自由民権運動のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3
解説
岩倉使節団（1871～1873年）は、明治政府の要人が欧米の政治・社会制度を視察し、日本の近代化方針を検討する目的で派遣された大規模な視察団です。参議の木戸孝允と大久保利通はいずれも主力メンバーで、各国で憲法・議会・官僚機構・地方自治・財政制度などを詳細に調べ、その成果を踏まえて「日本も将来は立憲政体（君主を戴きつつも憲法に基づく統治）を採用すべきである」とする意見書を起草しました。ここでの「立憲政体」は、専制的な太政官主導を改め、法の支配と権力分立、代議制の段階的整備を目標とするものでした。
ただし、彼らは急進的な民権先行ではなく、「上からの漸進改革」を基本方針としていました。これは、翌1874（明治7）年に板垣退助らが提出した民撰議院設立建白書のような「ただちに民選議院を」という路線とは立場が異なります。木戸・大久保の構想は、まず中央集権的な近代官僚制と財政基盤を固め、教育・司法・地方制度を整備したうえで、段階的に代議制へと進むという設計でした。実際、彼らの見聞と意見は、府県会の設置（1878年）や国会開設の勅諭（1881年）、内閣制度（1885年）の創設、そして大日本帝国憲法の制定（1889年）へとつながる長期的な道筋を方向づけました。
一方、選択肢の人物について補足します。伊藤博文・井上馨（選択肢1）も後年に憲法制定・制度設計で大きな役割を果たしますが、本問の「1873年の使節団内での意見書起草」の中心は木戸・大久保です。福沢諭吉・前島密（選択肢2）は啓蒙思想や郵便制度などで重要ですが、使節団の内部意見書とは趣旨が異なります。板垣退助・江藤新平（選択肢4）は民権運動・司法制度整備で著名ですが、ここで問う「立憲政体採用を説く使節団内の意見書」の主起草者ではありません。以上の点から、正解は**「木戸孝允・大久保利通」**となります。

【正解】4
解説
1873（明治6）年の征韓論政変で下野した板垣退助・後藤象二郎・江藤新平らは、政府の専断的な統治に対抗し、翌1874（明治7）年1月に愛国公党を結成しました。彼らは同月、「民撰議院設立の建白書」を太政大臣・三条実美に提出し、全国民の選挙による議院の設置、言論・出版・集会の自由の保障、官僚専制の抑制、財政の公開などを求めました。これは「上からの漸進改革」を唱えた政府主流に対し、民意の代表機関を早期に創設して政治参加を拡大する「自由民権運動」の嚆矢となる重要な出来事でした。
建白書は、近代国家にふさわしい統治を実現するために、政治的正統性を民意に求めるべきだという理念を明確に打ち出しました。その後、各地で政社（政治結社）が生まれ、立志社（1874）、愛国社（1875）などの運動が広がり、1881年の国会開設の勅諭、1889年の大日本帝国憲法制定、1890年の帝国議会開設へとつながっていきます。なお、史料によっては副島種臣を連名に含める記述もありますが、主要メンバーとして板垣・後藤・江藤が中心であった点は教科書的整理として広く示されています。

【正解】2
解説
1873（明治6）年の征韓論政変で下野した板垣退助は、翌1874（明治7）年に土佐へ戻り、在郷士族や旧土佐勤王党系の同志を糾合して立志社を結成しました。立志社は、官僚専制を抑え、国政を民意に基づかせるために「民撰議院」の設置、言論・出版・集会の自由の確立、地方自治や司法の独立などを求める政治結社でした。土佐出身の片岡健吉・中江兆民・植木枝盛らが理論と運動の両面で支え、のちに私擬憲法の起草や政社ネットワークの形成へと発展していきます。
混同しやすい名称として、愛国公党（1874年、東京で板垣・後藤・江藤らが建白書提出のために結成）と、愛国社（1875年、大阪で各地政社の連合体として結成）がありますが、いずれも立志社とは別組織です。また玄洋社は1881年に博多で結成された政治結社で、年次も地域も異なります。こうした流れの中心にあった立志社の活動は、1881年の自由党結成や1890年の帝国議会開設へと続く自由民権運動の原動力となりました。

【正解】1
解説
1874（明治7）年の「民撰議院設立の建白書」提出を契機に、議会を国民の選挙で組織すべきかをめぐって、知識人・ジャーナリスト・官僚の間で「民撰議院論争」が活発化しました。明六社系の論壇では、急進的な議会設置に慎重な意見と、国民の権利拡大を求める意見が対立し、その議論が在郷士族や町人層へ波及して、各地で政社（政治結社）が結成されます。土佐の立志社（1874）や、大阪の愛国社（1875）などはその代表例で、請願・建白、演説会、新聞雑誌による世論形成を通じて、官僚専制を抑え法の支配と代議制の導入を求めました。
この一連の社会運動が自由民権運動です。運動は全国組織化や私擬憲法の起草へと展開し、やがて国会開設の勅諭（1881年）、政党の結成（自由党1881・立憲改進党1882）、大日本帝国憲法の制定（1889年）、帝国議会の開設（1890年）へとつながっていきます。選択肢の「富国強兵運動」は国家主導の近代化政策一般を指す語であり、「国粋主義運動」や「社会主義運動」は時期・内容が異なりますので、本問の文脈にあてはまるのは自由民権運動となります。

【正解】3

解説

1875（明治8）年の大阪会議では、大久保利通が板垣退助・木戸孝允と妥協を図り、「急進ではなく漸進的に立憲政体へ移行する」方針を確認しました。その具体策として政府は同年、立法面では元老院、司法面では大審院を設置します。

• 元老院は、政府の法案や制度設計について意見を述べる立法諮問機関で、議員は勅任（任命制）でした。すぐに民選議院を置くのではなく、まずは諮問機関を整えて制度的な準備を進める狙いがありました。元老院はのちに**帝国議会（1890年開設）**が発足すると役割を終えていきます。
• 大審院は近代的裁判制度の最高審として設けられ、終審裁判所（最終審）として司法の独立と権利保護の枠組みを担いました。明治憲法下では大審院が司法権の頂点に位置し、戦後の**最高裁判所（1947年）**に引き継がれていきます。

したがって、「立法諮問機関」と「司法機関」の組み合わせとして正しいのは元老院・大審院です。選択肢1の貴族院は帝国議会の上院として1890年以降の機関、最高裁判所は戦後の機関です。選択肢2の太政官・司法省はいずれも行政機関であり、諮問立法機関・終審裁判所とは性格が異なります。選択肢4の公議所は明治初年の試験的な諮問機関で、会計検査院は財政の監査機関であって司法機関ではありません。以上より、本問の正解は**「元老院・大審院」**となります。

【正解】2
解説
1875年の大阪会議以降、政府は「上からの漸進的な立憲化」を進める一環として、地方制度の整備に着手しました。その具体化が**1878（明治11）年の「地方三新法」**であり、内容は次の三つです。
郡区町村編制法：全国を郡・区・町・村に区画整理し、行政単位・事務分掌を明確化しました。郡長・区長などは原則として官選で、中央の統制のもとで地方行政を運用する仕組みが整えられます。
府県会規則：各府県に府県会（地方議会）を設置しました。議員は制限選挙（一定以上の納税者に限定）で選ばれ、当面は予算審議や建議などに権限が限られましたが、住民意思を政治に反映させる初めての制度的枠組みとなりました。
地方税規則：地方税の種類・賦課・徴収・使途などを定め、府県・郡区町村の財政運営の基本を整えました。これにより、地方会計と議会審議が結びつき、財政の透明性が段階的に高まりました。
これらは、中央集権を維持しつつも、地方自治への足場を築くことを目的としていました。のちに市制・町村制（1888）、府県制・郡制（1890）が施行され、地方三新法はより発展的な近代地方自治制度へと引き継がれていきます。
選択肢1や4は1880年代後半以降の制度を混在させた誤りで、選択肢3は**戦後（1947年以降）**の法体系で、本問の時期・内容には当てはまりません。

【正解】4
解説
1877（明治10）年、土佐の民権派結社である立志社は、中央政府の専断を抑え、民意を反映する制度を早期に確立するため、国会開設と憲政の実現を強く求める上奏文として**「立志社建白」**を用意しました。理論面では植木枝盛らが中心となり、言論・集会の自由、納税者の代表による議会設置、司法の独立、地方自治の拡充などを掲げました。これは1874年の「民撰議院設立の建白書」（東京の愛国公党中心）を地方から継承・発展させた試みであり、地方政社が主導して国政改革を直接に訴えるという点で画期的でした。
当時は西南戦争の直後で治安強化の流れが強く、建白は官憲により差し止められて正式提出には至りませんでしたが、各地の政社に大きな刺激を与え、1880年の国会期成同盟の結成へと運動が広がっていきます。最終的には、1881年の国会開設の勅諭、1889年の大日本帝国憲法、1890年の帝国議会開設へと結実します。なお、選択肢2の「民撰議院設立の建白書」は1874年、選択肢1の「国会期成同盟の宣言」は1880年、選択肢3の「大同団結建白」は1887年の運動に関わるもので、いずれも本問の年次・主体とは異なります。

【正解】2
解説
愛国社は、各地の民権派政社をゆるやかに結ぶために1875年に大阪で発足した連合体で、1880（明治13）年の第４回大会（大阪）で運動の重点を「国会開設の実現」に明確化し、全国統一の請願運動を推進するために国会期成同盟を結成しました。期成同盟は、各府県に期成派の支部をおき、請願書の作成・署名集め・演説会の開催などを組織的に行い、政府に対して早期の国会開設を強く求めました。これは、地方から広がった自由民権運動を全国的・継続的な運動体へと高めた点で画期的であり、世論の圧力は1881年の国会開設の勅諭につながっていきます。
選択肢について補足します。自由党（選択肢1）は1881年に板垣退助らが結成した政党、立憲改進党（選択肢3）は1882年に大隈重信らが結成した政党です。大同団結運動（選択肢4）は井上馨の条約改正案に反対して1887年に広がった運動で、いずれも本問の年次・文脈とは異なります。したがって、正解は国会期成同盟です。

【正解】2
解説
1881（明治14）年3月、参議の大隈重信は、英国型の立憲主義を理想として、「おおむね2年以内に国会を開設すべきである」とする上申書（国会開設に関する意見書）を政府に提出しました。これは、官僚主導の漸進路線に対し、より早期に議会政治と責任内閣制的運営を志向する提案でした。大隈は同時に、財政の公開や行政監督の強化、条約改正の方針など、近代国家にふさわしい統治原理の整備を訴えました。
しかし、政府主流（岩倉具視・伊藤博文ら）は、ドイツ流の統治思想を参照しつつ、より長期の準備期間を想定しており、大隈の急進的提案とは距離がありました。結果として同年10月の明治十四年の政変で大隈は罷免される一方、政府は世論の高まりを受けて**「国会開設の勅諭」（1881年10月）を出し、1890年の国会開設を公約しました。大隈は翌1882年に立憲改進党**を結成し、議会政治の実現へ理論と組織の両面から貢献していきます。
選択肢の比較として、板垣退助は自由民権運動の指導者で、早期の議会設置を各地の政社運動から推進しましたが、本問の1881年3月の上申書の提出者ではありません。伊藤博文は憲法制定で中心的役割を果たしますが、当時は漸進的路線でした。井上馨は外務・財政分野で重要でしたが、上申の主役ではありません。以上より、正解は大隈重信です。

【正解】2
解説
明治14年10月12日、いわゆる「明治十四年の政変」に際して、政府は大隈重信を辞職させる一方で、天皇の名で「国会開設の勅諭」を出し、明治23年（1890年）に国会（帝国議会）を開くことを明言しました。この勅諭は、民権派の高まりや、同年に発覚した開拓使官有物払下げ問題への批判で政府が厳しい立場に置かれるなか、政局の安定を図りつつ漸進的な立憲体制移行を示す政治的メッセージでした。
勅諭が期日を具体的に示したことで、憲法制定・議会開設までの工程が現実化し、伊藤博文らによる欧州での憲法調査（1882年）や枢密院の設置（1888年）、そして「大日本帝国憲法」発布（1889年）へと道筋が整えられます。また政界再編も進み、勅諭直後には板垣退助らが自由党（1881年）を、翌年には大隈が立憲改進党（1882年）を結成し、政党政治の胎動が本格化しました。
なお、選択肢の「五箇条の御誓文」は1868年の新政府基本方針、「大日本帝国憲法発布の詔書」は1889年の憲法公布時の詔書、「民撰議院設立建白書」は1874年に民権派が提出した請願であり、本問の出来事とは時期も性格も異なります。

まとめ：
自由民権運動は、明治維新後に近代国家をめざす過程で、国民が参政権と立憲政治を求めて展開した政治運動です。背景には、地租改正や徴兵令など急速な近代化で生じた負担感と、士族・農民・商工民の利害の不一致がありました。1874年、板垣退助らが民撰議院設立建白書を提出し、各地で愛国社・政治結社・演説会が広がります。政府は讒謗律・新聞紙条例・集会条例などで弾圧しますが、運動は1870年代後半に地租軽減運動と結びつき、1880年の国会期成同盟、1881年の明治十四年の政変を経て、自由党（板垣）・立憲改進党（大隈）が結成されます。1884年の秩父事件など急進化も起こり、1887年には三大事件建白運動に対し保安条例で反政府派約450人が東京から追放されます。それでも立憲制への圧力は強まり、1889年に大日本帝国憲法、1890年に初の帝国議会が開設されました。選挙権は納税要件付きの限定的なものにとどまりましたが、地方議会や新聞世論の形成、政治参加の理念の浸透など、日本の近代議会政治の基盤を築いた点で大きな意義がありました。

参考文献：
松沢裕作著 (2016) 『自由民権運動』岩波新書
安在邦夫著 (2012) 『自由民権運動史への招待』吉田書店
稲田雅洋著 (2000) 『自由民権の文化史』筑摩書房
三浦進著 (2024) 『新・明治の革命：自由民権運動』同時代社