山東出兵と張作霖爆殺事件のことがよくわかる！クイズ10問

正解：2
解説
孫文は1925年3月に逝去し、その後の国民党内部では指導権をめぐる主導権争いが生じました。黄埔軍官学校の校長として軍事基盤を握っていた蒋介石は、国民革命軍を編成・掌握し、1926年に北伐を開始して各地の軍閥勢力を次々と撃破していきます。こうした軍事的成功を背景に、蒋介石は党内外で影響力を強め、1927年の上海クーデター（四・一二事件）を経て共産勢力を排除し、南京に国民政府を樹立しました。1928年には北方の統合が進み、名実ともに国民党の最高指導者としての地位を確立します。
一方、汪兆銘（汪精衛）や胡漢民などの有力政治家も存在し、一時的に指導的役割を果たす局面はありましたが、最終的に党と軍を掌握して長期にわたり中国の政局を主導したのは蒋介石でした。

正解：4
解説
北伐とは、1926年に広州を出発した国民革命軍が、中国各地の軍閥勢力を打倒して国家統一をめざした軍事・政治行動の総称です。指導の中核には黄埔軍官学校出身の将校と、第一次国共合作の枠組みで動員された労働者・農民の大衆運動がありました。作戦の主目標は、長江以南で勢力を張っていた呉佩孚や孫伝芳などの軍閥、そして北方の張作霖（奉天派）に代表される勢力を各個撃破することでした。1927年には南京や上海を制圧して国民政府の拠点を築きますが、同年の上海クーデター（四・一二事件）で国共関係は悪化し、武漢政府との分裂も生じます。
それでも作戦自体は継続され、1928年の第二期北伐で北京（当時の北平）を制し、同年末に張学良が易幟を宣言したことで、名目上の全国統一が実現します。以上のように、北伐は中国近代史における軍閥割拠の時代を収束に向かわせた画期的な行動であったと評価されます。

正解：2
解説
本問の「南京事件」は、1927年3月、北伐を進める国民革命軍が南京に入城した際に発生した対外国人暴力・掠奪・発砲などの騒擾事件を指します。混乱の中で各国の領事館や居留地が襲撃され、米英日などの海軍は自国民保護と退避支援のために揚子江上の艦艇から警告射撃・艦砲射撃で応戦しました。多数の死傷者が出て国際問題化し、国民政府はのちに謝罪と賠償を表明します。
この出来事は、第一次国共合作下で高揚していた反帝国主義運動と、北伐軍内部の統制不備が重なって生じた側面があると指摘されます。事件後、蒋介石は秩序回復と対外関係の立て直しを強調し、その政治的主導権を強めていきました。なお、1937年の日中戦争期に起きた「南京大虐殺（南京事件）」とは時期も性格も異なる別個の出来事であることに注意が必要です。

正解：1
解説
1927年3月の南京事件は、北伐軍の入城にともなう混乱の中で、各国の領事館・居留民が襲撃され国際問題化した出来事でした。蒋介石はこの騒擾の責任を共産党勢力に帰し、第一次国共合作からの離脱を鮮明にします。翌4月、上海クーデター（四・一二事件）で「清党」を断行し、共産勢力を武力的に排除したうえで、同年4月18日に南京に国民政府を樹立しました。これは、左派の汪兆銘らが主導する武漢政府（武漢国民政府）と対立する「二都政府」体制を生み、国民党内の分裂を決定的にします。
南京政府の成立は、対外的には秩序回復と条約改訂交渉の主体を自認し、国内的には軍事・財政・行政を集中させて北伐を継続しうる拠点を整える狙いがありました。結果として、第一次国共合作は崩壊に向かい、以後の国共内戦と「南京十年」へとつながっていきます。

正解：4
解説
幣原喜重郎外相は、若槻礼次郎内閣の対中政策として「内政不干渉」を基本とするいわゆる幣原外交を掲げました。これは、中国の主権と民族感情に配慮し、軍事力による介入を避け、通商上の権益や在留邦人の安全は外交交渉と協調で守るという穏健方針です。1926年に開始された国民革命軍の北伐に対しても、日本は公式には中立を保ち、内戦への介入を控える姿勢を示しました。
この方針は、列強の武力干渉が反日・反帝国主義感情を刺激して日本の長期的利益を損なうという判断に基づいています。幣原は不平等条約の改正や経済的な協力関係の構築を、時間をかけた交渉で進めることを重視しました。なお、のちに田中義一内閣が成立すると、対中政策は強硬化し、山東出兵や済南事件などの軍事的関与へと転換していきます。以上の点から、本問の正解は「内政不干渉の方針をとった」です。

正解：2
解説
田中義一内閣（1927年成立）は、若槻・幣原期の「内政不干渉」から方針を転換し、在留邦人と通商権益の保護を名目に中国山東省へ出兵しました。これは北伐で情勢が流動化する中、青島や済南などの居留地・鉄道沿線の安全確保を理由に陸海軍を展開したものです。出兵は1927年から1928年にかけて数次にわたり実施され、とくに1928年の済南事件では国民革命軍と日本軍が衝突し、多数の死傷者と深刻な外交問題を引き起こしました。
この対応は、武力による“保護”を通じて日本の対中影響力を維持・拡大しようとする強硬路線の象徴であり、国民党内外の反日感情を強め、のちの満州事変へと連なる緊張を高める結果ともなりました。以上の理由から、正解は「在留日本人保護を理由に山東出兵を行った」です。

正解：3
解説
第1次山東出兵（1927年）後、田中義一内閣は東京での「東方会議」などを通じて対中政策を再確認し、満州・内蒙古（満蒙）における日本の既得権益――鉄道・鉱山・通商上の利権や在留邦人の安全――を最優先で維持・確保する方針を明確にしました。これは、北伐の進展で中国情勢が急変する中、日本の経済的・戦略的利益が脅かされるとの危機感に基づくものです。実際、以後の政策は居留民保護を名目とした追加出兵（山東出兵の重ね実施）や、山東・満州方面での治安確保に重点が置かれました。
この方針は幣原外交期の「内政不干渉」からの転換を示し、国民政府や列強との緊張を高める原因ともなりました。なお、しばしば言及される「田中上奏文」は史料的に信憑性が疑われる文書とされ、ここで述べる政府方針の根拠とは区別して考える必要があります。以上より、田中内閣が確認したのは「満蒙における日本の権益をあくまで守る」ことです。

正解：3
解説
田中義一内閣期、日本は「満蒙における特殊権益」の維持・拡大を最優先課題として、南満州鉄道の利権拡充や治安名目の軍事的便宜などを張作霖側に求めました。しかし、張作霖は奉天派の長として北方を掌握しつつも、列強間の均衡を利用して自律性を保とうとする現実主義的な指導者でした。北伐の進展で情勢が変化するなか、張は対外的な選択肢を広げ、日本の要求に全面的には応じない姿勢を強め、鉄道や鉱山などの追加的な権益拡大には消極的になっていきます。
その背景には、満州支配の正統性を内外に示す必要性、対日依存を深めれば国民的反発を招きかねない事情、そして英米など他勢力との関係を梃子に日本に対する交渉力を確保したい思惑がありました。最終的に張は北京から満州へ退き、日満関係は緊張を増しました。こうした経緯から、張作霖は「次第に協力的でなくなった」と評価されます。
誤答のポイント
1 は事実と逆で、日本側の追加要求に全面協調はしていません。
2 は「依存」を強調しすぎで、実際には自律性確保を志向しました。
4 のような正式な「同盟」提案は見られませんでした。

正解：2
解説（ですます調）
本事件は一般に「張作霖爆殺事件（皇姑屯事件）」と呼ばれ、1928年6月4日に奉天（現在の瀋陽）近郊・皇姑屯付近で発生しました。犯行は、満州に駐屯していた日本の関東軍の参謀・特務要員らによって計画・実行されたと理解されています。目的は、満州の実権者であった張作霖を排除し、より日本の利害に沿う体制を作ることにありました。南満州鉄道沿線の権益や治安名目を梃子に、情勢の流動化を日本側に有利に導こうとしたのです。
しかし結果は想定どおりには進みませんでした。後継の張学良は同年末に「易幟」（国旗変更）を行い、南京の国民政府に合流して名目上の中国統一が進みます。また、日本国内では、当時の田中義一内閣が処分に踏み切れず政局が混乱し、対中関係も一層悪化しました。以上の経緯から、犯行主体は「関東軍の参謀・特務要員」とされるのが通説です。

正解：3
解説
1928年6月の張作霖爆殺事件後、張学良は父の後を継いで東北（満州）を掌握し、同年12月に「易幟」（清朝以来の五色旗から国民政府の青天白日満地紅旗への国旗変更）を断行して南京の国民政府への服従を明確にしました。これにより、名目上の全国統一が前進し、東北は中央政府の枠組みに組み込まれていきます。張学良は日本の権益（南満州鉄道など）の既存取り決めには一定の配慮を見せつつも、治安・関税・鉄道運営などで中国側の主権を強める方向に政策を転換し、日本の影響力拡大には慎重かつ抑制的に対応しました。
その結果、在満の日本側との摩擦は増し、対日協調から距離を取りつつ、中央の蒋介石政権に忠誠を誓う姿勢が鮮明になりました。なお、1931年の満州事変時には中央の不拡大・不抵抗方針の制約もあって軍事的対抗は限定的でしたが、少なくとも1928～30年段階の張学良の基本線は、**「国民政府への帰順」と「日本のさらなる進出に対する警戒・抑制」**であったといえます。以上の理由から、正解は「国民政府に忠誠を示し、抗日の姿勢を強めた」です。

まとめ：

山東出兵は、1927年から1928年にかけて日本が中国山東省へ軍を派遣した出来事です。背景には、国民革命軍の北伐進展により華北の勢力図が急変し、山東に多くいた日本人居留民と日本の経済権益を保護するという名目がありました。第一次出兵（1927年）は情勢安定化を名としましたが、北伐の再進展を受けて1928年に第二次出兵が断行され、済南では日本軍と国民革命軍が衝突して多数の死傷者を出す「済南事件」が起きました。これにより中国の反日感情は一段と高まり、日本は国民党政権との関係を著しく悪化させました。同時に、満蒙での発言力を強めたい日本陸軍の思惑が前面化し、対中強硬姿勢が固まっていきます。
張作霖爆殺事件は、1928年6月4日未明、奉天軍閥の長で満州を実質支配していた張作霖が北京から奉天へ戻る途中、関東軍が敷設した爆薬で列車ごと爆破され死亡した事件です。日本は当初張を後ろ盾として満州情勢の安定を図っていましたが、北伐の前に張の求心力が低下すると、関東軍はより日本に都合のよい体制を作ろうとして独断的に行動しました。事件は国際的非難を招き、田中義一内閣は追及と動揺の末に退陣します。その後、後継の張学良は同年末に国民政府への服属を表明し、名目上中国統一が進みました。山東出兵から張作霖爆殺へと至る過程は、日本の対中政策の軍事化と軍部の独走を象徴し、最終的には1931年の満州事変へとつながっていきます。