文明開化のことがよくわかる！クイズ10問

正解：3

解説

「大教宣布の詔」は、明治3年（1870年）に出された天皇の詔で、王政復古の理念に基づき、国家の基盤を神道に求めて、神道を国教化し、国民道徳を統一しようとする国民教化運動の号令でした。これにより政府は「大教宣布運動」を開始し、のちに教部省（1872年）を設け、神職や僧侶を「教導職」として動員して「敬神愛国・天理人道を明らかにする・皇上の御旨を奉戴する」という趣旨の教化を全国で展開します。目的は、祭政一致的な枠組みの下で、天皇中心の国家理念を民衆に浸透させることにありました。選択肢の「教育勅語」は1890年に学校教育を通じた道徳規範を示したもので時代も性格も異なります。「五箇条の御誓文」は1868年の新政府の基本方針で、教化の詔ではありません。「神仏分離令」は神仏習合を改める宗教政策で、教化運動の号令そのものではありません。以上の点から、本問の正解は「大教宣布の詔」となります。

正解：2

解説

「神仏分離令」は、明治維新直後の明治元年（1868年）に政府が相次いで出した太政官布告・神祇官達などの総称で、神社と寺院を明確に分け、神仏習合の慣行を停止させるための法令群を指します。具体的には、神社での仏像・仏具の安置や、神職が仏教的作法を行うことを禁じ、逆に寺院での神祇的要素の排除も求めました。背景には、王政復古の理念のもとで神道を国家秩序の基盤に位置づける政策があり、社寺行政の統合・再編を進める狙いがありました。

この法令の施行により、各地で仏像・仏具の破却や寺院の廃絶が進む「廃仏毀釈」の動きが生じましたが、これは法令名ではなく、社会運動的な現象を表す語である点にご注意ください。選択肢の「大教宣布の詔」は1870年に国民教化の方針を示した詔であって、神仏分離そのものを命じたものではありません。「五榜の掲示」は1868年に出された治安維持・禁令の掲示で、宗教政策を直接に規定するものではありません。以上より、本問の正解は「神仏分離令」です。

正解：4

解説

「学制」は明治5年（1872年）に公布された、日本で最初の近代的な全国学校制度の基本法規です。目的は「国民皆学」を掲げ、富国強兵・殖産興業を支える近代市民を育成するために、就学の普及と学校設置を全国的に進めることにありました。制度面では、全国を学区に分け、初等教育の小学校を基礎に、中学校・大学へと連なる三段構成を想定しました。また、教員養成を担う師範学校の整備や、女子教育の奨励、寺子屋中心の伝統的教育から近代学校への転換を打ち出した点が重要です。就学や学費負担をめぐって一部で抵抗が生じましたが、各地で学校建設が進み、識字率の向上と知識の近代化に大きな役割を果たしました。

選択肢の「学校令」は1886年に森有礼の主導で学校体系を再編した法令群で、「学制」を受けて制度を整理したものです。「小学校令」も1886年の法令で、初等教育の制度細目を定めたものです。「教育勅語」は1890年に発布された道徳規範の勅語で、教育の精神的指針ではありますが、学校制度そのものを定めた法令ではありません。以上より、本問の正解は「学制」です。

正解：1

解説

1877年に創設された「東京大学」は、日本で最初の西洋型の近代的総合大学です。前身の東京開成学校（旧開成所系）と東京医学校を統合し、法学部・理学部・文学部・医学部の四学部をもって出発しました。近代国家建設に必要な法・医・理・文の高等専門教育と学術研究を担い、官僚・法曹・医師・学者など多くの人材を輩出していきます。

なお、1886年の帝国大学令により名称は一時「帝国大学」となり、1897年に京都帝国大学が発足すると区別のため「東京帝国大学」と称されました。戦後に再び「東京大学」となります。選択肢の「京都大学」は1897年創設で年代が異なります。「帝国大学」は1886年の制度上の名称で、1877年創設時の正式名称ではありません。「東京開成学校」は東京大学の前身の一つであり、総合大学そのものではありません。以上より、正解は「東京大学」です。

正解：3

解説

明治政府は近代化と国際標準への合流を目的に、明治6年（1873年）1月1日から「太陽暦（グレゴリオ暦＝西暦）」を採用しました。これにより、従来の太陰太陽暦（天保暦）による月の満ち欠け中心の暦法から、太陽の運行に基づく暦法へと切り替わりました。太陽暦では1年を365日（閏年は366日）とし、閏年の規則（原則4年ごと、ただし100で割り切れる年は平年、400で割り切れる年は閏年）を採用します。併せて曜日制の全国的な運用が進み、行政・外交・通商・鉄道や郵便などの時間管理の近代化が加速しました。

また、改暦は太政官布告によって告示され、実務上は「旧暦明治5年12月3日を新暦明治6年1月1日とする」形で一気に切り替えられました。これにより俸給や会計の整理、対外実務の統一が容易になったとされます。選択肢の「太陰太陽暦（旧暦）」と「天保暦」は改暦前に用いられた暦法です。「ユリウス暦」は古い太陽暦で、近代各国が採用したグレゴリオ暦とは異なります。以上より、正解は「太陽暦」です。

正解：4

解説

福沢諭吉は、明治初期の代表的な啓蒙思想家であり、慶應義塾を拠点に近代的な知識と市民的徳目を社会に広めました。『学問のすゝめ』（1872年初編刊）は平易な文体で学問の意義を説き、「一身独立して一国独立す」という信念のもと、身分意識や因循を離れて、実学（実際に役立つ知識）を身につけることの重要性を強調しました。冒頭の有名な一節は、氏が意図した「人は生まれながらに能力が等しいのではなく、学ぶ機会の不平等が差を生む」という趣旨を広く浸透させ、若い世代の自己啓発に火をつけました。

『文明論之概略』（1875年）は、社会の発展を「野蛮・半開・文明」の段階として捉え、文明の基準を物質の豊かさではなく、制度・風俗・思想の成熟に置きました。ここでも独立自尊と実学重視が柱で、欧米の制度を機械的に模倣するのではなく、日本の実情に合わせて主体的に取り入れる姿勢を示しています。これらの主張は、近代国家建設期の人材育成と市民意識の形成に大きく寄与しました。

なお、選択肢の西周は「哲学」などの訳語を整えた啓蒙家、中村正直は『西国立志編』（スマイルズ『自助論』）や『自由之理』（J.S.ミル）を訳して普及させた人物、中江兆民はのちに『民約訳解』（ルソー）で自由民権思想を広めた思想家です。どれも近代思想の導入に貢献しましたが、『学問のすゝめ』『文明論之概略』の著者は福沢諭吉です。

正解：2

解説

津田真道（1829–1903）は、幕末に西周らとともにオランダへ留学し、近代法学・国際法を体系的に学んだ人物です。帰国後は新政府で法制整備や法学教育の基盤づくりに携わる一方、啓蒙団体・明六社の活動や論説を通じて、出版の自由、国会の早期開設、娼妓制度の廃止（廃娼）など、市民的自由と近代国家にふさわしい制度改革を主張しました。とりわけ、国際法・近代法の知見に基づいて、立法・司法・行財政の近代化を推進した点が特徴です。

選択肢の森有礼は近代教育制度の構想で知られ、のちに初代文部卿となります。西周は哲学・社会科学の用語整備で著名ですが、本問の「廃娼・出版自由・早期国会開設」を広く掲げた中心人物は津田真道です。加藤弘之は社会進化論を取り入れた国家観で知られ、のちに国権主義的立場へ傾斜します。以上より、正解は「津田真道」です。

正解：3

解説

中江兆民は、明治初年に岩倉使節団の欧州視察に合わせてフランスへ渡り、フランス語と政治・法律思想を学びました。帰国後は、ジャン＝ジャック・ルソーの『社会契約論』を平易な日本語に訳述した『民約訳解』（1882–83年）を公刊し、「人民主権」「一般意志」「自然権」といった近代政治思想の核心を日本社会に紹介しました。これにより、自由民権運動の理論的基盤が強化され、近代国家形成期の政治意識と市民観の成熟に大きな影響を与えます。

中江はのちに『三酔人経綸問答』などでも立憲政体・外交・経済運営の問題を論じ、複数の立場を対話形式で提示して読者に思考を促しました。選択肢の中村正直はスマイルズ『自助論』やミル『自由論』の翻訳で知られ、福沢諭吉は『学問のすゝめ』等で実学と独立自尊を説き、加藤弘之は進化論的国家観を展開しました。ルソーの思想を『民約訳解』として広めた人物は中江兆民です。

正解：3

解説

明六社は、明治6年（1873年）に森有礼の提唱で構想が進み、翌明治7年（1874年）に発足した近代日本最初期の啓蒙的学会組織です。西周、加藤弘之、中村正直、西村茂樹、津田真道、福地源一郎、箕作麟祥など、官学・言論界の中心人物が参加し、欧米の政治・法律・教育・宗教・社会風俗の知見を紹介しながら、日本社会の近代化に必要な制度や価値観を議論・発信しました。機関誌『明六雑誌』を刊行して言論活動を展開し、出版の自由、教育の普及、女性教育の重要性、宗教の位置づけ、議会制度の必要性などを広く論じた点に特徴があります。

ただし、1875年の言論取締強化（讒謗律・新聞紙条例など）の影響や、参加者の官界・学界での多忙化により活動は次第に縮小しました。それでも、明六社の議論は「文明開化」の理念を社会に浸透させ、近代日本の公共圏の形成に大きく寄与したと評価されています。選択肢の「政教社」は明治20年代に雑誌『日本人』を刊行した団体、「自由党」は1881年結成の政党、「東京学士会院」は1879年設立の学術機関で、いずれも本問の条件には当てはまりません。したがって正解は「明六社」です。

正解：2

解説

「横浜毎日新聞」は、明治3年（1870年）に横浜で創刊された、日本語による最初の日刊新聞として広く認められています。開港地・横浜の国際情報や商況、政治・社会の動きを毎日継続的に報じ、近代的なニュース媒体としての役割を果たしました。とくに外国人居留地の情報網や電信の整備が進む中で、海外ニュースの紹介や実用的な商業情報の提供に力を入れ、都市の読者層に支持されました。

選択肢の「東京日日新聞」は明治5年（1872年）創刊で、のちの毎日新聞の直接の前身に当たります。「郵便報知新聞」も同じく1872年に創刊され、郵便制度と結びついた速報性で人気を高めました。「読売新聞」は明治7年（1874年）創刊で、庶民向けの読み物や娯楽欄で読者を拡大しました。これらはいずれも近代新聞の発展に大きく寄与しましたが、日本最初の“日刊”として位置づけられるのは「横浜毎日新聞」です。