シェイクスピア劇がよくわかる！クイズ10問

正解：3

解説：

『ハムレット』に登場するオフィーリアは、デンマーク王の重臣ポローニアスの娘であり、ハムレットの恋人でもあります。彼女が正気を失い、最終的に川で溺れ死んでしまう背景には、複雑で深い悲劇が横たわっています。

最大の要因は、恋人ハムレットが彼女の父ポローニアスを殺してしまったことです。ハムレットは、復讐のために母の寝室に忍び込み、カーテンの陰に隠れていた人物をスパイと誤解して刺殺します。その人物が、実はオフィーリアの父であるポローニアスだったのです。

この出来事はオフィーリアにとって二重の裏切りでした。恋人が父を殺したという現実は、彼女の心を深く傷つけ、精神的な均衡を完全に崩してしまいます。その後、彼女は意味不明な歌を口ずさみ、花を配るなど、明らかに狂気に陥った行動を見せるようになります。

そして最終的に、オフィーリアは川に落ちて命を落とします。彼女の死については、事故とも自死ともとれる曖昧な描写がなされており、それがかえって悲劇性を強めています。ガートルード王妃は、「衣服が水を吸い、重くなって、ついには引きずりこまれて沈んだ」と語りますが、それが本当に事故だったのか、それとも死を望んでいたのかは、観る者に委ねられています。

ミレー『オフィーリア』（1851年）ロンドン・テート美術館蔵

このように、オフィーリアの死は、『ハムレット』の中でも最も象徴的な悲劇のひとつであり、愛、裏切り、喪失、狂気というテーマが重層的に交錯する重要な場面です。

正解：3

解説：

『リア王』はシェイクスピアが描いた四大悲劇の一つで、権力、親子の愛、裏切り、そして老いと狂気をテーマにした重厚な作品です。その中でも、リア王の三人の娘たちの運命は物語の中心的な悲劇を構成しています。特に、末娘コーディリアの最後は、多くの読者や観客に強い衝撃と深い悲しみを与えます。

物語冒頭、リア王は自らの王国を三人の娘たちに分け与える決断をし、愛情の大きさを言葉で表現するよう命じます。姉たちゴネリルとリーガンは巧妙なお世辞で父の信頼を得ますが、コーディリアは誠実な愛を淡々と語り、リア王の怒りを買って勘当されてしまいます。

しかし物語が進むにつれ、ゴネリルとリーガンの裏切りによってリア王は精神的にも肉体的にも追い詰められていきます。そんな中で、コーディリアはフランス王妃となった後も父への愛を忘れず、イギリスに軍を率いて帰還します。父を救い出し、ようやく和解の時を迎えるのですが、悲劇はそこで終わりません。

捕虜となったコーディリアは、敵側の命令により絞首刑に処されてしまいます。リア王は彼女の死体を抱きしめながら舞台に登場し、悲しみのあまり狂気に陥ったまま、最後には自らも命を落とします。

この結末は、正義や誠実さが必ずしも報われないという、シェイクスピアの悲劇的世界観を象徴しています。コーディリアの死は、リア王という父親の失われた愛と悔恨、そして人間の運命の無常さを強烈に描き出す、非常に重要な場面です。

正解：3

解説：

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場するポーシャの結婚相手は、彼女の亡き父の遺言によって、金・銀・鉛の３つの箱の中から正しいものを選ばなければならないという試練を課されます。それぞれの箱には短い碑文が書かれており、選ぶ者はそれに従って決断しなければなりません。

• 金の箱には「この箱を選ぶ者は、多くの人が望むものを得るであろう」と書かれています。これは見かけの華やかさを象徴し、自己中心的な願望に訴えるものです。
• 銀の箱には「この箱を選ぶ者は、自分にふさわしいものを得るであろう」とあります。これは自己評価やプライドに訴えかけます。
• 鉛の箱には「この箱を選ぶ者は、すべてを捧げる覚悟をせねばならぬ」と書かれており、最も地味で外見的には魅力がありません。

バサーニオは見かけにとらわれず、謙虚な心と真の愛をもって、最も価値がなさそうに見える鉛の箱を選びました。結果、その中にはポーシャの肖像と結婚を許す手紙が入っており、試練に成功したことが示されます。この選択は、外見よりも内面の価値を重んじるテーマを象徴しています。

正解：4

解説：

ウィリアム・シェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』は、非常に短い時間の中で展開する恋愛悲劇です。物語の流れを辿ると、ロミオとジュリエットが出会ってから、二人が命を落とすまでの期間はわずか4日間しかありません。

物語の概要を日ごとに整理すると、以下のようになります：

• 1日目（夜）：ロミオはキャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込み、ジュリエットと出会い、互いに一目惚れします。
• 2日目：ロミオは夜明け前にジュリエットのバルコニーに忍び寄り、愛を告白し合い、その日のうちにロレンス神父によって秘密裏に結婚します。
• 3日目：ロミオはジュリエットのいとこティボルトを殺してしまい、ヴェローナから追放されることになります。その夜、二人は一夜を共にします。
• 4日目：ジュリエットはロレンス神父の計画により仮死状態になる薬を飲み、彼女の死を知らされたロミオは絶望して毒を飲み自殺。ジュリエットも目覚めた後にロミオの死を知り、自ら命を絶ちます。

このように、二人の激しくも短い恋は、たった4日間の出来事だったのです。このスピード感と、若さゆえの衝動的な行動が物語の悲劇性をより強調しています。

正解：2

解説：

ウィリアム・シェイクスピアの歴史劇『ジュリアス・シーザー』で、ローマの将軍シーザーは共和制を守ろうとする者たちの手によって暗殺されます。そのクライマックスの場面で、彼が信頼していた者の一人、ブルータスが最後の一刺しを加えたとき、シーザーが放つ印象的な台詞が「おまえもか、ブルータス？（Et tu, Brute?）」です。

このセリフは、シーザーがブルータスを非常に信頼していたこと、そしてその裏切りに深いショックを受けたことを象徴するものです。「Et tu, Brute?」はラテン語で「君もか、ブルータス？」という意味であり、シェイクスピアによって劇的効果を最大限に引き出されたセリフとして有名になりました。

この言葉は、友情と信頼の裏切りの象徴として、後世にわたって文学や歴史の中でも繰り返し引用されており、「信じていた相手に裏切られる」状況を表す決まり文句として広く知られています。シーザーの死を単なる政治的事件ではなく、個人的な悲劇としても描き出す、非常に重要な場面の一つです。

正解：3

解説：

1957年に公開された黒澤明監督の映画『蜘蛛巣城（くものすじょう）』は、ウィリアム・シェイクスピアの悲劇『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた作品です。この映画は、原作のストーリーとテーマを巧みに取り入れながら、日本の歴史的・文化的背景に合うよう再構築されており、世界的にも高く評価されています。

主人公の鷲津武時（マクベスに相当）は、戦功を上げたことで領主から褒美を受け、やがて権力への野望に取り憑かれていきます。森の中で出会う不気味な予言者（魔女の代わり）や、妻・浅茅（マクベス夫人に相当）の策略など、原作の重要なモチーフが日本的な演出で表現されています。

特に、『蜘蛛巣城』では能や歌舞伎の要素が取り入れられ、無言の間や表情・動作によって心理描写を深めています。映画のラストにおける壮絶な矢のシーンも印象的で、多くの映画評論家が黒澤の演出技法の傑作と評価しています。

『蜘蛛巣城』は単なる翻案ではなく、シェイクスピアの普遍的なテーマ——権力、野望、運命、そして破滅——を、日本文化の文脈で見事に表現した名作です。

映画「蜘蛛巣城」広告（東宝）

正解

3

解説

『オセロー』における重要な小道具であり、物語の転換点となるのが「ハンカチ」です。これは、オセローがデズデモーナに贈った特別なハンカチで、彼の愛情と信頼の象徴とされています。

イアーゴはこのハンカチを巧妙に利用して、オセローに誤解を与える策略を実行します。イアーゴの妻エミリア（デズデモーナの侍女）を通じて、デズデモーナがうっかり落としたハンカチを入手し、それをキャシオの部屋に置きます。さらに、イアーゴはオセローに対し「キャシオがそのハンカチを持っていた」と証言し、デズデモーナとキャシオの密通を裏付ける「物的証拠」として示すのです。

実際にはキャシオはそのハンカチが何であるかも知らず、デズデモーナも無実。しかし、オセローは愛と嫉妬の間で揺れ動き、イアーゴの巧妙な話術に飲み込まれていきます。ハンカチという些細な物が、最終的にデズデモーナの命を奪う悲劇へとつながるのです。

このハンカチは、シェイクスピア作品の中でも「小道具が運命を動かす」象徴的な存在として知られています。

正解：2

解説：

シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場する「妖精のパック」は、いたずら好きで陽気な妖精であり、森の中に住む妖精の王・オーベロンに仕えています。物語の中で、オーベロンは人間たちの恋のもつれを正そうと、恋の媚薬を使うことを決意します。この媚薬は、眠っている人のまぶたに塗ると、目覚めたとき最初に見た相手に恋してしまうという魔法の薬です。

オーベロンはこの薬を使って、女王ティターニアや人間の恋人たちを操作しようと考え、パックにその任務を与えます。しかし、パックは間違って別の人物に薬を塗ってしまい、恋人たちの関係はますます混乱してしまいます。これにより物語はドタバタとした展開になり、最終的にはすべてが正しく修正されることで物語が収束します。

このように、「妖精のパック」は『夏の夜の夢』において物語の混乱を引き起こす重要な役割を果たしており、シェイクスピア特有の幻想的でユーモラスな世界観を象徴するキャラクターの一人です。

正解：2. オーシーノー

解説：

シェイクスピアの喜劇『十二夜』は、双子の姉弟ヴァイオラとセバスチャンが難破によって離れ離れになったことから物語が始まります。ヴァイオラは男装して「シザーリオ」と名乗り、オーシーノー公爵に仕えることになります。公爵はオリヴィアという女性に恋をしており、ヴァイオラにその恋の使いをさせるのですが、オリヴィアは男装したヴァイオラに恋してしまいます。一方でヴァイオラはオーシーノーに恋心を抱くようになります。

物語の終盤、行方不明だったセバスチャンが現れ、オリヴィアと誤解の末に結婚します。そして最終的にヴァイオラの正体が明かされ、オーシーノー公爵も彼女への愛に気づき、二人は結ばれることになります。

このように、『十二夜』のクライマックスでは、ヴァイオラとオーシーノー公爵が恋人として結ばれるというハッピーエンドを迎えるのです。

正解：3

解説：

シェイクスピアの悲劇『アントニーとクレオパトラ』は、ローマの将軍マーク・アントニーとエジプト女王クレオパトラの愛と破滅を描いた壮大な物語です。物語の背景には、アントニー、オクタウィアヌス（後のアウグストゥス）、レピドゥスの三頭政治があり、彼らの間の政治的緊張が物語を大きく動かします。

アントニーは当初エジプトでクレオパトラと情熱的な関係を持っていましたが、ローマの政局が不安定になると一時帰国します。そして、三頭政治を維持し、オクタウィアヌスとの同盟関係を強化するために、彼の姉であるオクティヴィアと政略結婚します。この結婚は愛のためではなく、あくまでも政治的な妥協策でした。

しかし、アントニーの心はクレオパトラに強く惹かれたままで、結局再びエジプトに戻り、クレオパトラと共に行動するようになります。オクティヴィアはローマに残され、政治的にも個人的にも疎外されてしまいます。

この結婚が破綻したことで、アントニーとオクタウィアヌスの対立は決定的となり、最終的にアントニーとクレオパトラは敗北し、悲劇的な結末を迎えることになります。