条約改正のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3

【解説】

明治政府が唱えた「条約改正」とは、幕末の1858年に締結された日米修好通商条約など、欧米諸国との一連の不平等条約を近代国家として対等な内容へ改める取り組みを指します。不平等条約の核心は、（1）在日外国人が日本の裁判ではなく各国領事の裁判を受ける「領事裁判権（治外法権）」、（2）日本が独自に関税率を決められない「関税自主権の欠如」という二点でした。これらは主権の重要部分を制限するもので、日本の近代化と国際的な対等性の確立にとって大きな障害となっていました。

明治政府は法制度・司法制度の整備や近代的インフラの整備を進めつつ、諸外国と粘り強く交渉しました。1880年代の条約改正交渉は混合裁判所案などをめぐって難航しましたが、最終的には陸奥宗光の下で1894年にイギリスと通商航海条約を結び、1899年に領事裁判権が撤廃されました。関税自主権についても各国との新条約締結を重ね、1911年に小村寿太郎の交渉で完全回復が実現します。こうして日本は、形式的にも内容的にも列強と対等な条約関係へと移行し、国際社会での主権国家としての地位を確立していったのです。

【正解】4

【解説】

正解は井上馨です。井上は1879年に外務卿に就任し、内閣制度発足（1885年）後も外務大臣として続投して、1887年に辞任するまで条約改正交渉を主導しました。彼の課題は、幕末以来の不平等条約の核心であった領事裁判権（治外法権）の撤廃と関税自主権の回復でした。井上は西欧諸国に「日本は文明国として法治と司法の近代化を実現している」ことを示す必要があると考え、法典編纂や司法制度整備（ボアソナードらお雇い外国人の起用、裁判制度の近代化）を後押ししました。

また、社交外交を通じて対外的な信頼を高める「欧化政策」を展開し、その象徴が1883年竣工の鹿鳴館でした。これは国際社交の場を整え、西欧列強に日本の「文明化」をアピールする狙いがありました。一方で、井上が提示した改正草案（外国人判事の任用や内地雑居の容認を含むと受け取られた点など）は、国内世論や法律家から「主権の侵害につながる」と強い反発を招き、最終的には改正がまとまらず、1887年に井上は辞任します。彼の交渉は不調に終わりましたが、その過程で進んだ法制度・司法制度の整備は、のちに陸奥宗光・小村寿太郎らが条約改正を実現するための重要な基盤となりました。

鹿鳴館での舞踏会のようすを描いた錦絵「貴顕舞踏の略図」（楊洲周延画） (Wikipedia)

【正解】2

【解説】

正解は「鹿鳴館での西洋式舞踏会」です。井上馨は、幕末以来の不平等条約を改正するためには、日本が法治・司法制度の整備だけでなく、生活様式や社交文化の面でも「文明国」と認められる必要があると考えました。そこで1883年（明治16年）、英国人建築家ジョサイア・コンドルの設計による社交場・鹿鳴館を完成させ、外国公使や上流階層を招いた舞踏会・晩餐会・園遊会などの西洋式社交を頻繁に開催しました。これは社交を通じて列強に日本の近代化を印象づけ、条約改正交渉を円滑に進める狙いがあり、「鹿鳴館外交」「欧化政策」の象徴とされます。

しかし、外国人判事の任用や内地雑居容認と受け取られた改正案への反発、贅沢・虚飾との批判、急速な欧化への違和感などが国内世論で高まり、井上は1887年に辞任しました。鹿鳴館は条約改正そのものの即時実現にはつながりませんでしたが、近代的な法典・司法制度の整備や国際儀礼の確立を推し進め、後の陸奥宗光・小村寿太郎らによる条約改正達成の基盤づくりに一定の役割を果たしたと評価されます。

【正解】2

解説

外相井上馨は、不平等条約改正の早期実現をめざして、領事裁判権撤廃の代替として「混合裁判所における外国人判事の任用」などを含む構想を提示しました。しかし、これは司法主権の毀損に当たるとして政府部内や法曹界、さらに世論からも強い反発を招きました。加えて、鹿鳴館外交に象徴される急進的な欧化路線への反感も高まり、井上案は政権の求心力を弱める要因となりました。このため井上は列強に対し交渉の無期延期を正式に通告し、責任をとって外相を辞職しました。結果として、条約改正は白紙に戻り、以後は主権の完全回復を掲げるより慎重な路線へと舵が切られていきます。

【正解】2

【解説】

正解は「ノルマントン号事件」です。1886年10月24日、英汽船ノルマントン号が紀伊半島・潮岬沖で沈没しました。救命ボートは英人乗員で占められ、日本人乗客は全員が犠牲となりました。この処置に対し、日本国内では船長らの責任を問う声が沸騰します。しかし当時の不平等条約に基づく領事裁判権（治外法権）により、日本の裁判所ではなく神戸の英国領事裁判所で海事審判が行われ、船長らに「過失なし」の裁定が下りました。

この結果は、日本が自国領内の事件を自国の法と裁判で裁けないという主権上の重大な不平等を白日の下にさらし、新聞・演説会・請願運動などを通じて世論の憤りと条約改正要求を一段と強めました。以後、法典整備や司法制度の近代化を背景に、明治政府は列強との交渉を本格化し、1894年の英日通商航海条約の締結（陸奥宗光の下、駐英公使・青木周蔵が署名）を経て、1899年に領事裁判権の撤廃が実現します。ノルマントン号事件は、この「不平等条約改正」への世論を決定的に促した象徴的事件であったと評価されています。

【正解】3

【解説】

正解は「玄洋社の活動家による爆弾テロにあって重傷を負い、内閣は総辞職した」です。大隈重信は1888（明治21）年に外相となり、同年にメキシコとの平等条約を実現して条約改正の突破口を開こうとしました。その一方で、彼の改正方針（外国人判事の任用や内地雑居容認と受け取られた点など）は主権の侵害につながるとの批判を招き、国内世論が激しく対立しました。そうした緊張が高まる中、1889（明治22）年10月18日に玄洋社系の来島恒喜が爆弾を投げつけ、大隈は重傷（のちに右脚切断）を負います。この衝撃的事件を受けて黒田清隆内閣は総辞職に追い込まれ、大隈案による条約改正は挫折しました。

なお、選択肢1の大津事件は1891（明治24）年の出来事で、本件の交渉失敗とは時期も要因も異なります。大隈期の挫折は、テロ事件とそれに至る国内反発の激化が直接の引き金であった点に特徴があります。以上の経緯から、当時の条約改正は一旦頓挫しましたが、その後の制度整備と外交努力を経て、1894年の陸奥宗光による英日通商航海条約などにつながっていきます。

【正解】3

【解説】

正解は「大津事件」です。1891（明治24）年5月、来日中のロシア皇太子ニコライ（のちのニコライ二世）が滋賀県大津で巡査・津田三蔵に襲撃されるという前代未聞の事件が起こりました。この一件は対露関係の重大な外交問題となり、日本政府は謝罪と対応に追われました。ちょうどその頃、青木周蔵外相はイギリスとの条約改正交渉で領事裁判権撤廃などに道筋をつけつつありましたが、事件によって国内外の世論が緊張し、列強側は日本の治安・法秩序や外交の安定性に懸念を強めました。そのため、英側の最終合意は見送られ、交渉は大きく中断・後退する結果となりました。

なお、大津事件は法制史上でも重要で、児島惟謙判事が政府の強圧に屈せず既存法に基づいて量刑を判断したことは「司法権の独立」を示す出来事として知られます。条約改正自体はこの挫折を経ていったん停滞しましたが、法制度の整備と信頼回復を積み重ね、最終的に1894年に陸奥宗光外相の下で日英通商航海条約が締結され、1899年に領事裁判権が撤廃される流れへとつながっていきます。

【正解】3

【解説】

正解は「日英通商航海条約」です。1894年7月、陸奥宗光の主導でイギリスとの新条約がロンドンで締結され、これにより日本は最大の懸案であった治外法権（領事裁判権）の撤廃に道を開きました。発効は1899（明治32）年で、以後は日本国内の外国人も日本の法律と裁判所の管轄に服することになり、対外的主権の実質的回復が進みます。

この条約は、従来の「条約港に限定した居留・営業」から「全国での居住・営業（内地雑居）」へと枠組みを改めつつ、日本法の適用を前提にした点に大きな意義があります。一方で、関税自主権の完全回復はなお先送りで、関税率は一定期間「協定関税」によって拘束されました。関税自主権は各国との後続改正を重ね、1911（明治44）年に小村寿太郎の交渉で全面回復します。

イギリスとの合意は、最有効通商国待遇の連鎖を通して他国との改正を促す「突破口」となりました。井上馨・大隈重信の時代の挫折や大津事件による停滞を乗り越え、制度整備（法典編纂・司法近代化）と外交の両輪で成果を結実させた点が、陸奥外交の評価されるゆえんです。

【正解】3

【解説】

正解は「領事裁判制度の撤廃、最恵国条款（待遇）の相互化など」です。1894（明治27）年に締結された日英通商航海条約は、1899（明治32）年に発効し、これにより最大の不平等であった治外法権（領事裁判権）が撤廃されました。以後、日本国内の外国人は日本の法律と裁判所の管轄に服することになり、主権回復が大きく前進します。また、通商面では最恵国待遇を相互に付与する原則が明文化され、英以外の列強との条約改正を連鎖的に促す基盤となりました。

一方で、関税自主権はなお全面回復せず、一定期間は協定関税により税率が拘束されました。これは後年の再改正によって順次改善され、最終的に1911（明治44）年に小村寿太郎の交渉で完全回復します。さらに、本条約は内地雑居（全国での居住・営業）を日本法の適用を前提として認め、日本の近代的法制度の整備と国際通商の拡大を両立させる枠組みを整えました。以上の点から、本条約は不平等条約体制を実質的に打破する決定的な一歩であったと評価されます。

【正解】4

解説（ですます調）

不平等条約の改正は段階的に進み、1894年の新条約により治外法権は1899年に撤廃されましたが、なお日本は自国の関税率を自由に決められないという制約が続いていました。小村寿太郎は各国と粘り強く再交渉を進め、1911年（明治44年）に新たな通商・関税条約を締結し、日本が独自に関税率を設定・改定できる権限を取り戻しました。これにより、輸入品に対して保護・財政両面の観点から弾力的に税率を運用できるようになり、国内の紡績・製鉄・造船などの育成や財政基盤の強化が可能となりました。関税自主権の完全回復は、治外法権撤廃と並んで不平等条約体制の実質的な終結を意味し、近代国家としての主権回復を仕上げる画期となった点が重要です。