フェルメールについてのクイズ10問

正解： 3. 37点

解説：

現存するフェルメールの絵画は 37点 とされています。フェルメールは17世紀オランダの黄金時代を代表する画家で、光の扱い方や構図の精巧さから「光の魔術師」とも称されています。しかし、彼が生涯に残した絵画は非常に少なく、主に静かな日常生活を描いた室内画が中心です。

フェルメールの作品が少ない理由は、彼が非常に慎重な制作スタイルをとっていたこと、生涯を通じて限られた制作期間しか活動できなかったこと、そして経済的に厳しい状況に直面していたためと考えられています。

また、フェルメール作品の数については歴史的な議論がありました。一部の作品は失われた可能性があり、他の作品についても真作かどうかを巡って議論が続きましたが、現在では専門家の研究や技術分析により37点が現存作品として広く認識されています。

これらの絵画は世界各国の美術館や個人コレクションに分散しており、一堂に会する機会は極めて稀です。そのため、フェルメール展のような特別展示が開催される際には、彼の作品を目にする貴重なチャンスとなります。

アムステルダム国立美術館

正解： 3. ラピスラズリ

解説：

フェルメールの絵画に使われる美しい青色は「ウルトラマリンブルー」と呼ばれ、その主成分である原料が ラピスラズリ です。ラピスラズリはアフガニスタンのバダフシャーン地方を主な産地とする非常に希少で高価な鉱石で、フェルメールの時代には金と同じくらい高価とされていました。

ウルトラマリンブルーは、鮮やかな発色と耐久性が特徴で、フェルメールはこの顔料を惜しみなく使用することで、彼の絵画に独特の透明感と深みを与えました。特に有名な作品「真珠の耳飾りの少女」や「青衣の女」では、この青色が効果的に使用されており、観る者に強い印象を与えます。

しかし、ラピスラズリの価格の高さは当時の画家にとって大きな負担でした。そのため、フェルメールがこの顔料を多用したことは、彼がいかに作品の品質にこだわり、美しい仕上がりを求めたかを示すエピソードでもあります。このような背景から、フェルメールの青は「フェルメールブルー」とも呼ばれるようになり、美術史において特別な地位を築いています。

真珠の耳飾りの少女

正解： 1. カメラ・オブスキュラ

解説：

フェルメールがその緻密な構図や光の表現を可能にした理由の一つとして、 カメラ・オブスキュラ を使用したのではないかと考えられています。カメラ・オブスキュラは、暗い箱の中に小さな穴やレンズを取り付け、その外部の光景を箱内に逆さまに投影する装置です。この装置は、近代的なカメラの原型ともいえるもので、物体の正確な形や光の反射を視覚的に捉えることができるため、画家にとって非常に役立つツールでした。

フェルメールの作品には、カメラ・オブスキュラを使用したと思われる証拠がいくつか見られます。たとえば、彼の絵画ではピントがぼけたような効果（ハレーションや光の輪）が確認され、これはカメラ・オブスキュラ特有の現象です。また、彼の構図や視点は非常に正確で、細部に至るまで精密に描かれているため、この装置を利用して観察した光景を基に絵を描いた可能性が高いとされています。

ただし、フェルメールが実際にカメラ・オブスキュラを使用したという直接的な記録は残っていません。ですが、彼の作品が当時の他の画家とは一線を画すリアリズムや光の使い方を持っていることから、この装置が制作プロセスで重要な役割を果たした可能性が高いと多くの専門家が推測しています。

手持ち式のカメラ・オブスキュラ（Wikipedia)

正解： 2. ポワンティエ

解説：

フェルメールの絵画で特徴的な手法の一つに、「ポワンティエ」と呼ばれる技法があります。ポワンティエとは、光が反射して輝いているように見える部分を白や明るい色の小さな点で表現する方法です。この技法によって、光のきらめきや透明感がリアルに再現され、彼の絵画に独特の魅力を与えています。

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」といった作品では、このポワンティエが特に効果的に使われています。例えば、真珠の表面の光の反射や、窓から差し込む光がガラスに当たる瞬間などが、白い点描によってきらめくように表現されています。

この手法は、フェルメールが光の観察に非常に優れていたことを示すものです。彼は単に物体の形を描くだけでなく、光が物体に当たる瞬間やその反射の微妙なニュアンスを捉えることで、現実以上に生き生きとした場面を作り出しました。

ポワンティエは、フェルメール特有の技法として知られていますが、彼が使用した「カメラ・オブスキュラ」の影響も指摘されています。この装置では、光が反射する部分が特に強調されるため、それを忠実に絵に反映させたのではないかと考えられています。ポワンティエの使用は、彼の絵画における光と空間の表現に重要な役割を果たしました。

フェルメール「牛乳を注ぐ女」

正解： 1. 手紙

解説：

フェルメールの絵画には、しばしば 手紙 が女性の恋愛や感情を表す象徴的な小道具として登場します。手紙は、登場人物の内面やストーリーを暗示する重要なアイテムであり、フェルメールの作品において特に注目すべきモチーフの一つです。

例えば、「青衣の女」では、女性が手紙を手にしながら窓辺に立つ姿が描かれており、その表情からは感情が高ぶっている様子がうかがえます。また、「手紙を書く女と召使い」では、召使いが手紙を持って立っており、その内容や宛先について物語を想像させる構図になっています。

手紙が登場する場面では、しばしば窓や光といった要素も組み合わされ、秘密めいた雰囲気やドラマ性が強調されています。このように、フェルメールは日常的なアイテムである手紙を使いながら、恋愛や人間関係の機微を繊細に表現しました。

フェルメールの時代、手紙は遠く離れた人との重要なコミュニケーション手段であり、特に恋愛においては思いを伝えるための貴重な道具でした。そのため、手紙はただの小道具ではなく、登場人物の心情や背景を深く理解するための手がかりとして、彼の絵画において重要な役割を果たしています。

フェルメールの名画「手紙を書く婦人と召使」は、1974年と1986年の2度にわたり盗難に遭ったことで知られています。この作品は、女性が手紙を書いている場面を描いたもので、召使いがその手紙を届けようとしている構図になっています。この絵は、フェルメールが特に得意とした「手紙」というモチーフと、窓から差し込む光の効果的な表現が見られる傑作です。

1974年、アイルランドのRussborough Houseから最初の盗難が発生しました。この事件はIRA（アイルランド共和軍）に関係するものとされ、身代金目的で盗まれました。その後、1986年に同じRussborough Houseから再び盗まれるという異例の事態が起きています。2度目の盗難の際も、目的は金銭的なものでしたが、いずれも作品は無事に回収されています。

このように、フェルメールの絵画は非常に高い芸術的価値と市場価値を持つため、犯罪のターゲットになりやすいと言えます。しかし、フェルメールの作品は各地の美術館で厳重に保管されており、現在は盗難や損傷を防ぐためのセキュリティ対策が強化されています。

「手紙を書く婦人と召使」は現在、アイルランドのナショナル・ギャラリーで安全に保管され、多くの人々に鑑賞されています。この作品は、フェルメールが描いた家庭の温かさや人間関係の複雑さを深く表現しており、美術史上重要な位置を占めています。

フェルメール「手紙を書く婦人と召使」

正解： 3. オランダのデルフト

解説：

フェルメールは、オランダのデルフトという小さな町で生まれ、生涯のほとんどをそこで過ごしました。デルフトは当時、オランダの黄金時代の一端を担う繁栄した都市であり、美しい運河や建築物が特徴です。この町は、フェルメールの作品の背景やテーマに大きな影響を与えました。

フェルメールの父親はデルフトで宿屋を経営し、同時に絵画の取引も行っていました。こうした環境で育ったフェルメールは、自然と絵画の世界に触れ、美術に興味を持つようになりました。1653年にはデルフトの画家組合「聖ルカ組合」に加入し、正式に画家としての活動を始めました。

デルフトはフェルメールの作品にも登場します。たとえば、「デルフトの眺望」は、フェルメールが故郷であるデルフトの街並みを描いた名作として知られています。また、彼の作品に見られる静謐な室内の描写は、デルフトの穏やかな雰囲気を反映しているとも言われます。

フェルメールは1675年にデルフトで亡くなりましたが、彼の名声が広がるのは死後のことでした。今日、デルフトはフェルメールゆかりの地として多くの観光客が訪れる場所となり、フェルメールセンターなど、彼の生涯と作品に触れられる施設も設けられています。このように、デルフトはフェルメールの人生と芸術にとって切り離せない場所であり、彼の独特な画風を育む重要な舞台となりました。

フェルメール「デルフト眺望」

正解： 3. ニューヨークのメトロポリタン美術館

解説：

ニューヨークのメトロポリタン美術館は、フェルメールの絵画を最も多く常設展示している美術館として知られています。同館には、現在5点のフェルメール作品が所蔵されています。これらの作品は、フェルメールの多彩な才能を示す重要な例であり、彼の絵画における光と空間の表現、そして構図の緻密さを堪能できるものばかりです。

メトロポリタン美術館に所蔵されているフェルメール作品の中でも、「水差しを持つ女」や「手紙を書く女」などは特に有名です。これらの絵画では、彼の特徴的な光の扱い方や静謐な雰囲気が見事に描かれており、彼がオランダ黄金時代を代表する画家であることを裏付けています。

フェルメールの作品は世界中の美術館に散在しており、全てを一度に見ることは極めて困難です。しかし、メトロポリタン美術館は、これほど多くのフェルメール作品を一堂に鑑賞できる数少ない場所の一つであり、多くの美術ファンにとって重要な訪問先となっています。

なお、アムステルダム国立美術館やワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーもフェルメール作品を複数所蔵していますが、それぞれ4点ずつであり、メトロポリタン美術館がその数を上回っています。このように、メトロポリタン美術館はフェルメール愛好家にとって特別な場所と言えるでしょう。

メトロポリタン美術館（Wikipedia)

正解： 1. ハンス・ファン・メーヘレン

解説：

1930年代以降に「新たなフェルメール作」として発見された絵画の多くは、オランダの画家 ハンス・ファン・メーヘレン による贋作であることが判明しました。ファン・メーヘレンは、オランダ黄金時代の巨匠たちの絵画技術を巧みに模倣し、美術界を騙すことに成功しました。彼の贋作は、当時の多くの美術評論家や専門家を納得させ、いくつかの作品はフェルメールの真作として認定され、美術館やコレクターに高値で売却されました。

特に有名な例として、「エマオのキリスト」は、1945年にフェルメールの真作とされ、オランダの国立美術館に収蔵されました。しかし、戦後の調査で、この作品がファン・メーヘレンによる贋作であることが判明します。彼は1945年に逮捕され、ナチスに美術品を売却した疑いで裁判にかけられましたが、法廷で自ら贋作を告白しました。彼は裁判所で絵を描いてその技術を証明し、最終的にナチス協力者の嫌疑は晴れたものの、贋作の罪で有罪判決を受けました。

ファン・メーヘレンの贋作事件は、美術界に大きな衝撃を与えただけでなく、絵画の真贋を見極める技術や学問の重要性を再認識させるきっかけとなりました。彼の事件は、アート市場の脆弱性や、巨匠の作品に対する過度な崇拝がいかに誤りを生むかを示した一例として、美術史の中で語り継がれています。

メーヘレンの贋作「エマオの食事」（1936年） (Wikipedia)

正解： 2. 真珠の耳飾りの少女

解説：

「真珠の耳飾りの少女」 は、フェルメールの代表作であり、世界中で最も有名な絵画の一つです。この作品は「北方のモナ・リザ」とも呼ばれ、フェルメールが描いた中でも特に高く評価されています。絵画は現在、オランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館に所蔵されています。

この作品は、若い少女が振り向きざまに観る者を見つめる瞬間を描いています。少女の青いターバンと耳に輝く大きな真珠の耳飾りが印象的で、その簡潔な背景が少女の存在感を際立たせています。フェルメールは光と影を巧みに操り、少女の透明感や滑らかな肌を生き生きと表現しました。特に真珠の表現は、フェルメールの光の描写技術が凝縮されており、観る者を惹きつける力を持っています。

この絵は2003年に映画化され、スカーレット・ヨハンソンが主演を務めたことでさらに注目を集めました。映画では、フェルメールとモデルとなった少女との関係が物語として描かれていますが、実際にモデルが誰であったのかについては謎に包まれています。

「真珠の耳飾りの少女」は、フェルメールが残した少ない作品の中でも特に象徴的な存在であり、彼の天才性を如実に示す名画として、美術史において欠かせない位置を占めています。この作品を通して、フェルメールの卓越した技術と彼が追求した美の理想を知ることができます。

フェルメール「真珠の耳飾りの少女」