明治の宗教のことがよくわかる！クイズ5問

【正解】3
解説
教派神道とは、明治期に政府の公認を受けて布教・儀礼を行った民間神道の宗教教団群を指します。天理教・金光教・黒住教・出雲大社教などが代表例で、近代国家の宗教行政のもとで「宗教」として許認可を受け、教義の布教・講社活動・祭式の執行を行いました。これに対し、神社神道（のちに国家神道と呼ばれる性格を帯びます）は国家的儀礼・祭祀を担う「非宗教」と位置づけられ、内務省の管轄で国体思想や道徳教育と密接に結びついて運営されました。
この二本立てにより、国家は神社を国民統合のシンボルとして管理する一方、民間の信仰運動は教派神道として制度内に収められました。選択肢の「国家神道」「神社神道」は国家・神社側の枠組みであり、「皇道派神道」は近代の特定思想潮流の呼称で、明治政府が公認した民間教団の総称ではありません。従って正解は教派神道です。

【正解】1
解説
島地黙雷（しまじ もくらい、1838–1911）は、近代日本を代表する浄土真宗の僧侶・宗教改革者であり、明治初年の神仏分離・廃仏毀釈の風潮や「神道国教化」を志向する政策に対して、一貫して信教の自由と宗教の自立を主張しました。黙雷は海外視察や近代的学知の導入を通じて、宗教は国家の教化装置ではなく、人々の良心・倫理を涵養する独立の領域であるべきだと説き、「宗教は宗教、政治は政治」という立場から政教関係の適正化を訴えました。そのうえで、仏教界内部の教育改革・教理整理・布教近代化（学校・出版・社会事業の整備）を推進し、仏教の公共的役割を再建しようと努めました。これらの活動は、のちの信教の自由の確立や近代仏教の再生に大きな影響を与えます。
誤答について補足します。②井上哲次郎は国家的道徳の強調や教育勅語擁護で知られる哲学者で、神道国教化への批判者ではありません。③井上円了は仏教哲学者として近代的理性に即した仏教再興を唱えましたが、黙雷のように政教問題で国教化に真っ向から反対した中心人物ではありません。④平田篤胤は国学者で、近世後期の神道復古・国学思想を推進した側の人物です。

【正解】3
解説
井上円了（いのうえ えんりょう）は、東京・小石川に哲学館（のちの東洋大学）を創設し、近代的学術の観点から仏教を再評価した仏教哲学者です。彼は西洋思想の無批判な模倣を戒め、日本固有の精神的伝統を基礎に近代国家を築くという国粋主義的潮流に呼応しつつ、仏教の理性性・倫理性を強調して「国民道徳」の担い手としての仏教の自覚と社会貢献を訴えました。迷信・妖怪信仰を学問的に批判して信仰を浄化する一方、教育勅語の徳目と調和しうる近代仏教の役割を説くなど、宗教改革と国民教化を結びつけた点が大きな特色です。
誤答について補足します。清沢満之は真宗の近代仏教思想家ですが、国粋主義と直結した論陣ではありません。井上哲次郎は哲学者で教育勅語擁護の国民道徳を論じましたが、仏教哲学者としての位置づけは円了とは異なります。内村鑑三はキリスト教無教会主義の指導者で、仏教の覚醒を促した人物ではありません。

【正解】2
解説
明治政府は1873年（明治6年）に「切支丹禁止」の高札を撤去し、キリスト教禁制を事実上解きました。これ以降、最も活発に布教・教育・慈善活動を展開したのがプロテスタント諸派（長老派・会衆派・メソジスト・聖公会など）です。彼らは宣教とともに学校・病院・出版を拠点化し、近代教育や英学の需要に応えて多くの人材を惹きつけました。たとえば、新島襄による同志社英学校（1875年）や、メソジスト系の青山学院（1874年創設の学校を母体）、聖公会系の立教（1874年創立の聖書と英学の学校を母体）などが代表例です。これらの拠点は布教を直接の目的としつつも、英語教育・近代学問・社会事業を通じて広く都市住民や青年層に影響を与えました。
一方、①カトリックも浦上信徒の救済・再建や学校設立で重要な役割を果たしましたが、明治初期の都市部での学校・出版・青年運動（YMCAなど）を軸にした広がりではプロテスタントの活動が目立ちました。③正教会（ロシア正教）は主に北海道や北日本で宣教し成果を上げましたが、全国的な広がりという点で規模は限定的でした。④神道はそもそもキリスト教の教派ではありません。以上より、本問の正解は「プロテスタント」です。

【正解】2
解説
本問は「キリスト教思想家・教育者として正しくない人物」を問うものです。徳富蘇峰（2）は近代日本を代表する言論人で、『国民之友』『国民新聞』を創刊し、当初は民権・欧化論、のちに国家主義へ傾斜したことで知られます。キリスト教から影響を受けた面はありますが、彼自身はキリスト教神学を講じた宗教思想家でも、教会や学校で信仰教育を主導した宗教教育者でもありません。したがって本問の正解（＝不適当な選択肢）は徳富蘇峰です。
一方、他の三名は明確にキリスト教の思想・教育に関わりました。新島襄（3）は1875年に同志社英学校を創設し、日本のプロテスタント高等教育の基盤を築きました。内村鑑三（1）は無教会主義を提唱し、良心にもとづく信仰と聖書研究を重視して多くの門弟を育てました。植村正久（4）はプロテスタントの指導的神学者・牧師として、説教・著述・雑誌編集や神学教育を通じ近代日本のキリスト教神学の発展に大きく寄与しました。以上の理由から、正しくない人物は徳富蘇峰となります。