民権運動の激化のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3

解説

自由党は、1881年（明治14年）に民権運動の全国組織であった国会期成同盟を基盤として、板垣退助を総理（党首）に結成された政党です。自由民権運動の中心勢力として、言論・集会・結社の自由の拡大、地方自治の強化、選挙権の拡大などを掲げ、早期の議会政治の実現を目指しました。思想的にはフランス流の急進的自由主義の影響が強く、民衆の政治参加を広げる方向で政策を訴えた点に特徴があります。

同年の「明治十四年の政変」で政府は大隈重信を追放しつつ、1890年の国会開設を約する「国会開設の勅諭」を出しましたが、これに対して自由党は政府監視と民権拡張を進めるために組織を拡大しました。新聞『自由新聞』による宣伝や各地の支部設置を通じて農村部にも大きな支持を広げましたが、弾圧の強化や過激化した一部運動（加波山事件・秩父事件〔1884年〕など）の影響も受け、いったん解党に追い込まれます。のちに1890年に立憲自由党として再結集し、帝国議会期の政党政治の柱の一つとなっていきます。

なお、選択肢の「立憲改進党」は1882年に大隈重信が結成した英国型立憲主義志向の政党、「立憲帝政党」は福地源一郎らが1882年に結成した政府寄りの保守政党、「愛国公党」は1874年に板垣らが結成した早期の政社であり、本問の1881年結成の政党とは異なります。

正解：2. 板垣死すとも自由は死せず

解説：

板垣退助は、自由民権運動を主導した政治家で、1881年結成の自由党の中心人物でした。1882（明治15）年、岐阜での遊説中に暴漢に刺され重傷を負いますが、その際に「板垣死すとも自由は死せず」と叫んだと広く伝えられています。この言葉は、個人は倒れても「自由・民権」という理念は不滅であるという信念を端的に示し、民権派の人びとを鼓舞するスローガンとして大きな影響を与えました。実際に現場で発せられた正確な文言については史料によって異同があり、当時の新聞記事や後年の回想の影響も指摘されますが、趣旨は「自由は決して滅びない」という理念の強調にあります。この事件は政府の弾圧が強まるなかでも民権運動の象徴的出来事となり、のちの国会開設（1890年）へとつながる世論の形成に寄与したと評価されます。

【正解】4

解説

福島事件は、1882年に福島県で起きた自由民権運動期の大規模な民衆抵抗事件です。背景には、県令（三島通庸）のもとで強権的に進められた道路建設（いわゆる「三島道路」）がありました。住民に対して過重な賦課金や労役動員が課され、入札や事業の進め方にも不透明さがあるとして、農民を中心に強い反発が広がりました。こうした不満に対し、県内の自由党員が請願・集会・演説などで支援し、数千人規模の抗議運動へと発展します。

当局は集会条例・新聞紙条例などを盾に警察力で弾圧し、多数の民衆や自由党関係者を検挙・起訴しました。結果として運動はいったん鎮圧されますが、地方官僚の専断と公共事業の負担をめぐる矛盾を全国に可視化し、農村部の政治参加意識を一層高める契機となりました。福島事件は、その後の加波山事件（1884年）や秩父事件（1884年）へと続く、自由民権期の社会的緊張の連鎖の前段として位置づけられます。なお、選択肢の「大津事件」（1891年）は来日中のロシア皇太子襲撃事件で性格・時期が異なります。

【正解】3（秩父事件）

解説

秩父事件は、1884年（明治17年）10月末から11月上旬にかけて、埼玉県秩父地方で発生した大規模な農民蜂起です。背景には、松方財政による急激なデフレで米価や農産物価格が下落する一方、地租・諸税や借金の返済負担が重くのしかかったことがありました。高利の負債を抱えた農民が生活の行き詰まりに直面し、債務の減免や返済猶予、取り立ての停止などを求める動きが強まりました。こうした困窮の中で、自由民権運動、とりわけ自由党急進派の影響を受け、農民たちは組織的な抗議へと踏み出します。

蜂起勢力は自らを「困民党」と称し、借用証文の焼却や税・取り立て機関への抗議行動を通じて、過酷な債務構造の是正と生活防衛を訴えました。運動は数千人規模に広がり、当局は警察力に加えて鎮台兵を動員して鎮圧にあたります。多数の逮捕者が出て厳罰に処されましたが、事件は地方社会の経済危機が政治的要求と結びつく典型例となり、自由民権運動の社会的基盤が農村にまで深く浸透していたことを明らかにしました。

なお、選択肢の「福島事件」（1882年）は三島通庸の強権的な道路建設に対する抵抗運動、「加波山事件」（1884年）は自由党急進派が茨城で挙兵した事件、「大阪事件」（1885年）は政府転覆計画の嫌疑で民権派が摘発された事件であり、性格も時期も本問の秩父事件とは異なります。

【正解】4

解説

1884年の自由党は、各地で過熱した運動を抑えきれず、党本部と地方の急進派とのあいだで統制が崩れ、最終的に解党に踏み切りました。背景には、松方財政によるデフレで農村が深刻な不況に陥り、負債や取り立てをめぐる不満が爆発したことがあります。こうした窮状を受けて一部の急進派が実力行動に傾き、同年の加波山事件（茨城）や秩父事件（埼玉）などへと発展しました。政府は集会条例・新聞紙条例を盾に厳しく鎮圧し、多数の検挙・起訴が行われ、党は組織的基盤と指導力を大きく損ないました。

自由党の解党は、民権運動が「政治的自由の要求」と「生活防衛の切実さ」とを結びつけて広がった反面、運動の統制を欠けば弾圧の標的となり脆弱であることを示しました。もっとも、自由党の思想と人的ネットワークは失われず、1890年の帝国議会開設に合わせて立憲自由党として再結集し、のちの政党政治の中核の一つを担っていきます。

なお、選択肢2の「立憲改進党との合併」は事実ではなく、改進党は大隈重信を中心に別系統で存続しました。選択肢1・3の与党化や改称も1884年当時には起きていません。

【正解】2

解説

甲申事変は1884年12月、金玉均ら朝鮮の急進改革派が日本の支援を期待してクーデタを試みましたが、清国軍の介入で短期間で鎮圧された事件です。この過程で日本公使館の焼失や日本人死傷者が出たことから、日本国内では対外強硬論が高まりました。自由民権運動の担い手である民権派の多くも、政府の弱腰外交を批判し、朝鮮および清国に対する武力行使・厳正な報復を主張しました。彼らは、朝鮮改革派の保護や日本人の権益擁護、国家威信の回復を掲げ、外征によって国内の立憲体制確立をも後押しできると考えたのです。

一方、政府は列強との均衡と国力の現状を考慮して全面戦争を回避し、翌1885年に天津条約を締結しました。同条約は日清両軍の清国・日本双方からの撤兵と、将来の派兵は事前通告するという原則を確認するもので、民権派の強硬論とは方向が異なります。

なお、選択肢3は政府が到達した天津条約の内容であり、民権派の主張ではありません。選択肢1や4のような協調・不干渉論も民権派の主流見解ではありませんでした。

【正解】2

解説

大阪事件は、1885年に自由民権運動の急進派が、大阪を拠点に朝鮮へ渡航して改革派を支援し、清国の影響力を排除しようと計画したところ、出発前に当局に発覚し多数が検挙・起訴された事件です。前年の甲申事変（1884年）で朝鮮改革派が清国軍の介入により敗北し、日本でも対清強硬論が高まりましたが、政府は1885年に天津条約を結んで日清の同時撤兵・将来の派兵は相互通告という穏健路線を採りました。これに不満を抱いた急進的民権派は、私的に朝鮮での「改革支援」を企図し、武器や資金を準備しましたが、計画は露見し、大阪で主要メンバーが逮捕されました。中心人物には大井憲太郎らが知られ、自由党解党（1884年）ののち過激化した一部勢力の行動が、政府の厳格な取り締まりを招いた典型例とされています。

なお、選択肢の「加波山事件」（1884年）は茨城での急進派挙兵、「秩父事件」（1884年）は埼玉での農民蜂起、「大津事件」（1891年）は来日中のロシア皇太子襲撃事件であり、本問の大阪事件とは時期・性格が異なります。

【正解】4

解説

大同団結運動は、帝国議会開設（1890年）を見据えて、民権派勢力が分立状態を脱し、「大同（おおもと）に立って団結」して政府に対抗しうる多数派形成をめざした全国的な政党合同運動です。発端は1886年頃で、実業界から政界に復帰した後藤象二郎や、雄弁家として知られる星亨らが音頭を取り、自由党系・改進党系・各地の政社を横断的に糾合して、議会開設時に主導権を握る構想を打ち出しました。

この運動は、条約改正問題や財政・軍備政策をめぐる政府批判の受け皿となり、翌1887年の三大事件建白運動（政府の外交・内政をただす請願運動）とも連動して世論を喚起しました。しかし政府は同年末、**保安条例（1887年12月）**によって在京の民権派有力者を多数追放・弾圧し、運動は大きな打撃を受けます。それでも大同団結の構想は、各勢力のネットワークを温存させ、1890年の立憲自由党の再結集や議会での会派形成へとつながっていきました。

なお、選択肢の「三大事件建白運動」は1887年の請願運動で大同団結運動と並行・連動したもの、「大阪事件」（1885年）は民権派急進派の対外干渉計画が露見した事件、「立憲自由党再興運動」は一般的な呼称ではなく、本問の用語としては適切ではありません。

【正解】4

解説

三大事件建白運動は、1887年（明治20年）に民権派が政府の政策転換を迫るために組織的に行った大規模な請願・建白の運動です。スローガンはご提示のとおり**「外交失策の挽回・地租軽減・言論集会の自由」で、当時の条約改正交渉の混迷や「鹿鳴館外交」への不信、デフレ下で重くのしかかる地租負担、集会条例・新聞紙条例による言論規制への反発が背景にありました。中心には後藤象二郎・星亨らが位置し、前年からの大同団結運動で広がったネットワークを動員して、全国から多数の署名・建白書を政府に提出しました。 これに対し政府は同年12月、保安条例を制定して在京の民権派指導者を大量に追放し、運動は大きな打撃を受けます。それでも、三大事件建白運動は世論を喚起し、翌1890年の帝国議会開設後の政党勢力の形成に影響を与えました。 なお、選択肢の「大同団結運動」は政党合同をめざす前段の結集運動、「大阪事件」（1885年）は朝鮮干渉計画の摘発事件、「保安条例」**は本運動を弾圧するための政府の治安立法であり、本問の問いとは性格が異なります。

【正解】2

解説（ですます調）

保安条例は、1887年（明治20年）12月に公布された治安立法で、三大事件建白運動によって高まった政府批判と民権派の結集を抑え込む目的で出されました。条例は、皇居周辺三里（約12km）以内での政治結社・演説・集会を厳しく禁じるとともに、当局が「治安を害するおそれあり」と判断した人物を東京から退去させる権限を与えました。その結果、約450名の反政府派・民権派活動家が一斉に東京の区域外へ追放され、在京勢力の中枢が物理的に分断されます。

この追放は、後藤象二郎らが主導した大同団結運動や、自由党・改進党系の広域的ネットワークに大きな打撃を与え、首都圏での政治活動や請願運動の継続を困難にしました。政府は同時に新聞紙条例・集会条例の運用も強化し、演説会の開催や印刷・配布を厳格に取り締まりました。もっとも、民権派の運動自体は地方へ拠点を移して存続し、1890年の帝国議会開設以後は議会内での政党活動へと重心を移していきます。

なお、選択肢1・3・4のような「前倒し」「緩和」「与党化」は事実に反し、保安条例はあくまで弾圧と追放を柱とした強硬策であった点にご留意ください。

参考文献：

松沢裕作著 (2016) 『自由民権運動』岩波新書
安在邦夫著 (2012) 『自由民権運動史への招待』吉田書店
稲田雅洋著 (2000) 『自由民権の文化史』筑摩書房
三浦進著 (2024) 『新・明治の革命：自由民権運動』同時代社
北岡伸一著 (2020) 『明治維新の意味』新潮社