公武合体と尊攘運動のことがよくわかる！クイズ10問

【正解】3. 公武合体政策

【解説】

公武合体政策とは、朝廷（公家）と幕府（武家）を「連携」させることで政局を安定させ、幕府権威の回復を図ろうとする方策のことです。安政の大獄後に井伊直弼が暗殺された桜田門外の変（1860年）で幕威は大きく揺らぎ、尊王攘夷を唱える勢力が勢いづきました。こうした混乱を収めるため、老中首座となった安藤信正は、朝廷からの後ろ盾を得て幕政を立て直す路線を打ち出しました。

具体策の象徴が、孝明天皇の妹である和宮親子内親王（かずのみや）を第14代将軍徳川家茂に降嫁させる婚姻工作です。皇室と徳川家を縁戚で結ぶことで、条約締結後の対外政策や国内改革に朝廷の権威を付与し、諸藩や攘夷派の反発を和らげる狙いがありました。また、京都と江戸の連絡強化や、朝廷工作を通じた反幕府運動の抑制も目指しました。

しかし、公武合体は攘夷実行を迫る急進派からは「幕府延命策」とみなされ、保守派からも妥協的だと批判されました。安藤自身も1862年の坂下門外の変で襲撃されて失脚し、政策は難航します。それでも、公武合体の路線自体はその後の文久の改革や京都政局に影響を与え、倒幕・開国をめぐる最終局面まで政治構図を左右し続けました。公武合体は、幕末政局の「朝廷権威の政治化」という大きな潮流を示すキーワードであるといえます。

正解：2

解説（ですます調）

尊王攘夷論は、「尊王」＝天皇・朝廷を国家統合の中心として敬い仰ぐことと、「攘夷」＝外国勢力の侵入・干渉を排除することを結び付けた幕末の政治思想です。思想的基盤には国学や水戸学（会沢正志斎『新論』など）があり、幕末の黒船来航以後、列強の圧迫が強まる中で急速に支持を広げました。 当初は武力による排外を志向しましたが、生麦事件（1862）や薩英戦争（1863）、下関戦争（1863–64）などを経て攘夷の実行可能性に限界が明らかになると、「尊王」を軸に公武合体・公議政体論、さらには倒幕・王政復古へと運動の重心が移っていきます。したがって尊王攘夷は、単なる排外主義ではなく、対外危機への対応と国家体制の再編をめざす広がりを持った思想として理解することが大切です。

正解：4. 長州藩

解説：

尊王攘夷は、朝廷（天皇）を尊び、外国勢力を排斥しようとする思想運動で、幕末の政治情勢を大きく動かしました。その実動部隊として当初中心に立ったのは長州藩です。長州では吉田松陰が松下村塾で久坂玄瑞・高杉晋作・桂小五郎（木戸孝允）らを育て、安政の大獄（1858–59）で松陰が処刑されたのち、門下の若手が「尊王攘夷」を掲げて急進化しました。とくに1863年の「攘夷実行」勅命を受け、下関海峡での攘夷戦（外国船砲撃）は長州の主導で行われ、これが列強との武力衝突（四国連合艦隊下関砲撃、1864年）につながります。さらに長州は京都政局でも積極的に動き、八月十八日の政変（1863）や禁門の変（1864）などで表舞台に立ちました。

なお、水戸藩は水戸学を背景に早くから尊王攘夷思想の理論的土壌を形成しましたが、全国的な運動の「行動の中心」として機能したのは長州藩であり、その後に薩摩藩との薩長同盟（1866）を経て、倒幕・新政府樹立へと流れが加速していきます。以上の点から、当初の尊王攘夷派の中心は長州藩であるといえます。

正解：2. 憤激した長州藩が藩兵を京都に攻め上らせたが、幕府側の兵に敗れ去った。

解説：

池田屋事件（旧暦元治元年6月5日＝西暦1864年7月8日）で新撰組は、京都焼討ちや天皇拉致が計画されたとされる尊攘派の会合を急襲し、多数を殺傷・捕縛しました。これにより急進攘夷の拠点であった長州藩は強い打撃を受ける一方、憤激を高め、失地回復を狙って藩兵を率いて京都に進撃します。結果として起きたのが禁門の変（蛤御門の変、旧暦7月19日＝1864年8月20日）です。

この戦いでは、会津・薩摩などの朝廷守護勢力と新撰組が連携して応戦し、長州軍は敗退しました。戦闘は市中に大火を招き、京都は甚大な被害を受けます。長州側では来島又兵衛の戦死、久坂玄瑞の自刃など、有力志士の損耗が続きました。敗北後、長州は「朝敵」とされ、幕府による第一次長州征討へと発展します。一方でこの挫折は長州の体制再編と倒幕志向をさらに強め、のちの薩長同盟・倒幕運動へとつながっていきます。以上の経緯から、「池田屋事件の後に長州が京都へ攻め上ったが敗れた」というのが正しい理解になります。

正解：3. 下関を砲撃し、陸戦隊を上陸させて下関の砲台を占領した。

解説：

文久3年（1863年）、長州藩は攘夷実行の名のもとに関門海峡（下関海峡）を通過する外国船に砲撃を加えました。これに対し、翌元治元年（1864年）にイギリス・フランス・アメリカ・オランダの四国連合艦隊が下関に来襲し、艦砲射撃で沿岸砲台を沈黙させたうえで陸戦隊（海兵隊・水兵）を上陸させ、長州側の砲台・兵站拠点を制圧しました。海峡の航路障害物は撤去され、長州は砲台の撤去・賠償金支払い・海峡通航の自由承認など厳しい条件を突きつけられます。

この一連の作戦（下関戦争・四国連合艦隊下関砲撃、1864年9月）は、長州に大きな軍事的打撃を与えると同時に、攘夷の非現実性を可視化しました。長州藩内では洋式兵備の本格化や政務改革が進み、後の倒幕運動における軍事近代化と路線転換の重要な契機となりました。

正解：2. 尊攘派に代わって俗論派が藩政の実権を握り、開国へと舵を切った。

解説：

1864年の禁門の変で長州は京都で敗れ、「朝敵」とされました。直後には四国連合艦隊による下関砲撃・陸戦上陸で沿岸砲台を失い、海峡の通航自由承認や賠償など厳しい条件を受け入れざるをえなくなります。この一連の敗北を受け、長州藩内では急進的な尊攘派に代わって、恭順と現実的対応を説く保守系の「俗論派」が主導権を握りました。俗論派政権は対外関係では開国・通商容認へ傾き、対幕府でも対決回避・内治再建を優先する路線をとります。

もっとも、この「開国・恭順」への転換は長続きせず、1864〜65年の藩内抗争を経て、高杉晋作らが挙兵して俗論派を打倒すると、長州は洋式兵備の近代化を加速させ、のちの倒幕運動の先鋒へと復帰していきます。敗北後の一時期に生じた「俗論派主導・開国容認」こそが、当該設問の答えとなる藩論の変化です。

正解：3. イギリスの艦隊

解説：

1862年の生麦事件では、薩摩藩士が武蔵国生麦村で英国人リチャードソンらを殺傷し、これに対してイギリスは幕府と薩摩に対し賠償金の支払いと加害者の処罰を強く要求しました。幕府は賠償に応じましたが、薩摩は加害者引き渡しなどの要求を拒み、翌1863（文久3）年、イギリス艦隊（のちに「薩英戦争」と呼ばれます）が鹿児島湾へ進入しました。

英艦隊は鹿児島市街や沿岸施設を砲撃し、上陸・拿捕行動も伴って薩摩側に大きな被害を与えました。他方、薩摩も砲台から応戦し、双方に損害が出ています。戦後、薩摩は講和・賠償に応じる一方で、洋式兵備の導入や蒸気船・最新火器の購入を加速させ、1865年には留学生の英国派遣などを通じて対英協調を深めました。結果として、この衝突は薩摩の近代化と国際関係の現実認識を促し、のちの倒幕・新政府樹立に向けた政治的・軍事的基盤形成に大きく影響したのです。

正解：1. 攘夷方針を取りやめ、通商条約の勅許を与えた。

解説：

慶応元年（1865年）、イギリス・フランス・アメリカ・オランダの連合艦隊が兵庫沖に展開し、上陸部隊の示威や砲艦外交によって朝廷・幕府に強い圧力をかけました。目的は、朝廷が依然として掲げていた攘夷方針の撤回と、安政条約（通商条約）への正式な勅許を引き出すことでした。

背景には、1863年の攘夷実行（下関海峡での外国船砲撃）と、それに対する1864年の四国連合艦隊の下関砲撃で日本側が痛手を負い、攘夷が現実的でないことが明白になっていた事情があります。示威行動を前に、朝廷内部でも公武合体派や現実路線が勢いを増し、最終的に朝廷は攘夷の立場を取り下げ、条約締結を追認する「通商条約勅許」を与えました。これにより、開国・通商の大勢が確立し、幕末政治は倒幕・政権交代へ向けた新たな局面に進んでいきます。

正解：1. 西郷隆盛や大久保利通らが武器輸入、洋式工場建設などの改革を進めた。

解説：

1863年の薩英戦争で鹿児島は砲撃を受け、艦砲の威力や近代兵器の差を痛感しました。これを転機として、西郷隆盛・大久保利通・小松帯刀ら中枢は、攘夷一辺倒から現実的な開国・富国強兵路線へと舵を切ります。具体的には、イギリス商人らを通じた最新銃砲・蒸気船などの大量輸入、反射炉や機械工場・造船所・紡績所など「集成館」系の洋式工場群の再整備・拡充を進め、藩営工業で火器・弾薬・機械の国産化を図りました。

さらに、藩士教育と技術導入を目的に留学生を英国へ派遣し（1865年の薩摩留学生）、通商と軍事の双方で対英協調を深めます。これらの改革は、薩摩の軍事力・財政基盤・外交力を短期間で引き上げ、のちの薩長同盟成立と倒幕運動の推進力となりました。したがって、薩英戦争後の薩摩藩を特徴づけるのは、西郷・大久保らの主導による武器調達と洋式工場建設を柱とする近代化改革であるといえます。

正解：2. 幕府を支持し、財政的・軍事的援助を与えた。

解説：

幕末の列強の対日姿勢は一枚岩ではありませんでした。イギリス公使ハリー・パークスが薩摩・長州との接近を進めて「新体制」への移行を見据えたのに対し、フランス第二帝政（ナポレオン三世）と在日フランス公使レオン・ロッシュは、当面の秩序と条約履行の担保を重視し、徳川幕府を近代化の主体として支援しました。具体的には、フランス人技師レオンス・ヴェルニーを招いて横須賀製鉄所・造船所の建設を主導し、兵器製造・艦船建造の基盤整備を支えます。さらに1867年にはフランス陸軍士官団（いわゆる第一回仏軍事顧問団）を派遣して、幕府陸軍の訓練・組織化を支援し、銃砲・砲熕などの武器購入や資金融通にも関与しました。

このような「幕府近代化＝秩序維持」という路線は、戊辰戦争の勃発で現実の力学に押され、やがてフランスも新政府承認に転じますが、少なくとも幕末期の段階ではフランスが幕府寄りの実質的援助を行ったことが、イギリスとの対照として重要であると言えます。