国家体制の整備のことがよくわかる！クイズ5問

正解：4

解説：

正解は伊藤博文です。明治政府は、民権派の高まりを抑えつつ、上からの主導で近代的な立憲体制を整える方針を取りました。その要として、1882年から1883年にかけて伊藤博文を欧州に派遣し、憲法・議会・行政・司法に関する制度を幅広く調査させました。伊藤は主としてドイツ（プロイセン）とオーストリアで学び、ベルリンではルドルフ・フォン・グナイスト、ウィーンではローレンツ・フォン・シュタインから憲法学や行政学の薫陶を受けました。

この調査で伊藤は、君主大権を基礎に強固な行政を支えるプロイセン型の立憲君主制が、日本の当時の国情に適合すると判断しました。結果として、議院内閣制色の強いイギリス型ではなく、天皇大権・大権輔弼・二院制（貴族院と衆議院）・限定選挙といった枠組みが重視されます。帰国後、伊藤は井上毅・伊東巳代治らとともに起草作業を主導し、ドイツ人顧問ロエスレルの助言も得ながら制度設計を進めました。その延長線上に、1885年の内閣制度創設、1888年の枢密院設置、そして1889年の大日本帝国憲法発布が位置づけられます。

なお、選択肢の大隈重信はイギリス型を志向しつつも1881年の政変で退場し、板垣退助は自由民権運動の指導者でした。井上毅は重要な起草官僚ですが、欧州調査の主体として派遣されたのは伊藤博文でした。以上の経緯から、本問の答えは伊藤博文となります。

正解：2

解説

華族令（1884〈明治17〉年）は、旧来の「公家・大名」を基礎にした華族身分を近代国家の勲功主義に合わせて再編し、爵位（公・侯・伯・子・男の五爵）を制度化しました。このとき、単に血統だけでなく「国家への功労」を基準に、明治国家の建設に寄与した新たなエリート層を華族に取り込みます。具体的には、伊藤博文・山縣有朋などの政府首脳、板垣退助・大隈重信など政権に対峙・協力の双方で近代政治を推進した民権派指導者、そして榎本武揚・勝海舟らのように近代化や外交・海軍創設に功績のあった旧幕臣の有力者などが、時期の差はあれ爵位を授与されました。

この拡大は、維新後の多様な指導層を国家秩序の中に包摂し、政体を安定させる狙いがありました。血統だけの封建的序列ではなく、功労に基づく叙爵によって「忠誠のネットワーク」を形成し、のちに発足する貴族院（1890年）の中核要員を確保する効果もありました。結果として、華族は旧支配層と新功労者を結ぶ「近代日本の上層エリート」として再定義され、政治・外交・軍事・産業のキーパーソンが順次編入されていきます。

なお、豪商や地主が自動的・一律に華族に編入されたわけではありません。実業家や財界人にも叙爵例はありますが、いずれも個別の国家的功績や公共への貢献が重視されました。こうした点からも、華族令の本質は「身分の固定」ではなく、「功労の制度化」による国家建設の一環であったといえます。

正解：3

解説

1885年12月、政府は太政官制を廃止し、「内閣官制」「内閣職権」を公布して内閣制度を発足させました。初代の内閣総理大臣には伊藤博文が就任し、内閣は内閣総理大臣と各省の国務大臣で構成され、重要事項は「閣議」で合議して決定する仕組みが整えられます。これにより、従来の太政大臣・左大臣・右大臣などの職制は廃され、行政の最高意思決定が近代的な首相—各大臣の枠組みに再編されました。

内閣制度導入の背景には、プロイセン型の立憲体制を参照しつつ、明治国家の行政を合理化し、天皇大権のもとで大臣が輔弼責任を負うという原則を制度化する狙いがありました。1889年の大日本帝国憲法公布、1890年の帝国議会開設へと続く一連の国家体制整備の中で、内閣制度は行政の中枢として機能し、政策決定の迅速化と統一をもたらしました。なお、枢密院（選択肢1）は1888年設置の憲法審議機関、貴族院（選択肢2）は1890年創設の上院であり、内務省（選択肢4）は1873年設置の官庁ですので、本問の趣旨とは時期・性格が異なります。

正解：4

解説

1885（明治18）年12月に太政官制を廃して内閣制度が創設され、初代の内閣総理大臣には伊藤博文が就任します。これにより、従来の太政大臣・左大臣・右大臣を中心とする統治構造から、首相と各国務大臣が閣議で合議し責任を負う近代的行政体制へと転換が進みました。伊藤は長州出身で、岩倉使節団への参加や欧州での憲法調査を通じてプロイセン型の立憲体制を研究しており、内閣制度下での行政改革と憲法制定準備の陣頭指揮を執ります。教育行政では森有礼文相の下で**学校令（1886年）**などが整備され、近代官僚制・教育制度の基盤が固まります。外交面では井上馨外相による条約改正交渉（いわゆる「鹿鳴館外交」）が進められますが、国内世論の反発も生じました。伊藤の第一次内閣は1888（明治21）年まで続き、のちの憲法公布と帝国議会開設へ向けた制度設計を大きく前進させた点で重要です。なお、黒田清隆は第2代、山縣有朋は第3代、松方正義は第4代の首相であり、「第1次内閣」の総理大臣ではありません。

正解：3

解説

明治民法（1898年施行）は、当初のボアソナード（フランス法学者）案に対する「家族制度を壊す」との批判（いわゆる民法典論争）を受け、親族・相続編で家制度（いえ）を強く反映させた点に特徴があります。具体的には、戸主権が家の成員に及び、婚姻・離縁・養子縁組などに戸主の同意が必要とされる場面が多く設けられました。また、家督相続は原則として長男子の単独相続（例外として養子など）を想定し、家産と身分を一体として継承する枠組みが維持されました。

同時に、当時の民法は女性の私法上の地位を限定的に扱い、妻の財産処分や法律行為の能力に制約が課されるなど、男女不平等が制度面で固定化されました。これらは、明治国家が欧州大陸法を摂取しつつも、社会的安定を優先して伝統的家族観を法典に組み込んだ結果といえます。戦後の1947年改正で家制度は廃止され、戸主権と家督相続は撤廃、両性の本質的平等が明文化されることで、ようやく今日の家族法体系へと転換しました。