満州事変のことがよくわかる！クイズ10問

【正解：2】
【解説】
1920年代末、南京国民政府は北伐の完了を受けて中国の名目統一を進め、関税自主権の回復や治外法権撤廃を目標に列強と交渉を進めました。こうした「国権回復」の動きは、満洲・華北に広大な権益（南満洲鉄道、関東州租借地、各種利権）を有していた日本にとって利権縮小の危機を意味しました。なかでも現地の実力部隊である関東軍は、日貨排斥運動の拡大や済南事件（1928年）などで対日環境が悪化するなか、利権の既成事実化と勢力圏の固定化に強い危機感を抱き、独断専行的に強硬策へ傾斜しました。張作霖爆殺事件（1928年）や、その後の満洲事変（1931年）へと連なる一連の行動は、関東軍が国民政府の国権回復路線を直接の脅威として受け止めていたことを示します。
一方、日本の外務省や一部財界・海軍は、国際協調や対中貿易の維持を重視して慎重な姿勢を見せる傾向がありました。英米を中心とする列強も利害は抱えつつ、まずは外交交渉での調整を図りました。中国の旧軍閥勢力は権益面で影響を受けましたが、対外的利権の縮小という意味で最も切迫した危機意識を示したのは、関東軍を先頭とする日本の陸軍でした。以上より、正解は「関東軍を先頭とする日本の陸軍」です。

【正解：4】
【解説】
満鉄（南満州鉄道）の線路が奉天郊外の柳条湖付近で爆破された事件を、狭義には「柳条湖事件」と呼びます。1931年9月18日夜に起き、関東軍はこれを中国側の犯行だと発表して直ちに奉天の中国軍拠点・北大営を急襲し、以後の軍事行動へと拡大しました。線路の損傷は限定的で列車通行も可能だったとされますが、事件は関東軍の武力行使の口実となり、その夜から始まる満洲全域への侵攻（広義の「九一八事変」＝「満洲事変」）の火ぶたを切りました。翌年には満洲国の建国へとつながり、国際的にはリットン調査団の報告と国際連盟での非難、さらに日本の連盟脱退（1933年）へと至ります。
選択肢2の「九一八事変（満洲事変）」は柳条湖事件をきっかけに展開した一連の軍事行動全体の呼称で、事件そのものの名称ではありません。1の「済南事件」は1928年の山東出兵期の衝突、3の「盧溝橋事件」は1937年7月の華北での日中戦争全面化の発端で、いずれも時期・地域が異なります。以上より、正解は「柳条湖事件」です。

【正解：2】
【解説】
1931年9月18日夜の柳条湖事件直後、関東軍は爆破を中国側の犯行と断定して即時に武力行動へ移り、奉天（瀋陽）の北大営を急襲しました。そのまま南満州鉄道の要衝・通信施設を掌握し、鉄道沿線の機動力を活かして長春などの主要都市を次々占領しました。線路損傷は列車運行に支障が少なかったとされますが、関東軍はこれを口実に既成事実を積み重ね、東京の統制を待たずに作戦を拡大しました。こうした迅速な占領は、満洲事変の本格的展開と満洲国樹立への道を開くものとなりました。
選択肢1のような撤退は行われていません。3の北平・天津に関する措置は1937年以降の華北情勢に属します。4のような共同調査で自制する動きもなく、国際的調査はのちのリットン調査団派遣へとつながるまで時間を要しました。以上より、直後の実際の行動は2のとおりです。

【正解：3】
【解説】
柳条湖事件は、1931年9月18日夜、満鉄（南満州鉄道）柳条湖付近の線路を爆破し、それを口実に関東軍が直ちに奉天・長春などへ軍事行動を拡大した出来事です。現在の通説では、事件は関東軍内部の強硬派参謀—板垣征四郎大佐・石原莞爾中佐—らが極秘裏に立案し、現地の関東軍部隊（鉄道守備・工兵系統の小部隊）に実行させた謀略であったとされます。爆破による線路損傷は限定的で列車通行が可能だったことも、対中全面攻勢の口実作りであったことを物語ります。
国際的にも、のちに派遣された国際連盟のリットン調査団報告は、中国側の組織的攻撃とみなさず、日本軍の先制的行動を批判しました。事件後の史料・証言の蓄積からも、中国側や第三国の謀略とする説は説得力を欠きます。以上より、犯行は「関東軍参謀の一部が計画し、関東軍の現地部隊が実行した」と結論づけられます。

【正解：3】
【解説】
1931年9月18日の柳条湖事件直後、日本政府（若槻礼次郎内閣）は「事変不拡大」の方針を閣議で確認し、関東軍に現地での戦線拡大を抑制するよう求めました。しかし関東軍は政府・参謀本部の統制を待たずに独断専行で作戦を拡大し、南満州の要地を次々と占領しました。10月には吉林方面へ進出し、11月には黒竜江省のチチハルを占領、さらに1932年2月には鉄道・通信の要衝であるハルビンも掌握します。これらは「不拡大」方針を事実上無視した既成事実化の連続であり、のちの満洲国樹立へと直結しました。
他方、選択肢1・2のような停戦・凍結措置は実行されていません。選択肢4の「上海への戦力転用」は1932年1月の第一次上海事変に関連する動きで、満州からの撤退ではなく、満州での作戦は並行して拡大していました。したがって、実際の反応は政府声明を無視した占領拡大（選択肢3）でした。

【正解：2】
【解説】
1931（昭和6）年9月の柳条湖事件後、若槻礼次郎内閣は「不拡大方針」を掲げましたが、関東軍の独断専行による戦線拡大を抑えられず、政局は行き詰まりました。その結果、同年12月に若槻内閣は総辞職し、後継の組閣を託されたのが立憲政友会総裁の犬養毅でした。犬養内閣は1931年12月に成立し、財政・金融の立て直しを急ぐために高橋是清を大蔵大臣として起用し、金解禁政策の転換（離金本位）や積極財政への転換を進めました。外交面では、国際協調の枠内で事態の沈静化を模索しましたが、軍部や現地部隊の既成事実化が続くなかで統制は困難を極めました。
なお、選択肢1の濱口雄幸は若槻の前任首相で、満州事変時にはすでに退いています。選択肢3の斎藤実は犬養内閣後、1932年の五・一五事件を経て首相となりました。選択肢4の若槻礼次郎は退陣した本人であり、後継ではありません。以上より、新内閣を組織したのは犬養毅となります。

【正解：2】
【解説】
満州事変（1931年9月）直後から、関東軍は張学良（張学良の東北政権）を駆逐したのち、満州を南京国民政府の統治から切り離し、日本の思惑どおりに運営できる「独立国」を樹立する構想を推し進めました。これは「満蒙は日本の生命線」とする発想に基づき、南満州鉄道・関東州租借地・鉱工業資源（石炭・鉄鉱・大豆）・軍事上の緩衝地帯の確保を狙ったものです。関東軍は各省で親日的な「自治政府」を相次いで樹立・統合させ、最終的に1932年3月に満洲国を成立させました（のち溥儀を元首に据え、事実上の日本の支配下に置きます）。
この方針は、日本外務省の国際協調路線や国際連盟体制と衝突し、リットン調査団の報告で否定的評価を受け、日本の国際的孤立を深めました。選択肢1の「高度の自治州」や3の国際連盟信託統治、4のソ連との共同防衛圏はいずれも当時の関東軍の基本方針とは合致しません。したがって、正解は「国民政府から切り離し、日本の自由になる独立国を樹立しようとした」です。

【正解：1】
【解説】
1932年3月、関東軍は中国東北地方を国民政府から切り離すため、「満州国」の建国を宣言させ、その象徴として清朝最後の皇帝・溥儀（宣統帝）を担ぎ出しました。溥儀はこの時点では「皇帝」ではなく、まず国家元首に相当する「執政」とされ、首都は長春（のち新京）に置かれます。1934年になると溥儀は「帝位」につき、年号を「康徳」とする体制が整えられました。しかし実権は関東軍・満鉄・特務機関など日本側が掌握し、溥儀は名目的元首として機能させられました。
溥儀は1912年の辛亥革命で退位後、1917年に一時復辟未遂、1924年には北京を追われて天津の租界に居住していました。そこへ関東軍が工作を進め、満州事変後の新体制の象徴として迎え入れたのです。選択肢2の張学良は東北政権の指導者で、関東軍と対立して満州から退去しました。選択肢3の袁世凱は1915～16年に「中華帝国」を称しましたが、満州国とは無関係です。選択肢4の張作霖は1928年に爆殺されており、時期も役割も合致しません。以上より、正解は「溥儀（もと宣統帝）」です。

【正解：4】
【解説】
犬養毅内閣（1931年12月成立）は、満州事変後も国際協調の枠内で事態の沈静化を図り、満州国の早期承認に慎重でした。1932年1月の第一次上海事変では停戦・不拡大を模索し、5月5日には上海停戦協定が成立します。こうした方針は、関東軍主導で既成事実化を進める強硬派と齟齬を来し、国内の軍部・右翼の不満を募らせました。
1932年5月15日、海軍青年将校らが首相官邸を襲撃して犬養毅を射殺する「五・一五事件」が発生し、政党内閣は致命傷を負います。首相の暗殺により内閣は実質的に瓦解し、6月には挙国一致の斎藤実内閣へと交代しました。以後、軍部・官僚・宮中の影響力が強まり、政治の重心は政党から離れていきます。その帰結として、同年9月には日本が満州国を正式承認（「日満議定書」）し、犬養内閣時の慎重姿勢は転換されました。以上より、犬養内閣が倒れた直接の原因は「五・一五事件で犬養首相が暗殺されたこと」です。

【正解：2】
【解説】
斉藤実内閣は、五・一五事件で犬養毅首相が暗殺されて政党内閣が崩壊した直後に成立しました。国内では関東軍が満州で既成事実を積み上げ、政府に対して「国防」「治安維持」を名目とする強い圧力を加えました。これに呼応する形で、新聞各紙は号外や戦況報道、社説などで「満蒙は日本の生命線」といったスローガンや戦果を大きく扱い、対外強硬論を煽る論調が広がりました。さらに在郷軍人会・商工団体・学生・青年層による請願・建白・署名運動が相次ぎ、世界恐慌後の不況を背景に「満州開発が活路になる」とする期待が世論の突き上げとなって政府を後押ししました。その結果、内閣は国際的反発のリスクよりも国内の圧力を優先し、1932年9月に日満議定書を締結して満州国を正式承認しました。
一方、選択肢1のような「国際連盟の承認を見据えた配慮」は当時の国際情勢と整合せず、連盟はむしろ否定的でした。選択肢3の英米の要求は承認を抑制する方向で、直接の後押しではありません。選択肢4の「中国国民政府からの要請」は事実ではありません。従って、背景要因は「軍部の圧力と新聞の煽動的報道、世論の突き上げ」です。

まとめ：

満州事変は、1931年9月18日夜、関東軍が南満州鉄道の柳条湖付近で起こした自作自演の鉄道爆破を口実に、奉天（瀋陽）や長春などを急襲・占領した事件です。軍は本国政府の不拡大方針を無視して戦線を拡大し、翌32年3月には清朝最後の皇帝溥儀を執政に据えた「満州国」を建国しました。背景には世界恐慌後の資源・市場確保の思惑、在満日本人・権益の安全を強調する世論、そして軍部の独断専行を止められない政党内閣の弱体化がありました。中国側では張学良が「不抵抗政策」をとり、本格的な抵抗は広がりませんでしたが、中国主権を侵す既成事実化は国際問題化します。国際連盟はリットン調査団を派遣し、32年に事変の不当性と満州国の承認否定を勧告しました。日本政府はこれに反発し、33年に国際連盟を脱退します。さらに同年の塘沽停戦協定で満州支配は固定化され、以後の華北分離工作や37年の日中戦争へと連なる分岐点となりました。国内ではマスメディアの煽情的報道が軍行動を支持し、32年5・15事件で政党内閣は終焉を迎え、軍部主導の体制が強まっていきました。満州事変は、日本が国際協調から離脱し、戦時体制へ傾斜する決定的契機であったと評価されます。