朝鮮問題と日清戦争のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3. 朝鮮問題めぐる日清間の政治的・軍事的対立
解説
日清戦争（1894–95年）の根本原因は、当時の朝鮮（李氏朝鮮）をめぐる日本と清国の主導権争いにありました。日本は1876年の江華島事件を機に朝鮮の開国と近代化を後押ししようとしましたが、清は伝統的な宗主権を背景に影響力の維持・強化を図りました。1882年の壬午軍乱では清軍が介入し、1884年の甲申政変は清軍により鎮圧され、日本は撤退を余儀なくされます。翌1885年の天津条約（伊藤博文・李鴻章）で「両国の朝鮮撤兵」と「将来の派兵は事前通告」という取り決めがなされたものの、朝鮮内政・軍制改革をめぐる日清の対立は解消しませんでした。
1894年、甲午農民戦争（東学党の乱）を口実に清が出兵すると、日本も天津条約を根拠に出兵し、改革要求を強めます。緊張は軍事衝突へと発展し、7月25日の海戦を経て、8月1日に正式開戦となりました。したがって、戦争の直接的・構造的要因は、朝鮮半島における影響圏をめぐる政治的圧力と相互の軍事展開のエスカレーションにあったといえます。
なお、選択肢1の清仏戦争（1884–85年）はベトナムをめぐる清とフランスの対立で、日清戦争の主因ではありません。選択肢2の三国干渉は戦後講和（下関条約）に対する列強の介入であり原因ではありません。選択肢4の琉球処分は1870年代の出来事で、米国の干渉が主要因となって日清戦争に直結したわけではありません。

解説
壬午軍乱は、1882年（朝鮮の干支で壬午年）に漢城（ソウル）で発生した軍隊反乱・政治騒擾の総称です。旧式軍の待遇悪化や給料未払い、近代化で優遇された新式軍（別技軍）との格差への不満が爆発し、兵士・民衆が閔氏政権の要人宅や官庁、日本公使館を襲撃しました。日本公使・花房義質らは襲撃を受け、仁川へ退避する事態となります。混乱の中で大院君（興宣大院君）が一時的に政権掌握を試み、クーデター的様相を呈しましたが、その後清国軍が出兵・介入して大院君を拉致・連行するなど、朝鮮に対する清の影響力が一段と強まりました。
事件後、日本は損害賠償と公使館の安全確保を求め、朝鮮と**済物浦条約（1882年）を締結して、公使館守備のための日本軍駐留を認めさせました。他方で、清は朝鮮への軍事・財政・人事面での関与を強め、宗主権的立場を再確認しました。こうした「清の後見」と「日本の権益保護」の併存は、のちの甲申事変（1884年）や天津条約（1885年）を経ても根本的には解消せず、最終的に日清戦争（1894年）**へとつながっていきます。
なお、選択肢1の甲申事変は1884年の親日改革派クーデター未遂、3の甲午農民戦争は1894年の東学党蜂起、4の閔妃暗殺事件（乙未事変）は1895年の事件で、いずれも年次・性格が異なります。

【正解】4. 天津条約
解説
1884年の甲申事変（日本が支援した急進派による政変未遂）を受け、朝鮮半島における日本と清国の軍事介入が正面衝突寸前まで緊張しました。これを収拾するために、翌1885年4月、天津で日本の伊藤博文と清の李鴻章が会談し、「天津条約（伊藤・李鴻章協定）」が締結されます。
この協定の骨子は、①朝鮮に駐留していた清・日両軍の撤兵、②今後、朝鮮で騒擾が生じて一方が派兵する必要がある場合には、相手国に事前通告すること、③朝鮮軍事顧問の派遣などを通じた一方的な軍事的影響力の拡大を抑制すること、にありました。これにより、当面の軍事的緊張は緩和され、表向きは「日清の均衡」が成立します。
しかし、朝鮮内政をめぐる日清の対立構図そのものは解消せず、1894年の東学農民戦争（甲午農民戦争）発生時には、清の出兵に対して日本が天津条約の事前通告条項を根拠に出兵し、結局は日清戦争へと発展しました。つまり天津条約は、一時的な危機回避の枠組みであると同時に、将来の軍事介入のルールを定めたため、のちの衝突の法的・外交的前提にもなったのです。
なお、選択肢1の江華島条約（1876年）は朝鮮の開国をもたらした日朝間の条約で、本問の事後処理協定ではありません。選択肢2の日清修好条規（1871年）は日清間の通商・外交の基本条約です。選択肢3の下関条約（1895年）は日清戦争後の講和条約で、年次も内容も異なります。

【正解】1. 甲午農民戦争（東学党の乱）
解説
甲午農民戦争は、1894年に朝鮮王国で勃発した全国規模の農民蜂起で、東学（のちの天道教）を基盤に全琫準（チョン・ボンジュン）らが主導しました。発端は全羅道古阜郡での官吏の収奪や不正に対する住民の抗議で、重税・不法課徴・身分差別・地方官の腐敗の是正を求める運動へと拡大します。蜂起軍は「悪政の除去」「民生の安定」「外勢排除」などを掲げて各地を制圧し、政府軍との戦闘の末、全州城を占領しました。これを受けて政府は全州和約を結び、一時的に執綱所という自治的改革機関の設置を認めるなど譲歩します。
しかし政府は鎮圧のため清国に出兵を要請し、これに対抗して日本も天津条約（1885年）の事前通告条項を根拠に出兵しました。朝鮮内政問題に列強が軍事介入する構図が固定化し、緊張は日清戦争（1894–95年）へと発展します。したがって本反乱は、朝鮮社会の改革要求運動であると同時に、東アジアの国際秩序を揺るがし日清開戦の直接要因となった重要事件です。
なお、選択肢2の甲申事変は1884年の親日急進派による政変未遂、3の壬午軍乱は1882年の兵乱、4の義和団事件は1900年の清での反洋運動で、年次・性格ともに本件とは異なります。

【正解】2. 日英通商航海条約で、英国が日本の近代化を評価し好意的・中立的態度を示したため
解説
1894年7月16日に締結された日英通商航海条約（青木周蔵—キンバーリー条約）は、日本に対する治外法権撤廃（発効は1899年）を約し、近代的法制度の整備を国際的に承認する画期となりました。この「条約改正の突破口」は、当時、極東で最大の海軍力と通信・貿易網を握る英国が、日本を「文明国」として遇し、対日好意的中立を取りうることを示した点で決定的でした。とりわけ、朝鮮をめぐる列強の不測の介入（ガンボート・ディプロマシー）を日本が最も警戒していた状況で、英が日本を国際法秩序の担い手として扱い始めたことは、欧州列強の即時介入可能性を相対的に引き下げ、日本政府の対清強硬路線に外交上の後ろ盾を与えました。
さらに、この条約は日本の通商路・海運の安全に関し英国との利害接点を増やし、東アジアでの英の基本姿勢（清への直接軍事関与を避けつつ均衡を図る）と整合的でした。結果として、日本は朝鮮改革をめぐる清との交渉決裂後、列強から即時に強い制止を受けにくいという見通しを強め、開戦判断に踏み切る一因となりました。
一方、他の選択肢は史実と合致しません。1の「英清攻守同盟」は存在せず、英国は形式上は厳格な中立を宣言しました。3の「日露の協定」も当時はありません。4の米西戦争は1898年の出来事で、本件とは年代が異なります。

【正解】1. 1894（明治27）年7月、豊島沖の海戦
解説
日清戦争の最初の実戦は、1894年7月25日に朝鮮・牙山沖近くの豊島（プンド）沖で起きた海戦です。日本の巡洋艦隊が清国の艦隊（兵員輸送任務を支援）と交戦し、同日に起きた英国商船高陞号事件（Kowshing 号撃沈）も含めて、実質的な戦端がこの時に開かれました。形式上の宣戦布告は8月1日ですが、戦闘自体はそれ以前から発生しており、国際法上も「交戦状態」は7月の海戦から始まったと理解されます。
なお、選択肢2の平壌の戦いは9月15日前後、選択肢3の鴨緑江の戦いは10月末、選択肢4の威海衛の戦いは1895年1～2月の作戦であり、いずれも開戦時期・場所としては誤りです。豊島沖海戦が初戦である点を押さえておくと、宣戦布告日（8月1日）との時間差や、その後の戦役展開（平壌→黄海→遼東・山東方面）も整理しやすくなります。

【正解】4. 日本海軍は清国北洋艦隊を撃破した

**解説**

黄海海戦は1894（明治27）年9月17日、朝鮮半島・鴨緑江河口沖の黄海で行われた大規模な艦隊決戦です。日本の連合艦隊（伊東祐亨司令長官）は、巡洋艦主体の高い機動力と単縦陣による集中砲撃、統制のとれた艦隊運動で優位に立ち、清国の北洋艦隊（丁汝昌提督）に大きな損害を与えました。清国側は複数の巡洋艦を喪失・大破し、主力の装甲艦「定遠」「鎮遠」も被弾・損傷して戦力を著しく低下させます。日本側も旗艦「松島」をはじめ多数被弾し死傷者を出しましたが、沈没艦はなく艦隊としての戦闘能力を維持しました。

この勝利によって日本は黄海の制海権をほぼ掌握し、朝鮮および遼東半島方面への兵員・物資輸送を安全に進めることができました。結果として、同年秋の平壌陥落に続く遼東半島作戦（旅順・威海衛攻略）への道が開かれ、日清戦争の戦局を日本有利に大きく転回させた重要な海戦であったといえます。

【正解】2. 山東半島の割譲
解説
下関条約（1895年4月）は、①朝鮮の独立の承認、②台湾・澎湖諸島・遼東半島の割譲、③2億両の賠償金支払い、④通商上の特権と開市・開港の拡大、などを定めました。したがって「山東半島の割譲」は条約条項には含まれていません。山東方面に対する列強の進出はその後の出来事で、1897年のドイツによる膠州湾（青島）占領・租借など、いわゆる「勢力範囲」の形成過程で顕在化します。
なお、条約で割譲が定められた遼東半島は、直後の**三国干渉（露・独・仏）**により日本が返還を余儀なくされ、代償として追加賠償が支払われました。こうした国際的圧力と利害調整の文脈を踏まえると、下関条約は日本の勝利を画定した一方で、列強との力関係によって修正を受ける性格も持っていたことが分かります。

【正解】3. 三国干渉
解説
三国干渉とは、1895（明治28）年4月、下関条約の締結直後に、ロシア・ドイツ・フランスの三国が日本に対して遼東半島の清国への返還を勧告（事実上の圧力）した出来事を指します。名目上は東アジアの均衡維持や清国の首都防衛の観点が掲げられましたが、実際にはロシアが満洲・遼東方面での影響力拡大を狙い、ドイツ・フランスも自国の利害から歩調を合わせたものでした。日本政府は列強との軍事力格差を考慮して要求を受け入れ、遼東半島を清へ返還する一方、追加賠償金を獲得しました。
この干渉は日本の対外観を大きく転換させ、「列強との実力差を埋めるべきだ」という世論を強め、陸海軍の拡充や対露警戒の高まり、さらには1902年の日英同盟へとつながる外交・軍事方針の方向づけにも影響しました。なお、選択肢1は1894年に締結された通商条約、選択肢2は清とロシアの密約（1896年など）であり、選択肢4のポーツマス条約は**日露戦争後（1905年）**の講和条約で、本問の出来事とは異なります。

【正解】3. 海軍少尉樺山資紀を台湾総督に任命した
解説
1895（明治28）年の下関条約で台湾・澎湖が日本に割譲されると、日本政府は台北に台湾総督府を設置し、初代台湾総督として樺山資紀を起用しました。総督は立法・行政・軍事を強く統合する非常大権をもつ統治機関であり、当初は治安回復を最優先とする軍政色の濃い統治が行われました。これは、割譲直後に清朝官僚や在地エリートが掲げた「台湾民主国」（1895年5月宣言）や各地の武装抵抗（いわゆる乙未戦争）を鎮圧する必要があったためです。鎮定後、制度面の整備が進み、1896年以降は警察・衛生・交通・教育などの分野で近代的行政が段階的に導入されました（のちに児玉源太郎総督—後藤新平民政長官体制で本格化します）。
※史実では、樺山資紀は海軍大将として総督に就任しています（「少尉」は誤りです）が、本問の正解選択肢は「樺山資紀を台湾総督に任命した」点を押さえる趣旨です。
誤答の解説：
1（共同統治）：日本は清との共同統治を採用していません。割譲により日本の単独統治です。
2（自治承認）：日本は「台湾民主国」を承認せず、むしろ鎮圧しました。
4（保護領・外務省管轄）：台湾は保護領ではなく、日本の植民地（外地）として台湾総督府の統治下に置かれました。