日露戦争のことがよくわかる！クイズ10問

正解：3. 閔妃殺害事件

解説

閔妃殺害事件は、朝鮮王朝の実権を握っていた閔妃（明成皇后）を日本公使三浦梧楼らの関与のもとで日本人浪士や朝鮮人親日派が1895年10月8日に景福宮で殺害した事件を指します。日清戦争後、下関条約（1895年4月）で日本が優位に立ちましたが、直後の三国干渉によって遼東半島の還付を余儀なくされ、日本の威信は大きく損なわれました。この状況を背景に朝鮮では親露派が勢いを増し、閔妃はロシアに接近して日本の影響力を排除しようとしました。これに対して日本側は巻き返しを図り、宮中クーデターを支援・主導する形で閔妃排除に動いたのが本事件です。事件後、いったんは親日的な内閣が樹立され改革（甲午改革）の継続が試みられますが、国内外の強い反発を招き、翌1896年には高宗がロシア公使館へ避難する「露館播遷」が起こり、日本の対朝鮮政策はかえって難局に陥りました。本事件は朝鮮社会に深い不信と反日感情を生み、東アジア国際関係にも長期的な影響を及ぼした重大事件であると評価されています。

正解：4. 義和団を中心とする「扶清滅洋」を叫ぶ排外運動

解説

日清戦争（1894〜95年）後、列強は清国内で租借地・勢力範囲を拡大し、鉄道敷設権や鉱山採掘権、宣教活動の自由などを獲得しました。こうした急速な進出は、華北の農村社会に経済的圧迫や治安不安をもたらし、キリスト教宣教師や中国人信徒との軋轢を激化させました。この状況のなかで、武術結社や民間宗教を母体とした義和団が台頭し、「清朝を支え外敵を滅ぼす」という意味のスローガン「扶清滅洋」を掲げて排外運動を展開しました。1899年から1900年にかけて山東・直隷（河北）で勢力を拡大し、ついには北京の各国公使館区域を包囲する事態に発展します。清朝の実権を握った西太后は一時これを支持し、1900年には対外宣戦に踏み切りましたが、日・露・独・英・仏・米・伊・墺の八カ国連合軍に鎮圧されました（いわゆる義和団事件／北清事変） 。敗北の結果、1901年の北京議定書で巨額賠償金支払いと外国軍の北京駐兵を認めさせられ、清朝の権威はさらに失墜しました。この経験は、清末新政や民族主義の高揚、のちの辛亥革命へとつながる重要な契機となりました。

正解：2. 1901年、清国は戦争に敗れて北京議定書に調印し、莫大な賠償金を払った

解説

義和団の乱は列強の勢力拡大と宣教活動への反発を背景に、1899～1900年に華北で拡大しました。1900年6月、清朝は西太后主導で義和団を支持し、各国に宣戦布告しましたが、日・露・独・英・仏・米・伊・墺の八カ国連合軍により天津・北京が相次いで占領され、清朝は大敗しました。宮廷は西安へ避難し、戦後処理として1901年9月7日に「北京議定書（辛丑条約）」を締結します。議定書では、①総額4億5千万両の巨額賠償（年利4％で分割支払い、実負担は約9億8千万両規模）を課され、②北京公使館区域の治外法権化と駐兵、③大沽砲台の撤去、④反洋運動の禁止と関係官僚の厳罰、⑤ドイツ・日本などへの謝罪使節派遣などが定められました。これにより清朝の主権は大きく制限され、国際的威信も大幅に低下します。その反省から清朝は科挙廃止（1905年）を含む清末新政や立憲準備に踏み切りますが、体制の立て直しは遅れ、やがて1911年の辛亥革命へとつながっていきます。

正解：2. 韓国問題と満州問題をめぐって、日本がロシアと対立することになった

解説（ですます調）

北清事変（1900年）ののち、ロシアは義和団鎮圧を名目に満洲へ大軍を駐留させ、鉄道沿線や要地を実効支配しました。形式上は撤兵を約束しましたが、実際には撤退を引き延ばし、旅順・大連の租借地や東清鉄道・満洲での権益を拡大し続けました。これに対して日本は、朝鮮（大韓帝国）を「国家安全の生命線」と位置づけ、朝鮮半島と満洲でのロシアの南下に強い危機感を抱きます。そのため日本は1902年にイギリスと日英同盟を結んでロシア牽制の体制を整え、1903年には朝鮮・満洲をめぐる相互不干渉や勢力範囲の調整をロシアと交渉しましたが不調に終わりました。こうした対立の先鋭化が、やがて1904年の日露戦争へと直結していきます。したがって、ロシアの満洲占領と南下の動きは、日本との対立を決定的にする引き金になったのです。

正解：3. 日英同盟協約

解説（ですます調）

日英同盟協約は、1902年1月にロンドンで締結された、日本にとって初の対等な国際条約です。背景には、北清事変後も満洲に軍を留めて南下の姿勢を示すロシアへの警戒がありました。協約の骨子は、①清国および大韓帝国（朝鮮）の独立と領土保全、門戸開放・機会均等の支持、②日本の朝鮮における「特殊の利益」をイギリスが承認すること、③一方が単独で一国と交戦する場合には他方は厳正中立を保つが、二国以上を相手に交戦する場合には同盟国が援助する、という安全保障条項でした。これにより、日本は外交上の後ろ盾を得てロシアへの抑止力を高め、1904年の日露戦争開戦時にもイギリスの中立・支援的環境を確保できました。さらに同盟は1905年、1911年と改訂され、日本の国際的地位の上昇を示す指標ともなりました。他方で、朝鮮半島における日本の主導権承認は、のちの保護国化・併合へつながる一因ともなり、東アジア国際秩序に長期的な影響を及ぼした点も見逃せません。

正解：4. 『二六新報』『万朝報』などの有力新聞

解説

日清戦争後、ロシアの満洲進出や朝鮮半島への影響力拡大に対する危機感が日本国内で強まり、世論は対露強硬論へ傾斜しました。この世論形成を牽引したのが、低廉な価格で大量に出回り、扇情的な見出しや号外で読者を獲得した有力新聞でした。とりわけ『二六新報』や黒岩涙香の『万朝報』は、対露批判や「国権伸張」を鼓舞する社説・論説、戦況予測記事、軍備拡張を支持する論調を連日掲載し、都市の勤労層から知識人まで幅広い層に影響を与えました。記者による現地報告や臨時増刊、軍事地図や挿絵付きの記事は臨場感を高め、政府の対露交渉に圧力をかける「世論の風」を可視化した点でも重要でした。

もっとも、すべてのメディアが主戦的だったわけではなく、戦費や人的損失を懸念する冷静な論調も存在しました。しかし、大衆紙の強い発信力が世論の主流を形づくったことは否定できません。結果として、新聞は世論を動員し、日英同盟の締結や日露開戦へと進む政策環境を整える上で大きな役割を果たしたと評価できます。

正解：1. 日本海軍の旅順攻撃と陸軍部隊の韓国仁川上陸

解説

日露戦争は、1904年2月に日本側の先制的な軍事行動から実質的に始まりました。まず2月8日深夜から9日未明にかけて、東郷平八郎が率いる連合艦隊が遼東半島の旅順口に停泊していたロシア艦隊へ魚雷攻撃を行い、敵主力に損害を与えました。同時期に日本陸軍は韓国・仁川（当時は済物浦、Chemulpo）へ上陸し、ソウルおよび京仁線の確保を通じて朝鮮半島の兵站・作戦基盤を固めます。2月9日には仁川沖でロシア巡洋艦ヴァリャーグと砲艦コレーツが交戦の末に自沈し、日本の制海権確保に弾みがつきました。なお、開戦の詔勅と対露宣戦布告は2月10日付ですが、実際の交戦はそれ以前に開始されており、この電撃的な海陸同時行動が戦局の主導権を日本にもたらしたと評価されます。これらの初動作戦は国内世論を強く鼓舞し、長期戦を支える財政・人的動員の環境づくりにも大きく寄与しました。

連合艦隊旗艦三笠艦橋で指揮を執る東郷平八郎大将 (Wikipedia)

正解：3. 東郷平八郎

解説

日本海海戦（対馬海戦）は、1905(明治38)年5月27日〜28日にかけて行われ、連合艦隊司令長官・東郷平八郎元帥が全体指揮をとりました。

5月27日、統合率いる聯合艦隊は、ヨーロッパから極東へ向けて回航してきたロジェストヴェンスキー提督率いるロシアのバルチック艦隊（ロシア第二・第三太平洋艦隊、旗艦「クニャージ・スヴォーロフ」）を迎撃しました。この日本海海戦に際し、「敵艦見ゆとの警報に接し、連合艦隊はただちに出動これを撃滅せんとす。本日天気晴朗なれども波高し」との一報を大本営に打電しました。連合艦隊には最新鋭の通信機器が搭載されていたのです。また、艦隊に対し、「皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」とZ旗を掲げて全軍の士気を鼓舞しました。東郷は敵前で大回頭を行うという大胆な指示を出し、海戦に勝利を納めました。この回頭は「東郷ターン（Togo Turn）」と称されました。

この海戦における勝利は、東郷の名とともにロシアのバルチック艦隊の壊滅的敗北が世界中に伝えられ、当時ロシアの圧力に苦しんでいたオスマン帝国においても自国の勝利のように喜ばれ、東郷は同国の国民的英雄となりました。

戦闘は砲術・操艦・通信の総合力で日本側が圧倒し、ロシア側は多数の主力艦を喪失して壊滅的損害を被りました。日本側の損害は限定的で、制海権は決定的に日本へ傾きます。この勝利は日露戦争の軍事的帰趨を定め、同年のポーツマス講和を有利に導く要因となりました。なお、選択肢の山本権兵衛は当時の海相・政治指導の中心人物、伊東祐亨は日清戦争期の連合艦隊司令長官、秋山真之は連合艦隊の参謀（作戦立案の中心）であり、実戦の総指揮官は東郷であった点がポイントになります。

正解：2. 与謝野晶子「君死にたまふこと勿れ」

解説

「君死にたまふこと勿れ」は、与謝野晶子が日露戦争中の1904年に雑誌『明星』へ発表した反戦詩で、旅順攻囲戦で多大な犠牲が出るさなかに、身重の妻を残して戦地へ赴いた弟を思って「生きよ」と訴える内容です。国家や軍への盲目的服従を拒み、家族の情と個人のいのちを最優先する視点を前面に押し出した点が画期的でした。当時の社会は挙国一致の戦意高揚が主流でしたので、この詩は新聞・雑誌を中心に激しい批判と論争を巻き起こしましたが、一方で戦争の現実に疑問を抱く人々からは強い支持を集めました。結果として、この作品は明治日本における反戦・平和の言論を象徴する代表作となり、文学が世論に与える影響の大きさを示した重要な出来事と評価されています。

君死にたまふことなかれ
旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて

正解：2. ポーツマス条約（日露講和条約）

解説

ポーツマス条約は、1905年8〜9月にアメリカ合衆国ニューハンプシャー州ポーツマスで開かれた日露講和会議の結実として、同年9月5日に調印された講和条約です。仲介役を務めたのは当時の米大統領セオドア＝ローズヴェルトで、日本側の全権は外相の小村寿太郎と駐米公使の高平小五郎、ロシア側はセルゲイ＝ウィッテとローマン＝ローゼンでした。主要な内容は、①韓国における日本の「指導的地位」の承認、②遼東半島南部の租借権（旅順・大連）および関連施設の日本への移譲、③長春以南の東清鉄道権益の日本への移譲（のちの南満州鉄道の基盤）、④満洲の清国への還付と両軍の撤兵、⑤樺太（サハリン）南部（北緯50度以南）の日本への割譲、⑥賠償金なし、などでした。

日本は軍事的勝利を背景に有利な条件を獲得しましたが、賠償金が得られなかったことで国内世論は不満を高め、東京では日比谷焼打ち事件が発生しました。一方、国際的には講和仲介の功績によりローズヴェルトが翌1906年にノーベル平和賞を受けています。条約は日露戦争の終結を決定づけるとともに、日本の満洲・朝鮮への影響力拡大を制度的に裏づける転機となりました。