政党内閣の崩壊のことがよくわかる！クイズ5問

【正解】2. 三月事件
解説
三月事件は、1931（昭和6）年に陸軍内部の秘密結社「桜会」の将校（橋本欣五郎・磯部浅一ら）と、民間の国家主義者（大川周明など）が連携し、政党内閣を倒して「昭和維新」を実現しようとしたクーデター計画のことを指します。計画では、東京中枢の要所を制圧し、軍主導の強力な内閣――とりわけ宇垣一成を首班とする非常時内閣の樹立――を目指したとされますが、事前に動きが察知され、首謀者の一部拘束や当局の警戒強化により未遂のまま頓挫しました。
この挫折にもかかわらず、軍部急進派の政治的影響力は衰えず、同年の十月事件や翌年の五・一五事件へと連続していく土壌をつくりました。対比として、のちの**二・二六事件（1936年）**は実力行使に踏み切った蜂起であり、三月事件は「計画段階で阻止された未遂事件」である点が重要です。以上の経緯から、1930年代初頭の日本政治において、三月事件は軍部専横への流れを早めた前哨戦として位置づけられます。

【正解】2. 血盟団事件
解説
血盟団事件は、1932（昭和7）年に起きた一連の暗殺事件で、超国家主義団体「血盟団」（指導者：井上日召）の信奉者が「一人一殺」を合言葉に要人を襲撃したものです。まず2月9日に元大蔵大臣の井上準之助が東京で射殺され、続いて3月5日に財界の重鎮である団琢磨（三井合名会社理事長）が暗殺されました。標的は、政党内閣を支える政治・財界の中枢とみなされた人物で、特に金解禁・緊縮政策や財閥支配への反発が動機として語られます。
この事件は、同年5月の**五・一五事件（犬養毅首相暗殺）**へとつながる暴力的な政治テロの連鎖を象徴し、政党政治の権威を大きく傷つけました。対照的に、二・二六事件（1936年）は陸軍青年将校による大規模な蜂起であり、血盟団事件は少人数の要人暗殺に重心がある点が異なります。結果として、世論には「既成政治の腐敗を粛清せよ」という空気が強まり、軍部・革新官僚の発言力が増大していきます。血盟団事件は、1930年代日本の政党政治から軍部主導体制へ傾く転機を早めた出来事であったと評価できます。

【正解】1. 五・一五事件
解説
五・一五事件は、1932年5月15日に海軍の青年将校や士官候補生、陸軍の一部将校、民間右翼活動家らが連携して首相官邸を急襲し、犬養毅首相を射殺したクーデター的テロ事件を指します。犯行グループは「政党政治の打倒」や「昭和維新」を掲げ、満州事変以後の混乱と経済不況の中で、軍部主導の国家体制への転換を狙いました。
事件は政党内閣への信頼を致命的に損ない、直後に斎藤実内閣（挙国一致内閣）が成立するなど、政党本位の議会政治から軍部・官僚が影響力を強める体制へと大きく流れを変えました。また、犯人たちに対する減刑嘆願運動が全国的に広がり、比較的軽い処罰にとどまったことも、後の**二・二六事件（1936年）の温床となります。選択肢の「血盟団事件」は同年2～3月の要人暗殺（井上準之助・団琢磨）であり、「十月事件」は1931年の未遂クーデター計画、「二・二六事件」**は1936年の陸軍青年将校の蜂起で、いずれも時期・主体・性格が異なります。

【正解】4. 海軍大将の斎藤実
解説
五・一五事件で犬養毅首相が暗殺されると、唯一の元老であった西園寺公望は後継首班の選定にあたりましたが、陸軍は「政党内閣の継続」に強く反対しました。そのため西園寺は政党から距離のある海軍大将の斎藤実を推薦し、いわゆる挙国一致内閣が成立します。斎藤内閣は、満州事変後の国内外の混乱収拾を使命としつつ、国内では政党政治の影響力を抑え、官僚・軍部主導の色彩を強めました。
外交面では、1932年には日満議定書で満洲国を承認し、1933年には国際連盟脱退の通告を行うなど、国際協調から離れる流れが決定的になります。こうした経緯から、斎藤実の登場は、政党本位の議会政治から軍部・官僚が主導権を握る体制への転換点として位置づけられます。選択肢の若槻礼次郎は政友会と対立した民政党系の首相経験者、岡田啓介は斎藤内閣の後に首相となる海軍大将、近衛文麿はのちに新体制運動を主導した公爵で、いずれも本問の時点では該当しません。

【正解】3. 軍部や、軍部と結びついた国家主義革新勢力の発言力
解説
五・一五事件後に成立した斎藤実内閣（1932–1934年）と、それに続く岡田啓介内閣（1934–1936年）は、政党対立を超えて人材を集める「挙国一致」を掲げましたが、実態としては政党本位の議会政治の影響力が後退し、軍部とそれに接続する国家主義的・革新官僚的勢力の発言力が増大しました。とりわけ、陸海軍の省・参謀機構は「治安維持」「国防強化」を名目に政策決定へ強く関与し、対外的には満洲国承認（日満議定書）や国際連盟脱退など、国際協調から離れる路線が選好されました。
国内では、政党の与野党間調整よりも、官僚機構と軍部の連携による統制志向の政策が前面に出やすくなり、言論・思想統制や産業統制の議論が進みます。岡田内閣期の末には**二・二六事件（1936年）**が発生し、軍部の政治介入が一層深刻化しました。以上のように、「挙国一致」は名目上の非政党化であり、その実、軍部および軍部系国家主義勢力の発言力拡大をもたらしたことが当時の大きな特徴であるといえます。