明治憲法の制定のことがよくわかる！クイズ10問

正解：3

解説

明治憲法の具体的な起草期に、日本政府が恒常的に意見を求めたのは**ドイツ人法律顧問のロエステル（＝ロエスレル／Roesler）とモッセ（Mosse）**であり、プロイセン憲法を範とする立憲体制の設計に実務面で関与しました。両名は内閣制度創設や法制整備と連動して、主権者たる天皇大権と大臣の輔弼責任、行政組織の構成原理などについて、法技術上の助言を与えました。特にロエステルは行政・地方制度に強く、モッセは自治体制度（市制・町村制）などにも専門性を発揮し、憲法体制と周辺法制の整合を図る上で実務的な下支えをしました。

一方で、選択肢1と4のシュタイン、グナイストは、伊藤博文が1882～83年に欧州視察で直接薫陶を受けた学者で、思想的・制度比較的な示唆は大きかったものの、日本側の常勤顧問として条文作業に継続関与したわけではありません。選択肢2のボアソナードはフランス人法学者で、主として刑法・民法（旧民法案）など私法分野に貢献し、憲法起草の中核助言者とは位置づけが異なります。以上より、憲法起草の実務助言者として最も適切なのは「ロエステル・モッセ」であるといえます。

正解：2

解説

大日本帝国憲法は1889（明治22）年2月11日に宮中で発布されます。日付は神話上の初代天皇の即位日とされた紀元節（きげんせつ）に合わせられ、憲法が「天皇大権により下賜される欽定憲法」であることを強く印象づけました。発布当日は、憲法本文とともに憲法発布勅語が読み上げられ、近代立憲国家への大きな節目となります。

なお、選択肢3の1890年11月29日は憲法の施行日であり、同日に帝国議会（第1回）が開院しました。選択肢1や4の2月11日は紀元節に由来するため紛らわしいですが、発布は1889年が正しい時期です。憲法発布前後には、議会制度を支える法整備（貴族院令や衆議院議員選挙法など）も進み、1885年の内閣制度創設と連動して、行政・立法の枠組みが近代的に整えられていきました。以上より、本問の正答は**「1889（明治22）年2月11日」**となります。

正解：1

解説

明治憲法（大日本帝国憲法）は、第3条で「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」と規定し、天皇の不可侵性を明確にしました。さらに第4条で「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ…」と定め、国家権力の源泉としての地位を示しました。これにより立法・行政・司法に関わる広範な国務が、最終的には天皇大権の下に位置づけられます。具体的には、軍の統帥権（第11条）、宣戦・講和・条約締結権（第13条）、法律の公布や帝国議会の召集・解散などが天皇大権に含まれました。

ただし、政治的責任は大臣が負うという輔弼（ほひつ）原則（第55条）が置かれ、天皇の国事行為には国務大臣の副署が必要とされました。これは天皇の尊厳と不可侵性を保ちながら、実際の政治責任を内閣・大臣に負わせる仕組みです。なお、選択肢2の「象徴」は日本国憲法（1947年施行）以後の規定であり、明治憲法下では主権は天皇にありました。選択肢3・4のような「議会主権」や「政治権能なし」という理解も、明治憲法の規定とは一致しません。以上より、本問の正解は**「神聖不可侵とされ、国家元首として統治権を総覧するもの」**です。

正解：3

解説

明治憲法は、帝国議会を貴族院と衆議院の二院から成ると規定しました。貴族院は皇族や華族（公・侯・伯・子・男）を基盤に、勅選議員や多額納税者議員などを含む上院で、保守的・審議的機能を担いました。衆議院は男性制限選挙による公選議員で構成され、国民意思の反映を担いました。法律の制定には両院の議決と天皇の裁可が必要で、予算については衆議院先議の原則が採られます（不成立時は前年度予算を継続する仕組みがありました）。

なお、枢密院は憲法や重要条約を審議する天皇の諮問機関であって議会の一院ではありませんので、選択肢2・4は誤りです。単院制を採用したわけでもないため、選択肢1も不正解となります。二院制は、近代立憲体制における民意の反映と抑制・均衡を図る制度的工夫であったといえます。

【正解】3

解説

1889（明治22）年2月11日に大日本帝国憲法と同日に公布された「衆議院議員選挙法」は、いわゆる制限選挙を採用しました。選挙権は満25歳以上の男子のうち、地租・所得税・営業税などの直接国税を年額15円以上納める者に限られ、さらに原則としてその府県内に一定期間居住していることなどの要件も課されました。これにより有権者は全国人口の約1％強（およそ45万人）にとどまり、地主層や都市の富裕納税者が政治参加の中心となりました。 この高い納税要件は、急速な普通選挙の導入を避け、秩序ある議会政治を段階的に育てるという当時の政府の意図を反映しています。その後、選挙法は1900年に10円、1919年に3円へと納税要件が引き下げられ、最終的に1925年の普通選挙法で納税要件が撤廃され、満25歳以上の男子に選挙権が拡大しました（女性参政権は1945年の改正で実現します）。以上のように、当初の選挙制度は強い財産資格を伴う限定的なものであったといえます。

【正解】3

解説

明治憲法（大日本帝国憲法）は「臣民ノ権利義務」の章で、言論・集会・結社・信教・居住・移転といった自由を規定しました。もっとも、これらは「法律ノ範囲内ニ於テ」という留保が必ず付され、国家秩序や公法に反しない限りでの自由とされました。そのため新聞紙条例・出版法・集会条例、のちには治安警察法（1900年）などによって、集会や結社、報道・言論は厳しく統制されやすかったのです。信教の自由も、国家神道を国体の根幹とみなす体制の下で、実務上は制限が加えられました。居住・移転の自由についても、警察権や内務当局の裁量、治安立法によって制約を受ける場面がありました。したがって、条文上は近代的自由が列挙されましたが、戦後憲法のように「公共の福祉」による限定を前提とした包括的基本権保障とは性格が異なり、自由の実効性は当時の立法・行政運用に大きく依存していた点が重要です。

【正解】4

解説

1889（明治22）年の憲法発布と翌1890年の帝国議会開設は、明治維新からわずか20余年で封建身分制から立憲議会制へ転ずる急転換でした。このスピードは当時の欧米の外交官・新聞記者・知識人の多くに、「改革が急進的すぎる」という印象を与えました。彼らは、地方自治・結社・政党などの市民社会の基盤が十分に育っていない段階での急速な制度移植が、政治的混乱や政党対立の激化、治安立法の強化を招きかねないと懸念したのです。

実際、議会開設後は政府と民党の対立と度重なる衆議院解散、予算紛争、言論・集会の取り締まりが生じ、こうした事態は外国紙面で「拙速の副作用」として報じられることがありました。他方で、日本の近代化の成果や行政能力を高く評価する向きも存在し、一様に悲観していたわけではありません。しかし全体としては、制度の導入スピードが社会的受け皿の形成を上回っているという見方が有力で、ゆえに「急進的すぎる」という評価が広まりました。以上より、当時の国際的観測は、日本の立憲政治の成功可能性を認めつつも、そのテンポの速さに強い注意を促すものであったと言えます。

【正解】4

解説

「明治立憲制」とは、1889（明治22）年に公布された大日本帝国憲法を中心に構築された、日本の近代国家体制の呼称です。憲法は天皇が制定・発布する欽定憲法であり、条文上は**天皇主権（統治権総攬）**を明確にしつつ、帝国議会・内閣・司法といった近代的諸機関を整備しました。1890年の帝国議会開設以降、この枠組みのもとで議会政治が展開されます。

制度面の特徴として、①二院制の帝国議会（貴族院・衆議院）、②内閣の「輔弼」原理（国務大臣が天皇を補佐し責任を負うが、議会に対する明文の連帯責任は弱い）、③枢密院（憲法や重要条約の審査を担う天皇の最高諮問機関）、④天皇大権（統帥・宣戦講和・条約・戒厳・緊急勅令など）、⑤**臣民の権利（言論・集会・結社・信教・居住・移転など）**は「法律の範囲内」で保障、が挙げられます。これにより、近代的装置を備えつつも、国家権力の中枢に天皇大権が強く位置づけられる構造となりました。

運用上は、元老の首相奏薦や官僚機構・軍部・藩閥勢力の影響が大きく、しばしば超然内閣的運営がみられました。一方で、選挙制度の拡充や政党勢力の伸長により、議会主義が発展する局面（大正デモクラシー）も生まれます。最終的に、この体制は1947年の日本国憲法施行により終焉し、国民主権・権利保障の強化・議院内閣制の明確化へと本格的に転換していきました。以上のように、「明治立憲制」は日本の近代政治秩序の骨格を与えた歴史的体制を指す言葉です。

【正解】2

解説

大日本帝国憲法下では、条文上、天皇が統治権を総攬し（天皇大権）、「召集・解散」「条約」「宣戦・講和」「戒厳」「軍の統帥」など広い権限を持つと規定されました。しかし同時に第55条で「国務各大臣は天皇を輔弼し、その責に任ず」とし、すべての詔勅には国務大臣の副署が必要と定められました。これにより、政治的責任は内閣（国務大臣）が負い、天皇は超然的・審判的立場を保つという運用が確立します。

実際の政治では、首相任命も元老の奏薦や内閣の具申に基づき、衆議院解散や条約締結・勅令発布も大臣の助言と副署を経て行われるのが通例でした。また立法や予算は帝国議会の協賛（同意・可決）を要したため、政策形成は議会の意思を無視して進めにくく、結果として天皇大権の発動も内閣・議会の枠組みの中で行われました。

もちろん、宮中での意向が政治に影響する場面や、軍事分野で統帥権が強調される局面も皆無ではありませんでしたが、天皇が自らの積極的意思のみで大権を直接発動することは例外的で、原則として大臣の輔弼と責任、および議会の協賛を通じた運用が慣行でした。以上より、明治天皇の大権行使は、立憲君主制の実務原理に沿って助言・副署に依拠する形で行われたといえます。

【正解】2

解説

1890（明治23）年の第1回総選挙の有権者は、当時の総人口約4000万人に対して約1％（およそ45万人前後）にとどまりました。これは、1889年公布の衆議院議員選挙法が満25歳以上の男子で、年額15円以上の直接国税（地租・所得税・営業税など）を納める者に限って選挙権を与えるという厳しい財産資格を設けていたためです。女性や無産層は選挙権から排除され、地主層や都市の富裕納税者が有権者の中心となりました。

その後、選挙権の範囲は段階的に拡大し、1900年に納税要件が10円、1919年に3円へと引き下げられ、最終的に1925年の普通選挙法で納税要件が撤廃されて満25歳以上の男子に広く選挙権が与えられました（女性参政権は1945年の改正で実現します）。第1回総選挙の「約1％」という数字は、明治立憲制の出発点が強い制限選挙であったことを端的に示す指標であると言えます。