近代産業の育成のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】2. 富国強兵策
解説
富国強兵策とは、「国を富ませて（財政・産業を強化し）、軍を強くする」ことを目標にした近代化の総合政策を指します。軍事力の近代化だけでなく、その土台となる財政・産業・教育の整備を一体で進めた点が特徴です。まず、1873年の徴兵令により国民皆兵を実現し、常備軍・鎮台（のち師団）体制を整えました。陸軍は当初フランス式、のちにドイツ式教練を導入し、参謀本部の設置によって統帥・作戦能力を高めます。同時に海軍では横須賀造船所を中心に蒸気軍艦の建造や外国人顧問の招へいを進め、近代海軍の基盤を築きました。
財政面では地租改正により金納・定額税を導入して安定歳入を確保し、産業面では殖産興業政策のもと官営模範工場の設置、鉄道・電信などインフラ整備を推進しました。さらに1872年の学制公布で初等教育を普及させ、兵士・技術者・官僚の養成を支える人的基盤を整えます。これらの施策が相まって近代的な国力と軍事力が形成され、列強からの侵略抑止や不平等条約改正に向けた実力の裏付けとなりました。一方で、重税や急速な制度改革は社会的緊張も生み、反乱や負担増への不満を招く側面もありました。総じて、富国強兵策は明治国家の近代化を牽引した中核的理念と実践であったと言えます。

【正解】3. 殖産興業

解説

「殖産興業」とは、国家が主導して産業を「殖やし（拡張し）」「興す（発展させる）」政策を総称した言葉で、明治初期から展開された近代化の実践的プログラムを指します。欧米の制度・技術・機械を導入し、官営の模範工場を設置して民間の手本とするとともに、資本・人材・インフラの整備を一体で進めた点が特徴です。代表例としては、富岡製糸場（1872年）のような器械製糸の導入、工部省による鉄道（新橋―横浜、1872年）・電信・灯台・造船所・鉱山の近代化、内務省勧業寮による技術普及や博覧会（内国勧業博覧会）を通じた産業振興などが挙げられます。お雇い外国人の招聘によって最新技術と工場経営のノウハウを取り入れ、教育面でも工部大学校等で技術者養成を進めました。

また、当時は不平等条約のため保護関税が限定されていたので、補助金・奨励金や官営事業によって国内産業を育成し、のちに官営工場の払い下げを通じて三井・三菱などの民間資本へ移管し、産業の自立化を図りました。結果として、製糸・紡績をはじめ重工業や交通通信インフラが発展し、富国強兵の経済的基盤が強化されました。ただし、財政負担や地域間格差の拡大などの課題も生み、政策運営には細やかな調整が求められました。総じて、殖産興業は明治日本が欧米水準へ接近するうえで要となった産業近代化政策であったと言えます。

【正解】4. 金・銀・銅の新貨幣を鋳造し、金本位制を定めた。

解説

明治初期は、藩札や各種の旧貨が錯綜し、金銀の比価の相違や紙幣乱発によって物価と相場が大きく揺れました。これを収拾するため、政府は1871年に新貨条例を公布し、円・銭・厘の十進制を採用して、金・銀・銅の新貨幣を大阪造幣寮（のち造幣局）で鋳造・発行しました。これにより、通貨単位と貨幣の規格が全国で統一され、旧来の雑多な貨幣を整理して流通の混乱を沈静化させました。

制度上は金本位制を基本とし、金貨（20円・10円・5円・2円・1円）・銀貨（1円・50銭ほか）・銅貨（1銭・半銭・1厘）を整備しました。ただし、当時の国際市場では銀の通用が強く、実務上は銀が広く流通する局面もありました。その後、日清戦争後の賠償金を背景に1897年に本格的な金本位制が確立され、兌換制度の信頼性が高まり、物価と為替の安定、国際決済の円滑化が進みました。新貨幣の鋳造と本位制の確立は、近代的な金融・財政運営の基盤を整えるうえで決定的な意味を持ったのです。

【正解】1. 伊藤博文・渋沢栄一

解説

国立銀行条例（1872年）は、欧米の銀行制度、とくにアメリカのナショナル・バンク制度を参照して制定された近代的商業銀行制度の枠組みでした。ここでいう「国立」は「国家の特許（チャーター）にもとづく」という意味で、国有銀行ではありません。制度設計と立法の推進に関与したのが伊藤博文であり、当時大蔵省に在職していた渋沢栄一は、制度の具体化・普及を主導して、1873年に第一国立銀行（のちの第一銀行）を創設し、実務面から全国への展開を牽引しました。

国立銀行は、一定の自己資本（正貨準備）を条件に兌換銀行券の発行を許され、為替・預金・貸付などの商業銀行業務を担いました。これにより、藩札や私札が錯綜した旧来の通貨・信用秩序が整理され、商取引の決済や企業活動の資金調達が安定化します。1876年には改正により不換化（兌換停止）を一時的に容認するなど運用上の調整も行われましたが、1882年の日本銀行創設以降は発券権が中央銀行に集中し、国立銀行は順次「普通銀行」に転換しました。

総じて、伊藤博文による制度面の推進と、渋沢栄一による現場での企業・金融ネットワーク構築が相まって、近代日本の銀行制度と資本市場の基盤が形成されたのです。

【正解】2. 電信

解説

ここでいう「電信」とは、電気信号で文字情報を遠隔地へ送る仕組みで、当時はモールス符号を用いて送受信しました。1869（明治2）年に東京・横浜間で電信線が敷設され、官庁間や港湾との連絡を迅速化したことが、日本の近代通信の出発点となります。これにより、従来の飛脚や書状に比べて情報伝達の速度が飛躍的に高まり、為替・貿易・外交・軍事などの分野で意思決定が格段に効率化しました。

その後、電信は鉄道や灯台、気象観測と連携して全国へ網の目のように拡大し、やがて国際回線とも接続されて国際電報が扱われるようになります。なお「電話」は音声を送る技術で日本では1870年代後半以降の本格導入となり、「無線電信」は20世紀に入ってからの技術です。したがって、明治初年の東京・横浜間で最初に整備されたのは文字通報のための「電信」であったと理解するのが適切です。

【正解】4. 前島密

解説

郵便制度の近代化は、前島密（まえじま ひそか／1835–1919）の強い提言と実行力によって進みました。前島は明治政府内で交通・通信行政を担い、1869年に近代郵便創設の建議を行い、1871（明治4）年に東京・京都・大阪を結ぶ郵便路の開設へとこぎつけます。従来の飛脚は地域や業者ごとに料金や速度がまちまちでしたが、前島は「切手制」や取扱規程の整備、郵便役所（のちの郵便局）の設置、配達経路と集配時間の定時化などを進め、迅速・確実・安価という近代郵便の原則を確立しました。

翌1872年以降は路線の拡充、1873年には「郵便はがき」の導入など、利用者拡大の施策も推進します。これにより、政府の布告・商取引・教育文化の情報流通が全国規模でスピードアップし、国民国家形成と産業化の基盤が整いました。のちに日本は国際郵便連合（UPU）にも加盟し、国内外を結ぶ通信ネットワークへ発展していきます。以上のように、制度設計から運用までを主導した前島密の貢献は、近代日本の情報インフラ整備に決定的であったと言えます。

【正解】3. イギリス

解説

明治政府は、新橋―横浜間の鉄道（1872〈明治5〉年開業）を皮切りに鉄道網を整備するにあたり、主としてイギリスから技術を導入しました。蒸気機関車・レール・信号装置など多くの資材を英国から輸入し、線路規格もイギリス人技師の助言を受けて狭軌（1067mm）を採用しました。工部省鉄道寮の体制の下、エドモンド・モレルら英国人技師が測量・施工・運転面を直接指導し、国内側では「日本鉄道の父」と呼ばれる井上勝が中心となって制度づくりと人材育成を進めました。

この結果、短期間で運行・保守のノウハウが根づき、駅務・運転・保線といった部門ごとの分業や時刻表・運賃制度などの近代的な運輸経営が整備されます。鉄道は郵便・電信と結びついて情報と物流の高速化をもたらし、殖産興業を支えるインフラとして大きく貢献しました。以上のように、日本の鉄道の出発点はイギリスの技術と運用モデルに学ぶ形で築かれたのです。

【正解】1. 岩崎弥太郎

解説

岩崎弥太郎（1835–1885）は、1870（明治3）年に九十九商会（のち三菱商会）を興し、政府の保護・支援を受けて汽船事業を拡大しました。政府からの貸与船や郵便航路の委託、補助金などの後押しを背景に、対国内外の定期航路を開設し、運輸インフラの近代化を牽引します。1874年の台湾出兵、1877年の西南戦争では、軍需物資や兵員の大量輸送を担い、巨額の収益を上げて資本を蓄積しました。

会社は1873年に三菱商会と改称し、のちに郵便汽船三菱会社として政府郵便輸送も担います。政府が競争相手として共同運輸会社を設けるなど紆余曲折はありましたが、結果的に事業基盤は強化され、1885年には両社の統合で日本郵船が発足します。これらの過程で岩崎は海運を核に金融・鉱山・貿易などへ事業を広げ、三菱財閥の礎を築きました。以上のように、岩崎弥太郎は政府保護を梃子に汽船事業を発展させ、軍事輸送を好機として巨富を得た人物であるといえます。

【正解】3. フランスのブリュナ

解説

富岡製糸場は1872（明治5）年に開設された官営の器械製糸工場で、日本の近代製糸業の模範工場として大きな役割を果たしました。当時、日本の生糸は欧米への主要輸出品でしたが、品質の不揃いや手作業による生産効率の低さが問題視されていました。そこで政府は、最新の欧米式技術を導入するため、フランスからポール・ブリュナを技術顧問として招き、工場の設計から機械導入、操業方法の指導に至るまで総合的に監督させました。

ブリュナは、フランス式の蒸気動力による繰糸機械を導入し、女性工女を中心に器械製糸の実習教育を行いました。この工場は官営模範工場として全国に先進的技術を普及させる役割を担い、日本の生糸品質を国際市場で高水準に押し上げることに成功しました。結果として、生糸輸出は日本経済を支える柱となり、富国強兵と殖産興業政策の基盤を強固にしました。以上のように、富岡製糸場はフランス人ブリュナの指導のもと、近代日本の産業発展を象徴する存在となったのです。

【正解】2. アメリカから農政家のケプロンと教育家のクラークを招いた

解説

明治政府は、蝦夷地を「北海道」と改称し（1869年）、開拓使を設置して本格的な殖産・移住政策を推進しました。その中心に据えられたのが、アメリカの最先端の農業・牧畜・教育モデルです。まず1871年に米国農務省長官を務めた経験を持つ農政家ホレース・ケプロン（Horace Capron, ケプロン）を顧問として招き、札幌本府の区画計画、畜産・農具・灌漑・麦作の導入、官営農場の設置など実践的な指導を受けました。続いて1876年にはウィリアム・S・クラーク（William S. Clark, クラーク）を招き、札幌農学校（のちの北海道大学）の教育制度を整え、近代農学・科学教育を通じて人材育成の基盤を築きます。

この二人の指導は、のちに地質調査のライマン、牧畜指導のエドウィン・ダンらアメリカ人お雇い外国人の活動にもつながり、開拓・産業振興・教育が一体で進む北海道開発の原型を形作りました。結果として、農畜産物の生産拡大、屯田兵制度による入植、札幌を中心とする都市形成が進み、明治国家の北方開発は大きく前進したのです。