国際連盟脱退のことがよくわかる！クイズ5問

【正解】3. 戦争を国家政策の手段として用いることを放棄することを約束したもの
解説
不戦条約（ケロッグ＝ブリアン協定、称パリ不戦条約）は、1928年に米国務長官フランク・ケロッグとフランス外相アリスティド・ブリアンの提唱で結ばれた多国間条約で、国家が国策遂行の手段として戦争を用いることをやめ、国際紛争を平和的方法で解決することを約束したものです。日本を含む多くの国々が調印し、戦争の「違法化」という理念を国際社会に広めた点で画期的でした。
ただし、自衛権の範囲や「侵略」の明確な定義、違反国への具体的な制裁規定が欠けていたため、実効性には限界がありました。そのため、1930年代の満州事変やその後の第二次世界大戦を抑止することはできませんでした。それでも、戦争放棄の原則はその後の国際法発展に大きな影響を与え、ニュルンベルク裁判での「平和に対する罪」の法理や、国連憲章第2条第4項の武力不行使原則の基礎となりました。以上の理由から、同条約は実施面での弱さと理念面での先駆性を併せ持つ協定であったと評価できます。

【正解】2. リットン報告書
解説
リットン報告書は、満州事変の実態を調査するために国際連盟が派遣した調査団（団長はイギリスのリットン卿）が、1932年にまとめて発表した最終報告書の通称です。報告書は、日本の満州における「特別利益」や治安上の懸念を一定程度認めつつも、柳条湖事件に端を発する軍事行動の拡大を自衛とはみなさず、武力による現状変更を否定しました。また、満州国の樹立は住民の自由意思に基づく真の独立とは言い難いとして、中国の主権の下での満州の自治的解決や、日本軍の段階的撤兵・多国間的な鉄道管理などを勧告しました。
この報告書は、各国が掲げた不戦条約の理念（武力不行使・紛争の平和的解決）に照らして日本の行動を問題視する根拠となり、国際世論の対日不信を一層強める結果となりました。国際連盟総会は報告書の趣旨を支持し、日本はこれに強く反発して連盟を脱退する決断へと傾きます。したがって、リットン報告書は、満州事変を国際法・国際秩序の観点から評価した画期的文書であり、1930年代の国際関係を大きく転換させた節目の資料であったといえます。

【正解】2. 満州における中国自治政府の樹立と日本軍の撤退を勧告
解説
1933年2月の国際連盟臨時総会は、前年のリットン報告書の勧告を踏まえ、満州は中国の主権のもとで広範な自治を認めるべきであり、日本軍は段階的に撤退すべきだという趣旨の決議を採択しました。これは、武力による現状変更を認めないという不戦条約の理念にも合致する判断であり、満州国の承認を否定しつつ、地域安定のために自治的な政治体制を模索する立場を示したものです。
この決議は、治安・経済利権への一定の配慮をしながらも、最終的には中国の主権回復と日本軍の撤兵を求めた点に特徴があります。日本政府・軍部は自衛権の行使を主張して反発し、日本代表団（松岡洋右ら）は決議採択の場で退場しました。これを契機に日本は連盟方針との対立を決定的にし、のちに連盟脱退を通告するに至ります。以上の経緯から、この決議は1930年代の東アジア国際秩序をめぐる転換点となったと評価できます。

【正解】4. ただちに退場し、国際連盟脱退を通告した
解説
1933（昭和8）年2月、国際連盟臨時総会はリットン報告書の趣旨を支持し、満州を中国主権の下で自治的に解決し、日本軍の撤退を勧告する決議案を42対1（反対は日本だけ）で可決しました。これに対し、日本代表団（松岡洋右ら）は採決の場でただちに退場し、国際世論との対立を鮮明にしました。そののち日本政府は、3月12日に正式に連盟脱退を通告し、二年後に効力が発生します。
日本側は、自衛権の行使や在満権益の保護を主張し、満州国の国際承認を求めていましたが、連盟決議は武力による現状変更を認めず、満州国の承認を否定する内容でした。国内では軍部や世論が強硬姿勢を支持しており、政党内閣の外交的選択肢は狭められていました。結果として、日本は多国間協調から距離を取り、連盟脱退によって国際的孤立を深め、のちのブロック化と対立の激化に向かう重要な岐路となりました。

【正解】3. 塘沽停戦協定
解説
塘沽停戦協定は、1933年5月31日に河北省塘沽（現在の天津市域の港湾地区）で締結された、日中両軍の停戦合意です。満州事変から熱河作戦・長城線の戦闘へと拡大した軍事衝突を一旦収め、北中国での戦闘を停止することを目的としました。協定では、万里の長城以南に中国側の「非武装地帯（非駐兵区）」を設けること、日本側（関東軍・満洲国軍）は長城以北にとどまること、非武装地帯の治安は中国側の保安隊（軍でない準警察的部隊）が担うことなどが盛り込まれました。
この結果、中国の正規軍は北平（北京）・天津方面から南方へ後退を余儀なくされ、日中間の軍事的緊張は一時的に緩和しましたが、現状追認の色彩が強く、満洲国の成立を事実上容認する効果を持ちました。さらに、非武装地帯の設定は日本側の影響力拡大を容易にし、その後の華北分離工作につながる1935年の何梅協定など、追加的な政治・軍事的圧力の土台となりました。つまり、塘沽停戦協定は戦闘を止める一方で、力の均衡を日本側に有利に傾け、日中関係の不安定化を中長期的に深める節目の合意であったと評価できます。