内の通過を求めましたが、ベルギー政府はこれを拒否しました。これに対してドイツ軍は8月4日未明に侵攻を開始し、イギリスは同日、ドイツに対してベルギーからの撤退を要求する最後通牒を発しましたが、受け入れられませんでした。

そのため、イギリスは同日夜（英国時間23時）にドイツへの宣戦を布告しました。英仏協商（1904年）は政治的な接近ではありましたが、法的に自動参戦を義務づける「同盟」ではありませんでした。したがって、参戦の法的・道義的根拠として最も重視されたのは、ベルギー中立の侵犯であり、英仏海峡の安全保障や大陸均衡の観点からも、ベルギーの独立と中立を守ることがイギリスの国益にかなうと判断されたのです。

【解説】
1914年8月、イギリスがドイツに宣戦布告すると、日英同盟（1902年締結、1905年・1911年改定）に基づき極東での協力が課題となりました。日本の第二次大隈内閣で外務大臣を務めていた加藤高明は、同盟義務の履行と東アジアの安全保障上の利益確保を重視し、対独参戦を強力に主導します。加藤はドイツの極東拠点である膠州湾租借地（青島）および南洋群島に対する軍事・海軍行動の必要性を内閣に説き、1914年8月15日にドイツへ最後通牒（極東からの撤兵・退去要求）を発出させました。ドイツがこれを黙殺したため、日本は8月23日に対独宣戦に踏み切ります。
その後、日本は青島攻略戦で勝利し、ドイツ領南洋群島（ミクロネシアの一部）を占領して戦後に国際連盟委任統治領として承認される基盤を築きました。なお、選択肢の大隈重信は首相として決定を承認しましたが、実務面での推進役は外相の加藤でした。小村寿太郎は日露戦争後の外相で1911年に没しており、本件の時期には関与しません。加藤友三郎は海軍大臣として作戦面で重要でしたが、外交・参戦決定の主導者は加藤高明でした。以上の理由から正解は「加藤高明外相」です。

【正解】2
【解説】
大隈内閣は、8月6日のイギリスからの要請（極東で英商船を脅かすドイツ武装艦船の捜索・駆逐）を受け、ただちに臨時閣議を開きました。この場で大隈重信首相は、単なる通商保護の範囲にとどまらず、対独参戦を通じてドイツの中国利権――とくに膠州湾租借地（青島）や山東鉄道・鉱区などの権益――を日本が奪取することを戦争目的の一つとして明確に位置づけました。これは、外相・加藤高明が主導した積極策（極東におけるドイツ勢力の掃蕩と日本の地位向上）と足並みをそろえるもので、8月15日の対独最後通牒、8月23日の宣戦、さらに青島攻略へとつながっていきます。
なお、①の「中立維持」論は最終的に採用されませんでした。③の「護衛限定」は消極策に当たり、実際には膠州湾・南洋群島への攻勢行動がとられます。④の「欧州派兵」は当時想定外で、第一次世界大戦期の日本の軍事行動は極東・太平洋域に限定されました。以上より、正解は「ドイツの中国利権を奪取することが戦争目的の一つだと述べた」です。

【正解】1
【解説】
8月6日の英政府からの要請（極東で英商船を脅かすドイツ武装艦船の捜索・駆逐）を受け、日本政府は参戦方針を具体化していきます。これと歩調を合わせるように、8月9日ごろから主要紙の社説は「日英同盟の信義を守るべき」「極東の秩序と通商の安全を確保すべき」「山東（膠州湾）や南洋群島での日本の地位を強化すべき」といった論点を前面に出し、対独参戦を支持する論調が優勢になりました。
もちろん、戦費や長期戦化への不安、中立維持を唱える慎重論も存在しましたが、世論形成の主流は政府の強硬姿勢を後押しする方向に傾き、8月15日の対独最後通牒、8月23日の宣戦布告へとつながっていきます。こうした報道環境は、同盟義務・国益・安全保障を重ね合わせて参戦を正当化する枠組みを与え、日本の対独参戦に政治的正当性と社会的支持を提供したのです。

【正解】3
【解説】
世論が参戦を強く支持した背景の一つには、1895年の三国干渉（露・独・仏）が残した「国辱」意識がありました。下関条約で清から遼東半島を割譲した日本は、三国の圧迫でこれを返還させられ、国内には屈辱と対欧列強への反発が広がりました。とくにドイツはその後、膠州湾（青島）を租借し山東で権益を拡大したため、「かつての干渉国からの雪辱」として対独行動を支持する空気が形成されます。1914年に戦局が広がると、政府・新聞は「同盟の信義」「極東秩序の確立」と並べて、青島・南洋群島の攻略を正当化し、国民感情もこれに呼応しました。なお、②の「法的義務」は誤りで、日英同盟は二国以上を相手取る場合に相互援助が生じる仕組みであり、参戦は日本の主体的判断でした。こうした事情から、参戦支持の要因の一つとして「三国干渉の雪辱」感情が挙げられます。

【正解】2
【解説】
青島の戦いは、英日連合軍（主力は日本軍、協力にイギリス陸海軍）がドイツ膠州湾租借地（青島）の要塞・港湾施設を包囲・砲撃した攻城戦でした。10月31日に総攻撃が始まり、連合軍は海上封鎖と陸上からの重砲射撃（28センチ榴弾砲など）でドイツ守備隊の砲台・補給線・通信網を順次無力化していきます。11月6日夜から7日未明にかけて突撃が敢行され、要塞の主要防御線が破られました。これを受け、青島を指揮していたドイツ東アジア植民地政府のマイヤー＝ヴァルデック総督は11月7日に降伏を決断します。
この結果、戦闘は「11月7日のドイツ軍降伏」で終結しました。以後、連合軍は軍事施設の接収・破壊を進め、青島および周辺のドイツ権益は日本の管理下に置かれます。選択肢③の「11月11日の休戦」は1918年の欧州西部戦線に関するもので、本件の1914年青島戦とは無関係です。選択肢①・④のような日本側撤退やドイツ艦隊の脱出も史実では確認されません。青島攻略は、第一次世界大戦における日本の主要作戦の一つとして位置づけられます。

【正解】2
【解説】
日本は1907年のハーグ陸戦条約に基づき、衣食住や医療の確保、私信・宗教活動の許可など、人道的処遇に努めました。各地の収容所（例：板東俘虜収容所など）では、捕虜が自治的に新聞発行や図書室の運営、語学・理数・工芸の講習、スポーツ大会、合唱やオーケストラの演奏会、展覧会を行い、地域住民を招く催しも開かれました。1918年には板東でドイツ兵によるベートーヴェン「第九」の演奏が行われ、日本での初演として知られています。さらに、パンや菓子づくり、ビール醸造、写真、建築・造園などの技術が地域社会に伝わり、相互理解と交流が深まりました。
無論、軍の管理下で移動制限や規律は存在しましたが、総じて寛容的で文化的交流が活発だったことが特徴です。多くの捕虜は1919～1920年に送還されましたが、一部は日本に留まって生活基盤を築いたことも知られています。

参考資料：

【正解】4
【解説】
1915年1月、日本政府は袁世凱政権に対し、いわゆる「二十一箇条の要求」を提示しました。これは、青島の戦いでの対独勝利と日英同盟を背景に、中国における日本の地位強化を図る包括的要求で、主に①山東（旧ドイツ権益）の継承・確保、②南満州・東部内蒙古での権益拡大と各種期限延長、③漢冶萍公司の共同経営による産業支配の強化、④中国沿岸の不割譲の確約、⑤内政干渉色の強い諸項（顧問任用・警察共同管理など）から成りました。中国側・列強の強い反発を招き、とくに第5号要求は内政干渉として問題視されました。最終的に日本は5月7日に最後通牒を発し、中国は5月9日に大部分を受諾しますが、この日は中国で「国恥記念日」とされ、反日世論の高まりをもたらしました。
選択肢の「石井・ランシング協定」は1917年の日米間の了解であり、本件の結果生じた対立の調整策の一つです。「山東還付条約」は1922年のワシントン体制下での中日協約で、山東問題の処理に関する後年の合意です。以上より、1915年1月の対中要求は「二十一箇条の要求」です。

【正解】2
解説：
1915年の「21箇条の要求」は、第一次世界大戦の混乱下で日本が中国（袁世凱政権）に提示した一連の要求であり、交渉・修正を経て同年5月25日に最終受諾されました。最終的な妥結で日本が確保した柱の一つが、南満州・関東州（遼東半島の租借地）に関する権益の強化であり、とりわけ租借・各種特許の期限延長でした。一般に、関東州の租借と南満洲鉄道・安奉線などの鉄道付属地・鉱山権益の存続期間は大幅に延長され、実質的な長期支配を可能にする枠組みが整えられました。これにより、日本の企業活動（居留・工場設置・営業権）も拡充され、日露戦争後に獲得した満州権益の「量」と「時間」を同時に拡大する効果が生じたのです。
一方で、もっとも内政干渉色の強かった「第五号」要求（中国政府への日本人顧問任用や警察権掌握など）は、列強や中国世論の強い反発もあり、最終的には大幅に後退・削除されました。したがって、選択肢4のような内容は実現していません。また、山東省についてはドイツの権益承継に関する取り決めがなされましたが、選択肢3にあるような直接の割譲や完全な主権移転ではありませんでした。以上から、「満州権益の租借期限延長を実現した」が本問の正解となります。

参考文献：
板倉章著 (2023) 『第一次世界大戦と日本参戦』吉川弘文館
山室信一・岡田暁生・小関隆・藤原辰史編 (2014) 『第一次世界大戦　1 世界戦争』岩波書店
永原陽子・吉澤誠一郎編 (2022) 　『岩波講座世界歴史20 二つの大戦と帝国主義 I』岩波書店