社会運動の高まりのことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3. 黎明会
解説
黎明会は、1918（大正7）年に政治学者の吉野作造や経済学者の福田徳三らを中心として結成された啓蒙的団体です。第一次世界大戦後の社会不安や同年の米騒動などを背景に、民衆の政治的関与を高め、立憲政治を実質化することを目標に掲げました。吉野の「民本主義」（統治の正統性の基礎を「民」に置き、民意の反映を重んじる立場）を理論的支柱として、政治・経済・社会政策にわたる公開講演会や研究会を各地で開催し、普通選挙の実現、労働保護や社会政策の充実、教育の普及などを広く訴えました。こうした活動は大正デモクラシー期の市民的公共圏の拡大に寄与し、1925年の普通選挙法成立へとつながる世論形成にも影響を与えたと評価されます。
なお、選択肢の「新人会」は同時期に東京帝大の学生らが組織した思想・社会運動団体で、「改造社」は雑誌『改造』を発行した出版社（1919年創業）、「立憲同志会」は桂太郎らによる政党（1913年結成）であり、性格や目的がそれぞれ異なります。

【正解】2. 友愛会

解説

友愛会は1912（大正元）年、鈴木文治らによって創設された労働者の相互扶助・啓蒙団体で、当初はキリスト教的人道主義と労使協調を掲げ、講演会や夜学、職業紹介、雑誌発行などを通じて労働者の地位向上を目指しました。第一次世界大戦後に労働争議が増えると、友愛会は組合的性格を強め、1919年には「大日本労働総同盟友愛会」へ改称、1921年には全国組織のナショナルセンター「日本労働総同盟（総同盟）」へと改組されます。こうした発展を通じて、友愛会は大正デモクラシー期の労働運動を牽引し、工場法の施行や労働保護立法の整備を求める世論形成にも大きく寄与しました。

なお、選択肢の「日本労働総同盟」は1921年に友愛会を母体として再編された後継組織で、「新人会」（1918年結成）は学生中心の思想運動団体、「日本労働組合評議会」は1925年に成立した別系統の労働団体であり、成立時期や性格が異なります。

【正解】4. 日本労働総同盟

解説

友愛会は1912年に鈴木文治らが創設した労働者の相互扶助・啓蒙団体で、当初は労使協調を掲げた穏健路線でした。第一次世界大戦後に労働争議が急増すると、組合的性格を強め、1919年には「大日本労働総同盟友愛会」へ改称します。さらに1921年には組織を再編して「日本労働総同盟（総同盟）」となり、賃上げ・労働時間短縮・団結権の確立などを掲げる階級闘争路線へと明確に舵を切ります。これにより、各産業での労働組合結成と争議の組織化が進み、大正デモクラシー期の労働運動を主導する全国的ナショナルセンターとしての役割を果たしました。

選択肢のうち「大日本労働総同盟友愛会」は1919年の中間段階の名称で、「友愛会」は創設時の名称です。「日本労働組合評議会」は1925年に成立した別系統の全国組織であり、成立時期も性格も異なります。

【正解】3. 日本農民組合

解説

日本農民組合は、1922（大正11）年にキリスト教的人道主義で知られる賀川豊彦と、小作運動の指導者であった杉山元治郎らによって結成された農民組織です。第一次世界大戦後の不況や物価高騰、米騒動（1918年）以降に各地で激化した小作争議を背景に、地主制のもとで弱い立場に置かれた小作農の団結・権利擁護を目的として発足しました。活動としては、小作料の引き下げ要求や小作契約の改善交渉、争議の組織化と法的支援、講演会・機関紙による啓蒙、協同組合の推進などを行い、農民の生活改善と政治参加の拡大をめざしました。これらの運動は1920年代の農民運動を牽引し、小作調停法（1924年）の制定機運を高める一因ともなったと評価されます。

なお、選択肢の「全国農民組合」は1927年に結成された後発の全国組織で、「産業組合」は主に購買・販売・金融など経済面を担う協同組合であり、争議を主導する運動体とは性格が異なります。「日本労農党」は1926年に結成された政党で、農民組織そのものではありません。

正解：2

解説

青鞜社（せいとうしゃ）は、1911（明治44）年に平塚らいてうを中心に結成され、同年9月に機関誌『青鞜』を創刊しました。『青鞜』創刊号の前文「元始、女性は太陽であった」は、女性が本来自立的・創造的な存在であることを高らかに宣言し、当時の家制度や性別役割観に挑戦するメッセージとして広く知られます。青鞜社は、女性の教育・労働・恋愛・結婚などをめぐる諸問題を公的に論じ、女性を従属的地位に縛る社会的慣習からの解放をめざしました。

一方で、当時は治安警察法第5条により女性の政治活動が制限され、青鞜社の活動や誌面はしばしば発禁や発売禁止の対象となりました。それでも青鞜社の議論は大きな波及効果を持ち、平塚らいてうや市川房枝らが1920年に新婦人協会を設立して女性の政治的結社禁止条項の一部撤廃（1922年）へとつなげるなど、近代日本の女性運動の出発点として重要な役割を果たしました。

選択肢のうち、与謝野晶子の「明星社」は主に文芸結社で時期と目的が異なり、市川房枝の「新婦人協会」は1911年ではなく1920年の設立です。木下尚江の団体も女性解放運動の中心ではありません。以上から、本問の正解は「平塚らいてうの青鞜社」となります。

正解：3

解説

新婦人協会は、1920（大正9）年に市川房枝と平塚らいてうを中心に結成された女性団体で、当初から女性の政治的権利拡大を主要目標に掲げました。とくに、女性の政治活動を禁じていた治安警察法第5条の改正運動に注力し、女性が政治集会に参加できるようにすることを目指しました。運動の結果、1922（大正11）年には同条の一部改正が実現し、女性の集会・結社参加が認められる方向へと前進しました。これは、女性の公的領域への参加を切り開く重要な一歩であり、のちの婦人参政権獲得運動の基盤となります。

その後、市川房枝らは参政権獲得をより直接の目標とするため、1924年に「婦選獲得同盟」を組織し、普通選挙法改正や女性の選挙権・被選挙権実現へ向けたロビー活動と啓発活動を強化しました。選択肢のうち、「日本キリスト教婦人矯風会」は禁酒運動や矯風（風紀改善）を中心とした19世紀末の団体であり、「平等婦人会」は1921年結成の左派的女性団体です。「婦選獲得同盟」は1924年発足で年代が異なります。以上より、本問の正解は「新婦人協会」です。

正解：4

解説

1922（大正11）年に秘密結成された日本共産党は、ソ連の第三インターナショナル（コミンテルン）の日本支部として位置づけられ、当時の日本では非合法の地下組織として活動しました。結成の背景には、第一次世界大戦後の社会不安と労働運動の高揚、そしてロシア革命の影響があります。党は、資本主義体制や封建的残滓の克服、労働者・農民の権利拡大を掲げ、社会主義的変革をめざしました。主要メンバーには山川均・堺利彦ら社会主義者が名を連ね、コミンテルンの路線（中央集権的な前衛党、国際的規律）に従って組織化が進められました。

しかし、当時の日本では社会主義運動に対する弾圧が強く、治安警察法に加え、のちには治安維持法（1925年）によって取り締まりが一層強化されました。日本共産党はたびたび検挙・壊滅と再建を繰り返し、公開的な政治活動が困難な状況のなかで活動を続けました。

選択肢のうち、日本社会民主党は1901年に結成されましたが直後に禁止され、コミンテルン日本支部ではありません。日本労農党や労働農民党は1926年前後の無産政党で合法政党として活動しました。したがって、本問の正解は「日本共産党」です。

正解：2

解説

全国水平社は、1922（大正11）年に京都で創立された、被差別部落の人びとによる自主的な解放運動団体です。創立大会では「水平社宣言」が採択され、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という結語で知られる人間の尊厳回復の理念を高らかに掲げました。中心人物には西光万吉や松本治一郎らが名を連ね、差別の根絶と社会的・法的地位の向上、教育機会の拡大、偏見を助長する慣習や言説への抗議など、幅広い行動を展開しました。こうした運動は、日本の人権運動史において画期的な意味をもち、後の同和対策や人権啓発につながる基盤を築きました。

一方、選択肢の「部落解放同盟」は1955年に発足した後継的性格の組織で年代が異なります。「新婦人協会」は1920年に市川房枝・平塚らいてうらが結成した女性の政治的権利拡大を目指す団体で、目的領域が異なります。「日本農民組合」は1922年結成ですが、主たる対象は小作争議など農民の権利擁護であり、被差別部落差別撤廃を目的とした団体ではありません。したがって、本問の正解は「全国水平社」です。

【正解】2. 北一輝の猶存社

解説

猶存社（ゆうぞんしゃ）は、1919（大正8）年に結成された国家主義系の思想運動団体で、既成政党や財閥を打破し、強力な中央集権体制のもとで社会経済を再編する「国家改造」を唱えました。理論面では北一輝の構想――たとえば天皇親政の下での議会解散・政党解体、重要産業の国有化や大土地所有の解体、普選と社会政策の拡充といった急進的提案――が大きな影響力をもち、後年『日本改造法案大綱』（1923年草案流布）として知られる路線へつながります。実務的な運動の展開には大川周明・満川亀太郎らが深く関与し、パン＝アジア主義の立場から対外政策の強化や国内の統合を主張しました。これらはのちの急進的右派運動や青年将校層にも一定の影響を与えたと評価されます。

なお、選択肢の「玄洋社（頭山満）」や「黒龍会（内田良平）」は明治末～大正期に活動した別個の民族主義結社で、結成時期・性格が異なります。「黎明会（吉野作造）」は1918年結成の自由主義・民本主義の啓蒙団体で、国家主義の猶存社とは思想的立場が対照的です。

正解：1

解説

この事件は一般に「甘粕事件（大杉栄虐殺事件）」と呼ばれます。1923（大正12）年9月の関東大震災下で戒厳令が敷かれる中、憲兵大尉・甘粕正彦がアナーキストの大杉栄と、その伴侶で社会主義者の伊藤野枝、さらに大杉の甥・橘宗一（6歳）を不法に拘束して殺害しました。震災後の混乱と流言が渦巻く状況で、国家権力が反体制的知識人を暴力的に排除した象徴的事件として位置づけられます。

事件後、甘粕は軍法会議で有罪となり懲役刑を受けましたが、その後に減刑・釈放され、十分な法的責任が問われなかったとの批判が続きました。犠牲となった3名の殺害は、当時の治安体制が抱える恣意性と、言論・思想の自由が脆弱であった現実を浮き彫りにしたと言えます。

選択肢のうち、東条英機・乃木希典・荒木貞夫はいずれも陸軍の要人ですが、本件の直接の加害者ではありません。したがって、本問の正解は「甘粕正彦」です。