孔子と論語のことがよくわかる！クイズ10問

正解：3. 紀元前550年頃

解説:

孔子は、紀元前550年頃（春秋時代）に中国の魯（ろ）国、現在の山東省曲阜（きょくふ）市で生まれたとされています。以下に、彼の生誕について詳しく説明します。

1. 生まれた時代背景

孔子が生まれた「春秋時代」（紀元前770年～紀元前476年）は、周王朝が実質的な力を失い、諸侯たちが各地で権力を争っていた時代です。社会や政治は混乱し、道徳の低下や戦乱が続いていました。このような背景が、孔子の「礼（れい）」や「仁（じん）」といった道徳的な秩序の回復を説く思想の土台になりました。

2. 孔子の出身と家系

孔子の姓は「孔」、名は「丘（きゅう）」、字（あざな）は「仲尼（ちゅうじ）」。彼は貴族の家系でしたが、父親が早く亡くなり、母子家庭で育ちました。家は裕福ではなかったと伝えられています。

3. 生誕の年の根拠

孔子の誕生年である「紀元前550年」は、歴史書『史記』や『春秋左氏伝』などによって伝えられています。西暦換算では、現在からおよそ2,500年以上前の出来事です。

4. 誕生日に関する伝承

孔子の誕生日は、旧暦の8月27日とされており、中国や台湾ではこの日を「教師節（教師の日）」として記念することもあります。現代のグレゴリオ暦では日付は毎年変わります。

正解：3. 孔子の言行録

解説:

『論語（ろんご）』は、孔子の死後、彼の弟子たちやその後の門人（弟子の弟子たち）によってまとめられた書物で、孔子の言行録（げんこうろく）、つまり言葉や行動を記録した書という形式で作られました。以下に詳しく説明します。

1. 『論語』の基本的な形式

『論語』は全20篇から構成され、それぞれの篇には多数の短い章（しょう）が収められています。

• 1章ごとに1つの会話や言葉が書かれており、全体としてエッセイや長文ではなく、短い言葉の集積です。
• 内容は、孔子と弟子たちの問答形式（Q&A）や、孔子が語った名言、弟子たちが語る孔子像などが中心です。

2. 成立の経緯

孔子自身は『論語』という本を書いたわけではありません。彼の思想は口伝（くでん）で伝えられていました。『論語』は、

• 孔子の直接の弟子たち
• 弟子の孫弟子（まごでし）
• その後の儒者たち

によって、孔子の言葉や行動の記録を集め、整理・編集して成立したものと考えられています。現在伝わる『論語』は、戦国時代から前漢にかけて編纂されたとされます。

3. 『論語』の特徴

• 口語的なスタイル：もともと会話の記録なので、簡潔で分かりやすい表現が多いです。
• 教訓的・倫理的な内容：道徳、礼儀、政治、学問、人間関係などに関する教えが含まれます。
• 実践重視：孔子の思想は抽象的というよりも、日々の生活の中でどう行動すべきかに焦点が当たっています。

4. 記録された主な内容

『論語』に記録されているのは主に以下のような内容です：

• 孔子の思想（仁・礼・忠・孝など）
• 弟子との問答（例えば、「子路問うて曰く…」など）
• 政治への意見
• 教育についての考え
• 日常生活での態度やふるまい

5. 文体と例

『論語』の特徴的な文体は、簡潔な古代中国語（文言文）です。例えば有名な一節：

子曰、「学而時習之、不亦説乎。」 （しのたまわく、「まなびてときにこれをならう、またよろこばしからずや。」）

というふうに、「子曰（しのたまわく）」＝「孔子が言った」という形で始まる言葉が多いです。

正解：

1. 思いやりの心

解説:

はい、「恕（じょ）」は孔子の思想の中でも非常に重要な徳目の一つで、「思いやり」や「他者への共感・寛容さ」を意味します。孔子自身が「仁（じん）」の具体的な実践として強調した概念です。以下に詳しく説明します。

■「恕」の意味とは？

「恕」という字は、「如（じょ）」＋「心（こころ）」でできています。
漢字の成り立ちからも「自分の心をもって他人の心をはかる」という意味が含まれています。

つまり、「自分がされたくないことを他人にもしない」、または「自分のことのように他人を思いやる」という考えです。

■『論語』における「恕」

孔子が「恕」について明確に語っている有名な一節があります：

「子貢問うて曰く、一言にして以て終身これを行うべき者ありや。」
子曰く、「其れ恕か。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ。」

（訳）
子貢が尋ねた。「一言で生涯の行動指針とすべき言葉はありますか？」
孔子は答えた。「それは恕だろう。自分がされたくないことは、人にもしてはならない。」

この言葉は、孔子の道徳観の中心をよく表しています。

■「恕」と「仁」との関係

「仁」は孔子の教えの根本ですが、非常に広く深い概念です。それに対して、「恕」は仁を実践するための具体的な方法として位置づけられます。

• 仁（じん）：他人への愛や思いやり、道徳的な理想。
• 恕（じょ）：他人の立場に立って考え、相手を思いやるという行動の姿勢。

つまり、「恕」は、仁の実践的な表れであり、日常生活において他者と接するときの基準とも言えます。

■現代への応用

「恕」の考え方は現代にも通じます。たとえば：

• SNSで誰かを批判する前に「自分が言われたらどう思うか」を考える。
• 職場や学校で相手の立場を想像して接する。
• 他人の失敗や欠点を責める前に、自分にも同じことが起こり得ると考える。

こうした態度が「恕」に当たります。

正解：

1. 優れたリーダーは言葉ではなく行動で示す

解説:

■ 原文と書き下し文

原文：

子曰、「君子欲訥於言而敏於行。」

書き下し文：

子曰く、「君子は言に訥にして、行に敏ならんと欲す。」

■ 現代語訳

孔子が言った：

「立派な人（君子）は、言葉には慎重で飾り立てず、行動には素早く誠実であろうとするものだ。」

■ 言葉の意味の解説

• 君子（くんし）：徳のある立派な人物。理想的な人格者。
• 訥（とつ）：口数が少ない、言葉が滑らかでない、つまり話すことに慎み深い、慎重な態度。
• 敏（びん）：すばやい、行動的、実行力があるという意味。
• 欲す：～したいと思う。

■ 教えの背景と意義

孔子は、言葉よりも行動を重視する姿勢を非常に大切にしていました。この言葉の背景には、

• 口だけで立派なことを言う人間は信用できない
• 実際に行動し、徳を示す人間こそが本物

という孔子の価値観があります。

この教えは、単に「寡黙であれ」という意味ではありません。口先だけで語るのではなく、行動で誠実さを証明しなさいというメッセージなのです。

■ 現代への応用

この言葉は、現代社会にも非常によく当てはまります。

• リーダーシップ：演説や言葉だけではなく、行動で部下に信頼されるリーダーが求められる。
• 日常生活：SNSなどでの発言は簡単だが、それよりも行動や態度が人の信頼を築く。
• 仕事：プレゼンや発言も大事だが、実際の成果や行動力こそ評価される。

■ まとめ

「君子は言に訥にして、行に敏ならんと欲す」

→ 「本当に立派な人は、口ではなく行動で示す。」

この言葉は、「実践こそが真の知恵と徳である」という、孔子の実践主義的な倫理観をよく表しています。

正解：

1. 物事は、ほどほど（中庸）がいい

解説:

「過ぎたるはなお及ばざるがごとし（すぎたるはなおおよばざるがごとし）」は、『論語』に出てくる非常に有名な言葉で、物事には「ほどほど」（中庸）が大切で、行き過ぎも足りないのと同じくらい良くないという意味です。

■ 原文と書き下し文

原文：

子曰、「過猶不及。」

書き下し文：

子曰く、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし。」

このように、原文は非常に短いです。

■ 現代語訳

孔子はこう言った：

「行き過ぎてしまうことは、足りないことと同じくらいよくない。」

■ 言葉の意味の解説

• 過（す）ぎたる：やりすぎること。度を越えてしまうこと。
• 及ばざる：足りないこと。十分でないこと。
• ～がごとし（如し）：～と同じようなものだ。

つまり、「やりすぎ」も「足りなさ」も、どちらもバランスを欠いており、良くないという意味になります。

■ 教えの背景と意義

この言葉が出てくるのは、『論語』の「先進篇」という章で、弟子の子貢（しこう）が他の弟子たちの性格や才能を比較していた場面です。孔子はその中で、「子貢の評価はおおむね正しいが、度を越えた行いも、足りないのと同じくらい良くない」と戒めたのです。

この考え方は、孔子の中心的な思想である「中庸（ちゅうよう）＝ほどよさ、極端を避ける」という美徳に深くつながります。

■ 現代への応用

この言葉は、現代でも非常に示唆に富んでいます。

• 仕事：一生懸命働くのは良いが、働きすぎると健康を害する。
• 教育：厳しすぎる指導も、甘やかしすぎるのと同様に逆効果。
• 人間関係：正直すぎる発言は、相手を傷つけてしまうこともある。

つまり、「ちょうどいい加減（バランス）」が何事にも大事だという、非常に実用的な教訓です。

■ まとめ

「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」＝バランスと中庸の大切さを説いた言葉。

孔子は、何事も極端を避け、中庸を守ることが人としての正しいあり方であると考えていました。この一言には、その深い哲学が凝縮されています。

正解：1. いくら知識を学習しても、考える力がなければダメだ。

解説:

■ 原文と書き下し文

原文：

子曰、「学而不思則罔、思而不学則殆。」

書き下し文：

子曰く、「学びて思わざれば則ち罔し（くらし）、思いて学ばざれば則ち殆し（あやうし）。」

■ 現代語訳

孔子が言った：

「学ぶだけで考えなければ、本当の理解には至らず迷ってしまう。逆に、考えてばかりで学ばなければ、独りよがりになって危うい。」

■ 言葉の意味の詳しい解説

• 学びて思わざれば：知識を学ぶだけで、自分の頭で考えようとしないなら
• 則ち罔し（くらし）：「罔」は「くらい（＝迷う、わからない）」という意味。つまり、理解が浅く、知識が身につかないということ。
• 思いて学ばざれば：自分の頭で考えるばかりで、新しい知識や他人の意見を学ぼうとしなければ
• 則ち殆し（あやうし）：「殆」は「危うい」、つまり独断的・思い込みが強くなること。

■ 教えの背景と意義

この教えは、孔子が重視した「知識と思考の両輪」という学問観を端的に表したものです。

● 「学ぶだけ」では不十分

本や先生から知識を得ても、それを自分で深く考えなければ、本質は理解できません。表面的な知識だけで終わってしまう。

● 「考えるだけ」でも危険

独学や自己流に頼りすぎると、間違った方向に進みやすく、思い込みや偏見にとらわれがちです。正しい学問や知識の裏付けが必要です。

■ 現代での応用例

この言葉は、現代の勉強や仕事にも当てはまります：

• 受験勉強：丸暗記だけでなく、「なぜそうなるのか」を考えることが大事。
• ビジネス：マニュアルを覚えるだけでなく、それをどう応用するか考える。
• 情報社会：ネットで情報を得るだけでなく、それが正しいか、自分にとって意味があるかを考える。

■ まとめ：この言葉の核心

「知識を得ること（学）」と

「それを活かして深く考えること（思）」の両方がなければ、真の知恵にはならない。

孔子は、受け身の学びではなく、能動的に考える学びの重要さを2,000年以上前にすでに説いていたのです。

正解：1. 古い事柄を学び直し、そこから新たな知識や理解を得る

解説:

「温故知新（おんこちしん）」は、『論語』の中でもとても有名な一節で、以下のような言葉で記されています。

■ 原文と書き下し文

原文：
子曰、「温故而知新、可以為師矣。」

書き下し文：
子曰く、「故（ふる）きを温（たず）ねて新しきを知る、以て師（し）と為るべし。」

■ 現代語訳

孔子が言った：
「過去のことをよく復習し、それをもとにして新しい知識や見解を得ることができれば、人に教えることができるようになる。」

■ 言葉の意味の詳しい解説

• 温（たず）ねる：本来の意味は「温める」ですが、ここでは「復習する・振り返る」という意味です。
• 故（ふる）き：過去の知識や経験、古典、歴史、先人の教えなど。
• 新しきを知る：過去の知識を踏まえて、新しい発見や理解に至ること。
• 師と為るべし：そのような人は教師としてふさわしい、という孔子の評価。

■ この教えの背景と意義

この一節は、学びの姿勢と知識の発展のしかたを説いています。孔子は、単に新しいことを追い求めるだけではなく、古い知識や経験を大切にし、それをもとに新しい理解を築くことを重視しました。

これは、以下のような学びの原則につながります：

• 学びは積み重ねである。
• 過去を忘れず、そこから未来を見出す。
• 歴史や伝統を振り返ることで、新しい価値が生まれる。

■ 現代的な応用例

• 歴史を学んで、現代社会の問題を考える。
• 過去の仕事や失敗を見直して、次のアイデアに生かす。
• 古典文学や先人の言葉に触れ、新しいインスピレーションを得る。

たとえば、企業が「創業時の理念を再確認して、新しい事業方針を作る」といった行為も「温故知新」の実践です。

「温故知新」は単なる知識の復習ではなく、「新しい理解を得るために過去を振り返る」という、学びと成長のサイクルを象徴する深い言葉です。

正解：3. 73歳

解説:

孔子（こうし）は、73歳で亡くなったとされています。

■ 孔子の生涯の概要

• 生年：紀元前551年（魯国・現在の中国山東省曲阜）
• 没年：紀元前479年（同じく魯国）

このため、享年73歳ということになります（当時の数え年では74歳とされることもあります）。

■ 晩年の孔子

孔子は若い頃から学問と政治に志を持ち、50代では魯国の役人として実際に政治にも関わりましたが、改革に挫折し、その後は諸国を巡って理想の政治を説いて旅を続ける「周遊列国」の生活に入ります。

しかし、どの国でもなかなか受け入れられず、60代半ば頃に故郷・魯国に戻り、教育と文献の編纂に専念しました。

このころ彼は、

• 古典の整理（『詩経』『書経』など）
• 弟子の教育（のべ3,000人以上、うち優秀な弟子は72人と言われる）
• 自身の思想を語り、弟子が記録（→後に『論語』となる）

といった活動に打ち込みました。

■ 死の前後

孔子は70歳を過ぎた頃から、最愛の弟子・顔回（がんかい／顔淵）や子路（しろ）を次々に失い、精神的にも大きな痛手を受けました。自身の思想を理解し実現してくれる後継者が現れなかったことに、失望や孤独もあったと言われています。

紀元前479年、故郷の魯国で亡くなりました。

■ 墓と記念地

孔子の墓は、今も中国山東省曲阜（きょくふ）市にあり、「孔林（こうりん）」と呼ばれる大きな墓所となっています。ここは中国最大級の儒家の聖地であり、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

晩年は理想が実現されなかった無念もあったものの、彼の思想は弟子たちにより受け継がれ、後世の儒教の根幹を成すものとなりました。

正解：1. 孔子廟

解説: 孔子を祀った霊廟は「孔子廟」と呼ばれます。孔子廟は、中国の儒教の聖地であり、孔子の教えと思想を称える場所です。孔子廟は中国全土に存在し、特に孔子の故郷である山東省の曲阜にある孔子廟は最も有名です。孔子廟は多くの人々によって訪れられ、儒教の崇敬と教えに対する敬意を示す場となっています。東京にある湯島聖堂も、孔子廟の一つです。

正解：

1. 渋沢栄一

正解：

1. 渋沢栄一

解説:

明治期に論語を商業道徳の模範と仰いだ実業家は渋沢栄一です。渋沢栄一は、日本の近代化に大きく貢献した実業家であり、鉄道事業や銀行業を展開しました。彼は儒教や論語の教えを重視し、経済活動においても倫理的な原則を守ることを提唱しました。彼の経済活動と倫理的な姿勢は、当時の日本の実業界に大きな影響を与えました。渋沢栄一は、現代の日本の経済界でも尊敬を集める偉大な実業家です。

■ 渋沢栄一とは？

• 生没年：1840年（天保11年）～1931年（昭和6年）
• 出身地：武蔵国血洗島村（現在の埼玉県深谷市）
• 肩書き：実業家・官僚・教育者・慈善活動家
• 功績：第一国立銀行（現在の〈みずほ銀行〉の前身）を設立、500以上の企業や社会事業に関与。

彼は「日本資本主義の父」と称され、2024年から発行された新一万円札の顔にもなっています。

■ 渋沢栄一と『論語』

渋沢は、『論語』を単なる儒学の教典としてではなく、**「実業道徳の教科書」**としてとらえました。

● 彼の代表的な言葉：

「論語と算盤（そろばん）」

これは、「道徳（論語）」と「経済活動（算盤）」は矛盾しない、両立すべきものだという意味です。

● 背景

• 当時の日本は、明治維新を経て急速な近代化・産業化の真っただ中にありました。
• その中で渋沢は、西洋的な資本主義を取り入れつつも、日本古来の倫理観を土台とした経済活動を目指したのです。
• 彼は『論語』の中に、人としての正しい在り方、社会に貢献する志、誠実さ、節度など、実業に必要な精神を見いだしました。

■ 実践としての「論語」

渋沢栄一は次のような信念を持っていました：

• 利潤を追求しても、公共の利益に反してはならない。
• 誠実・信義を守ってこそ、商売は繁栄する。
• 社員や取引先に対して礼を尽くす。

これらは、『論語』の中にある孔子の教え「仁」「信」「礼」などの徳目を、現実の経済活動に生かしたものです。

■ 著書『論語と算盤』

渋沢の思想をよく表す名著が、彼自身の講演録をまとめた：

『論語と算盤』（1916年）

この本では、道徳と経済を両立させる理念がわかりやすく説かれており、現代でもビジネスや倫理の分野で高く評価されています。

渋沢栄一は、「儲けること」と「正しく生きること」は決して矛盾しないという、持続可能で誠実な経済活動の道を、『論語』から導き出したのです。

参考文献：

井波律子著『論語入門』（2012 岩波新書）
井波律子著『完訳 論語』（2016 岩波書店）
佐久協著『NHKブックス　100分de名著　孔子　論語』（2012 NHK出版）