討幕運動と幕府滅亡のことがよくわかる！クイズ10問

正解：2. 高杉晋作

解説：

元治元年（1864年）末、長州藩では禁門の変敗北と四国連合艦隊の下関砲撃を受けて、恭順・開国へ傾く「俗論派」が実権を握りました。これに強く反発したのが高杉晋作で、彼は身分混成の近代的民兵である奇兵隊を中心に下関・功山寺で挙兵し、藩内クーデタを敢行しました。高杉は機動力の高い小銃・洋式戦術を活かし、連携する各隊（遊撃隊・八幡隊など）とともに藩庁を次々と制圧して俗論派（中心人物に椋梨藤太ら）を追放します。

この内訌の勝利によって長州藩は再び倒幕・近代化路線へ復帰し、桂小五郎（のちの木戸孝允）らとともに洋式兵備の整備と藩政再建を加速させました。続く慶応2年（1866年）の第二次長州征討（四境戦争）では、この挙兵で鍛えられた戦力が威力を発揮し、長州は幕府軍を各戦線で撃退します。したがって、1864年に奇兵隊を率いて下関で挙兵した人物は高杉晋作であるといえます。

正解：3

解説

第２次長州征討（1866年）は、幕府が勅許を得て諸藩に長州攻撃を命じた戦役です。薩摩藩は表向きには出兵要請に応じず距離を取りつつ、実際には坂本龍馬らの仲介で成立した薩長連携の流れを踏まえ、長州藩への接近と支援の姿勢を強めました。とくに薩摩は外国商人を介した武器調達や海運の手配などで長州を陰に陽に支援し、幕府の動員力と権威を削ぐ効果を生みました。この結果、征討軍は十分な協力を得られず戦局は長州優位に傾き、将軍家茂の死去も重なって遠征は頓挫します。薩摩の対応は、幕府との決別と倒幕に向けた現実的な布石であり、その後の薩長同盟の実質化と新政府樹立へつながる重要な転回となりました。

正解：4. 土佐藩出身の坂本龍馬と中岡慎太郎

解説

薩長連合（通称「薩長同盟」）は、慶応２年（1866）に京都の小松帯刀邸などを舞台に、西郷隆盛（薩摩）と桂小五郎＝木戸孝允（長州）が合意に達した密約です。その実現を陰で支え、両藩の根深い不信を乗り越えさせた仲介者が、土佐の坂本龍馬と中岡慎太郎でした。龍馬は亀山社中（のちの海援隊）を拠点に英商人を介した武器・軍艦の調達や海上輸送の手配を進め、長州の再起を実務面で支援します。中岡は情勢分析と往復連絡に秀で、薩摩の政務を担う小松帯刀や大久保利通とも連携して、交渉の下地を整えました。密約の骨子は、幕府から一方が攻撃を受けた場合の相互援助と、朝廷主導の新体制を見据えた協調です。この連携により、第２次長州征討で幕府は劣勢となり、薩摩は倒幕へ舵を切る決意を固めます。薩長が手を結んだことは、翌慶応３年の大政奉還・王政復古へとつながり、明治維新の突破口となりました。

正解：3. 戦況が不利に展開し、戦闘中止に追い込まれた

解説

第２次長州征討（慶応２年・1866年）で幕府は勅許を得て諸藩に出兵を命じましたが、戦局は各戦線（芸州口・石州口・小倉口・大島口）で長州側が優位に立ちました。長州は高杉晋作らの下で奇兵隊などの諸隊を再編し、西洋式装備と機動戦で幕府方を各個に撃破します。他方、薩摩が出兵を渋り、ひそかに長州支援へ傾いたことは、幕府の動員力と統一指揮を大きく損ないました。兵站の不備や諸藩の温度差も相まって、幕府軍は劣勢を挽回できませんでした。さらに将軍徳川家茂が大阪城で病没したことにより、軍の士気と政治的求心力は決定的に低下します。このため幕府は停戦・撤兵を余儀なくされ、征討は事実上の失敗に終わりました。この挫折は幕府権威の失墜を一段と進め、翌慶応３年（1867年）の大政奉還と王政復古へとつながる重要な転機となりました。

正解：3. 徳川慶喜

解説

第14代将軍徳川家茂は慶応2年（1866年）に大坂城で急逝し、第2次長州征討も各戦線で不利となって停戦に追い込まれました。幕府の威信が大きく低下する中で、かねてより政治手腕で知られた一橋家出身の徳川慶喜が擁立され、第15代将軍に就任します。慶喜は将軍後見職や政事総裁職などの経験を生かし、フランス公使ロッシュの助言を受けつつ兵制・海軍の近代化、官制の簡素化や中央集権化を急ぎました。とくに陸海軍の強化や財政整理を進め、朝廷との関係改善を図って政権の立て直しを目指します。

しかし、薩長連携の進展と諸藩の離反、都市・農村における世直し騒擾の頻発など、幕府の求心力低下は止まりませんでした。情勢を見極めた慶喜は慶応3年（1867年）に大政奉還を上奏し、名目上は朝廷へ政権を返上しますが、王政復古の大号令と戊辰戦争へと事態は進みます。慶喜の就任は、幕府が最後の再建を試みた転換点であり、同時に江戸幕府体制の終焉へと至る過程を加速させた出来事でもあります。

正解：2

解説

慶応3年10月14日、徳川慶喜は朝廷に政権返上（大政奉還）を上表しました。これは、公武合体を唱える土佐藩の進言（山内容堂名義の建白書、実務は後藤象二郎ら）が背景にあり、坂本龍馬の「船中八策」に通じる公議政体（諸侯会議）構想を土台としていました。狙いは二つあります。第一に、薩長を中心とする倒幕派から「武力討幕」の大義名分を奪い、内戦を回避することです。第二に、朝廷主導の新政のもとでも徳川家が政治参加の余地を残し、版籍・軍事・財政面で影響力を保持することでした。

しかし、大政奉還によって名目上は幕府政権が終わったものの、実権の所在は未確定のままでした。倒幕派は同年12月9日の「王政復古の大号令」で政治秩序の一新を断行し、小御所会議で慶喜に辞官納地を迫ります。ここから対立は一気に先鋭化し、翌慶応4年（1868年）の鳥羽伏見の戦いへと発展しました。大政奉還は、内戦回避と徳川家の地位保全を目指した高度な政略でしたが、結果として明治維新への加速装置となった点が重要です。

正解：2. 討幕の勅許

解説

薩摩・長州は、慶応3年（1867年）10月14日の大政奉還上表と軌を一にして、朝廷から「討幕の勅許（倒幕の密勅）」を得ていました。これは、徳川政権を「朝敵」として武力で処断してもよいとする趣旨の内示で、薩長にとっては武力行使の大義名分を確保する決定的な一手でした。勅許の獲得には、岩倉具視ら公家勢力の工作と、薩摩の大久保利通・西郷隆盛、長州の木戸孝允らの周到な連携があり、情勢が大政奉還によって一時的に流動化しても、薩長主導で「王政復古」を断行するための法的・思想的根拠を温存する狙いがありました。

その後、薩長はこの勅許を背景に政治攻勢を強め、同年12月9日の「王政復古の大号令」へと踏み込み、小御所会議で慶喜に辞官納地を迫ります。さらに翌慶応4年（1868年）の鳥羽伏見の戦いで武力衝突が現実化し、旧幕府体制の崩壊が一気に進みました。したがって「討幕の勅許」は、単なる儀礼的文書ではなく、倒幕運動を最終段階に押し上げる実効的な政治カードとして重要な意味を持っていました。

正解：2

解説（ですます調）

この事件は一般に「近江屋事件」と呼ばれます。慶応3年11月15日（旧暦）、京都河原町の商家・近江屋新助宅二階に寓居していた坂本龍馬と、中岡慎太郎（訪問中）が刺客に襲撃され、龍馬はその場で即死し、中岡は重傷ののち間もなく亡くなります。犯行主体については当時から諸説ありますが、現在では京都見廻組（今井信郎ら）による襲撃説が有力視されています。他方で新選組関与説なども伝えられ、史料検討は続いています。

坂本龍馬は土佐出身で、海援隊を率い、薩摩と長州の和解・提携を実現させた薩長同盟の仲介者として知られます。倒幕後の国家構想として「船中八策」を掲げ、近代的な政体と経済の基盤整備を志向していました。中岡慎太郎も同じく土佐出身で陸援隊を率い、尊王倒幕運動の実務を担った行動派の指導者です。二人の同時期の死は、討幕から新政権樹立へと向かう政局に大きな衝撃を与え、温和な調停と近代化構想を推進していた勢力にとって大きな痛手となりました。

なお、この日は龍馬の旧暦の誕生日（天保6年〈1835年〉11月15日）にも当たり、後世に「誕生日と命日が同日」であった人物としてもしばしば言及されます。事件現場は「近江屋の二階」や「刀傷の残る調度」などの具体的描写でも伝えられ、近代日本成立期の象徴的暗殺事件として歴史教育でも重要視されています。

正解：3. 王政復古の大号令

解説

「王政復古の大号令」は、慶応3年（1867年）12月9日に京都御所で断行された政変で、薩摩・長州と岩倉具視ら廷臣が主導して、徳川政権を終わらせ天皇親政への復帰を宣言したものです。公議政体派（列侯会議による合議制をめざす土佐・越前など）の台頭に対し、薩長は主導権を確保するために先手を打ちました。大号令では、従来の摂関・幕府体制の廃止と、新政府の枠組み（三職制＝総裁・議定・参与）の設置が打ち出され、政治の中心が朝廷に回収されます。

さらに同夜の小御所会議では、徳川慶喜に対して「辞官納地」（官職辞任と領地返上）を求める強硬方針が決まり、徳川家の政治的・経済的基盤を大きく揺るがしました。これにより、徳川方と新政府方の対立は決定的となり、翌慶応4年（1868年）の鳥羽伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争へ発展します。なお、同年10月の大政奉還は政権返上の上表にとどまり実権は流動的でしたが、12月9日の大号令は制度的に旧体制を打ち切り、新政権を具体化した点で画期的でした。公議政体派を牽制しつつ薩長主導の政府構想を実現した、明治維新の実質的な起点と評価されます。

正解：4

解説

三職は、慶応3年（1867年）12月9日の「王政復古の大号令」で旧来の幕府・摂関制を廃して新体制を始動させるために、天皇の下に置かれた最高政治機関の骨組みです。構成は「総裁・議定・参与」の三層で、総裁は新政の最高責任者、議定は政策審議・決定を担う合議層、参与は実務助言・執行補佐を担いました。総裁には有栖川宮熾仁親王が就き、議定・参与には岩倉具視・西郷隆盛・木戸孝允ら倒幕の中心人物や公家が参画し、薩長を軸とした新政府運営が進みます。

この三職は、翌慶応4年／明治元年の太政官制整備へとつながる暫定的な移行枠組みであり、近代的中央政府への権力集中と意思決定の迅速化を意図していました。選択肢1・2は旧来の公家官位、選択肢3はのちの官制用語を混在させたもので、当時の三職とは一致しません。

まとめ：

幕末維新期とは、19世紀半ばに幕藩体制が動揺し、やがて明治維新へと至る激動の時代を指します。1853年のペリー来航により、江戸幕府は開国を迫られ、1854年には日米和親条約を締結しました。その後、1858年には日米修好通商条約が結ばれ、不平等条約に基づく開港が進みました。これにより国内では尊王攘夷運動が高まり、幕府の権威は大きく揺らぎました。

この時期、朝廷を尊び外国勢力を排除しようとする尊王攘夷派と、開国・交易を受け入れつつ幕府権力を維持しようとする開国派が対立しました。長州藩や薩摩藩は攘夷を掲げて行動しましたが、欧米列強との軍事衝突に敗北し、攘夷の非現実性を悟ることになります。その一方で、坂本龍馬の仲介による薩長同盟が成立し、倒幕運動は急速に強まっていきました。

1867年、将軍徳川慶喜は大政奉還を行い政権を朝廷に返上しました。しかし旧幕府勢力と新政府勢力の対立は避けられず、1868年の鳥羽伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争が勃発しました。新政府軍は旧幕府軍を各地で破り、江戸城無血開城を経て全国を掌握しました。これにより江戸幕府は完全に崩壊し、明治新政府が成立しました。

新政府は五箇条の御誓文を発布し、近代国家建設を目指す方針を打ち出しました。版籍奉還や廃藩置県によって中央集権体制が確立し、徴兵令や学制の制定を通じて近代的な軍事・教育制度が整えられていきました。また、文明開化の流れのなかで西洋技術や文化が導入され、日本は急速に近代化を遂げていきます。

このように幕末維新期は、封建的秩序が崩壊し、西洋の圧力を契機として近代国家への転換が進んだ、日本史上の大転換期であったのです。

参考文献：

宮地正人著 (2012) 『幕末維新変革史』上・下 岩波書店
三宅紹宣著 (2021) 『幕末維新の政治過程』吉川弘文館
井上勝生著 2009) 『開国と幕末変革』講談社学術文庫
一坂太郎著 (2020) 『暗殺の幕末維新史』中公文庫
友田昌宏編 (2019) 『幕末維新期の日本と世界』吉川弘文館 上田純子編 (2018) 　『幕末維新のリアル』吉川弘文館
佐々木克著 (2001) 『江戸が東京になった日』講談社 須田努著 (2022) 『幕末社会』岩波新書
上垣憲一著 (2014) 『勝海舟と幕末外交』中公新書 西川武臣著 (2016) 『ペリー来航』中公新書
三谷博著 (2003) 『ペリー来航』吉川弘文館
三谷博著 (2011) 『NHKさかのぼり日本史⑤幕末　危機が生んだ挙国一致』NHK出版
舟久保藍著 (2023) 『天誅組の変』中公新書
アーネスト・M・サトウ著 (2021) 『変革の目撃者ーアーネスト・サトウの幕末明治体験』上・下　晃洋書房