恐慌の時代のことがよくわかる！クイズ5問

正解】2. 銀行への取付け騒ぎ

解説

1927年の金融恐慌（昭和恐慌）の直接の発端は、預金者が一斉に現金引き出しを求めた「銀行への取付け騒ぎ」でした。背景には、第一次世界大戦後の不況や1923年の関東大震災に伴う震災手形問題などで金融機関の資産内容が悪化していたことがあります。こうした脆弱な状況のもと、当時の片岡直温蔵相が帝国議会で東京渡辺銀行の破綻に言及したことが不安を一気に増幅し、都市銀行から地方の中小銀行へと連鎖的に取付けが広がりました。その結果、多数の銀行が休業・倒産に追い込まれました。

なお、選択肢の「鈴木商店の破綻」や「台湾銀行救済の失敗」は金融不安を深刻化させた重要要因ではありますが、3月に恐慌を顕在化させた“引き金”は取付け騒ぎそのものでした。また「金解禁の断行」は1930年の出来事で、当時の恐慌の直接原因ではありません。

【正解】3. モラトリアム（支払猶予令）

解説

1927年の金融恐慌では、銀行の経営不安が預金者の取付けへと広がり、休業・破綻の連鎖が生じました。田中義一内閣は危機収束のため、緊急勅令により「モラトリアム（支払猶予令）」を発しました。これは手形・小切手の決済や預金払い戻しなどの支払い義務を一定期間猶予する措置で、資金繰りの逼迫を一時的に緩和し、連鎖倒産を防ぐ狙いがありました。同時に日本銀行による特別融資の拡充や不良手形処理の枠組み強化が進められ、金融システムのパニック沈静化に寄与しました。

なお、選択肢の「預金封鎖令」は戦後インフレ抑制（1946年）の政策であり、1927年の恐慌対策とは異なります。「銀行休業令」は一般に用いられる通称ではありますが、恐慌対策の中心は支払い猶予を柱とするモラトリアムでした。「金解禁令」は金本位制復帰（1930年）に関する政策で、年代も目的も異なります。

【正解】1. 三井・三菱・安田・住友

解説

1920年代の日本経済は、第一次世界大戦後の反動不況や関東大震災（1923年）、さらに金融恐慌（1927年）などの連続的なショックに見舞われました。この過程で、資本力と系列内金融を備えた大財閥が中小企業・中小銀行の淘汰や吸収を通じて影響力を拡大し、三井・三菱・安田・住友の四大財閥が「覇権」を確立しました。これらの財閥は、(1) 中核持株会社（本社）による支配、(2) 直系の商社・製造業・鉱山・造船・化学などの多角的事業、(3) グループ銀行（例：三井・三菱・安田・住友の各銀行）による強力な資金調達・供給の三点を組み合わせ、産業と金融を結びつける形で経済を主導しました。特に1927年の恐慌では、系列銀行の信用力が相対的に高かった大財閥が資金繰り面で優位に立ち、系列外の脆弱な企業・金融機関の整理が進む中で集中が一層強まりました。

なお、選択肢のうち「古河」「浅野」「日産」などは重要な有力財閥・コンツェルンですが、1920年代における「四大財閥」の伝統的区分には含まれません。また「渋沢」は財閥名ではなく、渋沢栄一を中心とした実業界ネットワークを指すに過ぎず、四大財閥の構成とは異なります。

【正解】4. 三井・三菱・住友・安田・第一

解説

1927（昭和2）年の金融恐慌は、取り付け騒ぎや中小銀行の休業・破綻を連鎖させ、銀行界の再編を一気に進めました。この過程で資本力・系列企業との結びつき・信用力に優れる大手が台頭し、三井・三菱・住友・安田という四大財閥の各銀行に、独立色の強い第一銀行を加えた「五大銀行」が確立しました。これらは都市部で広域支店網を展開し、企業金融・手形決済の中枢を担うことで、市場の資金配分に大きな影響力を持ちました。

なお、選択肢の「日本勧業銀行」は長期資金供給を担う特殊銀行色が強く、のちに第一銀行と合併して第一勧業銀行となりますが、恐慌直後に指す「五大銀行」には通常含めません。また「横浜正金銀行」は為替専門銀行で別枠とされ、「古河」は財閥名であって銀行名ではありません。以上の点から、五大銀行の典型的な区分は「三井・三菱・住友・安田・第一」と理解されます。

【正解】4. 三・一五事件

解説

三・一五事件は、1928年3月15日に全国一斉で行われた大規模な治安弾圧で、日本共産党や周辺の労働・農民団体、文化団体に対して特別高等警察（特高）が一斉検挙を実施した出来事です。背景には、1925年制定の治安維持法（維持法）に基づく「国体変革・私有財産制度否認」取締りの強化と、同年2月の初の男子普通選挙後に左派勢力の伸長を警戒した政府の姿勢がありました。本事件では多数の活動家が逮捕・起訴され、関連団体の解散・活動停止が相次ぎ、合法的な大衆運動も大きな打撃を受けました。さらに政府は事後的に治安維持法を改正して最高刑に死刑を導入するなど、取締りを一段と強化しました。

なお、選択肢の「四・一六事件」は翌1929年4月16日の第二次大弾圧、「五・一五事件」（1932年）は海軍将校らによる首相暗殺事件、「二・二六事件」（1936年）は陸軍青年将校のクーデター未遂であり、性格・年代が異なります。